転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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42幸せを手に入れて

 

 

 

 微睡んでいた意識が急速に浮上していた。やがて俺の視界は明瞭となり、路地裏を捉えたのだ。

 

 周囲を見渡すと、驚いた表情を浮かべるアサとレゼが立っていた。俺はただ無言でアサの前へ移動をすると、優しく彼女を抱き締める。そして、アサに思いの丈をぶつけた。

 

「──アサ、すまん。俺が間違ってた。海原リュウセは死んじゃいない。今を生きてる。そして、アサだって死んじゃいない。今を生きてるんだ」

 

「いきなり、何なの……。勝手に戻ったと思ったら、今更私の事を気にし出して。前もそうだったよね。私の前から、勝手にいなくなってさ……!」

 

「反省してる」

 

「リュウセっていつも自分勝手! その自覚あんの!?」

 

「ある。そのせいで、俺は大事なもの取りこぼした。だから……しっかりと向き合うことにしたんだ」

 

 俺はアサの瞳を一心に見つめ、本心を語った。

 

「俺はアサを失いたくない。またアサと笑い合いたい。昔のようにとはいかなくても、またアサと共に生きていきたい。……駄目か?」

 

「──駄目な訳ないじゃんっ……! 馬鹿! 気付くの遅すぎ!!」

 

 アサが涙を流しながら、俺を強く抱き締めてくる。それに答えるように、俺もアサを決して離さないようにと強く抱き締めた。

 

「ずっと、孤独だった……! ずっと、誰かの温もりが欲しかった! リュウセ。もう二度と、私を一人にしないで……」

 

「アサを一人になんかしない。俺が、ずっと側にいる」

 

 嗚咽を漏らすアサの声が、路地裏に響いていた。物悲しい雰囲気ではあったが、間違いなく俺とアサは未来へ向けて前進したのだ。

 俺達は、過去を乗り越えて生きていきたいと思ってる。その願いが叶うことを、二人で祈ろう。

 

 アサが落ち着いてきた頃、俺は彼女から離れようとした。その時、路地裏に声が響いたのだ。それと同時に、金属を擦る音が鳴り響いた。

 

「センカイく〜ん。感動の再会、おめでとうございま〜す……!」

 

 金属バットを地に擦り付けながらやってきたのは──青筋を浮かべたフミコであった。間違いなくキレてる……!? 原因は俺とアサが抱き合っていることだろう。これは非常に不味い展開だ!!

 

「フミコ……! 今いいところなんだ! ちょっと待ってくれ!!」

 

「待つわきゃねえっすよねえ……!?」

 

「──私もいるよ、センカイ君」

 

 突如として聞こえた声。俺が背後へ振り返ると──マキマさんが立っていた。それもすぐ近くに。

 

「マキマさぁん!? お疲れ様です!!」

 

「お疲れ様、センカイ君。それで、随分と大変な目に遭ったようだね? 大丈夫、私が助けに来たよ」

 

 俺に微笑むマキマさんは相も変わらず美しいが、今は安堵よりも緊張が勝っているぞ……! とりあえず、二人からアサを庇わなければ!

 

「フミコ、マキマさん……! 一度落ち着いてくれ。アサはそう悪くないんだ!」

 

「そうだよ、一旦落ち着いて!」

 

 レゼが俺達の味方をしてくれている。本当にレゼは聖人だな……!

 

「ふ〜ん。まあ、私を殺したのはアサちゃんじゃなくて戦争の悪魔ですし? その点はいいですよ。──でもねえ! センカイ君と仲良くしてる所が気に食わないっす!!」

 

「それはお前の私情だろ!?」

 

「だからなんすか! 戦争の悪魔を確保するのが私達の役目でしょ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 フミコに痛いところを突かれてしまった。そうなのだ。俺達公安は戦争、飢餓、死の悪魔の情報を集め、彼女達を確保するのが最優先目標。戦争の魔人であるアサを捕らえるのは、必然なのだ。

 

「──先程からごちゃごちゃと。私を悪者扱いとは、些か気分が悪いな」

 

 その時、アサの顔に傷が浮かび上がると雰囲気が変わっていた。間違いない。彼女こそが戦争の悪魔だ。

 

「おい、それ以上私達に近づくなよ? もし近づけばリュウセを武器にする。言っておくが、元に戻せるのは私しかいないからな」

 

「おい! 状況を悪化させるな!?」

 

「リュウセは黙ってろ。それとお前の右手が私のお尻に当たってる。少し気になるから、ずらしてくれないか?」

 

「あ、ああ。すまん……」

 

 ずっとアサと抱き合っている状態のため早く離れたいのだが、戦争の悪魔こと三鷹ヨルが離してくれない。そのせいで、フミコとマキマさんの機嫌がどんどんと悪くなっていっている。誰かー、助けてくれー!?

 

 もはや打つ手なしかと思われたその時。俺達に救いの手が差し伸べられた。

 

「全員動くな。もし動けば──クァンシが対処する事になる」

 

「ん……」

 

 なんと、岸辺とクァンシがやってきたのだ。俺は思わず二人を拝んでしまった。本当にありがとう、岸辺、クァンシ……!!

 

「マキマ、お前らしくないな」

 

「……そんなことはありませんよ」

 

 そう岸辺と会話を交わしたマキマさんは、一度息をつくと俺達に歩み寄ってきた。そして、戦争の悪魔へと話しかける。

 

「悪いようにはしないから、一度ついてきてくれないかな?」

 

「フン! 私が人間の指示に従うわけが無いだろう!!」

 

「“センカイ君を離しなさい”」

 

「どわー!? 体が勝手に!?」

 

 恐らく呪言の悪魔の力を使ったのだろう。ヨルは俺を離すとその場で直立をした。そして、マキマさんの指示に従って彼女と共に去っていったのだ。

 

「マ、マキマさん! 俺も同行していいですか!!」

 

「いいよ。ついてきて」

 

「センカイ君が行くなら、私もついてくっすよ!!」

 

 俺はフミコと共にマキマさんを追いかけ、やがて彼女に追いつくのだった──。

 

 

 

 

 

 

 激動の日々から数日後、俺は東高校の屋上でフミコとアサと共に昼食を取っていた。そんな時、フミコが口を開いたのだ。

 

「センカイ君、いい加減はっきりして欲しいんですけど。どっちを選ぶんすか?」

 

「……選ぶって、なんだ?」

 

「リュウセ、とぼけないでよ。この女と私、どっちを選ぶのかって話!」

 

 俺はこれでもかフミコとアサから見つめられたため、小さく笑みを浮かべた。そしてその場で立ち上がり、二人に背を向ける。

 

「──今日は、天気が良いな」

 

「はあ? なに話逸らしてんすか!!」

 

「ちょっとリュウセ! こっち見なさいよ!!」

 

「……天気が、良いよな」

 

 頭上に広がる青空。それは何処までも澄んでいて、自分がちっぽけな存在だと教えてくれる。そして時折心地良い風が吹いては、俺の頬を優しく撫でていった。

 なんて気分が良いのだろう。きっとささやかな幸せってのは、こういう事を言うんだろうな。

 

 なあ、プロペラ。お前と出会えたこと、お前と話し合えたこと。俺は本当に感謝してる。でも……俺の記憶を消したこと、一生恨むからな! 今も映画館から俺の事見てんだろ!? なあ!!

 

 

 

 

 

 

 ──強く生きろヨ、リュウセ。

 

 ──オレはずっと、お前の事を見ているゼ。

 




 戦争の魔人編、終了
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