転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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3特異五課

 

 

 

 俺は公安の特異五課に所属することとなった。なお行方不明者扱いだったので新たな戸籍が与えられ、三船センカイと名前が与えられた。

 

 今いるのは東京都郊外の森の中。ここには簡素的な飛行場があり、俺がいつでも飛び立てるように整備されているのだ。

 

「センカイ君、仕事っすよ〜」

 

 後ろへ振り返ると、黒髪セミロングの女がいた。横髪をヘアゴムで結んでいるが、何かこだわりがあるのだろうか。

 

「それで? どこへ行くんだ」

 

「千葉県の愛宕山! そこに悪魔が現れたみたいなんで、ちょちょいと処理するみたいっすね〜」

 

 俺の仕事は地方の悪魔処理だ。正直あまりにも楽すぎてこれでいいのかって感じだが、マキマさん的には凄く助かってるらしい。大まかな手順としては現場のデビルハンターが悪魔を外に誘導し、俺が機銃掃射で蜂の巣にする、または五百キロ爆弾で吹き飛ばすこととなっている。なお、この女は俺の付き添いであり、操縦席に座ってるだけの寄生虫だ。

 

 

 

 目の前の青年がカッターシャツのボタンに手を掛け、順番に外していく。次にネクタイとベルトを外してスーツパンツを脱いだかと思えば、下着や靴下まで脱ぎ全裸となった。

 

「早く受け取れ」

 

「毎回思うんすけど、私の前で裸になるの躊躇しないんすか?」

 

 三船フミコは眼前の青年、三船センカイが面倒くさそうに顔を歪めるのを見た。

 

「変身する度に服を破くバカがどこにいる? それなら全裸になった方が合理的だ」

 

「いや、そうっすけど」

 

 フミコはセンカイの身元引受人となった。そのためこうして共に行動するようになったのだが、如何せんセンカイは性格が悪い。フミコに対して感謝はなく、尊敬もない。あるのは蔑む態度だけ。だが、フミコは特に怒ることもなくセンカイに付き合っていた。

 

 フミコは服を受け取ると、毎度のことながらセンカイを値踏みする。神経質そうな顔立ちをした青年。自身と似た黒髪を七三分けにしており、手足が長く均整のとれた身体は程よく引き締まっていた。また、フミコがもっとも関心のある性器は男らしいサイズと造形をしていたのだ。あれなら勃起した際に、より逞しくなることだろう。

 

「相変わらずいいカラダしてるっすね〜。興奮しちゃうっす」

 

「勝手にしてろ」

 

 センカイはフミコの誘いには一切乗らない。フミコとしては多少なりとも心を開いて欲しいのだが、色事にも興味がないとなるとなかなかに厄介であった。少しずつ信頼を得るしかないか。フミコはそう考え、飛行形態──流星へと変身したセンカイに搭乗した。

 

 

 

 雲一つない快晴の空を飛ぶ。高度六〇〇〇メートル、時速五百キロを維持してかれこれ三十分といったところ。すでに都心を越えて千葉県に入っており、愛宕山はもう目と鼻の先だった。

 

「センカイ君、どうすかこのパイロット帽とゴーグル。似合ってるとおもいませ〜ん?」

 

『仕事に集中しロ。まぁ、似合ってないこともないナ』

 

 女に返事を返し、悪魔の詳細を聞く。どうやら出現した悪魔は山羊の悪魔で、性的快楽を増幅させる力があるとのこと。すでにデビルハンターが二名被害にあっているようで、両名とも男だったにもかかわらず互いに求めあってしまったらしい。これが悪魔って奴か。

 

 少し先の森から赤い煙が上がった。女が無線機でやり取りをしていたので分かるが、あれは現場にいるデビルハンターが俺達に位置を知らせてくれているのだ。早速向かうこととしよう。

 

 速度を緩めると、悪魔を視認する。女も双眼鏡で確認していた。悪魔はやや開けた林の中におり、現場に居たデビルハンターと情事に耽っているようだ。他人に興味がない質だが、流石に同情する。

 俺は正義感に駆られ、機体を悪魔に向けて傾けると降下を開始。そのまま勢いをつけながら機銃を掃射し、山羊の悪魔を撃ち抜いた。悲鳴を上げることなく肉片と化した悪魔は下半身を残して爆散しており、絶命したのは確実だ。

 

「あちゃ〜、貞操を守れなかったすね〜。まあ生きてるだけいい方っすよ」

 

『帰投していいのカ』

 

「いいっすよ。あとは連絡するだけなんで」

 

 女は無線機の周波数を弄り本部へと連絡する。俺はそれを横目に、離陸した飛行場へと戻るのだった。

 

 

 

 公安対魔特異課本部の一室。そこではマキマが書類仕事をしていた。自分の担当している四課と五課の悪魔処理の報告書を手に持ち、彼女は一つ一つ目を通す。

 

「五課は順調に実績を上げてるね。特に最近入ったセンカイ君は優秀だ。私も鼻が高いよ」

 

 気分を良くしたマキマは笑顔を見せ、鼻歌を歌いながら書類仕事を終わらせていく。そして一通り仕事を終わらせると、背中を伸ばしては席を立った。

 

「武器人間、か。悪魔の心臓を持った人間。実験してみてもいいかもしれないね」

 

 未だ公安の中でも影響力の小さいマキマ。しかし徐々に実績が認められてきており、いずれ大きな権力を手にすることは確実だ。もしそうなれば潤沢な資金が手に入る。マキマは小さく笑みを浮かべると、いずれ来たる明るい未来に思いを馳せた。

 

 

 

 何度か出撃し、悪魔を屠った。やることは変わらず機銃掃射で蜂の巣にするだけ。もはや移動時間の方が長く、如何に効率良く血を消費するかを考える始末だ。

 

 すでに時刻は夜八時過ぎ。日はとうの昔に沈んでおり、夜間戦闘は不向きなため今日の業務は終了となった。俺はスーツに着替えると、飛行場に建設されたプレハブ小屋の中で寛ぐ。

 

「センカイ君、夜食べに行きません? 私お金出しますよ」

 

 女が顔を出し飯に誘ってきた。血を大量に消費したので、たらふく食べたい気分ではある。俺は仕方なく、女と共に夜の街へ繰り出すことにした。

 

 

 

 狭い路地にある居酒屋。赤提灯にぼんやりと照らされたこの居酒屋は古臭く、店内は狭かった。しかし女に案内をされて来たので不満の声を上げることはせず、大人しく席につく。

 

 メニュー表に目を通すとレバ刺しがあった。他にも美味そうな肉がいくつもあり、迷いながらも注文して待機することに。

 

「今日はお疲れ様っす。私の奢りなんで遠慮なく食べてください」

 

「後悔しても知らんぞ」

 

「え? そんな食べるんすか?」

 

 料理が運ばれてきたので箸でまとめて掴んでは適当に炙り、大口をあけて放り込んだ。たまらんぜ。俺はひと皿をものの五分で完食すると、次の皿へと手を付ける。そしてこちらも五分とかからず平らげると、その次の皿へと手を付けた。

 

「いい食いっぷりっすね〜。見てるだけでお腹いっぱいになりそうっす」

 

 女はチビチビと酒を飲んでは、肩肘をついてこちらを観察してくる。鬱陶しいことこの上ないが、奢られる立場なので特に不満を吐くこともなく享受した。そうして時間だけが過ぎていき、夜九時となったのだ。

 

 居酒屋を出た俺達は、路地の真ん中で言葉を交わす。

 

「よかったらウチ来ません? 一応家族なわけですし」

 

「断る」

 

「まぁまぁ。あのプレハブ小屋にはシャワー室しかないじゃないっすか。時には湯船に浸かった方が疲れが取れると思うっすよ?」

 

 最近センカイ君が疲れてるのは知ってるんですから。自己管理も仕事のうちっすよ。そう女に言われ、俺は渋々従うことにした。実際朝八時から夜八時まで労働しているので、否が応でも疲労が蓄積するのだ。一度リフレッシュしたいと思っていたのは事実だった。

 

 何度か電車を乗り継ぎ、女の住居へとたどり着いた。そこは公安にほど近い高層マンションで、かなり高い階数に住んでいるようだ。

 

 玄関をくぐり、俺はリビングのソファで寛ぐ。そして女を先に風呂へ行かせると、途中で買った下着と寝間着を用意し勝手ながらにテレビをつけて時間を潰した。

 

「風呂いいっすよ〜」

 

 声がしたので振り向くと、何故か女は全裸であった。頭にタオルを乗せて髪を拭いているが、まず隠す場所があるだろう。

 

「いや〜ん、えっち〜!」

 

「意外と体毛が濃いんだな。少し整えたらどうだ」

 

「うっさいっすねぇ!!」

 

 髪を拭いていたタオルを投げつけられたが華麗に避け、俺は風呂場へ向かうことにした。そこで体を洗うと、肩まで湯船に浸かり体を癒やす。久しぶりに心の底からリラックスができ、俺は案外疲れていたんだなと再認識していた。

 

 風呂から上がったあとはドライヤーで髪を乾かし、歯磨きをする。そして、就寝するため女にベッドを要求すると寝室に案内された。そこにはダブルベッドが一つ。女がこれしかないというので入り口に近い側を占拠し布団を被った。どこからか、そっちが私の方……と声が聞こえたが俺は気にせず目を瞑り、数分と立たずに夢の世界へと旅立つのだった。

 

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