翼を得た少女は自由の意味を探す   作:ココア@レネ

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アンケートのご協力ありがとうございました。アビドスとトリニティが接戦となりましたが、トリニティが人気のようですね。皆さんナギちゃんの胃を痛める事が好きなようですね。

あくまでも参考のアンケートとなりましたが、おそらくベアおばの蒸発だけは避けられないかと思います。


第22話:トリニティの日常(デモ)

「良いお店でしたね」

「はい。ナギサ様が奨めるだけあって、とても素敵でしたね」

 

 最初の予定である服の注文が終わり、そのままトリニティの学校に向かって歩く。

 

「しかし、まさか紹介状を貰えるとは思いませんでしたね……ナギサさんとは会ったことがないはずなのですが……」

「私も相談した時は驚きましたね……なんでなんでしょうね?」

 

 揃って首を傾げるが、答えなんてでない。

 

 私としては儲けものだけど、裏がありそうで少し怖い。

 

 私に出来ることなんて破壊だけなのだけど、最悪の場合は、ヒフミさんを抱えながらトリニティを破壊しなければならないのかもしれない。

 

 無いとは思うけど。

 

「それにしても、ゲヘナもそうですがトリニティも広いですね」

「学園までは一応バスが通ってますが、基本的に寮暮らしなので、使うことはあまり無いですね」

 

 駅から真っすぐ学園まで歩いた場合、大体一時間程かかるそうだ。

 

 ミレニアムの様に学園まで駅を通してくれれば良いのだが、何かしら理由があるのだろう。

 

 ゲヘナもそこそこ駅から学園まで距離があったが、もしかして生徒が問題を起こした際に、駅に被害が及ばないようにしているのかな?

 

 それとも、ゲヘナとトリニティの関係から、駅から攻められるのを警戒してのことだろうか?

 

 聞いた話では、アビドスは高校を移転する前までは近くまで電車が通っていたらしい。

 

 いや、計画段階だったかな?

 

 後、調べた中ではレッドウィンター連邦学園も近くまで電車が通っていた。

 

 何かしら歴史的な理由がありそうだが、私としては一言不便と言う事しか出来ない。

 

「えーと、エリスちゃんは何か先に見たいものとかありますか?」

「そうですね……」

 

 ゲヘナの時と同じく、トリニティについても事前に色々とSNSで情報を集めてある。

 

 トリニティと言えば、選ばれた存在だけがなれるティーパーティーと、ゲヘナの風紀委員会と対をなす正義実現委員会。

 

 それと、シスターフッドと呼ばれる少し胡散臭い組織だ。

 

 私の感覚では、宗教系の組織は大体悪者だと感じる。

 

 多分生前は、何かの宗教的組織と敵対していたのだろう。

 

 俺の部分は侮らない方が良いと言っているけど、どうも宗教は好きになれない。

 

 知らず嫌いかもしれないので、とりあえず見てみようと思ってはいる。

 

 そして私は、嫌なことは先に終わらせる派である。

 

「大聖堂を見に行ってみたいですね。それから、シスターフッドについて少し気になるので、話を聞ければかと」

「大聖堂ですね。私はあまり行ったことがありませんが、とても立派で綺麗な所ですよ」

 

 ニコニコと話してくれるヒフミさんだが、学校をサボってミレニアムまで出掛ける人が、宗教に掛かることなんて無いのだろう。

 

「それは楽しみですね」

 

 トリニティ総合学園の大きな門が見え、更に壮麗な建物が連なっている。

 

 空から見ればさぞ綺麗だろうけど、それはまた今度の楽しみにしておこう。

 

 トリニティ内の移動は徒歩以外にも車だったり、自転車や電動ボードなどもあるが、今回は見て回るのが目的なので、歩いて大聖堂を目指す。

 

「ねえ、あの子って……」

「どこの御令嬢かしら……」

「あれだけの大きさなんて……初めて見ましたわ」

「何か大きくて長い物が見えますが、あれは一体?」

 

 基本的にヒフミさんと話しながら歩いているが、背中の翼のせいか、ゲヘナ以上に視線や私に対するひそひそ話が聞こえてくる。

 

 ゲヘナの時とは違い悪感情は無さそうだけど、妙にこそばゆい感じがする。

 

 まあ直接手さえ出してこないのならば、私としては何もする事が出来ない。

 

 ハルナさんとは違い、とりあえず爆破するなんて暴挙は無理だ。

 

「あれが大聖堂です。今日は天気が良いので、ステンドグラスが良く見えますね!」

「あれが大聖堂ですか……」 

 

 まだ大聖堂までは距離があるけど、遠目でも分かる位大聖堂は凄い。

 

 ヒフミさんの言う通り、日に照らされたステンドグラスが煌めいており、更に空を飛ぶ鳥がとても絵になって…………なって?

 

「……あの、ヒフミさん?」

「えっと、はい?」

「何やらあの鳥達の動きが怪しい気がするのですが……」

 

 しばしヒフミさんと一緒に大聖堂を眺めていたのだが、飛んでいた鳥達が、どう見ても私達の方を目掛けて飛んで来ているように見える。

 

 私の思い過ごしだったらよかったのだが、どうやらヒフミさんも私と一緒の事を思っているようだ。

 

 鷹や鷲といった大型ではないので、危険ではないだろうけど、十六匹の白い鳥が真っ直ぐに向かってくるのを見るとどうすれば良いのか悩む。

 

 いや、私達に向かっているように見えるだけで、実際は違うのかもしれない。

 

 鳥が近付いてくるとアワアワとヒフミさんが慌て出したので、念のためヒフミさんを私の後ろに直ぐに隠せるように、少しだけ前に出る。

 

「……えー」

 

 鳥の動きを見ていたヒフミさんは、何故鳥達が私達の方に向かって来たのかを理解し、微妙そうな声を出す。

 

「……どうやら、私の翼は丁度良い止まり木みたいですね」

「あはは、素敵な見た目ですよ、エリスちゃん」

 

 鳥達は私の翼へと降り立ち、そのまま寛いでいるみたいだ。

 

 生憎後ろを見ることは出来ないが、ヒフミさんの反応でなんとなく分かる。 

 

 翼をはばたかせて追い払っても良いけど、ケープを羽織っているとはいえ、背中が丸見えになってしまう。

 

 辺りには普通にトリニティの生徒がいるので、こんな所で露出狂になんてなりたくない。

 

 仕方ないので、このまま無視をしておくのが一番無難だ。

 

 止まっているだけならば、私に不利益は無いし。

 

 ちょっとした事故があったものの、さて歩き出そうとした所で、再びヒフミさんと一緒に足を止める。

 

「あの、ヒフミさん?」 

「……はい」

「あれってトリニティではよく見られる事なのでしょうか?」

 

 大聖堂の全体に目を奪われていたため、下の方を見ていなかったが、大聖堂の前にはプラカードと思われるものを持った生徒が多数みられる。

 

 距離のせいで声は聞こえないが、何かのデモだろうか? 

 

「いえ、私もあまり見たことが無いですね」

「とりあえず近くまで行ってみましょう。折角の機会なので、出来れば大聖堂の中も見てみたいです」

 

 また今度……となった場合、今の感動も薄れてしまうので、出来ればヒフミさんと一緒に見たいという気持ちがある。

 

「そ、それは危なくないですか?」 

「銃声も聞こえませんし、今の感動を持ったまま大聖堂も見たいのです。それに折角ヒフミさんが居ますのでこの機会を逃したくありません」

「エリスちゃん……」

「それに、もしも巻き込まれそうになりましたら、これで全てを吹き飛ばします」

「エリスちゃん!」

 

 嬉しそうにしたと思ったら、今度は心配そうにしながらヒフミさんは大声をあげる。

 

 やってみなければ分からないけど、どうせお嬢様だし、ゲヘナの不良よりも強いなんて事は無いはずだ。

 

 私にとって数の暴力は問題ないので、跳んでから大きいのを一発撃てば勝てるだろう。

 

 駄目なら追い撃ちすれば良いし。

 

「…………紅茶がなんだー!」

「……珈琲にも日の目を!」

「私達に力をー!」

 

 近付くと声が聞こえ、なんの集まりなのかが分かった。

 

 巻き込まれない程度の距離でデモの内容を纏めると……。

 

「これがトリニティですか……」

「あはは……」

 

 ヒフミさんが居るのだから、この程度ではあまり驚かない……けど……いや、元気があって何よりだ。

 

 トリニティには紅茶部と茶道部。それから珈琲部があるのだが、とりわけ珈琲の地位は低く、来年度は部費を削られるのが決まっているっぽい。

 

 普通ならばティーパーティーへ直訴するのが普通だが、先に権力者の味方を増やそうとシスターフッドに訴えかけているみたいだ。

 

 微妙な搦手をしているのは実にトリニティらしい。

 

 あくまでもデモらしいので、横を抜けて階段を上がっていく。

 

 少々騒がしいが、生徒にはデモをする権利があるとかないとか。

 

 近くに正義実現委員会の黒い服を着た生徒も居るが、実力行使に出ない限り手を出せないみたいだ。

 

 そんなわけで大聖堂の中へと入り、ヒフミさんと一緒に見学する。

 

「あの、少し宜しいでしょうか?」

 

 建物への感動はさておき、中ほどまで進んだところで数人のシスターフッドの制服をきた生徒が道を塞ぎ、声をかけてきた、

 

「はい、何でしょうか?」

「私は歌住サクラコと申します。その翼について少し話をしたいのですが、お時間を頂けないでしょうか?」

 

 リーダー格と思われる生徒が名前を名乗るが、これでは完全に脅しにしか聞こえない。

 

 断れば、無理やりにでも……そんな雰囲気が辺りからしている。

 

 ヒフミさんを見ると、サクラコさんに対して少し怯えたような仕草をしているので、シスターフッドの中でもこのサクラコさんは上の存在なのだろう。

 

 これだからやはり宗教は駄目なのだ。

 

 流石に初手から手を出すのはヒフミさんに悪いので、まずは会話をしてみよう。

 

「お誘いはありがたいですが、今はこちらのヒフミさんに学校を案内していただいている身であり、この後も予定がありますので、辞退させて頂きます」

 「それは申し訳なかったですね」

 

 サクラコさんは申し訳なさそうに謝るが、周りのピリっとした空気は変わらない。

 

 銃に手は掛けていないものの、注意が必要だ。

 

「あ、あの、何か用があるのでしたら、ティーパーティーのナギサ様に話をしてもらえると……」

「なるほど。ティーパーティーのナギサさんのお客様でしたか。もしかしてですが、来年入学予定なのですか?」

 

 ヒフミさんが勇気を出してナギサさんに丸投げするが、サクラコさんは綺麗に受け流す。

 

 見るからに策謀に長けていそうなので、厄介そうだ。

 

「まだ考えている段階です。トリニティ自治区に住んでいるわけではありませんので」

「そうでしたか。個人的にはなりますが、来年は同じ学校の生徒として会えることを祈っています。それでは、どうぞ心行くまで見学していって下さい」

 

 最後に軽く微笑み、そのまま奥へと歩いて行ってしまった。

 

 何やら確認するような、探る様な言葉だった気がするが、何もしてこないならばそれで良い。

 

「す、少し怖い人でしたね」

「ヒフミさんはサクラコさんを知らないのですか?」

「名前だけは知っていましたが、会った事はこれまで一度も……」

 

 私の翼が異常なのは理解しているが、その事について言及してくる人は誰も居なかった。

 

 つまり、サクラコさんは何かしらこの翼の意味を知っている可能性がある。

 

 そして直ぐに引き下がったのを見るに、何か考えていそうだ……。

 

 ハルナさんとは違う意味で、サクラコさんは注意しておいた方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あの、サクラコ様?」

「どうかなさいましたか?」

 

 エリスと別れ、大聖堂の中を歩くサクラコに対し、取り巻きの生徒の一人が声を掛ける。 

 

「あれで宜しかったのですか?」

「はい。出来れば本人から話を聞きたかったですが、生徒ですらない方に無理強いは出来ませんから」

「しかし……」

 

 エリスの翼は、誰がどう見ても普通の大きさと枚数ではない。

 

 どこかの派閥の回し者ではないかと、取り巻きの生徒は危惧をしていた。

 

 目的は不明だが、尋問程度はした方が良かったのではないかと考えている。

 

「良いのです。それに、あくまでも私が個人的に気になっただけの事です。心配は無用です」

「分かりました……」

 

 取り巻きの生徒はサクラコの意を汲んで、話を打ち切る。

 

 この件はサクラコが直々に受け持つ。そう解釈したのだ。

 

 だが……。

 

(あれだけのシマエナガが止まっているなんて……羨ましかったですね……)

 

 サクラコがエリスに話し掛けた理由。それは、翼に止まっていたシマエナガについてだった。

 

 サクラコはただ単純にエリスの翼に止まっていたシマエナガに触りたかっただけであり、それ以外に他意は無い。

 

 来年を楽しみにしてると言ったのも、本当に言葉通りの意味だった。

 

 残念かな。誰一人として、サクラコの真意に気付いた者はいない。

 

(……そう言えば、四枚羽について書かれた本があったような……今度調べておきましょう。さて……)

 

「それと、どうやら外が騒がしいようですので、少し見に行きましょう」

「いえ! 外の件につきましては私達で対処しますので、サクラコ様はどうぞお仕事をなさっていて下さい!」

「そうですか? ではよろしくお願いします」 

 

 このエリスとサクラコの出会いにより、近い将来トリニティの一部が崩壊することになる事を、今は誰も知らない……。

 

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