転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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22決着

 

 

 

 台風の悪魔の周囲で幾度となく爆破と火花が舞い散り、それらは暴風によってすぐさま流れ去ってゆく。そんな中、アキは高速道路の電灯にしがみついていた。

 

「くそ、これは大人しく観戦してるしかないか……!」

 

 突風と猛雨に晒されるアキはそう悔しげに呟く。だがその時、天使が悲鳴を上げた。

 

「わ!?」

 

 彼はアキの目前にある車にしがみついていた。しかし、強風が吹き荒れた事によって体が浮き上がり、地上から離れてしまったのだ。

 

 アキは即座に天使の胸元を掴み、必死に耐える。だが、台風の悪魔がより力を強めたのかますます風は強くなり、アキ自身もまた引き剥がされそうなほどの暴風に襲われていた。

 

「う……ぐうう……!」

 

「いいんだ……いいんだ! 手を放していい!」

 

 天使が必死の表情でアキへ訴える。そして、全てを悟ったかのように話し出した。

 

「死ぬなら死んでいい! 今日が死期だったんだ! 大丈夫……! 死ぬ覚悟はずっとできている!」

 

 アキはもう限界だった。だが、決して離すまいと必死に耐える。しかし──天使は空を舞ってしまった。

 

 天使が運命を受け入れ、目を瞑る。それをゆっくりとした世界の中で見ていたアキは、かつて銃の悪魔によって両親が殺害されたことを思い出していた。

 

 ──雪の降り積もった田舎町。そこへ建つ一軒の家。アキは弟のタイヨウとキャッチボールをしていた。そこへ突如として現れた強大な悪魔。それはただ、移動していたに過ぎなかったのだろう。しかし、両親の居た家は引き潰され──何もかもを奪い去っていった。

 

 また、失うのか。アキは絶望しそうになる。だが、弟のタイヨウだけは生き残っていた。何故ならばアキが引き止めたからだ。ただの偶然ではある。しかし、アキが救ったというのは事実だった。

 

 なら諦めてたまるか! アキは何がなんでも天使を救うと決意を改め、必死に腕を伸ばした。そして──天使の手を掴むことに成功したのだ。

 

「おおおおおおお!!」

 

「なぁっ……!」

 

 アキは裂帛の気合とともに天使を引っ張り上げる。そして彼を決して離さぬようにと、強く抱き締めた。

 

「何っ……なっ、なんで僕の手を触った!? 死にたいのか!?」

 

「死にたいワケねえだろ!! 今のでどれくらい寿命減った!?」

 

 天使が心苦しそうに、二ヶ月くらいと呟く。それを聞いたアキは一瞬放心するが、すぐに考えを振り払い天使へと告げた。

 

「死にたいなら、どっか遠くで死んでくれ……。目の前で死なれるのだけは……もう御免だ……」

 

 アキの痛切な思いを聞き、天使はただ──彼を受け入れた。

 

 

 

 暴風の吹き荒れる嵐の中、デンジはビームに跨り台風の悪魔を切り刻んでいた。

 

『ギャアアアアアアアア!!?』

 

「俺ぁラクでい〜ぜ〜! 馬鹿みたいにチェンソー回してりゃいいだけだからなあ〜!!」

 

 台風の悪魔が嵐を起こせば起こすほど、デンジ達はより輝いていた。そして、ついに──。

 

『くるなああアアアアア!!』

 

 デンジ達は台風の悪魔の顔面へと辿り着き──何もかもを切り刻んだ。

 

 

 

 台風の悪魔が死に絶え、嵐がはたと止んだ。それにより分厚い雲に覆われていた夜空には星々が浮かび始め、大きな月が姿を現す。

 

「レゼはどこだ!?」

 

「あ!? チェンソー様!!」

 

 レゼを探していたデンジ達は、上空から迫る彼女に奇襲を受け、建物の屋上へと叩きつけられた。

 

「いってぇ〜……! 助かったぜ、ビーム……」

 

「きゃ……き……」

 

 レゼがデンジ達に遅れて着地をする。そして、彼女は話し始めた。

 

「デンジく〜ん、そろそろあきらめない?」

 

「ん〜、やだ」

 

 デンジの答えを聞いたレゼは指先から稲妻を飛ばし、彼の右腕を貫いた。そしてその右腕を吹き飛ばす。

 

「がっ、た!! ああああ……!」

 

「いい加減面倒だから、さっさと死んでくれないかな」

 

「だったら、初めて会った時にさっさと殺しとくんだったな……!」

 

 思わず黙り込むレゼ。しかし、彼女は気を取り直すかのように話し出した。

 

「もう逃げ道はないよ」

 

「ど〜かな」

 

 そう言ったデンジは背後へ振り返り、月明かりに照らされた夜の海へと視線を向ける。

 

「俺に泳ぎ方を教えたのは間違いだったな〜」

 

「え〜泳ぐの〜?」

 

 二人は黙り込み、静寂が訪れる。だがその時、デンジがスターターを引き、それと同時にレゼが稲妻を飛ばした。

 

 唯一残っていたデンジの左腕が吹き飛ばされる。しかし、引き千切れた腕にはチェーンが繋がっていた。そのことにレゼが驚くと、デンジがその一瞬の隙をついて彼女へチェーンを巻きつけた。

 

「なっ!?」

 

「シケてても爆発できるのかア〜?」

 

 そして、二人は海へと落下する。やがて大きな波しぶきを上げた二人は、海底へと沈んでいった。

 

 

 

 真っ暗な海の中は静かであり、そこで死を待っていたレゼは走馬灯を見ていた。

 

 これまでの辛く、苦しい人生が風のように流れていく。だが、最後のページにはデンジと過ごした記憶があった。偽りの人生を送っていたレゼだったが、デンジと過ごした日々には嘘偽りのない本心が現れていたのだ。

 

 レゼは死の間際に思い出す。何も知らないデンジへ、泳ぎ方を教えていたことを──。

 

 

 

 漣の音、海鳥達の鳴き声、そして暖かな朝日。レゼは暗闇から浮かび上がるような感覚と共に、目が覚めた。

 

「信じられない……どうして私を蘇らせたの……?」

 

 レゼの隣には、ぼんやりと朝日を眺めるデンジがいた。

 

「……オレは素晴らしき日々を送っている。何回もボコボコにされて酷い目に合って死んでも、次の日ウマいモン食えりゃそれで帳消しにできる。でも……」

 

 デンジが躊躇いながらも、続きを話す。

 

「ここでレゼを捕まえて公安に引き渡したら、なんか……魚の骨がノドに突っかかる気がする。素晴らしき日々を送っていても、時々ノドん奥がチクってなりゃあ最悪だ」

 

「今、私に殺されても同じこと言える?」

 

 レゼがそう聞くと、デンジは気にした様子もなく彼女へ笑いかけた。

 

「殺されるなら美人にってのが俺の座右の銘」

 

「っぷ、あはははははは!! はああ〜! あ〜」

 

 レゼは笑い終えると表情を消した。そして、冷たい眼差しでデンジを見つめながらも話し出す。

 

「もしかして……私がまだキミを本気で好きだと思ってるの? キミと会ってからの表情も頬の赤らめも全部嘘だよ。訓練で身につけたもの」

 

 デンジがショックを受けたような表情でレゼを見つめ返してきた。それを見たレゼは視界に収めたくないとばかりに後ろへ振り返り、歩き出す。

 

「私は失敗した。……キミと戦うのに時間をかけすぎた。じゃあ私は逃げるから」

 

 レゼはただ静かに立ち去ろうとする。だが、立ち上がったデンジが話しかけてきたのだ。

 

「一緒に逃げねえ?」

 

「へ?」

 

「俺も戦えるから逃げれる確率上がるぜ」

 

「私はたくさん人を殺したよ? 私を逃がすって事はデンジ君、人殺しに加担するって事になるけどわかってる?」

 

「仕方なくねえけど仕方ねえな。まだ俺ぁ好きだし。それに全部嘘だっつーけど──俺に泳ぎ方教えてくれたのはホントだろ?」

 

 レゼはデンジと向き合い、彼と見つめ合った。そして、彼へと近づいては手を伸ばし──首の骨を折ったのだ。

 

「あっ!? あっ……」

 

「もう少し賢くなったほうがいいよ」

 

 レゼは砂浜に足跡をつけてその場を立ち去る。背後から聞こえるデンジの心の叫びに、耳を傾けながら。

 

 ──なあっ、レゼ!! 今日の昼に……!

 

 ──あのカフェで待ってるから!!

 

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