公安対魔特異課本部の会議室では、錚々たる顔触れが揃っていた。それは対魔特異課のまとめ役であるマキマ、自称最強のデビルハンターこと岸辺、早川アキ達が所属する特異四課、そしてマキマの虎の子である特異五課などだ。他にも優秀な人員が他部署や民間より集まっており、日本でも屈指のデビルハンター達が一堂を会していた。
時計を確認していたマキマが彼らに向き直り、作戦会議を始める。
「皆、集まってくれてありがとう。今日はチェンソーマン防衛作戦の最終確認だから、気楽に聞いてほしい」
マキマはそう前置きを置くと、語り出した。
「チェンソーマンを狙う刺客は中国のデビルハンタークァンシと、ドイツのサンタクロース。あとはアメリカからも刺客が来るそうなんだけど、詳細は不明だね」
ここで、マキマの隣に立っていた岸辺が口を開く。
「作戦は当初と変わりなく、護衛対象であるデンジを重点的に囲いこむ。デンジの身辺には特異四課と特異五課を配置、残りの者達には彼らの周辺で目を光らせてもらう」
「当日のルートをしっかりと頭に入れておいて欲しい。それと、私達が最も警戒しているのは人形の悪魔と契約しているサンタクロース。その者は触れた人間を、人形へと作り変える恐ろしい力を持ってるの。恐らく民間に多大な被害が出るけれど、私は可能な限り被害を抑えたいと思ってる」
真摯な態度で話すマキマに特異五課が大きく頷き、それに続くように他の者達も頷いた。
「話したい事はそんなところかな」
そう言ったマキマは彼らを見渡すと、笑みを浮かべる。そして宣言をした。
「私は貴方達となら、この難局を乗り越えられると信じている。皆、頑張ろうね」
部下達の気合いのこもった返事を聞き、マキマは今一度──笑みを浮かべた。
都内にある大きな公園にて、デンジとパワーはのんびりと池を眺めていた。
「ああいう鳥って、捕まえて食ってもいいのかなあ」
「ワシが大統領だったら許可するのお……」
「デンジ君、パワーちゃん。普通に駄目だよ?」
他愛のない会話をする二人にレゼが参加をする。彼女はデンジの最も近い場所で、護衛することを任されていた。
「はえー、そうなんだな。知らなかったぜ」
「これから知っていけばいいんだよ。デンジ君には、私が教えてあげるからね!」
「ありがとな、レゼ」
デンジがレゼと笑い合ってると、思わず嫉妬をしたのかパワーが割り込んできた。
「うがー!! デンジはワシのモノじゃー!!」
「いつお前のモンなったんだよ!」
「あはは! 相変わらずパワーちゃんは面白いなあ〜」
なんだかんだで仲の良い二人にデンジは笑うと、ちらりと周囲を見渡す。そこにはアキと天使がこちらを見守っており、残りの面々は全て特異五課だった。
その中でも、特異五課の面々はネズミ一匹見逃さないとばかりに周囲を睨みつけており、公安のスーツと相まって威圧感が凄かった。そのためデンジが口を開く。
「なあ、あんなに力を入れんでもよくねえ?」
「デンジ君はそんなの気にしなくていいんだよ? いっそのこと今の状況を楽しんじゃお! 私達、有名人になったみたいじゃん!」
「へへ、確かにな!」
「ワシはパワー!! この国の大統領じゃ〜!!」
「あはははははは!! その調子、その調子!」
レゼに煽てられてパワーが目をキラキラと輝かせる中、デンジは腕を組み、二人を楽しげに眺めていた。
デンジ達を護衛する俺達は、ハンバーガー屋に場所を移していた。ここで彼らの昼食を済ませる予定だ。
デンジとパワー、そしてレゼがテーブルを囲い、昼食を取る。その間、俺とバルエム、スピアが彼らの護衛としてついていた。
「デンジ〜、野菜やる〜……」
「あ? ああ」
店内は予想以上に混んでおり、客の往来が激しい。もし刺客が潜んでいても、咄嗟には動けないかも知れない。俺は気を引き締めて周囲を観察するが、やはりと言うべきか相手に動きがなければ厳しいのが現状だった。
「横を失礼」
「おや、すみませんね」
その時、スピアの前を一人の女性が通り過ぎた。俺はちらりと目線を向けるが、ただの客だと判断する。だが、次の瞬間──。
椅子を蹴り飛ばしたレゼが、その女性へハイキックを食らわせたのだ。また、それと同時にピンを引き抜き武器人間と化す。
それら一連の動作を見ていた俺達は、彼女へ呼応するように武器人間へと変身した。そして俺がレゼに蹴られた女性を警戒し、バルエムとスピアが周囲を警戒する。
「ねえ──デンジ君に何したのかな?」
「動くな。さもなければ殺すぞ」
俺は鋭利な槍となっていた両腕を変形させ、肘関節を機関部にし、槍部分を長大な銃身へと変化させた。そしてベルト式の巨大な弾薬が腹部へと連結される中、プロペラを回して白煙を吹き上げる。
「いたた。いきなり何なんです?」
「ちょっと、俺の彼女に──」
連れの男がやってくるが──スピアが容赦なく心臓を貫いた。そして、雑に抜き捨てる。
「すみませんね。うちの者が敵だと判断しましたので死んでもらいました」
「ははは! 良い突きだったねえ〜」
槍と火炎放射器を構え、周囲を威圧する彼らは実に頼もしい限りだ。だが、その時。店内に突如として悲鳴が上がった。俺がそちらへ意識を向けると、大量の人形達が窓を突き破り大挙として押し寄せてきていたのだ。
やはり敵か。そう判断した俺は即座に女へと機銃をぶっ放す。それによって激しい明滅と共に断続的な爆音が鳴り響いた。そして、死の雨が銃口から放たれては女へと襲い掛かる。
しかし、女はあり得ないほど俊敏な動きで弾丸を回避すると、一瞬で姿を消したのだ。俺は思わず驚き、声が漏れてしまう。
「は、速イ……!」
「かなりの手練だね。もしかしたら、サンタクロースなのかも」
「かも知れないナ!」
レゼに返事を返しながらも、俺は迫りくる人形達へ振り向く。そして──。
「死にたくなければ頭を下げロ!!」
機銃をぶっ放した。爆音と共に放たれる弾丸は人形達を纏めて粉砕し、次々と打ち倒していく。音速を超える弾丸を避けられるものはおらず、後ろへ下がりながらも機銃を掃射することで、程なくして脅威は去っていった。