転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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!重大なネタバレ注意!


32作戦終了の後、語られる真実

 

 

 

 デパートの屋上にて、マキマは一人の女性と対峙していた。彼女と相対するのは影のある美女であり、それは特異五課のメンバーよりサンタクロースと仮定された女性であった。

 

「はじめまして、サンタクロース」

 

「……こんにちは、マキマ」

 

 マキマが気楽な挨拶をすれば、サンタは悔しげに顔を歪めながらも返答をする。そのことが面白かったのだろう。マキマは微笑みながらも彼女へ歩み寄った。

 

「どうやら、私の部下達に散々な目に合わされたようだね」

 

「お陰様で、私の計画が全て台無しですよ……!」

 

 青筋を浮かべたサンタがマキマへ射殺すような目を向ける。しかし、マキマは愉快そうに眉を上げると彼女を冷笑したのだ。

 

「フフフ。人形の力はそれなりだったけど、サンタクロースは期待外れだったかな。もうキミに用はないよ」

 

「貴女の好きにさせるわけ──」

 

「“死体が喋っている”」

 

 マキマがそう呟いた瞬間──サンタクロースの首が飛び、彼女は死亡した。その場に残されたのは、僅かながらに頬を濡らす女性の死体だけだ。

 

 血溜まりが徐々に広がっていく中、マキマは彼女へ近づくと首を胴体に戻し、話し掛ける。

 

「私に、すべてを捧げると言いなさい」

 

「……貴女に、全てを捧げます」

 

 すると虚ろな目をしたサンタが独りでに喋り出し、マキマの命令に従っていた。そのことにマキマは満足をすると、彼女へ立つように命令を出して歩き出す。

 

「さて、人形の力は手に入れたも同然。あとは本命の──銃の悪魔かな」

 

 マキマは着々と理想の世界が近づいている事に、微笑みを湛えるのだった。

 

 

 

 チェンソーマン防衛作戦は幕を閉じた。デンジを狙う刺客たるクァンシ率いる魔人達と、サンタクロースが捕縛、ないしは死亡したためだ。確かアメリカの刺客もいた気がするが、パワーに轢き殺されたことしか覚えていない。

 

 公安対魔特異課本部の一室で、俺は特異五課の面々と共に整列をしていた。そして毎度のことながら、マキマさんの言葉を待つ。

 

「皆、お疲れ様。無事にデンジ君を守ることができたね」

 

 そう話したマキマさんは、いつも以上に笑顔だった。そのため思わず見惚れてしまうが、すぐさま表情を引き締める。

 

「クァンシと魔人四人は捕縛、サンタクロースは死亡。実に素晴らしい成果だよ。これで心置きなく、銃の悪魔討伐遠征にいけるね」

 

 マキマさんは席を立つと、俺達特異五課の前を順番に回ってきた。どうやら一人一人に声を掛け、労をねぎらっているようだ。彼女は今バルエムに声を掛けている最中で、魔人の一人を捕縛したことを賞賛している。

 

 羨ましい。俺はこれと言って戦果を上げられなかった。一応レゼと協力してクァンシを捕縛したが、彼女の力が大きいため目立った戦績とはいえない。しいて言うなら人形達を粉砕したことだが、レゼやバルエム、ソードのようにネームドを相手にして勝利した訳ではない。勿論、護衛を遂行したスピアやムチコ、裏方に徹したフミコは賞賛されるべきだが、俺はもっと単純でいて明快な戦果が欲しかった。

 

 その時、マキマさんが俺の前にやってくる。

 

「プロペラヘッドもありがとう。キミが人形達を処理してくれたおかげで、作戦が滞りなく進んだよ。それにクァンシを止めてくれた。もしキミがいなかったら、彼女によって犠牲者が出ていたかもしれないね」

 

「マキマさん、ありがとうございます。ですが、俺はこの結果に満足していません。必ずやより多くの成果を出して、マキマさんの役に立ってみせます!」

 

「フフ──センカイ君は本当に私が好きだね? それほど力は使ってないんだけどな」

 

「俺は尊敬してるんです。マキマさんはただひたすらに、理想の為に奔走している。そんな貴方の姿に俺は心惹かれました。是非、これからもこき使ってください」

 

「本当にありがとう。キミのためにも、私も頑張らなくちゃね」

 

 マキマさんが俺を一心に見つめて、微笑みかけてくる。俺は絶対に表情を緩めないように気合を入れた。マキマさんにはカッコつけたいからだ。

 

 その後、マキマさんによる労い会は終わり、解散となった。しかし、俺だけ残るように言われる。なので俺はその場で待機をし、他のメンバーが退出するのを待った。

 

 

 

 やがて俺とマキマさんの二人きりとなる。なお、マキマさんは執務机に腰掛けており、俺と対面するようにいた。リラックスしているところ悪いのだが、随分とスタイルがいいので目のやり場に困ってしまう。

 

「残ってもらってごめんね」

 

「いえ、構いません。それで俺にどういったご用件でしょうか?」

 

 俺の質問に対し、マキマさんはこう答えた。

 

「一番私に尽くしてくれるセンカイ君には、私の事を話しておこうかなって。あと、銃の悪魔についてもね」

 

 そうして、彼女は自身のことを語り出した。

 

 

 

「センカイ君、私は人間じゃないの。実は悪魔なんだよ。その名も──“支配の悪魔”。自身よりも程度の低いと認識した相手を支配できる力を持ってるんだ」

 

「マキマさんが、悪魔……? そうですか」

 

 マキマさんから齎されたのは、衝撃的な事実だった。しかし、正直なところ俺はそんなに驚かなかったのだ。

 

「あんまり動揺しないね?」

 

「まあ、悪魔と言われても色々いますから。天使の悪魔はかなり人間味がありますし、パワーは魔人ではありますが本質的には悪魔です。確かに驚きはしましたが、マキマさんが悪魔だろうと人間だろうと俺は変わりません」

 

「フフフ、嬉しいことを言ってくれるね。でも、私は力を使ってキミを支配している。そのことは気にしないのかな?」

 

 マキマさんはそう言って、俺を見定めるように笑いかけてくる。だが、俺は素直に思いの丈を話した。

 

「俺はマキマさんに劣る存在故に支配されたんでしょう。それに、例え支配されていなくとも、貴方の姿を日々見ていれば自ずと支配されに行ったような気がします」

 

「フフ、センカイ君はいささか奴隷根性が強いね。もしかして、誰かに奉仕することに喜びを感じるタイプなのかな?」

 

「……否定はしません」

 

 俺は自由が好きだが、それと同時に誰かに尽くしたいとも思っている。なんとも二律背反をした思考だが、矛盾を抱えてこその人間ではないだろうか。

 

 そんな時、マキマさんが近寄ってきては俺の胸に手を乗せてきた。それにより彼女の顔が間近に迫り、俺は普通に動揺してしまう。

 

「なら、私の目的も話しておこうかな。センカイ君は、私が何を成そうとしているか知ってる?」

 

「“より良い世界を創ること”……ですよね?」

 

「そう、その通り。そして、私の思うより良い世界とは──私が全てを支配すること。人も、悪魔も、現世も、地獄も。何もかもを私が支配して管理することこそが、より良い世界なのだと信じてる。……センカイ君は、どう思う?」

 

「──いいんじゃないでしょうか。世の中には馬鹿な政治家や無能な国民が多くいます。それらを一切合切支配してしまえば、それこそより良い世界が訪れるのでは?」

 

 これは俺の持論だが──圧倒的な支配者がいてこそ、平和が訪れると思っている。例えそれが悪魔だろうと、恒久的な平和が訪れるのなら誰が支配しようと構わないのではないだろうか?

 

「──フフフ、キミは特別だよ。私に賛同してくれるなんてね」

 

「そうでしょうか? 俺以外にも賛同してくれる人は大勢いると思いますよ。フミコなんかも恐らくですが、賛同するでしょう」

 

「つくづく、私は部下に恵まれてると実感するよ。でもね、センカイ君。各国はそう思っていない。私を恐れ、敵視しているの」

 

「彼らは地位を失いたくないだけですよ。誰一人として国民のことなんか考えていない。自分のことしか見ていないんです」

 

 俺がそう言うと、マキマさんは俺の胸元を指でなぞり、余韻を残すように離れていった。正直助かった。胸のトキメキが止まらないから。

 

「センカイ君が、私の味方でいてくれて本当に良かった」

 

 マキマさんが嬉しげに微笑む。俺はまたもやときめくが、その時。彼女が肝の冷える発言をしたのだ。

 

「もし拒絶されてたら──人形にするところだったよ」

 

「えっ?」

 

「フフ、冗談」

 

「じょ、冗談ですかぁ」

 

 時折思うんだが、マキマさんの冗談って笑えないんだよな。俺はそんな事を考えた。

 

 

 

 少し休憩を挟んだ後、俺はマキマさんに銃の悪魔討伐遠征について説明をされていた。

 

 そもそも銃の悪魔とは、13年前に出現した悪魔である。各国が銃を大量生産しては殺し合いをさせるような現状で、多くの人間から銃が恐れられていた。その結果、銃の悪魔が強大な存在になり過ぎてしまい、自身の力を制御出来ずに暴走。世界中で暴れ回ったのだ。

 

 総死者数は120万弱。大陸に上陸したのは約五分という短い時間にも関わらず、銃の悪魔は甚大な被害を齎した。それにより悪魔そのものが恐れられて悪魔被害が増えたのだが、今言いたいのはそのことではない。

 

 結局のところ、銃の悪魔による大量虐殺は人の手によって引き起こされた災害だったのだ。言わば人災。各国の首脳陣がもう少し賢ければ、防げたとしか言いようがない。だが、無理な話だ。人類は愚かなのだから。

 

 話が逸れたが、マキマさんによると銃の悪魔は──既に倒されているらしい。俺は何故銃の悪魔が一切姿を見せないのかが分からなかったが、倒されているのなら納得だ。

 

「それなら、何故討伐遠征を?」

 

 俺の質問に対し、マキマさんが真実を告げた。

 

「今、銃の悪魔の本体はアメリカが20%、ソ連が28%、中国が11%、その他の国が4%を所持していて、残りの37%が肉片として世界中あちこちの悪魔が持っているの」

 

 この言葉を聞き、俺はもしやと思い口を開く。

 

「銃の悪魔は、抑止力として機能している……?」

 

「その通り。つまり銃の悪魔討伐遠征とは、他国から抑止力を奪うことに他ならない」

 

「流石に、国を相手取るのは厳しいのでは?」

 

 無礼を承知で質問してみると、マキマさんは面白そうに笑う。そして、続きを話し出したのだ。

 

「これはブラフなんだよ。あわよくば、アメリカかソ連が銃の悪魔をけしかけて来ないかなと思ったんだけど……アメリカが動き出しそうなんだよね。恐らく銃の悪魔と契約を交わして、私を殺しに来る」

 

「それを打ち倒すということですか。そしてマキマさんは銃の悪魔の20%を手に入れると」

 

「話が早くて助かるよ。でね、肝心なことなんだけど──銃の悪魔は、私一人でケリをつける」

 

「ひ、一人ですか? 俺もお供しますよ。多少の肉壁にならなれます」

 

 マキマさんがフィジカルモンスター過ぎる。流石に五分で120万弱の人間を虐殺した悪魔に勝てるのかと疑ってしまった。

 

「私は悪魔だけど、悪魔と契約してるし支配もしてるからね。それなりに強いよ?」

 

「そ、そうですか」

 

「せっかくだし、銃の悪魔と戦う際はセンカイ君を連れてってあげる。きっと面白いものが見れるから」

 

 マキマさんはそう言うと、悪戯を思いついたような顔をして笑いかけてきた。嫌な予感がするが断る理由もない。そのため俺は了承をする。

 

「分かりました。ですが、もし危機に陥ったら遠慮なく俺を肉壁にしてくださいね」

 

「フフ、大丈夫だよ。勝算はあるもの」

 

 マキマさんは最後に、討伐遠征まで時間はあるから、通常業務の方をよろしくねと俺に伝えてきた。

 




 オリ要素
・マキマの思想、全支配
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