翼を得た少女は自由の意味を探す   作:ココア@レネ

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第2話:XXXG-0W00――ゼロカスタム

「キヴォトス……学校……カイザー……トリニティ……ゲヘナ」

 

 ネットの海(SNS)に潜り込み、情報を探る。

 

 記憶は無いが、スマホの使い方や、調べ方と言った知識はあるので、とても助かる。

 

 平行世界と言っていたし、私が死んだ世界と大きな部分は変わらないのだろう。

 

 ついでとばかりにこの研究所の散策もしたが、なんとこの研究所には出口が無い。

 

 この研究所から出る場合は、決められた場所の壁をぶち抜かない限り、出る事が叶わないのだ。

 

 研究所自体はAIが管理していて、飲食や空調の心配はない。

 

 このまま研究所から出なくても、困りはしないのだ。

 

 けれど、自由に生きろと言われてしまっているし、俺も私もここで一生を終える気は無い。

 

「さてと、情報は集まったし、次は私の事かしら」

 

 私に色々と混ざったせいか、ヘイローの形を認識出来るようになり、ついでに五百キロの銃を軽々しく持てるようになっている。

 

 生前使っていたのがSG550なのだが、百二十倍位ゼロカスタムは重い。

 

 身体を動かせる訓練場もこの研究所はあったので、色々とテストをしてみた所、銃として使うより鈍器として使った方が使い勝手が良い。

 

 オーパーツで作られているらしく、ゼロカスタムはとても頑丈となっている。

 

 此処では人に撃つことが出来ないけど、鈍器として使った方が、まだ手加減が出来る。

 

 基本は非殺傷モードで使う事になるが、気絶されると後処理が面倒な事になる。

 

 ケースバイケースでしょうけど、威嚇射撃としては有効だと思える。

 

 それと、私単体ならば空を飛ぶことが出来た。

 

 まだ俊敏に動けるほどではないので、良い的になってしまうだろうけど、いつかは自由に飛ぶことが出来るだろうか?

 

 まあゼロカスタムを持っていては跳ぶのがやっとだし、私の身体が丈夫だから問題ないけど、ゼロカスタムを持って跳びすぎると、私自身が砲弾みたいなものとなる。

 

 もしくは、空中からゼロカスタムをぶん投げれば、良い感じのクレーターが出来あがるだろう。

 

 ゼロカスタムの大きさ的に、空中から撃った方が自由が利くと思うが……まあ後々考えよう。

 

 あと、私の翼はかなり頑丈で、まさかのゼロカスタムを保持する事が出来た……出来てしまった。

 

 翼ガンラック計画が可能なのだ!

 

 問題は色々とあるが、取り付け用の機械さえどうにかなれば、翼にゼロカスタムを装備させることが出来て、持ち歩くのが楽になる。

 

 ミレニアムサイエンススクールという学校が機械に強いらしいので、頼んでみるのもありだろう。

 

 そして名前だが、私や俺などの混ざった物の知識と、私の見た目から考えて白凰エリスと名乗る事にした。

 

 真っ白だし、大きな翼があるし、あとなんか可愛いから名前はエリスにした。

 

 他意は多分無い。

 

 年齢は分からないが、どうせ死んだ身なので、十四歳という事にしておく。

 

 転入するよりは新入生として学校に入った方が自然なので、そうしておく。

 

 住所とかなくても、金さえあれば入れる学校もあるらしいので、通うこと自体は出来そうだ。

 

 さて、調べる事は調べて、自分の嘘の生い立ちも考えた。

 

 生い立ちと言っても、記憶喪失で押し通すだけだけど。

 

 朝食も食べて、スマホとゼロカスタムも持って準備は出来た。

 

 それでは、外に行くとしましょう。

 

 

 

 

 

1

 

 

 

 

  

 アビドス砂漠にあるカイザーPMCの駐屯基地の一角。

 

 そこでは夜であるにも関わらず兵士が見回っており、少しの異変も見逃さないと気を引き締めていた。

 

「HQ。此方A-1。異常なし」

 

『此方HQ。了解した』

 

 A-1と名乗った兵士は定期報告をして、少しだけ気を抜いた。

 

 いや、現在見回りをしている兵士で、気を抜いていない者はいない。

 

 駐屯基地の周りは全て砂漠であり、人が来ることはまずあり得ない。

 

 レーダーでも周りを確認しているため、内部に裏切り者でも現れない限り、異常など起こることはない。

 

「時間は……まだまだあるな。理事は何を考えているのやら……」

 

 気を抜いて愚痴りはするものの、仕事である以上サボるなんてマネはしない。

 

 それがPMCとして働く者としての矜持だ。

 

『緊急連絡。高エネルギー反応を検知。各位戦闘配備につけ』

 

 HQからの突然の報告に、A-1は気を引き締める。

 

 PMCの兵士内では砂蛇と呼ばれている機械がたまに現れることがあり、駐屯基地を襲ってくる事がたまにある。

 

 今回もそうだと思ったA-1だが、突如遠くで地面から光が天へと昇って行くのが見えた。

 

 目を焼かれるようなその光は、過去に見た砂蛇のビームとは別のように見え、A-1に緊張が走る。

 

「此方A-1。光が昇るのが見えた。詳細を頼む」

 

『此方HQ。観測機器が破損したため、詳細は不明。ドローンにて確認を行うので、警戒して待機せよ』

 

 本部からの報告を聞き、A-1は苦笑いをする。

 

 夜の砂漠のせいで、光の発生源がどれだけ遠いのか不明だが、観測機器を壊す程のエネルギーともなれば相当な強さとなる。

 

 もしもその光を撃たれれば、文字通り消し飛んでしまうだろう。

 

 ビナーのビームですら壊れないように作られているのに、それすらも壊すエネルギー量。

 

 恐怖してしまうのも仕方ない。

 

 どうか襲われない事を願いながら、A-1は銃を持って警戒をする。

 

『此方HQ。ドローンにて確認した所、周囲に反応無し。警戒態勢は継続せよ』

 

「此方A-1。了解した」

 

 反応が無い事に僅かばかり安堵し、A-1は太陽が昇り始めた空を見る。

 

 この事件がカイザーPMC理事の動きを変える事になるとは、今は誰も考えもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 

 

 

「砂漠……砂漠ねぇ……」 

 

 研究所の天井を貫いて外に出たものの、見渡す限りの砂漠が広がっていた。

 

 私が空けた穴は勝手に修復を始めていたが、今の所帰ってくる気は無いので、問題無い。

 

 外に出ると決めた以上。しっかりと覚悟をしなければならない。

 

 とりあえず適当な方向に跳びながら移動を開始したのだが、一向に建物は見えてこない。

 

 出来れば朝を迎える前に、人の居る場所まで行きたいが……。

 

 これだけ広大な砂漠って事は、多分此処はアビドス砂漠だろう。

 

 確か砂嵐のせいで問題が起きていて、生徒がほとんど転校したとか何とか……。

 

 翼のあるおかげで良い感じになっているが、ゼロカスタムのせいで止まっていると、砂に呑まれそうになるのは何とも言えない。

 

 私にしか十全に使えないとはいえ、どこかに放置して盗まれれば大変な事になる。

 

 仕方ないが、これからもゼロカスタムは肌身離さず持っているしかないだろう。

 

 太陽が少し顔を出し始めた頃、砂に埋もれた建物がある所までやって来られた。

 

 歩いても砂に埋もれる事は無く、休憩がてら歩いて移動する。

 

 結構な距離を移動したが、力だけではなく体力もあるようだ。

 

 嬉しいけど、あんな砂漠に研究所を作った男を許す事は無い。

 

 けれど、研究所から出る方法が方法なので、人気のない場所でなければ駄目だったのだろう。

 

「そこの君~、ちょっと止まって~」

 

 朝日に照らされる廃墟を見ながら歩いていると、ふと声が聞こえた。

 

 こんな場所に人が居るなんて、嬉しい誤算だ。

 

「はい。何か御用でしょうか?」

 

 声の主は、私と同じくらいの身長で、ショットガンを持った少女だった。

 

 何だか眠たげにしているが、大丈夫なのだろうか?

 

「こんな何もない所でどうしたの? なんか物騒な物を持ってるみたいだし、おじさん気になるな~」

 

 おじさん……似合わない一人称だけど、指摘するのも……うーん。

 

 とりあえず聞かれた以上は答えないとか。

 

「実は目が覚めたら砂漠に居まして、右も左も分からず歩いてたら、あなたと会いました」

「えーっと、もしかして記憶喪失だったりする?」

「多分そうだと思います。自分の名前は分かりますが、何所に住んでいたのかは勿論、親族が居るのかも分かりません」

「うーん。見た目はトリニティの子っぽいけど、伝手は無いからなー。このまま放置も出来ないし……」

 

 不審がられるかと思ったが、普通に心配されてしまったな……。

 

 私からしたら少女は不審者だし、少女からしたら私は不審者だ。

 

 銃を持っているのが当たり前とは言え、私が持っているのは少し……少々……かなり物騒だ。

 

「何か当てはあったりする?」

「いえ。幸いスマホに電子マネーがかなりあるので、ホテルに泊まりながらこれから考えようかと思っています」

 

 一生までとはいかないが、豪遊しても一年は暮らす事が出来る位の残高がある。

 

 つまり、入学金や授業料の心配はない。

 

「因みにどれ位?」

「これ位ですね」

 

 スマホで残高を見せると、少女は「うへ~」と声を漏らす。

 

 相手が不審者ならば危ない行為だが、私は強いので問題ない。

 

 襲われてもどうにかなるはずだ。

 

「やっぱりトリニティの子だろうけど、攫われた感じかな?」

「さあ。ただ、どの学校に通うか考えていた気がするので、どこかの中学校に通っていたんだと思います」

 

 少女は一瞬固まり、何とも言えない笑みを浮かべる。

 

 ……もしかして、何かやらかしていったのかな?

 

「なるほどね~。この地区にも高校があるんだけど、良かったら見て行かない? おじさんが案内してあげるよ~」

 

 ……それって、アビドス高等学校の事なんだろうな……。

 

 もうほとんど生徒はいないらしいけど、復興を目指して頑張っているって書いてあった。

 

 多分復興費のため、私を入学させようと思ったのだろう。

 

 学校に通おうと思ってはいるけど、入れればどこでも良い…………とまでは思っていない。

 

 それに、私みたいな不審者に声をかける位なのだから、相当危ない状況なのだろう。

 

 俺の部分は問題ないと言っているが、私はヤバいと感じる。

 

 だからと言って、逃げ出すのも気が引けてしまう。

 

「そうですね。折角なのでお願いします。記憶を思い出す切っ掛けになるかもしれないので」

「毎度~。そうだ。一応捜索願が出てないか確認するから、名前を教えてくれない?」

 

 絶対に出ている事はないのだが、名前を教えるのを拒む理由はない。

 

 それと、初めて名前を名乗れるので、少し楽しみだったりする。

 

「私は白凰エリスと申します。年齢は多分十四だと思います」

「エリスちゃんね。おじさんは小鳥遊ホシノだよ~。このまま居ても暑くなるだけだし、とりあえず行こうっか」

 

 アビドス高等学校……出来れば早めに立ち去りたいけど、情報を集めるという点では見に行くのは悪くない。

 

 ネットの情報よりも、自分の目で見る情報の方が大事なのだから。

 

 

 

 

 

3

 

 

 

 

 

 ホシノはいつもの様に夜の見回りを終えて帰ろうとした所、一人の少女を見かけた。

 

 遠目からも分かる位大きな翼を持ち、身の丈を越える大きな銃を抱えており、どうするかと頭を悩ませる。

 

 相手がヘルメット団や不良ならば追い払えば良いが、どう見てもそうは見えない。

 

 とりあえず息を潜めながら近づき、声をかけた。

 

 ホシノに気付いた少女は、警戒すらせずにホシノへと振り返る。

 

(あの銃……見た目通りならかなり重そうだけど、軽々しく持っているな~。それに記憶喪失なんて、まさか二度も遭遇するとは、おじさんも運が無いのかね~?)

 

 軽く話しただけだが、ホシノは少女が悪い人物ではなさそうと考えた。

 

 武器についての謎があるが、キヴォトスでは襲ってこないならばそれで問題ないと見られる傾向がある。

 

 少女……エリスがこれから入る高校を探しているという点も、ホシノとしては嬉しい点であった。

 

 見た限りトリニティ自治区の子だが、仮にこのまま家が見つからなかった場合、アビドス高校で面倒を見る事も出来る。

 

 そうすれば入学金が手に入るので、借金の足しにすることが出来るのだ。

 

 エリスには悪いと思うホシノだが、一つでもチャンスがあるのならば、それを掴み取らないといけない状況にある。

 

「エリスちゃんの銃って重くないの?」

「重く感じませんが、砂の多い場所だと足が沈んでしまう程度には重いみたいです」

「うへ~、おじさんと足跡が全然違うね」

 

 アスファルトの上に積もった砂の上を二人は歩いているが、ホシノとエリスでは足の沈む量が全然違っていた。

 

 ショットガンや替えの弾も持っているので、ホシノ自身もそれなりに重いのだが、それでもエリスの方は一歩毎に足がズズズと埋もれていく。

 

(見た所弾倉は無いし、エリスちゃんが弾を持っているようには見えないな~。排莢口も無いし、どうなっているんだろう?)

 

 長さもさることながら、銃としてあるべきものが無い事に、ホシノは首を傾げる。

 

 銃ではなくて鈍器なのかと思わなくもないが、ちゃんと銃口やグリップはある。

 

 エリスが何者なのかも気になるが、持っている銃……銃? の謎の方が気になる。

 

 銃とは基本的に大きければ大きい程威力が出る。

 

 エリスが持っているそれは銃……と言うよりは砲と表現した方が良いのかもしれない。

 

 戦車の砲撃を受けても死ぬ事は無いが、エリスの銃が見た目通りの威力なら、痛いでは済まない威力があるだろう。

 

 本当は見た目以上にヤバい威力を持った銃なのだが、今のホシノが知る方法は無い。

 

 知っていれば……いや、そんな事はたらればでしかない。

 

「おっ、見えてきたね~」

  

 話しながら歩いていると、アビドス高校の校舎が見えてきた。

 

 裏手のため全容は見えないが、校舎は立派な物であり、やはりネットの情報は当てにならないと、エリスは思う。

 

 ふらりとした足取りでホシノは校舎に入り、それに、エリスも続く。

 

 廊下はそこそこ幅があるため、ゼロカスタムが突っ掛かることはないが、曲がり角などでは歩き方に気を付けなければならない。

 

「あの、此処は?」

 

 エリスが最初に連れてこられたのは、校舎の屋上だった。

 

 心地好い風が吹いているが、何故此処に連れてこられたのか戸惑う。

 

「他の子達が来るまで少し時間があるから、一緒におやすみしようと思ってね~。多分だけど、夜通し砂漠を歩いて来たんでしょ?」

 

 言われてみれば、なる程とエリスは思う。

 

 位置と時間を考えれば、ホシノの考えが普通だし、この事を否定すれば不信感を持たれかねない。

 

 此処まで来れば一応逃げれない事もないが、逃げなければならない理由はエリスにはない。

 

「それでしたらお言葉に甘えて」

 

 屋上の一番高いところには青いマットが置かれており、ゼロカスタムを横に置いてから、ホシノと一緒に寝っ転がる。

 

 しかし……。

 

「スッゴい大きな羽だね」

「……はい。一応こんなことも出来るみたいなので、寝る邪魔になることはないみたいです」

 

 エリスは器用に翼を動かし、自身を包み込む。

 

 それから顔だけを見えるように調整する。

 

 その姿はまるで繭の様だとホシノは思い、ふと手を伸ばす。

 

「うわ、ふかふかだね~。これは眠くなりそうな触り心地だよ」

「私としては邪魔に感じますが、気に入って貰えたなら良かったです」

 

 ホシノは軽くエリスの翼を撫でている内に眠くなり、目を閉じる。

 

 エリスも同じく目を閉じ、風の音に耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 

 

  

 登校してきたノノミとシロコが驚愕し、ホシノを問い詰めるまで後二時間。

 

 

  

 




補足(主人公の簡易プロフィール)

名前:白凰 エリス
身長:百四十三センチ
髪の色:白色のロング
目の色:ライグリーン(緑色)
翼の数:四枚(天使仕様で白色)
銃:ゼロカスタム(ツインバスターライフル)(EW仕様)

補足説明

別のキヴォトスからの来訪者。特殊な方法で蘇生されたため、色々な物が混ざってしまっている。
しかし、基礎となる人格は生前のものだけであり、多重人格者ではない。
記憶も無く、大人に色々とされてきた筈なのだが、結構呑気である。
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