転生したらプロペラヘッドだった件   作:卍錆色アモン卍

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53リュウセとアサ、センカイとフミコ

 

 

 

 あれから数日後、俺は暇であった。というのも、デンジが自分で考えて答えを出したいと申し出てきたからだ。俺としては助かるが、デンジがあまりにも真面目な表情で言うものなので驚いてしまった。アイツ、急に男前になっちまってよ。

 

「ほら、リュウセ。上がってよ」

 

「ああ、お邪魔します」

 

 そして、俺が今何をしているかというとアサの住んでいるマンションの一室へとやってきていた。実は、今日一日はアサと過ごす予定なのだ。

 

 

 

 玄関で靴を脱ぐリュウセを尻目に、アサは部屋全体を見回した。どこもかしこも片付けと掃除が行き届いており、不安要素はない。

 アサはそのことに安心をして、リュウセをリビングへ案内すると、ベッドに座らせる。そして、事前に用意していた漫画を彼に渡した。

 

「これ、昔読んでたでしょ」

 

「おお、懐かしいな。俺が青春時代に読んでた漫画じゃないか。確か、アサは少女漫画をよく読んでたよな!」

 

「まあね。久しぶりに読もうよ、昔みたいにさ」

 

「おう!」

 

 楽しげな様子のリュウセにアサは笑いかけ、さり気なく彼の隣に座った。

 

 ぺらりぺらりとページを捲くる音が響き、静かな時間が過ぎていく。久しぶりに読む漫画は面白く、アサもついついのめり込んでしまった。しかし、アサの脳裏にはそれ以上に、海原リュウセと過ごした日々がよぎっていたのだ。

 

 母親が生きていた頃は、彼をよく自室に招いては勉強を見てもらったり、一緒に遊んだりしていた。

 悲惨な悪魔事件が起こった後は、待ち合わせ先の喫茶店でよく学校のことや、好きな漫画について語り合ったりしていた。

 そして、いつの日からか恋心を抱いていたアサは、リュウセの事を毎日のように考えていた。

 

 こんな性格が良いとはいえない自分が、かつては甘酸っぱい青春時代を送っていたのだ。当時のアサはまるで少女漫画の主人公になったかのように思い、毎日が楽しかった。

 

 しかし、転機が訪れる。否、訪れてしまった。

 

 理不尽なことに、想いを寄せていた彼がアサの前からいなくなってしまったのだ。

 それから、アサの人生は転落した。彼女に頼れる人は居らず、しかし、誰かに頼らないとアサは生きていけない。彼女はどんどんと心が沈んでいき、いつしか孤独であることに慣れてしまった。

 

「──アサ、どうした?」

 

「っ何でもない」

 

 考え事をしていたアサは、急にリュウセに話しかけられたため思わず顔を伏せてしまった。しかし、リュウセに肩を掴まれては、強引に目を合わせられる。

 

「……なんで泣いてる」

 

「泣いてないし!」

 

 アサは目を赤くしていた。それは辛い過去を思い出していたがためだ。しかし、リュウセにそのことが伝わるわけもない。

 

「……アサ、本当に悪いと思ってる。俺が一人を選べないから、辛い思いをしてるんだよな。我ながら、二股野郎という自覚はあるよ。でも、海原リュウセとして過ごした日々と、三船センカイとして過ごした日々。俺はどっちも捨てられないんだ」

 

 ──俺はアサのことが好きだ。でも、同じぐらいフミコのことも好きなんだ。

 

「幻滅してくれて構わない。嫌われる覚悟はできてる」

 

 リュウセはそう言うと、言葉に嘘はないとばかりにアサを優しく抱擁してきた。そのためアサは彼に腕を回すと、彼の胸元で小さく呟く。

 

「……嫌いになれるわけないじゃん。私はずっと、リュウセのことを忘れられなかったんだから」

 

 そして、アサは自身の望みを彼に伝えることにしたのだ。

 

「ねえ、リュウセ。私のこと──愛してると言って」

 

「愛してる」

 

「私も、愛してる」

 

 アサはリュウセと見つめ合うと、互いに口元を近づけては愛を確かめ合った。初めは軽いものであったが、段々と重く、激しい愛の形へと変わっていく。そして、いつしか二人は混ざり合い。互いの事を深く理解した。

 

 ──この日、アサは愛を知った。今までは家族愛や友愛、親愛しか知らなかった。しかし、今日。アサは情熱的で、官能的な愛を知ったのだ。

 

 

 

 ある日曜日。フミコは早起きをすると、いつも以上に張り切っていた。その理由は、センカイとのデートのためである。

 

「う〜ん。やっぱ、へそ出しの方が受け良いっすよね〜」

 

 フミコがクローゼットの前であーだこーだと悩んでいると、センカイが近くを通りかかった。そのため、フミコは彼を呼び出して服を選んで貰うことにしたのだ。

 

「なんの用だ」

 

「センカイ君は、どっちの組み合わせが可愛いと思うっすか〜?」

 

 フミコは、へそ出しのシャツにスキニーパンツの組み合わせと、革ジャンにワイドパンツの組み合わせを彼に見せた。すると、センカイは即座に後者を選ぶ。

 

「理由は?」

 

「露出が少ないからだ」

 

「はい駄目〜!」

 

「なんでだよ!?」

 

 思わずといった様子でツッコミを入れるセンカイ。それに対し、フミコはやれやれと首を振ってはこんこんと持論を語った。

 

「露出が少ないからとか。センカイ君、今日はデートなんすよ? 私が最も可愛く見える、つまりはエロく見える格好を選ばないといけないっす。私だって、センカイ君に気に入られたくて聞いてるんですから」

 

「……へそ出しの方が、可愛いんじゃないか?」

 

「その通り!」

 

「そっちが着たいだけだろ!!」

 

 ため息をついたセンカイは、先ほどのフミコのようにやれやれと首を振ってはリビングの方へと去っていった。

 

 フミコは彼を見送ると着替え出す。出来ればセンカイに生着替えを見せたいところであったが、それはまた今度でいいだろう。そんな事をフミコは考えつつも、姿鏡の前で何度もチェックをしながら着替え終えた。

 

 

 

 リビングでのんびりとテレビを眺めるセンカイに、フミコは寄り添っていた。そして時折、彼の腕を取っては胸を押し付ける。

 

「それ、やめてくれないか?」

 

「え〜? なんでなんすか」

 

「……興奮するからだ」

 

 目を逸らしながらもそう言う彼に、フミコはニヤリと笑う。

 

「じゃあ、こういうのはどうっすか?」

 

 フミコはセンカイの手をとって、自身の腹を触らせた。これが出来るのは、へそ出しシャツを着ているおかげである。

 

「やめろ」

 

「も〜、好きなだけ触っていいのに〜!」

 

「そうなのか。じゃ、遠慮なく」

 

「え?」

 

 フミコが驚いた瞬間、センカイは彼女を持ち上げては太ももの上に座らせた。そして、フミコの腹を撫で始めたのだ。

 

「お前の腹って、ほどほどに肉がついてて触り心地良さそうだなと思ってたんだ」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「すべすべだが、それなりに柔らかくてほのかに温かい。俺は結構好きだぞ」

 

「セ、センカイ君のくせに! 何調子乗ってんすか!!」

 

 顔を赤らめながらもフミコはセンカイへ怒鳴る。しかし、彼は動じる様子もなく優しく微笑んできたのだ。

 

「フミコが照れてるのは珍しいな」

 

「はぁ!? さっきからなんなんすか! 私をからかってるんでしょ!」

 

「違う。俺はもっと、自分に素直になろうと思っただけだ」

 

 そう言って、センカイは恥ずかしがる様子もなくフミコは抱き締めてくる。思わずフミコはビクリと跳ねてしまうが、すぐさま気を落ち着かせると、冷静に状況を見極めようと思考した。

 

「急にどうしたんすか。前までそんな素直じゃなかったのに」

 

「心境の変化だよ。いつまでも一緒にいられるかなんて分からない。それなら、後悔のないように生きたいだろ」

 

「そうっすか。じゃあ私〜、センカイ君とセックスしたいっすね!」

 

「どんだけセックス好きなんだよお前……」

 

「え〜? ヤりましょうよ〜!」

 

「……雰囲気さえ整ってればな」

 

「──ん?」

 

 フミコは違和感を覚えた。それはセンカイがセックスに対して寛容になっているところだ。以前の彼なら、やらんと一蹴していたはず。だが、雰囲気さえ整っていれば? フミコは疑問を解消するべく頭を回すと、ある一つの事実に辿り着いた。

 

「センカイ君、もしかして……昨日アサちゃんとヤりました?」

 

「はあ!? いきなり何言ってんだ!!」

 

「あ〜、これはヤったわ。ヤったヤった。今ので確信したっす」

 

「うるせえ! 俺は何も言わねえからな!」

 

「はいはい、無理しなくていいっすよ〜」

 

「なんかムカつく!?」

 

 フミコはアサに嫉妬を覚えたが、これで心置きなくセンカイを落とせるというものだ。ならばデートなんて取りやめて、今すぐにでも彼を落とすべきだろう。

 小さく微笑んでは仄暗い感情を浮かべたフミコは、センカイの顔をがっしりと掴み、驚く彼を余所に口づけをした。そして、容赦なく舌をねじ込む。

 

 フミコは自身の唾液をこれでもかとセンカイへ送り込むと、やがて興奮した様子で口を離した。

 

「あ〜、センカイ君とのベロチュー気持ちいい〜!」

 

「おま、いきなり何すんだ!!?」

 

「前準備♡」

 

 フミコがくすりと嗤った瞬間、センカイは急激に顔を赤らめては息を荒らげ始める。彼自身もそのことに違和感を覚えたのか、動揺をしていた。

 

「お、俺に何をしたんだ……?」

 

「あれ〜、言ってませんでしたっけ? 私の唾液ってえ、人間悪魔問わずに発情させる力があるんすよね〜。性病の悪魔の力様々っす〜!」

 

「お前、俺を襲った時にもこの力使っただろ!?」

 

「襲っただなんて失礼な。あの時は私と愛し合ってたじゃないっすか〜。まあ、それは認めますけど♡」

 

 痛いほどに怒張したセンカイの股間に、フミコは舌なめずりをする。そして、段々と理性を失っていく彼に悪魔の誘惑を仕掛けたのだ。

 

「センカイ君。私、我慢できないっすぅ。一緒に、気持ち良くなりましょ♡」

 

「あぁ、やめろ……! 俺はこんな展開、望んでないい!」

 

「必死に抵抗しちゃって可愛いっすね〜! ちなみに、今回はセンカイ君の意識は残りますんで。私とい〜っぱい、思い出作りをしましょうね♡」

 

 フミコは、必死に性欲と戦うセンカイに無理矢理口付けをし、より彼の心を溶かしていく。そして、いつしか彼がフミコを受け入れた時。二人は自らの欲望に従い、互いに求め合っていた。

 それは人間というよりも獣のように本能的であったが、二人は確かに愛し合ったのだ。

 

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