翼を得た少女は自由の意味を探す   作:ココア@レネ

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基本EW仕様で書きたい所ですが、クロークドカスタムがクッソカッコいいのと、セラフィムユニットやノイエツバークとかロマンしか感じないので、改修工事が入るかもです。ドライツバーく×2とか仕様的に最終戦位にしか使えませんけども。


第26話:中身がありそうで全くない話と、それについて不思議に思わないハナコ

 珈琲部のデモ以外で問題が起こる事は無く、校舎の見学を得た後はナギサさんが発行した許可証を受け取り、ヒフミさんによるモモフレ買い物ツアーに連行されてそのまま一日目が終わった。

 

 まだどこに通うが決めていないけれど、アパートか家についても考えないとな。

 

 個人的には借家の方が良いけどアパートよりも高いし、学校から遠くなってしまう事が多い。

 

 寮という選択肢もあるけど、ゼロカスタムの事を考えると現実的ではない。

 

 私が運悪く転んだりした場合、床がどうなるか目に見えている。

 

 電車とかでも降りる時に注意しないと、転んでしまいそうになるし。

 

 それから四日間図書館に籠らせてもらい、本を読んだり勉強をしたりして過ごした。

 

 そして理由は分からないけど、トリニティ総合学園に入るとどこからともなくシマエナガ達が飛来するようになり、帰るまで翼に引っ付いていた。

 

 何を思って取り付いているのか分からないけど、邪魔になるまでは保留しておくしかない。

 

 翼を羽ばたかせても、直ぐに戻って来るし。

 

 そんな引き籠り生活をしていたのだけど……いや、これはきっと私の解釈違いだったのだろう。

 

 図書館位は静かで争いの無い、救いの場だと思っていたけど、割りと煩かった。

 

 返却期限を過ぎて返却してきた生徒にキレて始まった銃撃戦。

 

 窓の外から放り込まれたフラッシュグレネードを投げ入れ、本を盗もうと侵入してきた生徒との銃撃戦。

 

 何かの本の解釈違いにより始まった、喧嘩という名の銃撃戦。

 

 キヴォトスでは、学生の本分は勉強ではなく、きっと銃撃戦なのだろう。

 

 温厚な私でも何度かゼロカスタムをぶっ放そうかと考えたけど、全部ハンドガンでどうにかした。

 

 一発でも撃てば、その時点で図書館の本が燃え尽きる事になるので、頑張って自制した。

 

 ついでに、正義実現委員会と顔を合わさない様に逃げ続けた。

 

 そんなハンドガンだけど、ハンドガンである以上、装弾数や火力に少し難があるものの、何度も使っていると愛着が湧いてくる。

 

 違法であり、色々とカスタム済みではあるけれど、この際だし名前を付けるのと、自分用に少しカスタマイズしようと思う。

 

 銃の名前なんてとは思うけれど、本を読んだ限り銃に名前を付けるのには意味があるらしい。

 

 名前を付ける事で何やら神秘の乗りが良くなり、銃自体の強度もあがるみたいだ。

 

 ヒフミさんやホシノさんにモモトークで聞いてみたところ、二人共名前を付けていた。

 

 わたしの銃も型式はXXXG-0W00だけれど、ゼロカスタムと名前が付いている。

 

 それに伴って名前を付けようとは思うけど、なんて名前にするか悩む。

 

 記憶の無い私には、本以外には名前を付けるための知識がない。

 

 分かりやすく言えば、借り物の名前しか付けられない。

 

 もじったりは出来ても、それは私の名前ではない。

 

 何なら私のエリスという名前も借り物ではあるけれど、こんな時のために、私には心強い味方? が居る。

 

 そう、私に混ざっているよく分からない方々である。

 

 会話なんて事は出来ないけれど、感覚で良いか悪いかは教えて? くれる。

 

 私のメインは現在部屋の隅に置かれているゼロカスタムである。

 

 名前の由来は正確には分からないけれど、おおよそは察することが出来る。

 

 ゼロカスタムの目的は、再び相見えるかもしれない色彩を倒すためのものだ。

 

 そしてこれを作ったのは色彩に滅ぼされ、何もなし得なかったモニターの男だ。

 

 そして私は本来死した存在であり、私が私だと証明出来るものは何もない。

 

 つまり、私こそがゼロなのだ。

 

 そしてカスタム。ゼロだからこそ新しく始めるのではなく、ゼロのまま積み重ねてほしい。

 

 色彩という存在を忘れること無く、いざという時の抑止力となるために。

 

 多分……きっと、そんな願いが込められているのかもしれない。

 

 そもそも私の記憶が無い事を、モニターの男は知らないはず……なのだが、私の名前を出してない辺り、記憶喪失の事は想定していたのかもしれない。

 

 私の解釈に対して私の中では否定的な声が多いが、ただのこじ付けであり、過去なんてあっても無くても変わりはしないので、気にしないでおく。

 

 それでも色彩が現れたならば、御礼参りをするつもりではあるけれど。

 

 変わってしまったとは言え、私を生かしてくれたモニターの男に対する、せめてもの恩返しだ。

 

 色彩を殺す事でキヴォトスが滅びる事になるというのなら、私はおそらく滅ぼす事を選ぶ。

 

 私の根底には、色彩に対する消える事の無い想いが根付いている。

 

 私が優先すべきなのは、この世界よりも色彩だ。

 

 だが、これは私のゼロとしての想いであり、これに囚われず自由に生きて欲しいとも言われている。

 

 ならば、銃に付ける名前はその意思を汲み取る様な名前にしたい。

 

 なので付けるとしたら、未来とか、次の何かに繋げられるような名前が良い。

 

 そして私がこのハンドガンを使うのは、取り回しが良いのもあるが、これならば間違いが起こる事も無い。

 

 平和的な銃とも言える。

 

 そこから色々と頭でこねくり回し、良い感じの反応が貰える単語を探る。

 

 そして私が考え抜いた末に導き出した名前は……。

 

「――エピオン。エピオンにしましょう」

 

 今一語源は分からないけれど、多分平和に関係する名前のはずだ。

 

 私は微妙な反応だけれど、俺や色々と混ざっている者達は拍手喝采をしている気がする。

 

 破壊兵器であるゼロカスタムと、次へと繋げるためのエピオン。

 

 我ながら良い感じな気がする。

 

 携帯が少し不便にはなるけれど、後でサプレッサーを取り付けるとしよう。

 

 性能としてよりは、あまり煩いのは好きではないので、ハンドガンとは言えどうにかしたい。

 

 さて、名前を考えている内に朝の支度が済んだので、今日も出掛ける……と言いたい所だけど、もう図書館にはいかなくても問題ない。

 

 読みたい本は一旦読み終えたし、これ以上は別にトリニティでなくても構わない。

 

 トリニティ生ではないので借りて読むことが出来なかったけど、もしも通う事になったら本は借りて読むようにしたい。

 

 あんな所で戦うのはもうこりごりだ。

 

 なので、今日は別の所に行こうと思う。

 

 珈琲部や紅茶部を訪れる事も考えたけど、あんな事があった後なので、顔を見られてはいないと思うけれど、顔を出しづらい。

 

 そして思いついたのが、トリニティ総合学園内にある美術館だ。

 

 暇も潰せるし、おそらく人もほとんどいないだろうから、事件が起こる事もまずない。

 

 それに、自分の審美眼を鍛えるにも良いだろう。

 

 ヒフミさんに朝の挨拶と美術館に行くことをモモトークで送り、ホテルの部屋を出る。

 

 さあ、今日も一日が始めよう。

 

 

 

 

 

 

1

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」 

 

 美術館でもあまり人気の無いコーナーの一角。

 

 そこで溜息をついているトリニティの生徒が居た。

 

 その生徒は椅子に座り、つまらなさそうに壁に掛けられた絵を眺め始める。

 

(何を……間違えてしまったんでしょうね……)

 

 頭に浮かぶのは後悔の言葉だけであり、その瞳には生気もあまりない。

 

 この生徒は他の生徒よりも頭が良く社交的で、人の機微を掴むのが上手く、何よりもお人好しであった。

 

 その結果が今だ。

 

 様々な分派からの勧誘。目に余る行為を堂々とする一部の生徒。

 

 他者を顧みない粗暴な校風。

 

 人との関りは徐々に心を蝕んでいき、この彼女に現実の厳しさを突き付けていった。

 

 最初は彼女も、色々と頑張ろうとしていた。

 

 しかしその頑張りは砂漠に一滴の水を垂らすのと同じであり、一を救っている間に十の被害が出てしまっていた。

 

 そしてなによりも、彼女は優れているが故に、自分が上に立ってはいけないと理解していた……してしまった。

 

 学園に居てもただ辛いだけであり、とうとう逃げ出して来たのだ。

 

 だが、それでも校内から出ない辺り、育ちの良さが窺えるとも言える。

 

 これがゲヘナならば、学校をボイコットした後に街へ繰り出し、適当な飲食店を爆破した後に盗んだ車で走り出している事だろう。

 

 トリニティを辞める……そこまではまだ考えてはいないが、これからどう振舞って行こうか。

 

 それが今の彼女の一番の悩みだ。

 

 一年の時と同じように振舞えば、彼女の心は完全に死んでしまう。

 

 だからと言ってどうすれば良いのかと考えても答えは出ない。

 

「……!」

 

 コツン……気を抜いていた彼女の耳に、誰かが近寄ってくる足音が聞こえた。

 

 こんな朝から美術館に来るのは、美術部の部員か、彼女と同じく一人きりになりたいような生徒位だ。

 

 そしてそういった訳ありの生徒に、彼女は弱い。

 

 出会う前に逃げる……には場所が悪かった。

 

 人気の無いコーナーなだけあり、ここは美術館の一番奥で袋小路となっている。

 

 もしも出会わないようにして逃げるには、関係者以外立ち入り禁止の扉から出る以外方法が無い。

 

 既に擦り切れ始めている彼女は何もしない事を選び、ただ椅子に座って向かってくるであろう生徒を待つ。

 

「あら、おはようございます」

「……ええ、おはようございます」 

 

 現れたのは、正実のハスミよりも大きな翼を持った、私服の少女だった。

 

 四枚の翼は白く美しい物であるが、そこにはあまりにも大きな銃が吊り下げられている。

 

 更によく見ると、シマエナガが翼に止まっており、あまりのちぐはぐさに固まり、言葉が一瞬出なかった。

 

 制服を着ていない事に安堵しながら、何故こんな所に来たのかと考える。

 

「もしかして、美術部の方ですか?」

「いえ、ここで休んでいるただのトリニティ生ですよ。それより、制服を着ていないようですが、あなたは?」

「私はトリニティの学校見学をしている、白凰エリスと申します。少々奇異な見た目ですが、本日は美術館の見学に来ました」

 

 ああ、また新たなトリニティの被害者が増えるのか。そう、彼女は憂鬱になる。

 

 見学という言葉には嘘は無いのだろう。けれど、よりにもよって今日とは運が無いと、心の中で溜息をつく。

 

「私は浦和ハナコです。今日は……サボりですね」

 

 ハナコは言い訳を考える気力も湧かずに、思わず本当の事を漏らす。

 

 相手はトリニティ生ではなく、正直どうでも良くなり始めていたためだ。

 

 そんな今にも自殺してしまいそうな様子のハナコを見たエリスは、美術館に来るべきではなかったと嘆く。

 

 ここで見なかった事にして立ち去るのは簡単だ。

 

 その選択肢はエリスの中にある。

 

 けれど、エリスの中に混ざっている一部がそれは悪手だとエリスに教える。

 

 そして折角未来のためとエピオンを手に入れて早々、逃げては駄目だろうとエリスは逃げるのを諦めた。

 

「何やら辛そうですが、良ければ話を聞きましょうか? 私はトリニティとは関係ないので、少しは話しやすいと思いますよ?」

 

 エリスの言葉を受け、ハナコは言葉に詰まる。

 

 トリニティ生としては、他者に弱みを見せるのは悪だ。

 

 けれど、相手はトリニティとは関係ない……関係ないはずの少女だ。

 

 どう見ても背中のそれはトリニティの象徴ではあるが、その象徴に付いている物は、確かにトリニティの物ではない。

 

 ならば……。

 

「……エリスさんは自由とは何なのだと思いますか?」

 

 本質的な質問ではないが、それはハナコが求めるモノでもある。

 

 自分らしい生き方とも言えるが、それが今のハナコには良く分からない。

 

 だが、ここで一つ問題があった。

 

 そう、エリスも自由とは何なのかを探している側の人間だという事だ。

 

「自由ですか……言葉通りならば、何にも縛られていない状態と答えるのですが、そうではないのは分かります。そうですね……私自身も自由とは何なのか探している身ですが、私が思う自由とは自分の意思を貫く事が出来るかどうかだと思います」

「自分の意思……ですか」

 

 ハナコは、自分がこれまでやって来たことを思い出してみる。

 

 人として。トリニティの生徒として。それが最善の選択だから。

 

 そんな理由でこれまで生きてきた。

 

 そして今見限ろうとしている。

 

「そうですね……例えばですが、私がここで銃を乱射したとして、ハナコさんは止めますか?」

「……止めますね。ここの作品は人気が無いとは言え、誰かが心を込めて描いたものですから」

「とても良い事だと思います。それが当たり前であり、普通ならば誰だってハナコさんと同じ選択をすると思います。銃を乱射する行為は誰かに迷惑を掛ける行為でもありますから。では、私がここで服を脱いだとしたらどうしますか?」

 

 服を脱ぐ……虐めとかではなく自分の意思で脱ぐにしても、それはハレンチな行いであり、誰かの迷惑に……なるのだろうか?

 

 何故かハナコは直ぐに止めるという言葉が出て来ず、その理由を自分なりに考えようとする。

 

「私が私の意思で服を脱ぐ。それは自由であり、誰かに邪魔をされる様なものではありません。公然わいせつ罪というものもありますが、服を脱ぐという行為は誰かに咎められるものではありません」

 

 エリスは自分で語っておきながら、一体何を話しているのだろうかと自問自答する。

 

 自由とは何かと聞かれても、本人も分かっていないわけだが、単純に服を纏っていない姿とは、自由と言えるのではないだろうかという発想だ。

 

 つまり、本人も意味が分からない。

 

「ハナコさんが何故自由について悩んでいるのか分かりませんが、一度全てを脱いで、考え直してみるのも良いのではないでしょうか? 流石に裸はまずいので、水着とか着ていた方が良いと思いますが」

 

 エリスは柔らかな笑みを浮かべ、考えることを止めた。

 

 いい話の様に締めたが、これでは服を脱げと言っているようなものだ。

 

 相手次第では、セクハラで訴えられてもおかしくない。

 

 しかし、これまで真面目に生きてきたハナコにとって、エリスの話は興味深いものであり、エリスが真剣に話してくれたのだと分かった。

 

 服を脱ぐ。それはごく当たり前の行為かもしれないが、逃げることを選べないでいるハナコにとっては、一つの選択肢になり得た。

 

 もしかしたら将来、トリニティに本当の意味で見切りをつける事になるかもしれないが、それはまだ早い。

 

 他者を変える前に、まずは自分を変える。

 

 言われてみれば当然の事だ。

 

「……答えてくれてありがとうございます。少しですが、悩みが無くなりました」

「いえ、ハナコさんにとっての自由が見つかると良いですね」

 

 エリスの表情と声から、それが本心からだと理解し、ハナコはエリスの事を不憫に感じた。

 

 自由を探しているのだと、エリスは最初に話しており、そんなエリスがトリニティに入学すれば、この笑みが曇ってしまうかもしれない。

 

「エリスさんも、見つかると良いですね」

「ありがとうございます。ですが、自由であることが幸せとも限りません。何を持って自由なのか。まずはそれを見つけようと思います」

 

 エリスは最後に頭を下げ、ハナコの前から去って行った。

 

 小さいはずのその背中はとても大きく見え、ハナコのすり減った心が少しだけ回復する。

 

「……私も少し頑張ってみるとしましょう」

 

 善は急げと、ハナコはその場で制服を脱ぎ、下着姿になる。

 

「――これは!」

 

 その時、ハナコに電流が走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時のハナコと話したことを、エリスは来年後悔するのだった。

 

 あんな真面目そうな人が、あんなことになるなんて…………と。 

 

 

 

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