転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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5とっておき

 

 

 

 東京都から北上し、俺は新潟県へ向かって飛行していた。目的地は上越地方にある妙高市。同じ特異五課の火炎放射器の武器人間、バルエムから応援要請が来たため、最大巡航速度で向かっている最中なのだ。

 

「出現した悪魔は蟻の悪魔。人間を餌に増殖するかなり厄介な悪魔っすね」

 

「虫の悪魔はツワモノ揃いと、マキマさんに教えてもらったナ」

 

「それは良かったっすね〜。それで今回ヤバイのが、蟻の悪魔を飼ってた馬鹿が予想以上に長期間隠してたことっす。そのせいで地下に巣が張り巡らされていて、気付いた時には手が付けられないほどの規模になってた事っすね」

 

 蟻の悪魔は体長五十センチほどの蟻の姿で、とにかく群れで行動するのが特徴らしい。戦闘力は低く一般人でも対処できるらしいのだが、それはあくまで単体の話であり、三匹もいれば引き倒されて解体されるとのこと。そして蟻の悪魔を飼っていた馬鹿は反社会団体であり、繋がりのある農家から家畜を安く購入して飼育していたとか。結局はデビルハンターに見つかってしまい、苦し紛れに解き放った結果暴走。何もかもを解体して巣に運ぶところを目撃され、今に至るとのことだった。

 

 

 

 妙高市にある妙高山の東斜面には、高原が広がっている。そこにはいもり池という自然豊かな池があり、反社会団体は巧妙にもその土地を所有し自然公園として運営していた。そのため近場には立派な宿舎が立っており、そこで蟻の悪魔が飼育されていたのだ。しかし今では悪魔の晩餐会場となっており、蟻の悪魔に拉致された人間が解体されては貯蔵されているのが現状であった。

 

 迫り来る蟻達を火炎放射器で燃やし尽くし、ひび割れた道路を歩く一人の武器人間。彼──バルエムは大量に押し寄せる蟻達に対し、なんの感慨も抱かず処理をしていた。

 

「ソード君、後ろはどうだい」

 

「大丈夫、俺強ぇから!」

 

「そうじゃなくてねえ」

 

 バルエムは苦笑をこぼし、バディであるソードに目線を送った。頭頂部から後方へかけて二振りの長剣が生え、両腕がこれまた長剣となっている武器人間。彼はスーツの下にパーカーを着ており、事前にバルエムから言われた通り後方から迫り来る蟻達を斬り捨てていた。

 

「問題なさそうだね。それじゃ〜少し急ごうか。プロペラヘッドがあと十五分ほどで到着するらしいから」

 

「プロペラヘッド……まだ会ったことないな」

 

「なら今度の休日に会いに行けばいい。確か休みが被ってたはずだろ?」

 

「おお、そうするか!」

 

 バルエムは足に力を込めて走り出す。襲いかかってくる蟻達には火炎をプレゼントし、彼らを焼き尽くしながらも前へと進んだ。なおバディであるソードもしっかりとついてきており、問題はないようだ。

 

 目的地である建物が見えてきた。しかし、働き蟻達がびっしりと大地を埋め尽くしているため、辿り着くのは一苦労だろう。また、働き蟻の他に巣を守るために生み落とされた兵隊蟻達が建物周辺に陣取っているため、攻略に苦戦することは必至であった。

 

 武器化を解除し、大木の上から状況を確認するバルエムは無線機で通話をした後、信号弾を建物方向へ向けて撃った。すると赤い光が煙の尾を引きながら、弧を描く。

 

「バルエムさん、今から何をするんだ?」

 

「俺達は待機だね。いや、観戦かな」

 

「観戦……何を観戦するんだ?」

 

「虐殺だよ。プロペラヘッドにはとっておきがあってね、それを俺達に見せてくれるのさ」

 

 枝の隙間から顔を覗かせると、遥か上空から一機のプロペラ機が急降下をしてくる。すでにショーは始まっていたらしい。バルエムは声を出して笑い、これから起こる大量虐殺に心が踊った。

 

「ははは! よ〜く見ておけよ。これが俺達武器人間の在り方だ!」

 

「おお!」

 

 

 

 信号弾が見えた。爆撃目標の建物も確認し、後は準備と許可を貰うだけだ。

 

「女、ジェリ缶を二つ使わせロ。八百キロ徹甲爆弾を投下すル」

 

「了解。二つ消費っすね」

 

 操縦席の後ろに載せられていたジェリ缶を丸ごと機体の中へ飲み込み、中に入っていた血液を飲み干す。そして爆弾倉の中で八百キロ徹甲爆弾を精製した。

 

 機体を反転させ、急降下を開始する。何度も繰り返した動作ではあるが、今回は違う。実戦どころか一度も使ったことのない兵器を使うのだ。

 

 高度四〇〇〇メートルから急降下をし、緩やかなカーブを描きながら落下する。というのも爆弾があまりにも重すぎて、機体が空中分解する恐れがあるからだ。実は五百キロ爆弾でもかなり負荷がかかっており、悪魔の肉体でなければ空中四散していてもおかしくはなかったりする。

 

 話がそれたが急激に高度を下げていき、ついに一〇〇〇メートルを切った。俺は爆弾倉を開くと、八百キロ徹甲爆弾を投下。急激な重量変化により姿勢が崩れるが、無理やり立て直しては即座に水平飛行へ移行した。

 

「見ておケ、人間が創り出した兵器ヲ。すべてを無に帰すゾ」

 

 爆撃目標の建物へ真っ直ぐ落ちていく死の兵器。もはや誰にも止められない。俺はどこか達観した気持ちを抱いたが、それ以上に確かな興奮を覚えていた。

 

 

 

 遥か上空から風切り音が鳴り響き、ソレは数瞬後に建物を貫通する。そして──。

 

 大爆発を起こした。

 

 建物は地盤ごと吹き飛び、上空へ土砂が打ち上げられては、爆発によって発生した上昇気流、そして水蒸気とともに巨大なきのこ雲となった。辺り一帯の雲は勿論、森さえも爆風で吹き飛ばし、当然巣食っていた蟻の悪魔は一瞬で蒸発する。それらを見ていたバルエムは笑った。大笑いをした。涙を流しながら、大口を開けて笑った。

 

「ぶはははははは!!! 見ろ!! これが武器人間の力!!! これが俺達の力だあああああああ!!!!!」

 

「す、すげぇーーーー!!!!!」

 

 爆風で吹き飛ばされたバルエムとソードは、武器人間の素晴らしさに感動をしながら大地に叩きつけられた。彼らは全身を強く打ち付けてしまい複雑骨折をするが、すぐに復活をする。

 

「うおおおおおお!!! 武器人間最高ぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「す、す、す、すげぇーーーーー!!!!!」

 

 巨大なきのこ雲の前で両腕を掲げ、雄叫びを上げる二人。彼らは大きな雲が消え、クレーターを確認するまでずっと叫び続けるのだった。

 

 

 

 目標に無事着弾し、対象は木っ端微塵となった。五百キロ爆弾を大きく上回るきのこ雲がのぼっており、その威力の凄まじさをこれでもかと訴えかけてくる。

 

「す、すごいっすね。悪魔なんて鼻くそ同然じゃないっすか」

 

「汚い言葉を使うナ。それと当然だろウ、あれは軍艦を沈めるために使う爆弾ダ。間違っても地上に落とすものではなイ」

 

 無線機から報告が来ないが、恐らく問題ないだろう。俺は本来の仕事へ戻るために方角を変えた。

 

「群馬県に向かうんだったカ?」

 

「ええ、そうっす。群馬県高崎市にある榛名湖っすね」

 

「分かっタ。細かい方角は教えてくレ」

 

「りょーかいっす」

 

 高度を稼ぐためにエンジンを回し、上昇する。段々と地上が離れていき、青い空が視界いっぱいに広がり始めた。地上とは違いどこまでも澄んでいる大空はとても綺麗で、いつまでも見ていたいと思うほどだった。

 

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