降り注ぐ日差し。カラッとした空気。
久々のアビドスは、やはりとても暑い。
トリニティ総合学園の入学を決め、入試試験もサクッとクリアしたので、ホシノさんとの約束通りにアビドスへとやって来た。
来年入学する生徒に会わせたいとの事だけど、私なんかで良いのだろうかと思わなくもない。
どんな子なのかモモトークで聞いてみるも、会ってからのお楽しみと返されてしまった。
ただ、二人ともホシノさんが太鼓判を押す良い子らしい。
折角なので服装は動きやすい服を着てきたけど、あまり空気が籠らないので過ごしやすい。
ほんの少しだけだけど。
待ち合わせはアビドス高校ということで、近くまではバスで向かい、途中から徒歩となる。
遠目に見えるアビドス高校からは銃声が響いているけど、多分また襲撃されているのだろうな……。
学校を襲うなんて普通はあり得ないだろうし、多分どこかの雇われなのだろう。
俺の部分が遺憾の意を表明しているので、雇っているのは多分悪い人だ。
急いで向かえば戦闘には間に合うだろうけど、ホシノさん達が負ける様な事は無いと思う。
しかし、おそらく紹介したいという二人は既にアビドスに居るだろうし、折角ならば運命的……感動的……思い出になる様な出会いにしてみたい。
この服は運動を想定している服なので、多少無茶なう動きをしても問題なく、アビドス周辺は廃墟ばかりなので、足場にしても問題ない。
ゼロカスタムに付けられるようなスコープがあれば、遠距離から狙撃も出来そうだけど、またの機会にしよう。
ゼロカスタムを両手に持ち、一気に飛び上がる。
後は廃墟を足場にしながらアビドスへ向かい、空中から狙撃するのが私の作戦だ。
1
「うへ~。本当にタイミングが悪いな~」
「全くです。折角あの子が来てくれるのに」
「あの子が誰だが知りませんけど、早く応戦してください!」
いつもの様にヘルメット団の襲撃を受けているアビドスの面々だが、ホシノはいつも通りやる気が無く、ノノミはプンプンと怒りながら頬を膨らませる。
そして前回エリスが来た時とは違い、今日は二名増えていた。
「敵はヘルメット団十五名……装備は全員アサルトライフルですが、グレネードを持っています」
「流石アヤネちゃん。さてそれじゃあ今日もやるとしますか。セリカちゃんは援護をお願いね」
「わかったわ」
来年度入学予定のアヤネとセリカ。
この二人だ。
ホシノ達に会わせたい人が居ると言われ、アビドスへやって来たものの、運が悪い事にヘルメット団の襲撃に巻き込まれてしまったのだ。
アヤネはサポートに特化しており、戦闘自体は得意ではない。
反面セリカは運動神経が良く、戦いを得意としている。
ヘルメット団は威嚇するように校舎へと乱射し、ホシノ達は校庭に置かれた遮蔽物へと身を隠す。
「今日こそ校舎を明け渡して貰うぞー!」
「相変わらず元気だね~」
「右は私が行く」
「私は後ろから撃ちまくりますね」
「えっと、それじゃあ私は……」
「セリカちゃんはおじさんと左側に行こうっか」
人数が少ないアビドス側が展開するのは射線をばらけさせるためであり、アヤネは飛ばしたドローンで状況を空から見下ろしていた。
人数的に不利ではあるが、いつもは三人で相手をして勝っているため、セリカとアヤネは多少の緊張をしているものの、手の震えなどは無い。
一人二人と、ヘルメット団を倒していくホシノ達だが、アヤネはその様子を見てあまり良くない状況だと考える。
このままいけばヘルメット団の撃退は終わるが、銃弾の消費が多く、予算が無いアビドスでは弾を買えなくなるかもしれないと危惧する。
節約して戦って下さいとアヤネは言いたいが、節約した結果校舎への損害や、怪我を負ってしまっては元も子もない。
そう思いながら戦いの様子を見ていたアヤネだが、ふと小さな影がドローンに映った。
冷製に俯瞰しているからこそ気付けたのであり、ホシノやヘルメット団達は気付いていない。
『ホシノせ――』
注意するように進言をしようとした瞬間――空から光が落ちてきた。
風圧に煽られドローンの飛行は不安定になり、通話用のインカムから悲鳴や感慨の声が漏れる。
『ド派手な登場だね~』
『一体何なのよ……』
アヤネは窓から顔を出し校庭を見下ろす。
ヘルメット団達が居た場所には大きな穴があき、ヘルメット団達は全員倒れ伏している。
何が起きたのか?
疑問に思うアヤネだが、ふと空から大きく白い羽根が舞い降り、目の前を通る。
羽根に釣られて空を見上げると、空から少女が舞い降りてきた。
『ん。流石エリス』
その幻想的な光景に目を奪われるアヤネだが、シロコの声を聞いて意識を取り戻す。
『あの……彼女がホシノ先輩が話していた方でしょうか?』
『そうだよ~。アヤネちゃんも降りてきて良いよ。もう大丈夫だから』
『は、はい……』
エリスが狙っていた通り、そのあまりにも派手な登場はアヤネだけではなく、セリカの目にも焼き付いていた。
思わず銃を下げ、降り立つ様を眺めてしまった。
しかし、その両手に持つ銃と呼ぶにはあまりにも大きな代物と、知らない相手と言うこともあり、直ぐに銃を構える。
「セリカちゃん。エリスちゃんは味方だから大丈夫だよ」
「ホシノ先輩……」
「あの子が会わせたかった子だよ。中々個性的でしょ?」
個性的……個性的?
何とか言葉の意味を飲み込もうとするセリカだが、その一言で済ませて良い相手ではないと考える。
セリカが聞いているのは同世代であり、良い子であることだけだ。
良い子は空から降ってこないし、空から奇襲なんてしない。
何よりあれだけ大きなものを普通に持てるのがおかしい。
「やあエリスちゃんも。ド派手な登場だね」
「お久し振りですホシノさん。第一印象はしっかりと決めたいと思いまして」
翼から伸びてきたアームに銃を戻すのを見て、セリカは個性的ではなくてヤバい人だとエリスを認識する。
身長こそホシノとそう変わらないが、舞い降りる時に羽ばたかせた翼は身長を越えていた。
更に持っている銃も身長よりも長く、セリカはただ困惑する。
「それじゃあまずは後片付けをしよっか」
「はい。今回は人手も多いので、早く終わりそうですね」
倒れ伏すヘルメット団をホシノ達は門の外へと放り投げ、いつの間にかやって来たノノミとシロコの手には人数分のシャベルが握られていた。
「はい、セリカちゃん」
「えっ、これって……」
「あれを埋めるためですね」
ノノミはエリスが作った穴に視線を送り、セリカは何のためのシャベルなのかを理解した。
「なんで私達が尻拭いをしないといけないのよ……」
「良いから埋めますよー」
文句を言うセリカだが、ノノミに連れられて穴埋めを手伝う。
そこにアヤネも合流をし、瞬く間に穴埋めは終わるのだった。
2
「初めまして。ホシノさん達の友達をしています、白凰エリスと申します。以後お見知りおきを」
ヘルメット団を文字通り殲滅し、 カーテシーで決めたのは良いものの、前回と同じく穴埋めをすることになった。
紹介したいというのはこのツンンツンとしている猫耳の子と、メガネの子だろう。
話を聞く限り、名前はアヤネさんとセリカさん。表面上は私と同じ歳となる。
実年齢……多分十八歳になるので、この中では一番年上かな?
「初めまして。来年アビドス高等学校に入学する奥空アヤネ」
「……黒見セリカ」
アヤネさんは普通に挨拶をしてくれたけど、セリカさんはどうも私の事が気に入らないみたいだ。
「とりあえず一段落付いたし、中でお茶でも飲もうっか。ノノミちゃん。宜しくね~」
「はい」
穴埋めも終わり、前回案内された部屋に案内される。
出されたのは普通の緑茶であり、味はなんとなく薄い気がした。
「それにしても、様変わりしたね~。ミレニアムとゲヘナとかどんな感じ?」
「ミレニアムでは機械が暴走していて、ゲヘナでは脱走がありましたね」
「私達も大変ですけど、他も大変そうですね」
定期的にヘルメットが来るアビドスも確かに大変だけど、確かに他の自治区も争い……銃声の絶えない日々を送っていたな……。
あと爆発も結構していた。
他の自治区も大変だねーと談笑する中、セリカさんだけはジッと私の方を睨んで会話に混じらない。
「それにしても残念だったよ。エリスちゃんが入学してくれれば、おじさんも楽が出来ると思たんだけどな~」
「私としても心苦しいのですが、トリニティ以外に入学する場合、ご迷惑を掛けることになりそうだったので……」
「ふーん」
勿論嘘だけど、馬鹿正直に入学費無料に釣られたなんて言えるはずがない。
アビドスも決して嫌いではないけれど、先立つ金がなければ、自由も糞もない。
ホシノさんがトリニティに対して悪感情を持つかもしれないけれど、ナギサさんが私を抱き込んだのが悪い。
「その代わりと言ってはなんですが、何かあれば直ぐに駆けつけますので、いつでも呼んでください。ゼロカスタムで何でも破壊して見せます」
「ありがたいけど、被害が洒落にならなそう」
ツッコミをシロコさんから貰うも、前回は勝手が分からなかったせいでクレーターを作り、今回は派手に登場するためにクレーターを作った。
威力は調整出来るものの、シロコさんの前で調整して撃った事がないのでそう思われても仕方ない。
まあギリギリまで抑えてもスナイパーライフル程度の威力になるので、どうしようもないのだけど。
「ゼロカスタムだけではなく、ハンドガンもありますので、被害は軽減できます」
懐からエピオンを取り出し、シャキーンと見せ付ける様に構える。
先日買ったサプレッサーも装着しているので闇討ちなんかも出来るようになっている。
……私の翼は闇討ちに向いていないけど。
「ハンドガンって……せめてサブマシンガンとかじゃないの?」
「まあまあセリカちゃん。そうカリカリしないで」
セリカさんの反応に対して、ホシノさんがちょいちょいと手を振って落ち着く様に促す。
確かにハンドガンでは制圧力や火力不足に思われるかもしれないけど、神秘が大量? にある私ならば火力の面は問題ない。
「ハンドガンでしたら、携帯していても邪魔になりませんし、不意を突くには一番ですから。メインがメインですので、カモフラージュにもなりますし」
「確かに取り出されるまで持っているか分かりませんでしたね。服に工夫とかしているんですか?」
「はい。外からは分からないように工夫をして貰っています。その分取り出すのが少し大変ですが、誤差の範囲内です」
「なるほど」
感心するアヤネさんだが、そのアヤネさんの反応を見て、更にセリカさんの目がきつくなる。
うーん。何故こんなに嫌われているのだろうか?
「あの……」
「……何よ」
「何かしてしまったでしょうか?」
「……………………何もしてないわ」
ならなんでそんなに機嫌が悪いのですか?
出していたハンドガンをしまい、セリカさんから目を離す。
「エリスちゃんは入学までの間どうするんですか?」
「どこかでアルバイトをしてお金を稼ごうと思っています。貯金はありますが、生活費を稼がないといけないので」
「ん、良かったら簡単にお金を稼げる方法があるけど、一緒にどう?」
「どんな方法でしょうか?」
「銀行強盗。計画もバッチリ」
……………………流石の私もそれは無理かなぁ。