転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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第二部


37学校生活に向けて

 

 

 

 時は少し遡り、学校生活が始まる一月前。俺はマキマさんの執務室で、彼女と会話をしていた。何でもあと一年ほど経つと、最悪の悪魔が現世に降臨するらしい。もし野放しにすれば人間の時代は終わりを迎え、悪魔の時代がやってくるとか。マキマさんはそれを阻止するために、策を弄するというのだ。

 

「ノストラダムスの大予言。それは遥か昔の占星術師が残した予言が発端なの。それが巡り巡って、大きな意志とともに現代にまで語り継がれてきた」

 

「大きな意志、ですか」

 

「“死の悪魔”。彼女が世界を破滅させようと企んでる。この世界を死で埋め尽くすことこそが彼女の本望。私はそれを阻止したいの」

 

 死の悪魔とは、なんとも凶悪な悪魔だ。生ある者が必ず行き着く先にある死を司るとは、間違いなく神にも近しい存在だろう。

 

「かつては共闘していたんだけど、考え方に相違があってね。私は世界を自分のものにして管理したいの。だけど、お姉ちゃんは全てを死で彩りたい。結局意見が合わなくて、仲違いしちゃった」

 

 お、お姉ちゃん? お姉ちゃんってなんだ……?

 

「マキマさん。その、お姉ちゃんとは?」

 

「ああ、ごめんごめん。言い忘れてたよ。私は四姉妹でね、長女が死の悪魔で、次女が飢餓の悪魔、三女が戦争の悪魔、そして四女が支配の悪魔こと私なの」

 

「なんですかその最強四姉妹」

 

 人類が勝てるわけねぇじゃん。悪魔の時代確定だろ。しかし、マキマさんは悪魔の中でも理想の悪魔なのだ。そんな彼女が作る世界なら、悪魔の時代だろうと一向に構わないな。

 

「話が逸れちゃったね。それで死の悪魔の対抗策なんだけど、飢餓の悪魔と戦争の悪魔を支配する。そして、死の悪魔の配下である悪魔達をも支配する。とにかくお姉ちゃんの戦力を減らしつつ、味方を増やすことに専念かな」

 

「なるほど。それで、どうやって死の悪魔を探しましょうか?」

 

「そうだね、鍵を握っているのは──デンジ君だよ」

 

「デ、デンジですか?」

 

 何故にデンジ? いや、デンジの心臓は特別なんだったか。恐らくそれと関係しているのだろう。俺がそのことをマキマさんに問えば、彼女は正解と返してくれた。

 

「話しておくべきかな。デンジ君の心臓となった悪魔、“チェンソーマン”のことを」

 

 そうして、マキマさんはチェンソーマンについて語りだしたのだ。

 

 

 

「地獄のヒーロー、チェンソーマン。助けを叫ぶとやってくる。叫ばれた悪魔はチェンソーで殺され、助けを求めた悪魔もバラバラに殺される。そんなだから多くの悪魔に目をつけられて殺されるけど、何度も何度もエンジンを吹かして起き上がる」

 

 マキマさんの言葉を聞き、俺は素直に驚いていた。だが、チェンソーマンにはそれ以上の真実が隠されていたのだ。

 

「そのめちゃくちゃな活躍にある者は怒り、ある者は逃げ惑い、ある者は崇拝する。そして、彼が悪魔に恐れられる理由がもう一つ。チェンソーマンが食べた悪魔は──“その名前の存在が、この世から消えてしまう”の」

 

「そ、そんな力がチェンソーマンにはあるんですか?」

  

「あるんだよ。ナチス、第二次世界大戦、アーノロン症候群、エイズ、粗唖、比尾山大噴火、そして核兵器。かつては存在し、その名を持つ悪魔と同様に恐れられた。でも、それらの名前を思い出せる者は、もうほんの一握りの悪魔しか残されていないんだ」

 

 マキマさんはそう言って、話を締めくくる。そんな中、俺は困惑していた。何故なら一部ではあるが覚えているからだ。もしかして、転生した影響が出てるのか……?

 

「そう、ほんの一握りの悪魔しか知り得ないはずなんだけど……センカイ君は、覚えているね?」

 

「えっ? ま、まあ、その覚えてますが」

 

「フフ、そんなに怖がらなくてもいいよ。キミが戦争関連の事を覚えているのは、プロペラの悪魔の影響かもしれないからね」

 

「なるほどぉ」

 

 納得したぜ、流石はマキマさんだ。だがそうなると、俺は転生したと思い込んでる異常者の可能性が出てきたな。そう思う程度には前世の記憶が薄くなった。もはや僅かな記憶と、知識しか思い出せないほどだ。

 

「話を戻すけど、チェンソーマンは特別な存在なんだ。そして彼がデンジ君の心臓となったのは、死の悪魔の率いた私達四姉妹と争ったからなんだよ」

 

「なるほど。だからそれほど強いチェンソーマンがデンジの心臓になっていたと。それで、死の悪魔は何故チェンソーマンを狙ったんでしょうか?」

 

「う〜ん、私にもよく分からない。お姉ちゃんって表情を変えないし、自分の考えを一切話さないんだよね。それに比べて飢餓と戦争の悪魔は感情豊かなんだけど」

 

 そう言って困ったように笑うマキマさんは、感情豊かだった。どうやら、死の悪魔は四姉妹の中でも別格らしい。

 

「とにかく、死の悪魔はチェンソーマンに固執してる。だから必ずデンジ君に接触してくるはずなんだ」

 

「つまり、デンジといれば自ずと死の悪魔と出会えると」

 

 その通り。マキマさんからそう言葉を返された俺は、大きく頷く。その後、彼女と共に諸々の計画を立て、デンジの護衛メンバーを選出するのだった。

 

 

 

 転校の手続きを終えた俺は、教師に先導される形で廊下を歩いていた。やがて、一つのクラスの前へとやってくる。扉の上を見ると“2-B”と書かれたクラスプレートがあり、これが示す通り俺は二年B組に割り振られたのだ。

 

「三船フミコちゃんと三船センカイくんは、僕の受け持つ二年B組となります。今日からよろしくお願いしますね?」

 

「よろしくっす! 鈴木先生!」

 

「よろしくお願いします」

 

 担任の鈴木先生が優しげな笑みを浮かべ、俺達を気遣ってくる。恐らく俺達の事を訳ありだと思っているのだろう。だが、残念ながら経歴は詐称塗れだ。

 

 教室へ入ると、鈴木先生よりクラスメイト達に紹介をされた。

 

「今日から君達の学友となる、三船フミコちゃんと三船センカイくんです。皆、仲良くしてあげてね」

 

「三船フミコです! 好きな事は義理の弟を観察することです! 皆、よろしくね!」

 

「……三船センカイです。嫌いな事は義理の姉に観察されることです。よろしくお願いします」

 

 あとでフミコをシメるべきかもしれない。こいつ、第一印象が大切だというのに飛ばし過ぎだろ。案の定というべきか、クラスメイト達からは奇異の目で見られてる。間違いなくヤベー奴ら来た!とか思われてるぞ。

 

 その後、俺達は席に案内をされてホームルームが始まる。久しぶりの高校生活に、意外にも俺の心は踊っていた。

 

 

 

 午前中の授業が終わり、昼食の時間がやってきた。俺はフミコを引き連れ、クラスメイト達から逃げるように屋上へと避難する。そうして辿り着いた屋上には、デンジ、レゼ、ヒロフミが既に待っていたのだ。

 

「遅ぇよ! 早くメシ食おーぜ!」

 

「お前らが早いんだよ」

 

 俺はテンションの高いデンジに返事を返すと、購買で買ったパンを掲げた。

 

 

 

 彼らと昼食を楽しみながらも、俺は情報交換に励んでいた。無論、内容は学校生活のことだ。

 

「俺とレゼは2-A。授業がよく分かんねーけど、楽しいぜ!」

 

「デンジ君、モテモテだったね?」

 

「そういうレゼの方がモテモテだったじゃん?」

 

 デンジ達は初日からクラスに馴染んでいるようだ。彼らには誰とでも仲良くできるポテンシャルがあるのだろう。また、二人とも顔立ちが整っているのでそれもあって人気者になったのかもしれない。

 

「オレは2-C。無難に高校生をやらせてもらってるよ」

 

 ヒロフミは民間からの叩き上げなだけあって優秀だ。どうやら既に友人がいるらしく、クラスでそれなりの地位についたとか。そして、彼も当然のように顔立ちが整っている。なんだよ、俺だけなの? フツメンはよぉ。

 

「お前らはどーなんだ?」

 

「私達もバッチリ馴染んでるっすよ!」

 

「否定はしない。だが奇異の目で見られてる、特にフミコがな」

 

 俺とフミコは程々にクラスに馴染んでいた。これもフミコの行動のせいだ。こいつ、事あるごとに俺を話題に出しやがる。そのせいで義理の弟が大好きな姉と、義理の姉に苦労する弟みたいな構図になった。もしかしたら俺を気遣った可能性もあるが、余計なお世話だと言いたい。俺には俺のペースがあるんだよ。

 

 そんなこんなで情報交換を終えると、既に昼食の時間が終わりそうであった。そのため、俺達は解散をして各クラスへと戻る。その際にフミコに一言声を掛け、俺は用を足しに行くことにした。

 

 

 

 廊下を歩いていると、突如として後ろから手を掴まれた。俺は驚いて後ろへ振り返ると、見知らぬ女学生がいる。いや、確か同じクラスだったような。

 

「ね、ねえ……!」

 

「なんだ、俺になんか用か?」

 

 セミロングほどの黒髪をおさげにした女子。彼女は随分と逼迫した様子だが、何かあったのだろうか。

 

「あんた、リュウセでしょ……!? “海原(かいばら)リュウセ”なんでしょ!?」

 

「っその名前、何故お前が知ってる……?」

 

 彼女に問われた、海原リュウセという名前。それは俺が武器人間として覚醒する前の、純粋な人間だった頃の名前だ。この情報はフミコも知らないはず。この女、本当に何故知ってるんだ……?

 

「なんで高校二年生なのかよく分かんないし、なんで生きてるのかもよく分かんないけど……あんたは絶対にリュウセ! 顔とか雰囲気とか、見間違えるわけない!」

 

「お前は誰だ。俺の何を知ってる?」

 

「忘れたの……? 私は三鷹アサ。あんたが嫌々面倒を見てた女じゃん!」

 

 彼女に三鷹アサと名乗られた時、俺は朧気だった記憶が鮮明に浮かび上がった。そうだ。俺は当時生きていた両親の言いつけで、三鷹家の娘の面倒を見ていたんだった。それが何年も続いたある日、台風の悪魔によって彼女の母親が殺害されてしまった。それ以降、俺は憐憫の情からか傷心していたアサによく会いに行っていたんだった。

 

 何故こんな事を忘れていたんだ? それも違和感を覚えることなく。しかし、今それはどうでもいいことだ。

 

 目の前の三鷹アサを見つめる。俺の知ってるアサはもっと髪が短く、ボーイッシュな雰囲気だった。だが、彼女は随分と女性らしく成長していたのだ。正直なところ、かなり美人になってて俺は驚いてる。

 

「アサ、随分と……女らしくなったな?」

 

「はあ!? 再会してそうそう言う事がそれなの!!?」

 

 その言葉と共に、俺はアサに腹パンされた。

 




三鷹アサ登場
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