コスモを追いかけ回すデンジ達は、彼女からの猛反撃によって全裸となっていた。二人は下半身を両断された際に下の衣服を失ったが、健闘虚しく上の衣服まで失ってしまっていたのだ。
「だあクソッ!! 流石にフルチンはキツイぜ!!」
「俺もだぜデンジィ!!」
下着が無いせいで二人は走り辛く、幾許か速度が落ちる。そのため、予想以上に素早いコスモへと追いつけない。
デンジ達がどうするべきかと思案した時、地面からサメの背びれが現れた。それはデンジ達を背に乗せながらも浮かび上がると、やがてサメの悪魔となったビームが姿を現したのだ。
「チェンソー様!! ただいまビーム参上しましたあああ!!」
「っビーム!! お前久しぶりだな!!」
「うおお!? なんだこのサメ!!」
二人が驚く中、ビームが嬉しげに声を上げるとコスモを目指して泳ぎ出す。それによってぐんぐんと距離が縮まっていき、彼らは間もなくしてコスモへと辿り着いていた。
「ハロウィン!?」
「ギャハハ! もう逃さねえぜ〜!!」
「散々切り飛ばしやがって! 覚悟しろよレーザー女!!」
デンジ達がいざコスモへ飛びかかろうとした瞬間──彼女の首がくるりと回転しながらレーザー光線を薙ぎ払ってきた。そのため二人は高く跳躍をしてレーザーを回避し、それと同時にビームが地面へと潜る。そして──。
ビームに高く突き上げられたコスモを、デンジ達は捕らえたのだ。
デンジとソードはコスモの頭を掴み合うと、レーザー光線を食らわないように注意を払った。やがて、彼女に勝利したことを確信した二人は破顔一笑をする。
「しゃあああ!! 捕まえたぜッ!!!」
「俺達の勝利だあああ!!!」
「勝利! 勝利! 勝利! いえ〜い!!」
デンジ、ソード、そしてビームはその場で踊り出し、喜びを表現する。だがその時、コスモが暴れだしたのだ。
「ハロウィン!? ハロウィ〜ン!!?」
「あ、こら暴れんな!」
「デンジ、もっと抑えろ!」
二人はコスモの頭を掴んでいるため、自分達の身体を押し付けて彼女を抑えようとする。しかし、彼らが身体を押し付ければ押し付けるほどコスモは暴れていた。
「ハロウィ〜〜ン!!?」
「だあもう! 暴れんなって!」
「くそ、そこのビームだか手伝ってくれ!」
「分かりましたぁ!」
ここで水着しか着ていないビームが参戦をする。それによって男三人でコスモを押さえつけることになるのだが、彼女は決して抵抗を止めない。むしろ激しくなる始末だ。
「ハロウィ〜〜〜ン!!?」
「クソッ、どうすれば……!!」
ただひたすらに逃れようとコスモが暴れ出す。デンジ達がそのことに苦慮をしていると──一人の男が現れた。彼は堂々とした歩みでやってきており、デンジ達はすぐに気付く。
「お前は──プロペラ頭!!」
「兄貴!──なんで裸なんすか!?」
「お前に言われたくないわ」
やってきたのは全裸のプロペラヘッドであった。デンジ達が全裸のワケを聞くと、武器化に伴いスーツを失ったとのこと。また、今は血の節約のために武器化を解除しているらしい。
「そういえば、どっかに行ってたパワーを見つけたぞ。精肉コーナーで肉食ってたな」
「パワー……! 何してんだアイツはよぉ!」
「それより兄貴、手伝ってください!!」
「……あと少しでフミコが来る。それまでは耐えろ」
コスモへ憐憫の眼差しを向けていたプロペラヘッドが、体を翻して尻を向けてきた。恐らく彼女へ局部を見せないように配慮しているのだろう。しかし、尻もまた見苦しいことに変わりはない。
その後、フミコがやってきたため無事にコスモは連行されていく。なお、デンジ達へねっとりとした視線を向けていたフミコは、プロペラヘッドに頭をはたかれていた。
とあるコーヒーチェーン店にて、二人の男女が佇んでいた。彼らの見下ろす先には死した老人が転がっており、閑散とした店内も相まって怪しい雰囲気であった。
「弱いなコイツ」
「所詮は人形だからでしょ。さっさと報告入れるよ」
「だな──アカネ」
「その、名前で呼ぶのやめてくんない?」
「いいだろ別に?」
「……まあ、いいんだけどさ」
かつて公安襲撃を企てた沢渡アカネと、サムライソードがそこにはいた。彼らはマキマに捕らえられた後、恭順を示す代わりに自由を与えられたのだ。しかしアカネは武器人間へと改造され、サムライソードは因縁の相手であるスピアとムチコに日々しごかれていた。
二人はマキマへ報告を入れる。すると、新たに命令が下された。内容は特異一課の岸辺を監視すること。どうやら、彼は公安の不穏分子となり得る存在だとマキマは見ているらしい。もしも決定的な証拠を見つけたら報告するようにと彼女は告げた。
「じゃ、いくとするか」
「そうだね」
無線を終わらせた二人は武器化の引き金を引く。それによって刀の武器人間とチャクラムこと戦輪の武器人間へと変身した二人は、律儀にドアから出ていった。
デンジ一行のいるデパートの外では、特異一課所属の岸辺と民間のデビルハンターである吉田ヒロフミが仲良く隣り合っていた。彼らは大量の人形達を処理している最中だったが、唐突に人形達が引いていく。
「なんだ、作戦変更か?」
「さあどうでしょうね。とりあえず休めそうでよかったです」
二人はヒロフミの呼び出した巨大な蛸足に腰掛け、休息を取り始める。なお、彼らの周囲には同じような蛸足が渦巻いており、防備に抜かりはないようだった。
その時、ヒロフミが口を開いた。
「岸辺さんは、何故デンジ君が狙われてるか知ってます?」
「……本当にこの会話はマキマに聞かれてないんだろうな」
「大丈夫です、蛸に確認してもらいました。周りにネズミや鳥とかはいない」
蛸足を優しく撫でたヒロフミが、岸辺へ答えを返す。
「マキマは下等生物の耳を借りる……でしょ?」
「お前はあまり首を突っ込むなよ?」
岸辺がそう言うとヒロフミは小さく笑い、ただ興味があるだけだと言葉を返した。そのため岸辺は手の掛かる弟子だと呟くと、仕方なさそうに話し出す。
「マキマに実際に聞いたことがある。デンジの心臓は特別なのかと。そしたらこう返されたよ、“ただ特別なだけ”ってな」
「へえ? 特別ではあるんですね」
「そうだ。恐らくチェンソーの悪魔は特別な存在なんだろう。だが、マキマはそれほど興味がない。もしかしたら、ただ手元に置いておきたいだけなのかもな」
岸辺は少し躊躇ったが、続きを話すことにした。
「……俺は地獄の記憶を持ってる魔人達に、チェンソーの悪魔について聞いてみたことがある」
「すると?」
「揃いも揃ってマキマに口封じをされていた。誰もそのことを話そうとしなかったんだ」
「はは、いよいよきな臭くなってきましたね」
「俺はどう動くべきか悩んでる。マキマは信用できない女だ。しかし……」
「マキマには私兵集団の特異五課がいる。彼らは不死身らしいですし、間違いなく岸辺さんが負けますよ」
分かってる。岸辺はそう言葉を返すと、腕を組み難しい表情で考え始めた。だがその時、ヒロフミが妙案とばかりに口を開いたのだ。
「俺がプロペラヘッドに聞いてみましょうか? マキマは何を企んでるのかって」
岸辺はちらりと視線を向ける。そして、ヒロフミへ忠告するように言葉を返した。
──止めておけ。あの男が最も、マキマに忠実だ。
オリ要素
・沢渡アカネ再登場&武器人間化
・マキマの思想???