転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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50悪魔戦線異状あり、後に収束

 

 

 

 魔女、巨人、竜。彼らがこちらへとやってくる。そのことを確認したヨルは、即座に行動を移した。

 

「支配、お前が最後の守護者だ。飢餓を守れ!」

 

「はあ?」

 

 キガを突き飛ばしたヨルは、戦車の悪魔へ搭乗した。そして、眷属達へ告げたのだ。

 

「さあ、お前達。これは聖戦だ。私の名の元に戦え!!」

 

 ヨルが号令をかけた瞬間、軍艦の悪魔が砲撃を開始する。それに続くようにプロペラヘッドが駆け出し、戦車の悪魔は全速前進をした。

 

 ──何としてでも、戦争の恐怖を取り戻してやる……!

 

 ──その為にも死ね! 時代遅れの化石共め!!!

 

 

 

 夜の帳が下り、夜空に星々が浮かんだ街跡。そこでは幻想の悪魔達と、戦争の悪魔の率いる兵器の悪魔達が争っていた。もはや人間が介入できる余地はなく、彼らはただ自らの正義の為に力を振るう。

 

 次々と天上に魔法陣が浮かんでは地上に破壊が齎され、軍艦より放たれた砲弾が竜の体を穿つ。しかし、戦車に車載をされた機関銃より魔女が狙い撃たれては、竜がみるみるうちに体を再生させ、軍艦へと迫っていた。また、ある所では巨人とプロペラがしのぎを削っており、互いに防御を捨てて殴り合っていたのだ。

 

 そんな彼らを遠目で見ていたマキマは、困ったと言わんばかりにため息をついた。そして、隣でビクついているキガへと話しかける。

 

「飢餓、彼らを止められるかな」

 

「せ、戦争を止めないと、リーちゃん達は戦い続けると思う……」

 

「……そう」

 

 ちらりちらりとこちらを伺うキガに、マキマは懐かしさを覚える。かつて、マキマは何をやらせても失敗をするキガへ厳しく当たっていたのだ。その名残りなのだろう。キガはマキマに対して苦手意識があるのか、予想以上に居心地が悪そうであった。

 

 戦闘が予想以上に長引くかと思われた時、ゲオマグスとプロペラヘッドの状況が一変する。なんと、ゲオマグスに頭部を殴られたプロペラヘッドが突如として大爆発を起こしたのだ。

 

 頭部はおろか胴体さえも木っ端微塵に吹き飛び、その場に下半身のみが残されたプロペラヘッド。やがて、彼の下半身は派手な音を立てながら崩れ落ちた。

 

 そこから形勢が傾き、幻想の悪魔側が猛攻を仕掛ける。

 

 リリスとゲオマグスが戦車と戦争に猛追しては、竜が砲撃をものともせずに軍艦へと迫り、その巨体を持ってして彼女を押し潰した。

 

 鋼鉄が軋む不協和音と共に、軍艦が竜に磨り潰されては大爆発を引き起こす。それによって夜空に巨大なきのこ雲が立ち上り、勝利を手に入れた竜が雄叫びを上げていた。

 

 もはや、戦争側に勝ち目は無い。戦車は必死に抵抗をしたが、リリスの魔法によって履帯が破断され、大地より剣を生成したゲオマグスに吹き飛ばされてしまったのだ。

 

 ──ぬわあああああー!!?

 

 何処からともなく情けない叫び声が聞こえたかと思えば、リリスの魔法によって戦車は大爆発を起こした。

 

 プロペラヘッド、軍艦、戦車、そして戦争。彼らは皆等しく爆発してしまい、再起不能へと陥る。余りにも早い幕切れではあったが、勝敗は決したのだ。

 

 勝者は──幻想の悪魔達。

 

 

 

 魔法の箒に乗ったリリスが、一目散にやってきた。そして、駆け出していたキガを強く抱き締めては地上へと降りる。

 

「キガちゃん、遅れてごめんね……!」

 

「ううん、大丈夫だよ! そんなことより、皆が無事で良かった!!」

 

 彼女達から離れた位置には、腕を組んだゲオマグスととぐろを巻くウロボロスがいた。彼らは後方にてキガを見守っており、物静かな様子だ。

 

 かつては悪として恐れられた幻想の悪魔達。彼らはただ守護をするべき主人の為に力を振るい、彼女の笑顔を手に入れた。マキマはなんとも素晴らしい事だと頷くと、キガへと話しかける。

 

「配下達と再会できてよかったね。それじゃあ──地獄へ帰ってもらおうか」

 

 瓦礫の山と化した街。民間人の死傷者は三桁はくだらないだろう。たとえ主人を救うためとはいえ、現世に迷惑を掛けた以上マキマは許すことができない。理由は単純明快、彼女が公安のデビルハンターであるからだ。

 

「キミの配下達はブラックリスト入りだ。もし現世にやってきたら、必ず命を狙われる。その覚悟をしておくんだね」

 

「は、はい!」

 

「分かったなら、さっさと帰りなさい」

 

「はいぃ!!」

 

 リリスに抱きかかえられたキガは慌てた様子で指示を出し、配下を引き連れて巨大な門をくぐっていく。やがて巨大な門が光と共に消えると、破壊された街だけが残った。

 

 次に、マキマは大破をした戦車の悪魔へと近寄った。すると、タイミングよく戦争の悪魔こと三鷹ヨルが這い出してきたのだ。

 

「く、くそ! この私が負けるだと!? こんなはずでは……!!」

 

「戦争、思いの外元気そうで安心したよ。それじゃ、痛い目を見てもらおうか」

 

「え?」

 

 マキマは容赦なくヨルにビンタをした。それも何度も。

 

「い、痛い!? 貴様、この私に──」

 

「うるさい」

 

「痛いいいい!!?」

 

 頬を真っ赤に腫らし、涙と鼻水を垂れ流すヨルは酷い顔をしていた。しかし、マキマは気にする様子もなく何度もビンタをし、それはヨルが止めてくれと懇願するまで続いたのだ。

 

「──ず、ずびませんでじた……」

 

 やがて、その場で土下座をするヨルを見下ろしたマキマは、最後に忠告をする。

 

「本当なら、キミの心をへし折るために配下を皆殺しにして、性犯罪者をキミに充てがおうと思ったんだけれど。残念ながら、センカイ君や三鷹アサちゃんに被害が出てしまうからね」

 

「ひぃぃ!? それだけはどうかご勘弁をぉ!!」

 

「戦争、次は無いよ?」

 

「はい! もう痛いのはヤです!! 絶対にやりません!!」

 

 頭を深く下げたヨルに、マキマは強い支配をかけた。もはや反抗の意思を持たないどころか、マキマに対して強い好意を抱くほどに記憶を改竄したのだ。無論、三鷹アサにはあまり被害が出ないようにしているが、体を共有している以上少なからず影響はあるだろう。しかし、それは必要経費だとマキマは割り切った。

 

「戦争、立ちなさい」

 

「マ、マキマ。私のことをヨルとは呼んでくれないのか……?」

 

「ヨル、立ちなさい」

 

「はい!!」

 

 先ほどとは打って変わって、ヨルは嬉しげな様子でマキマへ擦り寄ってきた。そして、遠慮がちにマキマの手を握ってくる。

 

「どうして、私の手を握っているのかな?」

 

「そ、それはっ……握りたいと思ったからだ!」

 

「そう。案外、ヨルには可愛い一面があるんだね」

 

「か、可愛い!!?」

 

 痛々しい顔を赤く染めては、ヨルがそわそわとしている。そのため、マキマは彼女を真正面から抱き締めると、耳元でこう囁いたのだ。

 

 ──私に従順であれば、どんな願いも叶えてあげる。

 

 ──私を好きにしてくれても、いいんだよ。

 

 

 

 

 

 

 既に日が沈んだ東高校の屋上にて、一人の女学生が佇んでいた。

 彼女は無表情であり、感情が読み取れない。しかし、目だけは雄弁に物語っていたのだ。

 

「──ようやく見つけた。私の、チェンソーマン」

 

 その目に宿るのは、必ずや手に入れるという強い意思。それと同時に、恋い焦がれるような甘い雰囲気が、彼女から見え隠れしていた。

 




 飢餓と幻想の仲間達編、終了
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