軍艦より放たれた砲弾は、全弾が銃の悪魔へと命中し体の大部分を損傷させていた。しかし、未だに銃の悪魔は健在であったのだ。そのためマキマは次弾装填を急がせ、新たに軍艦を召喚することにする。
「センカイ君、よく見ておくといいよ」
「まだあるんですかぁ!?」
マキマは恐れ慄くセンカイへ笑いかけると、一番彼に見せたかった軍艦に心が踊った。
巨大な鋼鉄の門が顕現し、開門をする。やがて、一隻の軍艦──ではなく一機の航空機が姿を現した。それは暗緑色をした機体であり、レシプロエンジンを搭載したプロペラ機だ。その名は、流星。
センカイがまたもやあんぐりと口を開けるが、次の瞬間には白目をむく事となった。なんと、流星が編隊を組んで門をくぐってきたのだ。続けて、その後を追うように軍艦が姿を現す。
海を割り、流麗な艦首が現れたかと思えば──広大な飛行甲板が姿を見せた。そこには烈風、流星、彩雲といった航空機がエンジンを吹かして待機している。また、遂に全貌を顕にした威風堂々たる巨大な船体は、見紛うことなき──悪魔空母であったのだ。
「航空母艦、大鳳。流麗な艦首に、装甲を張った飛行甲板。当時の海軍が威信をかけて作り上げた、重装甲空母だよ」
「えええええ!?」
「フフフ。どうやら、軍艦の悪魔はプロペラの悪魔ではなくて、しっかりとセンカイ君を見ているみたい。わざわざ、流星を搭載しているなんてね?」
「ふあああああ!!?」
もはや人語を解せなくなったセンカイは頭がイカれてしまったのか、マキマの手を取ってきた。恐らく脳の処理が追いつかず、不安を覚えて彼女へ縋ってきたのだろう。マキマはセンカイを安心させるように優しく抱擁すると、大鳳に指示を出す。
「烈風は機銃で嫌がらせ。流星は水平爆撃。彩雲は……賑やかし要員として飛んでいて」
テキパキと指示を出したマキマは、次弾装填の終わった軍艦が次々と砲撃を開始し、大空を航空機が舞う現状に満足をする。無論、海の悪魔の力によって銃の悪魔は抵抗のできない様子であった。
完全勝利とはこのことか。マキマは未だに戦闘が続いている中、そのように思い満足げに頷く。やがて、銃の悪魔はろくに抵抗も出来ないままに沈黙をしたのだった。
銃の悪魔が死んだ。それに伴い、次々と軍艦の悪魔が去っていく。最後に編隊を組んでいた流星が俺の頭上を通ると、地獄へと帰っていった。申し訳ないんだが俺を喜ばせようとしているのか、品定めしているのかをはっきりさせて貰ってもいいか? 不安で仕方ないんだが。
「マキマさん、完封でしたね……」
「言った通りだったでしょ? 勝率は100%だって」
「確かにそうなんですが、俺の心労が凄いです」
俺は思い切ってマキマさんに聞いてみた。プロペラの悪魔は軍艦の悪魔の眷属なのかと。また、もし眷属なのであれば俺の事をどう思っているのかを。すると、マキマさんはあっけらかんと言ったのだ。
「プロペラの悪魔は確かに軍艦の悪魔の眷属だよ。それで、彼女がどう思っているかなんだけど……センカイ君の事は気に入ってるみたい。だから、そんなに気にしなくてもいいんじゃないかな」
「そうですか、よかったです。……ちなみに、気に入ってるとは?」
「悪魔の力を使って、活躍しているところが好きみたいだね。ちなみに、もしセンカイ君が力を使わずに過ごしていたら──彼女が直々にやってくるかもね?」
「ひえええええ!!?」
もし軍艦の悪魔がやってきたら、間違いなく死ぬ。俺が生き続ける為には、この力を一生使って過ごさなければならないのか……!
「マキマさん。元よりそのつもりではあるんですが、俺は一生貴方のために働くことになるかもしれません……」
「フフ、よろしくね? センカイ君」
「はい、よろしくお願いします……」
嬉しいやら悲しいやらと感情に振り回されるが、俺はマキマさんに微笑まれたので悩むのをやめた。無駄に悩んだって物事は解決しないのだ。それならいっその事、現状を楽しんでしまえばいい。
俺は武器人間。人間でありながら、悪魔の心臓を持つ男。ならば時に人間らしく、時に悪魔らしく振る舞えばいい。人間の傲慢さを振りかざし、悪魔の暴力性で我を通す。それでいいではないか。
全ては敬愛すべきマキマさんに捧げよう。それが、三船センカイとしての人生に相応しいのだから──。
銃の悪魔討伐遠征から数ヶ月後。俺は学ランを身に纏い、第四東高等学校へとやってきていた。右隣にはフミコとヒロフミ、左隣にはデンジとレゼが並んでいる。
俺はマキマさんより下された命令を確認するため、デンジへ問いかけた。
「俺達が何をすべきか覚えてるか?」
「ああ! 学校生活をとことん楽しむ、だろ!?」
「いや、それはそうなんだが。もう一つあっただろ」
「デンジ君。“死”、“飢餓”、“戦争”の悪魔の情報を集めることだよ?」
流石はレゼだ。俺がそう彼女を褒め称えると、フミコがのぞき込んできては情報を補足する。
「ノストラダムスの大予言、一九九九年の七月に恐怖の大魔王が降りてくる。な〜んて都市伝説があるからっすよね」
「その時が来れば人類は滅亡する。もし本当だとしたら、困っちゃうな」
俺はヒロフミの言葉に賛同すると共に、学生帽子を深く被った。そして、大きく一歩を踏み出したのだ。
「それを防ぐためにも悪魔の情報を集めるぞ。だが、まずは学校生活に馴染むことからだ。俺達が公安のデビルハンターだとバレることは極力避けろ、分かったな?」
皆の了承の声を聞くと、俺は彼らを引き連れて校門をくぐり、校舎へと向かった。その際に幾多の窓から好奇の視線が飛んでくるが、それらを無視して歩き続ける。
マキマさん、必ずや目標を達成してみせます。この世界は貴方のものだ。間違っても、余所の悪魔に滅茶苦茶にされていい訳がない……!
俺は表情を引き締め、決意を胸に灯すのだった──。
──第一部、完。
悪魔空母、大鳳
オリ要素
・マキマ生存
・早川アキ生存
・パワー生存
・姫野生存
・荒井ヒロカズ生存
・野茂生存
・ビーム生存
・天使生存
・クァンシの魔人達生存
・その他生存
小ネタ
・3話〜14話にかけて登場した、愛宕、信濃、妙高、榛名、吾妻、最上、鹿島、劔埼、佐渡は、全て軍艦の名前に採用された地名。