中国のデビルハンター、クァンシと対峙する俺はレゼと協力して事に当たっていた。既に彼女との戦闘は終わりに向かいつつあるが、未だに決着はついていない。というのもクァンシは人間の身でありながら、驚異的な身体能力、及び戦闘能力を有していたからだ。
『こいつ、本当に人間カ……?』
「怪しいね。でも、時期に終わるよ!」
俺にそう返事を返したレゼは爆破を繰り出すと、異次元の機動力をもってしてクァンシを滅多打ちにする。対するクァンシは出来うる限りの反撃をレゼに試みるが、全てが無意味であった。
なにせレゼは爆破を応用して空中さえも足場とするのだ。また、かなり威力を控えているが爆風で吹き飛ばしては姿勢を崩すなど、技術力にも磨きがかかっている。そのため、幾ら驚異的な力を持つクァンシであろうとレゼには歯が立たない様子だった。
このまま押し切れるな。俺がそう思った時、クァンシが予想外の行動を取る。
彼女は右目に付けていた眼帯を捲り上げると、そのまま眼窩へと手を突っ込んだ。そして──鋼鉄の矢を引き抜いたのだ。
それが引き金となったのだろう。クァンシの頭部と腕部が瞬時に異形と化し、もはや見慣れた容姿である武器人間へと変貌していた。
俺は思わず、彼女を二度見してしまった。
『お、お前も武器人間だったのカ……?』
「あはは、やっぱり純粋な人間じゃなかったね?」
俺は新たな武器人間が現れたことに驚いたが、すぐさま気を引き締める。そして武器化したクァンシへ突っ込むと、全力で巨腕を薙ぎ払った。
デパート内を根こそぎ破壊する鋼鉄の腕は、寸分違わずクァンシに衝突する──ことはなかった。何故ならば、彼女が弓矢と化した両腕を掲げて、幾百もの矢を飛ばしてきたからだ。
激しい火花が散りに散り、俺の腕が弾かれる。だが、所詮は矢だ。初めは驚いたが、俺の膂力をもってすれば恐るるに足らず。
俺は幾度と無く矢の嵐に襲われたが、派手に火花を散らしながらも多少仰け反るだけであった。唯一弱点となり得るのがレシプロエンジンだが、当然ながらプロペラが高速回転している。そのため、尽くの矢を叩き落としていた。
『クククッ、効かねぇナァ……?』
「チッ!」
俺は思わず調子に乗った発言をするが、クァンシは舌打ちを返すだけだ。どうやら向こうも相性の良さを認識しているらしい。だが、それは俺達だけではないのだ。
「武器人間相手なら、手加減なんて必要ないよね!」
先程よりも遥かに威力を上げた爆破を繰り出し、レゼがクァンシを吹き飛ばした。それによって大気を揺るがす爆音が鳴り響き、クァンシが一瞬でデパートの外へと飛んでいく。
「お先!」
俺にそう伝えたレゼは、即座に爆破で空を飛び彼女を追いかけていった。
クァンシを追うレゼは、デパートの出入り口を吹き飛ばしながらも彼女へと追いついた。対するクァンシは道路の真ん中で構えを取っており、未だに戦意を滾らせている。
「どうしてまだ戦おうとするの? はっきり言うけど、あなたは私とプロペラヘッドには勝てないよ」
「……彼女達が戦っている。なら、私が戦わない理由はない」
「そう。ならすぐに片付けてあげる!」
レゼは手足から火花を散らすと爆破させる。そして、目にも止まらぬ速さでクァンシへと突貫した。
一瞬で距離を詰めたレゼは、大きく腕を振りかぶっては渾身の力でクァンシを殴りつけた。それによって大爆発が起こり、周囲一帯に爆風が吹き荒ぶ。だが、レゼの猛攻は終わらない。レゼは即座に足を爆破させて彼女の背後へ回ると、打ち上げるような渾身の蹴りを放ったのだ。
またもや大爆発が起こると、クァンシが遥か上空へと打ち上げられていた。大気を切り裂きながらも打ち上がったクァンシは血反吐を吐いており、まともにレゼの蹴りを食らったのが明白だ。
「どこまで行けるか試してみようかなぁ!!」
そんな中、レゼが遥か上空まで飛んできている。そしてクァンシを狙って両腕を掲げると、容赦なく最大火力の爆破を繰り出したのだ。
今までとはケタ違いの大爆発が上空で起こり、それは雲を吹き飛ばすだけに留まらず、地上まで衝撃波を届かせた。レゼは建物を震わせるほどの火力を放っていたが、そんなことは気にもせずにクァンシを探す。そして、まる焦げとなった彼女を見つけたのだ。
すぐに回収をしたレゼだったが、それは頭部しか残されていないクァンシであった。既に彼女は意識がないようで、再生をする様子がない。
「ありゃ、もう終わっちゃったか」
爆破を応用して器用に滞空していたレゼは胸をなでおろすと、プロペラヘッドへ自慢するために地上へと降りていった。
ロンと激闘を繰り広げていた野茂は、はじめの場所よりも大きく移動をしていた。そこで幾度となく彼女と打ち合い、互いに死力を尽くしていた。
「熱いねぇ! 俺ァお前の事が気に入っちまったよ!」
「私はお前が嫌い!」
「ハハッ! もう振られちまったか!」
野茂は余裕のある笑みを浮かべながらも、全力で刀を振るいロンを着実に追い詰めていた。やがて逃げ場のない場所へ彼女を追いやると、最後の警告をする。
「奥の手があるのは分かってんぜ? だけどよ、もしそれをするんなら──お前を斬らなきゃならねぇ。諦めて、お縄についてくんねぇか?」
「嫌。私はクァンシより命令を受けている」
「……そうか」
一度目を瞑った野茂は、覚悟を決めた表情で刀を構えた。そして、いざ彼女を斬ろうとしたその時──レゼとプロペラヘッドが現れたのだ。
「お〜い、君の大好きなクァンシは死んだよ〜」
『大人しく投降しロ。そうすれば命だけは助けてやル』
レゼがクァンシの生首を掲げてやってきていた。その背後には、異形となったプロペラヘッドが窮屈そうについてきている。野茂は二人が決着をつけたことを察すると、刀を納めてロンへ話し掛けた。
「もう戦う理由はねぇはずだ。間違っても、無駄に命を散らそうなんて考えんじゃねぇぞ」
「そんな、クァンシ……」
主人であるクァンシが敗北したのを察したのだろう。ロンは呆然とした表情を浮かべると、やがて拳を下ろすのだった。
時は少し遡り、デンジ一行がクァンシと初遭遇した頃。とある廃ビル内では、マキマが徘徊をしていた。
「そろそろ始まる頃合いかな」
マキマはそう言いながら、周囲に散らばる人形達の残骸を見渡す。全てとは言わないが、彼女が半数以上を片付けていた。
「私はもう少し人形を片付けます。ビームはデンジ君を助けにいって」
「よっしゃあ!! 分かりました!」
地面から浮き出たビームが、マキマへ元気良く返事を返した。そしてすぐさま潜っていく。
「それと、キミ達には仕事があるよ」
マキマは背後へ振り返ると、自身に付き従う──二人の武器人間へと話し掛けた。
「この人形達を量産してるのは、サンタクロース本人じゃない。正確にはサンタクロースの作った特別な人形が、人形達を量産しているの。言うなれば上位人形かな。キミ達には、その上位人形を処理して欲しい」
マキマはそう二人に伝えると、目標である上位人形の顔写真をそれぞれに渡す。
「目標は見ての通り老人で、一見すると普通の人間なんだよね。だけど、間違いなく人形だと裏が取れてる。恐らく戦闘力は低いけど、油断はしないように」
二人の武器人間はマキマへ頷くと、瞬く間にいなくなった。
マキマは彼らを見送り、笑みを浮かべる。そして、小さく呟いたのだ。
──よろしくね。チャクラム、サムライソード。