俺達は襲い掛かってきた人形達を無事に凌ぎ、ハンバーガー店を出ていた。そして、路上で状況確認に励む。
どうやら護衛を含めて俺達に被害は無いようだ。しかし民間人に多大な被害が出ており、大勢の死者が出てしまった。というのも彼らは皆人形に作り変えられていたため、処理するしかなかったのだ。
早急に仲間達と話し合うと、あの手練の女をサンタクロースと仮定することとなった。しかし、そうなるとサンタは俺達の戦力を大凡ながらも把握したことになる。もしも彼女に対抗策があるのなら、それを打倒しなければならないだろう。
「これからどうする? サンタの第二波が来ると思うか?」
俺は一度考えが纏まったため、バルエムの意見を聞いてみた。
「どうだろうねえ。お仲間の一人は殺したし、多くの人形達は処理した。もし俺がサンタクロースなら、次は物量で攻めるかなあ。そのためにも沢山の人形を集めるだろうねえ」
「なるほど。しかし厄介だな、悪魔の力が強すぎるぞ」
「ははは! それは同意見だよ。でもそれでこそ、サンタクロースだ。きっと多くの子供達にプレゼントを届けたいんだろうな〜」
和やかに話すバルエムを見ていると緊張が解れるな。俺がそんなことを考えていると、一台の車がやってきた。そして中から岸辺、コベニ、荒井ヒロカズの三人が降りてくる。
「よお、サンタに襲われたらしいな」
「これはこれは岸辺君! 武器人間に興味はないかな?」
「その話は以前断っただろ」
バルエムと岸辺が情報交換を始めたので、俺は護衛対象のデンジへと近づいた。彼にはレゼ、ムチコ、フミコが護衛としてついており、あとはパワーがいる。なんとも華やかだと思うが、全員人間じゃないところが愉快だ。
「デンジ、無事か」
「おう、無事だぜ。でもよぉ〜俺も戦いてえよ。守られてばっかじゃ嫌になっちまう」
「言わんとしてることは分かる。俺も同じ立場なら、そう思ってるだろうな」
ちらりと護衛達を見ると、全員こちらを見てきた。レゼは何をいってるのかな?と言いたげな表情であり、ムチコはメンチを切ってくる。そして、フミコは相変わらず張り付けた笑みを浮かべていた。
「……俺はお前にも活躍して欲しいと思ってる。それに、マキマさんも戦うなとは一言も言っていない。機会があれば、遠慮なく力を振るってくれ」
「分かってんじゃねえか! ほら見ろレゼ! 俺だって戦っていいんだよ!!」
「デンジ君が無理する必要ないんだよ?」
「俺だって戦いて〜の!!」
デンジ、分かるぜ。惚れた女にはカッコつけたいよな。
小さく笑みを浮かべた時、俺はふとパワーがいないことに気付いた。彼女はどこへ行ったのかと思い、探そうとした瞬間──一台の車が猛スピードで突っ込んできたのだ。
「ふぁ!!?」
そして俺は跳ね飛ばされた。
デンジを護衛するフミコは、彼と会話をするプロペラヘッドを見つめていた。相も変わらず無愛想な顔をする彼だが、僅かながらに口角が上がっている。もしかしたら、デンジと話すのは苦じゃないのかも知れない。
フミコがそんな事を考えていると、突如として派手なスキール音が鳴り響いた。彼女がすぐさまそちらへ振り向くと、コベニの愛車が急発進している。そしてそのまま民間人を一人跳ね飛ばしたかと思えば、続けてプロペラヘッドを跳ね飛ばした。
驚くフミコの目の前で、二人の人間が空を舞う。
罪無き民間人は、よりにもよって歩道のガードレールに強く頭を打ち付けて即死した。そしてプロペラヘッドは道路に派手に叩きつけられ、首があらぬ方向へと曲がってしまう。
突如として発生した事故に、世界が凍った。しかしそんな中、早川アキが第一声を上げたのだ。
「な、な……なにやってんだ。何やってんだてめえ……」
彼は焦りに焦った表情で、運転席から出てきたパワーを問い詰める。しかし、パワーは悪びれた様子もなくただ言葉を返したのだ。
「ワシは運転してない。アイツのせいじゃ」
そう言ってパワーが指差した方向には、助手席に座っていたコベニがいた。彼女は顔中を濡らしており、明らかに被害者だ。
もはや収拾がつかないと思われたその時、フミコが即死した民間人に異変を感じ取る。彼女がよくよく観察していると、なんと顔が溶けて別の男へと変化したのだ。
フミコはこの男を知っている。そのため声を張り上げた。
「っこの顔、間違いないっす! アメリカで殺し屋まがいの事をしてるデビルハンターっすよ! 確か、皮の悪魔と契約した三兄弟だったはずっす!」
「おや、なら後は二人殺すだけですね。兄弟なんですし、もしかしたら近くにいるかも知れません」
「キャハハ!! 偶然にしちゃよくできてるぜ! ただフミコよぉ、少しは気にしたれよ。アイツ死んでるぜ?」
「えっ?」
驚いたフミコはプロペラヘッドへ振り向く。彼はピクリとも動く様子がない。急いで駆け寄ったフミコだったが──すでに彼は事切れていた。
「センカイく〜ん!!?」
吉田ヒロフミは許可を貰い、ビルの裏路地を歩いていた。この場所は日当たりが悪く、換気扇や室外機で埋め尽くされているため生温い風が吹く。そのため、捨てられたゴミには多くの虫やネズミが群がっており、彼が近づくと一目散に逃げていった。
──糞……! 落ち着け! 落ち着け!
──畜生……落ち着けるわきゃねえ……!
曲がり角の先から、焦ったような男の声が響く。ヒロフミはポケットからバタフライナイフを取り出すと、手で弄び始めた。
「やっぱあの魔人ぶっ殺してやる……!」
やがて男がこちらへやってくる。ヒロフミは彼の横を通り過ぎると──背後から首を掻っ切った。男は頸動脈を深く切り裂かれては血を噴水の如く吹き出す。そして、そのまま藻掻きながら死んだ。
角を曲がったヒロフミは、もう一人の男を見つける。彼は吐瀉物の前に膝をついており、大変苦しそうだ。
「大丈夫ですか? 具合悪いみたいですけど」
「う、さっき……あ、人身事故を、見てしまって……」
「そうですか」
にこやかな笑みを浮かべたヒロフミは男へと近づいた。そして、バタフライナイフを弄びながらも彼に手を掛ける。
「あっ、止め──」
ヒロフミは容赦なく男を殺した。首を一撃で貫き、大量の血を吹き出させたのだ。男は死の恐怖に怯えながらも、最後は静かに息を引き取った。
「やっぱりそうじゃん」
顔が変わったのを確認したヒロフミは、ただそれだけ呟くと踵を返す。そして鼻歌を歌いながら、楽しげに去っていった。