それはそれとして、ツインバスターライフルをブッパするシーンを沢山書きたい。
「とても良い公演でしたね! 最後のペロロ様とウェーブキャットさんの握手するところでは、もう胸が一杯で一杯で……」
「そうですね。タイトルの通り、とても友達というものを考えさせられる。良い物語でした」
感動のあまり本当に泣きそうなヒフミさんに、相づちを打ちながらカフェラテを飲む。
初めて飲んだけど、悪くない。
珈琲にミルクと砂糖を入れたものらしいけど、今度はただの珈琲を頼んでみるのもありだろう。
「あっ、私ったら一方的に話してしまってすみません。あまり話せる人が居なくて……あはは」
「気にしないで下さい。私はとても楽しく話を聞かせていただいてますから」
やっと正気に戻ったのか、軽く笑ってから私と同じくカフェラテを飲む。
ここまで長かったなぁ……。
今ならば、話の流れを変えることも出来そうだ。
「話は変わるのですが、トリニティ総合学園について少し教えてもらえませんか? 少々事情がありまして、入る学校を悩んでいるんです」
「え! 本当にトリニティの生徒じゃなかったんですか?」
「はい」
どうやら信じて貰えていなかったようだ。
「あのー。その事情というのは何なのでしょうか?」
「軽く話しますと……」
この話をするのも数度目となり、慣れたものである。
記憶がないのと、学籍が無い事。
折角なので自分で学校を選ぼうとしている事。
ついでに既に二校回っている事も伝える。
「そ、そんな……それなのに私と一緒にペロロ様の公演を観てくれていたなんて……」
「気にしないで大丈夫ですよ。たまたま会った人に調べて貰ったのですが、親族らしき人は誰もいないので、悲しんでいる人はいません」
「そういう問題じゃありません! そんな立派な翼があるのなら、間違いなくトリニティの何処かに住んでいたはずです! きっと探せば……」
あっ、今度は正義感に火を付けてしまったのかもしれない。
「残念ながら、私の名前の生徒は見つからなかったようです。私自身も気にしていませんので、気にしなくても大丈夫ですよ。それよりも、もしかしたら未来の後輩になる私に、学校の事を教えてくれませんか?」
「……分かりました。でも、戻ったら探してみますね」
「はい、よろしくお願いします」
やっと落ち着いてくれたヒフミさんはトリニティのことに付いて話し始めた。
トリニティではティーパーティーと呼ばれる生徒会があり、 三つの派閥から選出された生徒が順番に生徒会長……トリニティ風に言えばホストを務めている。
その派閥とはパテル。フィリウス。サンクトゥスであり、それとは別になるが、中立としてシスターフッドと呼ばれる部活? 組織があるそうだ。
どうやらヒフミさんは来年ティーパーティーになる……既になっているが、そのとある生徒と仲が良いらしく、たまにお茶会もしているらしい。
その生徒の名前は、桐藤ナギサ。
どこかで聞いた様な名前だと思ったら、私が読んでいる本の著者だった。
これには私としても少し驚いたが、この様な本を書ける人が居るのならば、トリニティは良い学校になりそうだ。
ヒフミさん曰く、治安は他に比べて良いものの、表に出ない分、裏では色々と黒い噂もあるらしい。
通うならば是非ともトリニティに、とヒフミさんは締め括った。
「なるほど。安全な学校という事ですね」
「それは少し語弊がありますが、そんな感じです……あはは」
まあキヴォトスでは銃撃戦が日常なんで、トリニティでもよく撃ち合いがあるのだろう。
珈琲部と紅茶部が定期的に争い、園芸部の果物を盗みにゲヘナや不良が来ているとか言っていたし。
それでも日夜爆発が響いているミレニアムよりは、少しはマシなのかもしれない。
「学校を見て回っていると言ってましたが、この後は何処に行く予定ですか?」
「ゲヘナに行ってみようと思っています。治安は悪いようですが、なんとかなると思うので」「……物凄く重いようですけど、大丈夫なんですか?」
ソファーのあるテーブルに、ヒフミさんと向き合って座っているが、私はそれはもう凄く沈み込んでいる。
これでもゼロカスタムの一部を、床に着けて軽減しているが、それでも私はソファーと一体化している。
「はい。それに、重さに見合った威力もあるので、不良程度は返り討ちに出来ます」
「私としてはエリスちゃんに、トリニティに来て欲しいですけど……」
「ゲヘナに行った後は、トリニティにも行く予定です。ヒフミさんが良ければ、案内をお願いしても良いですか?」
どうもヒフミさんに気に入られてしまったのか、思いの外圧が凄い。
会場ではさん呼びだったのに、今はちゃんに変わっている。
年齢が本当に下だと気付いたからかな?
私の外見的にトリニティに通うのが普通なのかもしれないけど、それを決めるのは見てからだ。
ただ、可能ならばナギサさんには一度会って、本について聞いてみたい。
生徒会の人なので忙しいだろうし、部外者だから無理だとは思うけど。
「任せて下さい! 私がしっかりと案内してあげます!」
「ありがとうございます。良かったら、連絡を取れるようにモモトークを交換しませんか?」
「はい! あっ、それは今日販売したばかりの、ウェーブキャットさんのスマホカバーですね!」
これって今日販売日だったんだ……イベントついでに売られていたって事か。
多分ヒフミさんの中で、私はモモフレンズのファンになっている気がするな……。
嫌いではないが、下手な事を言うとヒフミさんを傷付けてしまいそうだし、黙っておこう。
嫌いじゃないし。
「交換できましたね」
「はい。トリニティに来る時は連絡を下さい。それ以外でも、困った事があったら何でも聞いて下さいね」
モモトークを交換した所、やはりヒフミさんのアイコンはペロロだった。
因みに私のアイコンは、ノノミさんに勝手に設定されたものである。
後で変えようと思っているけど、少し気に入っている。
そのアイコンは、私とホシノさんが一緒に頑張って、ゼロカスタムであけた穴を埋めている写真である。
大体カフェで二時間程度話し、ヒフミさんが帰らなければいけない時間となり、カフェを出る。
どうやら学校の授業が終わるまでに帰らないと、大変な事になるらしい。
これまで会った人の中で、ヒフミさんはダントツで…………うん。これを言うのは止めておこう。
悪い人ではないのは確かなので、トリニティに行った際は好意に甘えるとしよう。
「色々と教えて頂き、ありがとうございました」
「いえ! 私もモモフレンズの友達が出来て楽しかったです!」
「友達になれたからというわけではありませんが、これは私からのプレゼントになります」
そう言ってから、とあるブツが入った小さな紙袋をヒフミさんにあげる。
「これは?」
「家に帰ってから開けて下さい。それまでは決して開けないで下さいね。約束ですよ」
「分かりました。それではまた、遊びに行きましょうね!」
商業施設の広場で、小走りで去って行くヒフミさんを見送る。
ヒフミさんに渡したのは、今日私が買った限定品のキーホルダーだ。
そこまで欲しいものではなかったし、後でトリニティに行く以上、ティーパーティーにかかわりがあるヒフミさんの好感度を上げるに越した事は無い。
この場で袋を開けさせなかったのは、またあの狂った量のペロロの話を聞きたくなかったからだ。
ペロロ関係でヒフミさんを喜ばせると、ろくな事にならないとこの短い時間で学んだ。
さて、私は……。
「そこに居る方達。居るのは分かっていますよ」
空き店舗の一つから、複数の敵意を感じる。
私と言うよりは、ヒフミさんが目当てなのだと思う。
「ちっ、ばれてんじゃあ仕方ない。痛い目に遭いたくなかったら、さっきの女に助けを求めな」
「それは何故ですか?」
「決まってんだろう? お前を解放する身代金を要求するためだよ。ちょっと研究費が足りてなくてね。科学のために、少しお金を貰いたいのさ!」
人数は六人。
内容的にミレニアムの生徒か、その関係者か。
どうせ直ぐに此処から去るし、精神的に少し疲れたので、ストレス発散をするとしよう。
「なるほど。あなた達は救いようのない犯罪者……そういう事ですね」
本で学んだとおりに、なるべく優雅に動く事を意識する。
そして、右腕を上に伸ばし、ゼロカスタムを握る。
直ぐに機動状態に移行させ、先端を不良たちに向ける。
「な、なんだその馬鹿げたもんは! お、脅しが利くと思ってんのか!」
「そうだそうだ!」
「大きければ良いってもんじゃないぞ! チビ!」
……一瞬殺傷モードにしそうになったが、非殺傷モードのまま思い留まる。
「威力はその身で受けて下さい。それでは、さようなら」
「なっ! まち……」
ゼロカスタムから放たれたビームは不良達を呑み込み、その後ろにある空き店舗を爆発させて吹き飛ばす。
爆風が頬を撫で、モクモクと煙が天に昇っていく。
「あっけないですね。聞いていないとは思いますが、慰謝料は貰っておきますね」
流石に爆発を起こしたせいか、客は全員逃げ出してしまった。
いささかやり過ぎたかもしれないが、罪は気絶している不良達が償ってくれるだろう。
慰謝料と言うよりは、逆カツアゲだが、やっていいのはやられる覚悟がある者だけだ。
これ位は問題無いだろう。
さてと、退散退散。
1
「ふんふふんふふ~ん」
トリニティへと帰って来たヒフミは、今日の事を思い出し、思わず鼻歌を歌う。
限定品のキーホルダーは買い逃してしまったものの、買う方法は残っている。
いつからか通うようになったブラックマーケット。
そこでならば、既に販売を終えた物や、期間が限定されている物が流れてくる事がある。
治安が悪いので、入念な準備が必要な物の、既にヒフミは手慣れたものである
「あっ、ナギサ様からだ」
モモトークを確認したヒフミは、返信をしたタイミングで、ふとエリスの事が頭に過る。
(ナギサ様なら、何か知っているかな?)
記憶が無く、頼れる相手も住む場所も無いエリス。
間違いなくトリニティの生徒だとヒフミは思っているが、本人曰くその痕跡が無いらしい。
ヒフミ一人でトリニティを調査するのは大変だが、ティーパーティーに所属しているナギサならば、何か知っているかもしれない。
あれだけ目立つ翼を持っているのだから、歩いているだけでも、嫌でも目につく。
また、所作や言葉もヒフミが見た限り優雅なものであり、どう見てもトリニティに相応しい姿だった。
ナギサからのモモトークはお茶のお誘いであり、ヒフミは直ぐに向かうと返事をして走り出す。
「いらっしゃいヒフミさん」
「はいナギサ様。お招き頂きありがとうございます」
挨拶をしたヒフミはテーブルに着き、少しだけ周りを見る。
「急なお誘いなのに、来ていただきありがとうございます」
「いえ! ナギサ様のお誘いなら、いつでも歓迎です」
お互いに微笑み会い紅茶を飲む。
その紅茶はナギサが淹れたものであり、その味はトリニティでも上から数えた方が早いくらいである。
「もうすぐテストがありますが、ヒフミさんは大丈夫ですか?」
「はい。しっかりと勉強をしているので、問題ないです」
笑顔で返事をするヒフミだが、発言とは裏腹に授業をサボり、ペロロのショーを観に行っている。
この事をナギサが知れば、ティーカップを落とすくらいの衝撃を受けるだろうが、忙しいナギサはそんなことを知るよしもない。
「あのナギサ様。少し聞きたいことがあるのですが……」
「何でしょう?」
軽く雑談をしながら紅茶とロールケーキを味わった後、ヒフミはあの事を話すために切り出す。
ナギサとヒフミのお茶会は基本的にナギサが話し、ヒフミが返すのがいつもの流れなのだが、珍しいヒフミの反応にナギサは首を傾げる。
「中等部の生徒で、白くて大きな翼を四枚持っている子を知りませんか?」
「四枚……ですか?」
翼持ちの生徒は数多いが、基本的に生えてるのは二枚だけである。
ごく稀に四枚翼がある存在はいるが、背中に四枚生えることはない。
翼の大きさとは強さの象徴の様なものであり、四枚持ちの場合、どちらの翼も小さいものであるのが常だ。
なので、ヒフミの話す様な生徒が居た場合、間違いなくナギサの耳に入っている筈だ。
「そうですね。私が知る限りではいませんが、どうかしたのですか?」
「実は……」
ヒフミはエリスの事について、全てナギサへと話した。
流石に学校をサボっている時に会った事については話さず、所用でミレニアムに行った際に会ったと誤魔化す。
話を聞いたナギサは、最近の出来事について思い返す。
この数日間だが、トリニティにて情報攻撃が仕掛けられていた。
それらは重要機関に仕掛けられたものではなく、本当に悪戯程度のものとナギサに報告が上がって来ていたので、生徒の悪ふざけ程度と判断したが、ヒフミの話を加味すると少し変わってくる。
そして、エリスの様な生徒をナギサは知らないが、似たような生徒……いや存在には少しだけ心当たりがあった。
心配そうにしているヒフミを見るナギサは、エリスをどうするか考える。
先ずはエリスがトリニティに連なる者なのか調べるのは確定だが、もしもエリスがナギサの懸念している通りの存在なら、トリニティを揺るがしかねない存在となる。
なんにせよ、トリニティに入学をしてもらうのが優先だろうが……。
「確認ですが、そのエリスさんは現在入る学校について、考えている状態なのですね?」
「はい。最初はアビドス高校に訪れ、次にミレニアムサイエンススクールにその後は……」
「トリニティに来ると?」
「いえ、ゲヘナに行くと言っていました」
微笑んだままナギサは固まり、ヒフミの発言を反復する。
ナギサはとある理由からトリニティの中では珍しくゲヘナに対して排他的ではない。
が、ただの翼持ちならばともかく、エリスがゲヘナに入るのは困る。
ヒフミから相談を持ち掛けられず、遅れてから気付いたならば挽回も出来るが、先手を打てる状態で態々見逃すのは、後々禍根を残しかねない。
アビドスやミレニアムに入学されても困るが、その中でもゲヘナだけは本当に止めてほしいのがナギサの本音だ。
ゲヘナに行ったからと、トリニティに来ないわけではないが……。
(四枚の翼……それは過去に存在したトリニティの調停者の証……なぜ今になって……)
「……ナギサ様……ナギサ様?」
「……こほん。トリニティには、ゲヘナへ行ってから来るのですね?」
「はい。少し心配ですが、エリスちゃんの現状考えると、あまり強く否定するのも悪いと思って……」
「そうですね。心配ではありますが、私達に出来るのは無事を祈る事だけです。人の選択に責任を持つのは、優しさとは言えませんからね」
「はい……」
少し落ち込んだヒフミに、ナギサはどうするか考える。
ある意味、ゲヘナに行ってからトリニティに来るという事は、それだけ準備の時間が取れるという事だ。
少しだけ取り乱し掛けたが、これは好機でもある。
「エリスさんについては、私の方でも探してみます。それとトリニティに来た際に、私の所に連れてきてもらう事は出来ますか?」
「はい。案内をして欲しいとお願いされていますので、大丈夫です」
「それは良かったです。それまでには、朗報を伝えられるように頑張りますね」
ナギサはヒフミを安心させる様に微笑み、それに対してヒフミも微笑み返す。
通常の雑談とは別に、エリスの事で長い時間話してしまったせいか、ナギサの空き時間が無くなり、二人のお茶会は終わりを告げる。
ナギサにエリスの事をお願い出来た事で、肩の荷が下りたヒフミは自宅へと帰ってから荷物の整理を始めた。
そしてエリスから貰った紙袋を取り出し、中を見ると……。
「こ、これはあの限定品のキーホルダー!」
中から出て来たのは、今日ヒフミが買い損ねてしまった、ペロロとウェーブキャットが一緒になっている、限定品キーホルダーだった。
もしもミレニアムに居た時渡されていたら、ヒフミも遠慮しただろうが、こうもお膳立てされてしまえば、流石に返すのも憚られる。
ヒフミはエリスに深く感謝をし、好感度を更に上げた。
エリスへと感謝のモモトークを送り、色々とあった疲れからか、ヒフミはうとうととし始める。
こうして、ヒフミの一日は笑顔で幕を閉じるのであった。