転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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34親睦会

 

 

 

 特異五課専用の飛行場にて、デンジはソード共に戦闘訓練に励んでいた。これも全てはレゼと肩を並べたいが為である。というのも、デンジは過保護気味なレゼに自分も頼れる存在なのだと示したいのだ。

 

「ほらほらデンジィ! その程度かぁ!?」

 

「チッ! やるなあソード!!」

 

 巧みな剣捌きでじわじわと追い詰めてくるソード。そんな彼にデンジは防戦一方であったが、手足から変幻自在にチェンソーを生やしては反撃をする。しかし、ソードもまた腹部や膝から長剣を生やし、デンジの反撃を物ともせずに攻め込んできたのだ。

 

 やがてデンジは重たい一撃を貰ってしまい、膝をついてしまった。その隙にソードに長剣を突き付けられ、二人の勝敗が決まる。

 

「ハァ、また負けちまった」

 

「気にすんな、ってのは無理かも知れねえけどよ。お前は間違いなく強くなってるぜ? それに俺にだってプライドがあんだ。そう簡単には負けられねえよ!」

 

「……そうだな!」

 

 武器化を解除したソードに手を差し伸べられたデンジは、彼と同様に武器化を解除して彼の手を取った。そして硬く握手を交わしながらも起き上がると、その際にソードと共に腹が鳴る。

 

「腹、減っちまったな〜」

 

「今は丁度昼ぐらいだろ? メシ食いに行くか!」

 

「おう!」

 

 デンジ達がいざ昼食へ行こうとしたその時、特異五課の男メンバーが勢揃いでこちらへやってきていることに気付いた。そのためソードが彼らに用を聞くと、代表としてバルエムが声を上げたのだ。

 

「デンジ君、ソード君。よかったら一緒に昼食を食べに行かないかな? せっかく面子が揃ってることだしねえ」

 

 そう言ってバルエムは後ろへ振り向く。そこにはプロペラヘッド、スピア、サムライソードがいた。彼らから挨拶を貰ったデンジは手を上げて返しながらも、バルエムの提案に乗ることにしたのだ。

 

「よっしゃあ! バルエムのおっさん、俺寿司食いてぇ!」

 

「ははは、いいよぉ! でもそうだなあ〜、回転寿司でもいいかな? 今日の夜はパーティーをする予定だしさ」

 

「いいぜ!!」

 

 デンジは寿司を食べられることに歓喜をしたが、それ以上にパーティーに心が踊る。というのもバルエムが語ったパーティーとは、今日の夜に喫茶店、二道を貸し切って開催されるバルエム考案の親睦会なのだ。 

 

 そこには特異五課のメンバーは勿論、マキマ、岸辺、野茂、デンジ、早川アキ、姫野、天使、パワー、ビーム、荒井ヒロカズ、東山コベニ、そして吉田ヒロフミが招待されている。総勢二十二名にもなる大所帯であり、恐らくここに四人の魔人が加わるだろう。デンジは間違いなくどんちゃん騒ぎになると予想しており、早起きをする程度には楽しみに待っていた。

 

「くう〜! 早く寿司を食いに行こうぜ! パーティーに遅れちまう!!」

 

「ははは! 慌てなくても時間はたっぷりあるさ!」

 

 朗らかに笑うバルエムにつられてデンジは笑うと、他の面子と連れ立って昼食を食べにいった。

 

 

 

 公安対魔特異一課にある岸辺の執務室。そこで岸辺はとある人物と会っていた。

 

 右目に眼帯を付け、公安のスーツを身に纏った一人の女性。彼女は四人の魔人を引き連れており、岸辺に案内をされたソファにどっかりと座っていた。

 

「久しぶりだな。──クァンシ」

 

「こんなところで会うなんてね」

 

 岸辺は元中国のデビルハンター、現公安対魔特異五課であるクァンシへと話しかける。

 

「マキマに捕まったか。大方魔人達を人質にって感じか?」

 

「女達が死ななければ、なんだっていい」

 

 素っ気ない返事を返される岸辺だったが、彼は気にしない。寧ろこのやり取りに懐かしさを覚えていたのだ。

 

「……バディを組んでいた頃を思い出すな。あの時のお前は、よく俺を殴ってた」

 

「何度も告白してくるからだろ」

 

「知ってるよ」

 

 岸辺は小さく笑うと、昔を思い出すようにぼんやりと天井を見上げた。

 

 岸辺が若かりし頃、彼はクァンシと九年ほどバディを組んでいたのだ。当時の彼はイケイケであり、クァンシに一目惚れしたため彼女へ何度もアタックを仕掛けていた。しかし、クァンシには歯牙にもかけられず、岸辺は振られまくった。その際によく、無理、嫌だと呟かれながらもクァンシに殴られていたのだ。

 

 岸辺はあの頃は若かったなと思いつつも、今も尚彼女に好意を寄せていることに気付く。そのことに嬉しいやら悲しいやらと感情に振り回されるが、すぐさま気を取り直した。

 

「それで俺になんの用だ」

 

「マキマからお前とバディを組むように言われた」

 

「……なるほど。監視ってわけか」

 

「お前が何を考えてるかは知らないし、興味もない。だが、この世でハッピーに生きるコツは無知で馬鹿のまま生きる事だ」

 

 岸辺はクァンシに見つめられると、最後にこう呟かれた。

 

「岸辺──私に、お前を殺させるな」

 

 彼はその言葉を聞き、大きくため息をつく。そして背もたれに深くもたれ掛かると、重荷を下ろすかのように彼女へ言葉を返すのだった。

 

「……ああ、分かったよ。惚れた女の頼みだ。素直に聞いてやる」

 

 

 

 ところで。岸辺はそう話を切り出すと、クァンシの背後からじっと見つめてくる魔人を指差した。

 

「そいつはなんで俺を警戒してるんだ」

 

「ああ、コスモか。私も分からないんだが……いつの間にか、男性恐怖症になってたんだ」

 

「なんだそりゃ」

 

「ハロウィン……!」

 

 ソファの背もたれから頭を覗かせるコスモに、岸辺はじっと見つめられる。彼はそのことに若干の居心地の悪さを覚えるのだった。

 

 

 

 午後六時を上回り、空が段々と薄暗くなってきた頃。俺は喫茶店二道に来店し、親睦会の開始を待っていた。

 

 既にメンバーは揃っているようで、各々が仲の良いグルーブを形成している。デンジ、ソード、レゼ、パワー、ビーム、吉田ヒロフミといった若者グループ。野茂、早川アキ、姫野、天使、荒井ヒロカズ、東山コベニといった特異四課が主なグループ。岸辺、クァンシ、クァンシの魔人達といった年長者グループ。そして、残りの俺達特異五課とマキマさんのグループだ。

 

 その時、司会役であるバルエムが声を張り上げた。

 

「皆、集まってくれてありがとう! 今日は無礼講だから遠慮せずに騒いでくれ! じゃ、グラスを持ってくれるかな!」

 

 その言葉を聞き、俺はグラスを掲げてバルエムの音頭を待つ。

 

「マキマさんの今後の活躍と、公安のますますの発展を祈念して──乾杯!!」

 

『乾杯!!』

 

 そして始まるのは飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。デンジとソードが始めから飛ばしており、それにつられて他の面々も騒ぎ始めた。勿論、それは俺も例外ではない。

 

「センカイ君、カンパーイ!」

 

「乾杯! しゃあ今日は騒ぐぜ!!」

 

「センカイ君めっちゃテンション高いじゃん!?」

 

 俺はフミコに雑な返事を返しながらも、ジョッキを傾けて一気飲みをした。そして、テーブルに並べられた数々のメシに食らいつく。

 

「美味え、フミコも食え!」

 

「えええ? センカイ君、どうしたんすか?」

 

「時には馬鹿になって暴れたいんだよ。そもそもこっちが素だわボケ!」

 

「口わる!?」

 

 俺はピザを一切れ掴むと、ごちゃごちゃうるさいフミコの口へ突っ込んだ。無論、タバスコを大量に掛けて。そのため始めは大人しく食べていたフミコだったが、やがて苦しそうな表情に変わっていた。

 

「ちょっ、辛いんすけど」

 

「うるせえな、だったら俺のモンだ」

 

 フミコから食いかけのピザを奪い、ぺろりと平らげる。やはりピザはマルゲリータに限るな。もう一切れ食べよう。

 

 俺が黙々とピザだけを消費していると、隣にマキマさんがやってきた。

 

「センカイ君、随分と楽しそうだね?」

 

「──勿論ですよ、久しぶりに宴会なんてしますからね。こう見えても、結構楽しみにしてたんですよ?」

 

「猫被り過ぎでしょ!?」

 

「お前は黙ってろ!!」

 

「フフ、なら私も羽目をはずしちゃおうかな」

 

 そう言ったマキマさんは、手に持っていたジョッキを傾けると一気飲みをした。そしてすぐに中身が空となる。俺は瞬く間に無くなったビールに思わず驚き、心なしか満足げなマキマさんをガン見してしまった。マキマさん、めっちゃ飲むじゃないですか。

 

「センカイ君、私と飲み勝負しない? 勝ったら一つ、何でも言うことを聞いてあげる」

 

「何でも、ですか!?」

 

 衝撃的なことを聞き、俺は思わずたまげる。マキマさんの言った何でも聞くというのは、つまり何を命令してもいいということだ。

 

「よぉし。フミコ、ジョッキを用意しろ! この勝負、本気で取りに行く!!」

 

「わ、分かりましたぁ!」

 

 マキマさん、いくら貴方が悪魔だろうと俺は武器人間だ。この勝負、貰った……!!

 

 

 

 飲み勝負を始めてから数分後、マキマは今にも倒れそうなセンカイを見ていた。彼の周りには大量のジョッキが並べられており、すでに二桁は上回っている。しかし、それはマキマも同様であったのだ。

 

「ま、参りました……」

 

「私の勝ちだね」

 

 今にも吐きそうなセンカイが敗北宣言をすると、すぐさまトイレへ駆け込んでいく。間違いなく吐き戻すのだろう。マキマは表情を崩すことなくもう一杯飲み干し、周りを見渡した。

 

 テーブル席ではデンジとソードが競うように食べており、彼らを応援するようにレゼとビームが声援を送る。また、パワーと吉田ヒロフミは意外と相性がいいのか、仲良く食事を楽しんでいた。

 

 カウンター席に目を移すと、早川アキを囲うように天使と姫野がいた。彼女達に詰め寄られるアキは困った様子で野茂へ助けを呼んでおり、その彼らのすぐそばでは荒井ヒロカズとコベニが楽しげに会話をしていた。

 

 少し離れたカウンター席では、岸辺とクァンシが静かに飲んでいた。時折クァンシが魔人達の世話をしており、彼女達のまとめ役であるピンツイが嬉しそうに声を上げる。

 

 そして、マキマにほど近いテーブル席では、バルエム、スピア、ムチコが会話を楽しみながらも食事を取っていた。また、彼らに隣接する席ではサムライソードとアカネが黙々と食事を取っているようだ。

 

 マキマはこれらの光景を見て、今までの努力が実を結んでいることを実感する。彼女は時に日本国内を飛び回り、時に海外へ出張して優秀な人材を集めていたのだ。元々はゼロからのスタートだった特異五課も、今ではメンバーが十名となりそれなりの大所帯となった。

 

 加えて、特異四課も同様だ。早川アキを始めとした優秀な人材が増え、荒井ヒロカズや東山コベニといった次世代のデビルハンター達も育ってきている。それに先ほどマキマが勧誘をした吉田ヒロフミも、公安に入ることを好意的に受け止めてくれた。間違いなく特異課の未来は明るいだろう。

 

「少しずつではあるけれど、私の夢は現実となっていく。これも、皆のおかげか……」

 

 他者との対等な関係など必要ない。マキマは今でもそう思っている。しかし、対等に話し合えること自体は、存外悪くないものだと彼女は思った。

 

 

 

 親睦会も終わり、各々が自宅に帰っていく。マキマは彼らを見送ろうと、最後まで残ることにした。

 

「皆、じゃあな! また遊ぼうぜ!」

 

「今日はありがとうございました!」

 

「ワシのためにパーティーを開いたこと、褒めてやるぞ!」

 

 デンジ、アキ、パワーが手を振りながらも去っていく。

 

「今日はマジで楽しかったぜ。本当にありがとな!」

 

「はあ、僕も人間君と住みたいなあ」

 

「その意見には激しく同意だよ……!」

 

「皆さん! 本日はありがとうございました!!」

 

「……あ、あの。楽しかったです」

 

「チェンソー様! また会いましょおお!!」

 

 次に野茂、天使、姫野、荒井ヒロカズ、東山コベニ、ビームが去っていった。

 

「俺も呼んでくれてありがとう。楽しかったよ」

 

「クァンシ、また飲まないか?」

 

「……仕方ないな」

 

 その次に吉田ヒロフミ、岸辺が去っていく。そして、最後に。

 

「マキマさん、俺達は先に帰らせて貰うよ。皆、また会おうねえ!」

 

「お疲れ様でぇす!」

 

「ムチコちゃん、今夜どうです?」

 

「仕方ねぇな。少しだけだぞ?」

 

「明日から、もっと仕事頑張っちゃお!」

 

「アカネ、行くぞ」

 

「ああ」

 

「お嬢さん達、さあ帰るよ」

 

 特異五課の面々と魔人達が去っていったのだ。しかし、マキマはふと、あと二人いることに気付いた。

 

「うぅ……気持ち悪い……」

 

「ウチに帰ったら、私がしっぽりと看病してあげるっすよ〜? うぇへへへへ!!」

 

 かなり弱った様子のセンカイと、そんな彼を支えるフミコが遅れてやってきては去っていく。マキマは全員を見送った事を確認すると、今日は楽しかったなと小さく呟きながらも、自身もまた帰宅するのだった。

 




第一部特異五課最終メンバー

プロペラヘッド(プロペラ)
フミコ(ナイフこと短剣)
バルエム(火炎放射器)
ソード(長剣)
スピア(槍)
ムチコ(鞭)
レゼ(爆弾)
サムライソード(刀)
アカネ(チャクラムこと戦輪)
クァンシ(弓矢)
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