公安対魔特異課本部の一室。そこへ俺達特異五課は勢揃いをしていた。そしていつも通り、上司であるマキマさんの言葉を待つ。
「ソ連からの刺客は無事に凌いだね。プロペラヘッド、本当にありがとう」
「マキマさん、俺は今回何も出来ませんでした。……ただ、民間に被害を出しただけです」
そう、俺は何もできなかった。ただ爆散しただけ。かなり酷い結果となってしまい、俺は悔やむばかりだ。
「そんなことはないよ。キミがボムを牽制してくれたおかげで、被害は間違いなく抑えられたんだから」
「マキマさん……!」
上司の鏡過ぎるマキマさんに、俺は感動で咽び泣きそうだった。
「ただ、デンジ君が日本にいることが少なからずバレちゃった。きっとこれから多くの刺客が来るだろうね。でも、私には自慢の部下達がいる。キミ達なら、なんの支障もなく対処できると信じているよ」
俺は次こそは活躍してみせると意気込み、普段以上に声を張り上げるのだった。
数日後、俺は特異五課専用の飛行場で新入りと会話をしていた。なお、このあとバルエムとソードがやってくる予定だ。
「はじめまして、ではないがよろしく頼む。俺はプロペラヘッドだ」
「よろしくお願いします。──私はレゼです」
エメラルドグリーンの瞳が特徴的な新入りは、何を隠そうソ連の元刺客である。もっと言えば、俺を爆殺した張本人だ。
「コードネームがあるだろ?」
「マキマさんに頼んでレゼに変えてもらいました。……ボムとは、決別したかったので」
「そうか。ならレゼ、これからは仲間として頼んだぞ。ただし、間違っても俺を爆殺するなよ?」
「あはは! もしかして根に持ってます?」
「当たり前だろ。だが過去は過去だ、もう言ったりはしない」
正直なところ、俺はレゼとの距離感を掴み損ねていた。というのもレゼは戦闘力が高く、普通に優秀なのだ。一応上位者には敬意を払う質なので、戦闘となったら高確率で負ける俺は彼女を雑に扱うことができなかった。
「センカイ君、なんかレゼちゃんに優しくないすか〜〜〜?」
「なんだよ」
「私と態度違くないすか〜〜〜?」
「うるさいなこいつ」
事務所から出てきた女が半目で睨みつけてくる。なので俺も負けじと睨みつけ、対抗した。やがて俺達は目の前にいながらも睨みつけ合うことになるが、どちらも引くことはしない。
「あ、あの〜プロペラヘッドさん、デンジ君への伝言、本当にありがとうございました」
「ん? ああ、気にするな」
「……やっぱりレゼちゃんに優しい。センカイ君、レゼちゃんはデンジ君が好きなんすよ? 略奪愛は関心しないっすね〜」
「狙ってねぇよ」
さっきから何なんだこいつ。俺はそんなことを考えながらも、早くレゼへ仕事内容を教えるように女へと催促をした。
その後、女はしっかりと仕事を果たし、レゼは俺達特異五課の仕事内容を把握した。とはいえ、俺達のやる事は強大な悪魔の処理だ。難しいことは何もなく、ただ敵を打ち倒すだけ。実に簡単といえる。
「公安は基本バディを組むんすけど、レゼちゃんの相手がいないんですよね。なので、基本は私センカイペア、バルエムソードペア、スピアムチコペアをローテーションしながら参加する形になるっす」
「分かりました」
「それも明日からだな。今日は新人歓迎会みたいなもんだ」
俺は気楽に行こうとレゼに声を掛け、一度事務所へ戻ろうとした。だがその時、彼らがやってきたのだ。
「同志レゼ!!! 会いたかったよ君にぃ〜!!!」
「お久しぶりでぇす!!」
「この展開いつか見たな」
バルエムとソードがやってきた。彼らは案の定というべきか非常にテンションが高い。そして、その調子のままレゼを取り囲んでいた。
「君は爆弾の武器人間なんだってねえ! 実に素晴らしいよ!」
「兄貴を爆殺したと聞きました! ぜひ姐御と呼ばせてくださぁい!」
「えっ? えっ?」
「もし困ったことがあったらぜひ声を掛けて欲しい! 必ずや力になるからねえ!」
「姐御との共闘、楽しみに待ってまぁす!」
いや一旦落ち着けよ! 俺は荒ぶる二人にそう声を掛け、レゼから引き離した。しかし、レゼが大丈夫だと声を上げたのだ。
「プロペラヘッドさん。少し驚きましたけど、私は迷惑だと思ってませんよ。むしろこんなにも関心を持ってくれて、本当に嬉しいです」
俺は思わず聖人かと疑ってしまった。しかし武器人間だった。
「すまないね〜、つい興奮してしまったよ。ただ、今話したことは全て事実だ。もし困ったことがあったら、頼っていいからね」
「姐御、喉乾いたら言ってください! ジュース買ってきます!」
「ありがとう、バルエムさん、ソード君」
レゼは感謝の言葉を告げると、儚い笑みを浮かべる。俺はそんなキャラなの?と思ったが、そもそもを知らないのでよく分からない。ただ、仕事になると豹変すんのかなと失礼ながらに考えていた。
「レゼちゃん、女子力高いっすね……!」
「お前が低いだけだろ」
「は? 聞き捨てならないっすねえ〜センカイく〜ん?」
女が脇腹をつついては体を擦り付けてくる。俺は今すぐ止めるようにとガンを飛ばすが、女は張り付けた笑みを浮かべて俺に笑いかけるだけだ。
「ていうか、いい加減私のこと女っていうの止めません?」
「ならなんて呼べばいいんだ」
「……え? どういう心境の変化??」
俺が何がだ?と問えば、女は戸惑ったように口を開く。
「いや、頑なに私の名前呼ばないじゃないですか」
「お前が何も言ってこないからだろ」
「そうなの!? じゃあ私がもっと早く言えば訂正してくれたんすか!?」
「当たり前だろ。二年もバディを組んでおいて女呼びは非常識だ」
「自覚あったんかい!!」
女は大声を上げて項垂れるが、すぐさま体を起こす。そして、俺にキラキラとした目を向けてきた。
「じゃあこれからは愛しのフミちゃんで!」
「論外、フミコな」
「え〜、まあいいか」
不満そうに口を尖らせるフミコだったが、小さく笑みを溢すと俺に密着してきた。なので、俺はすぐさま離れた。
東京のある商業施設内にて、姫野は部下を伴い休暇を楽しんでいた。
「荒井君、荷物持たせちゃってごめんね〜!」
「いえ、この程度造作もありません!」
「あ、あの、私の服買ってくれてありがとうございます」
「いいよいいよ。コベニちゃんは可愛いんだから、もっとお洒落しなきゃ!」
部下である荒井ヒロカズ、コベニと楽しげに会話をする姫野は、心地良い気分でショッピングモールを散策していた。しかしその時、前方に知り合いを見つけたのだ。
「あれ、もしかしてアキ君かな?」
背の高い黒髪の青年。彼は公安のスーツを身に纏い、刀を肩に回している。
いたずら心が湧き上がった姫野は、彼を驚かそうと静かに近づいた。だが、彼の隣にいるバディである悪魔が、予想外の行動を取ったのだ。
「っおい、急に抱きつくなよ」
「フフ、別に布越しなんだからいいだろ?」
悪魔こと天使が、なんとアキの腕に抱きつく。彼は素肌を介して寿命を吸い取る力があるはずだが、わざわざ薄手の手袋をしてアキに触れていた。
それら一部始終を見ていた姫野は一瞬で表情を消す。そして、部下二人にハンドサインを送った。
──静かに偵察。
二人は戸惑いながらも、姫野の指示に従った。
あれから数時間後、姫野は未だにアキ達を尾行していた。既にショッピングモールを抜け、今は昼食のために入っていったハンバーガー屋にいる。そこで彼らの壁越しの席に座り、姫野は物静かにハンバーガーを食べていた。
「なかなかに美味しいね」
「ああ、そうだな。久しぶりにハンバーガーなんて食べたよ」
「なんかそっちも美味しそうだなぁ。少し分けてくれない?」
「仕方ないな……」
姫野はハンバーガーを握りつぶしそうになった。しかし、耳に神経を注いで二人の会話に注目をする。
「おい、俺の手を握るなよ」
「しょうがないだろ? キミが持ってるんだからさ」
恐らくハンバーガーを持ったアキの手を天使が取っているのだろう。そして──齧り付く。
「ん〜! 美味しいね」
「お前結構食べてないか?」
「え〜? じゃあ僕の上げるよ。ほら、あ〜ん」
「……しょうがないか」
嘘、でしょ……!? 姫野はそう小さく呟くと、放心してしまった。その後、居心地の悪そうなヒロカズとコベニに話しかける。
「……ねぇ、どう思う?」
「えっ!? いやっ、仲睦まじいですかね〜?」
「仲睦まじい……!!」
「姫野先輩……! あくまで俺の主観ですよ……!?」
ヒロカズが必死な様子でフォローしてきた。
「コベニちゃんはどう思う……?」
「えっと、恋人同士みたいだな〜って思いました……」
「恋人同士……!!」
「コベニちゃん、思ってても口に出しちゃ駄目だって……!?」
「ご、こめんなさい……!」
部下二人が小さく話し合う中、姫野は焦点の合わない瞳でハンバーガーを見つめる。そして、決意を固めた。
──このままではアキ君が取られる。
──ならば、私も動かなければ……!
姫野はただ無心でハンバーガーに食らいつき、そして飲み込むのだった。
オリ要素
・天使ホモ化(すまん)