翼を得た少女は自由の意味を探す   作:ココア@レネ

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他の方のを読んでると、掲示板やら詳細のプロフィールとか書けて凄いなーと思うこの頃。

書くのは好きなんですが、凝った事を考えるのは苦手なんですよね(´・ω・`)

そんな訳で、前日譚最後の話となります。次回から本編です。


第32話:強襲型次期救護騎士団団長ミネ

 シロコさんの銀行強盗をノノミさんと協力して却下し、帰る前に記念写真を撮った日から数日後。

 

 私はトリニティにて銃を突き付けられていた。

 

 その日は借りるアパートをやっと決める事が出来たので、ナギサさんに念のために報告した帰りだった。

 

 今日に限って言えば私はまだ何も壊していないし、戦闘にも巻き込まれていない。

 

 お礼参りかもと思ったけど、相手はトリニティの制服を着ているので、間違いなく違う。

 

 今の所トリニティ生には一度も…………図書館で結構戦っていたか。

 

 でも、あれは正実がメインだったので、私とは関係ないはずだ。

 

 ゼロカスタムも使っていなかったし。

 

「あの……何か御用でしょうか?」

 

 敵意が無い事を示すために両手を上げ、困ったように笑っておく。

 

 相手はショットガンに盾を持っているので、近接戦が得意なのだろう。

 

 なのでこうしておけば、自分が有利だと思ってくれるはずだ。

 

 私の場合ゼロカスタムは上から取る形になるので、本当は銃を構えているのと大差ない状態なのだけど。

 

「失礼しました。例の襲撃をした方の様子を見たかったものでして。私は救護騎士団の蒼森ミネと申します」

 

 構えていた銃を下げ、ミネさんは自己紹介をしてくれた。

 

 ミネさん……ミネさん……確かヨハネ分派の次期首長になる人か。

 

 噂ではかなりの頑固者で、救護騎士団の次期団長になる事も決まっている。

 

 トリニティ内で戦いがあれば救護騎士団を率いて現れ、状況次第では戦っている勢力を見境なく倒しているらしい。

 

 その後に治療を施しているので、悪い人ではないのだろうけど…………怖そうな人だな…………。

 

「私は来年入学予定の白凰エリスと申します」

「エリスさんですね。良ければお茶会でもいかがでしょうか? 少し話したい事がありますので」

 

 本心としてはとても断りたいけど、相手は次期分派のトップだし、ここで逃げても後々追われる可能性がある。

 

 ナギサさんに助けを求めても良いけど、トリニティの分派のトップと話をしておいて損は無い。

 

 怖い人だとは思うけれど、ミカさんの時とは違い、俺も私もミネさんに対して思う所は無いみたいだ。

 

 強いて言えば私が抱いた第一印象と同じく、少し怖いらしい。

 

 一体何があったのだろうか?

 

「今日は予定も無いので大丈夫です。今からでしょうか?」

「そうですね……そうしましょう。私も予定はありませんので」

 

 もしかして、休日に偶然私を見つけたから襲い掛かって来たのだろうか?

 

 ゲヘナに負けず劣らずトリニティも物騒過ぎませんか?

 

 ……今更だけども。

 

「それでは宜しくお願いします」

「はい。それでは移動しましょう」

 

 話したい事とは何なのか分からないけれど…………ハスミさんもだけど、ミネさんも身長が高いな……羨ましい。

 

 背筋もスラっとしているし、何がとは言わないけれど形も良い。

 

 私はしっかりと成長出来るのだろうか?

 

 …………俺も私も、何も答えてくれない。

 

 

 

 

 

 

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 ミネは隣を歩くエリスを観察する。

 

 大聖堂の件と、ティーパーティーから出されたとある発表により、一度話をしようと考えていた。

 

 それが偶然日課の見回りの際に発見したため、ついいつもの癖で銃を向けてしまった。

 

 のほほんとしているが、その翼には大きな銃がぶら下がり、更にシマエナガが十数匹留まっている。

 

 注意した方が良いのか悩むミネだが、大聖堂へと向かう際にすれ違った時も留まっていたのを思い出し、これがエリスにとっての普通なのだろうと考える。

 

 知り合いにもシマエナガを侍らせているのが居るので、この程度で動じるミネではない。

 

「来年入学すると聞いていますが、どこか部活には入る予定なのですか?」

「今の所は考えていません。何やらナギサさんに考えがあるようですが、個人的には帰宅部の予定です」

「ナギサ様ですか……」

「はい、どの学校に入学するか考えていたのですが、ナギサさんと話し合ってトリニティに入学する事を決めたんです」

 

 ナギサ……その言葉を聞いて、ミネはなんのためにエリスが入学したのか考える。

 

 そこまで親しいわけではないが、同じ次期分派のトップとして顔知っている。

 

 政治に興味は一切ないが、エリスの持つ力の一端を見てしまっているので、その力がトリニティにてどう振るわれるかは気になっているのだ。

 

「そうだったのですか。着きましたので、続きは紅茶を飲みながらにしましょう。用意しますので、お待ち下さい」

 

 二人がやって来たのは、救護騎士団の本部にある、談話室の一室だった。

 

 此処に来るまでエリスはミネの隣に居るせいか、可哀そうな目で見られていたが、本人は全く気付いていない。

 

 紅茶の用意とお菓子の用意を終えて、エリスの前へとミネは座る。

 

「どうぞお飲みください。ティーパーティーのよりは劣りますが、それなりかと思います」

「ありがとうございます」

 

 トリニティ生として紅茶の淹れ方を習っているミネだがその造詣は深く、紅茶の種類は勿論のこと、紅茶ごとにお菓子の用意をしている。

 

 紅茶を飲んだエリスは少し心配をしていたものの、普通に美味しかったのでナギサが書いた本の通り優雅に紅茶を飲む。

 

 そんなエリスを見て、ミネも一口飲む。

 

 そして先程の続きについて考える。

 

「エリスさんは大聖堂で何故あんな事をしたのですか?」

「やりたくてやった訳では無いですが、混戦となっていたため、全員倒してしまった方が早かったからです。この銃でしたら、怪我は最小限で済みますので」

 

 現場の破壊の痕跡の割に倒れていた生徒の怪我は殆ど無く、ほとんどがただ気絶していただけだった。

 

 気絶していた生徒達は、目が覚めてから少し疲れが残っていたものの回復は早く、直ぐに復帰出来ていた。

 

 それはミネが気絶させて治すよりも早く、救護騎士団としてはいつもより仕事が楽だった。

 

「……エリスさん。救護騎士団に入りませんか?」

「はい?」

 

 エリスの銃が本人の話す通りならば、ミネにとって……いや、救護騎士団として大きなメリットがある。

 

 いち早く救護をするならば、戦いを終わらせてから始めるのが一番早い。

 

 だからミネは言葉よりも先にライオットシールドで殴っている。

 

 だがそれではどうしても時間が掛かってしまうが、エリスが居れば救護を更に早く済ませる事が出来るようになる。

 

「エリスさんは救護騎士団に必要な人材と考えています」

「そう言われましても……」

 

 エリスはトリニティ内での部活をする気は無く、稼ぎが良い傭兵稼業等をしようと思っている。

 

 出会い頭に銃を突き付けられ、脈絡も無く勧誘されても困るだけである。

 

 救護騎士団について一応エリスは調べてあるが、出てくる話題の八割は目の前に居る真顔のミネについてだ。

 

 トリニティ内で争いが起きれば颯爽と現れ、救護と言う名の暴力で制裁し、怪我人を治していく。

 

 治すのは基本的にミネ以外の人員だが、ミネ自身の腕も素晴らしいらしい。

 

 素晴らしいのだが、まるで暴走特急とSNSでは呼ばれており、トリニティ内では恐れられている。

 

 そんな人物が居る部活に入りたいかと言われれば否である。

 

「エリスさんが居れば、傷付く人はこれまで以上に少なくなります」

「お誘いはありがたいのですが、私の個人的な事情もありまして、トリニティ内の勢力に加わりたくは無いのです。過ぎたる力は新たな戦いを生み出し、怪我人を増やすだけですから」

 

 今適当に考えた言葉だが、ミネは頷いて言葉の意味を考える。

 

 トリニティの政争に関与していないとはいえ、エリスが居るという理由だけで新たな戦いが起こるかもしれない。

 

 救護するのがミネの使命だが、救護者を増やすのはミネの信条に反する行為だ。

 

 エリスの言い分が間違っている可能性もあるが、あのティーパーティーの紐が付いてる事を思えば、無理強いをしてまでエリスを誘うのは得策とは言えない。

 

 救護に思考を全振りしているミネだが、決して猪突猛進ではない。

 

 だが増えるよりも減らす方の速度が早ければ、問題ないという見方も出来る。

 

「それを加味しても、エリスさんの能力は得難いものだと私は思いますが?」

「……所属はしないで、たまに手伝うという事では駄目でしょうか?」

 

 思っていたよりもミネが頑固だとわかり、エリスは落としどころを提案する。

 

 手伝いと言ってもさっさと逃げてしまえば問題なく、機動力に自信があるエリスはそれで良いやと考えていた。

 

 ――それが間違いだったと気付くのは入学後となるが、ミネは少し考えてからエリスの提案を飲むことに決めた。

 

 強引に進めたとして、エリスの反感を買い過ぎれば、銃口の向く方向が救護騎士団になるかもしれないと考えたからだ。

 

「分かりました。エリスさんにはエリスさんの考えがあるのでしょう。それを無下にするつもりはありません」

「誘って頂いたのに、断ってしまってすみません。私が救護騎士団に所属しないことが救護に繋がるのです」

「その言葉を信じましょう」

 

 口からの出任せで乗りきったエリスは、お菓子を食べて糖分を補給する。

 

 癖が強いが、実直なミネの事をエリスは嫌いではなかった。

 

 朧気ながら自分も頑固だったなーと過去を懐かしみ、自分を曲げない姿勢に共感をしていたりする。

 

 殺されて生涯を閉じた事だけは覚えているエリスだが、過去は過去と割り切っていても、思う事が無いわけではない。

 

 だからなのだろう。ふと、とあることを思いついた。

 

「あの、出来れば良いのですが、手当の仕方などを教えてくれませんか?」

「構いませんよ。一員にならないとは言え、救護を志すその心意気を無下にすることは出来ません。エリスさんの前にも救護を必要とする人が現れるかもしれませんから」

 

 善は急げとミネは教材一式と救急箱を手早く準備し、エリスへと押し付ける。

 

「救護するに当たり、一番大事なのは迅速かつ的確に手当てをする事です。小さな怪我だとしても、そこから感染症になる可能性や、膿んでしまう事もあります。十五ページ目に書いてありますが、手当をする際は患部の消毒は勿論のこと、手当をする側も清潔でなければいけません。また傷の種類により患部に使う道具が変わってきます。詳しくは二十ページ目以降に書いてありますが、絆創膏とガーゼの使い方が分かれば問題ありません。次に……」

 

 エリスの願いにより始まったミネの講座はとても分かりやすい物であったが、興が乗ったミネの講座は数時間ぶっ通しで行われ、エリスは若干後悔した。

 

 終わる頃には日が傾き始め、最後に救急箱と教科書を数冊。それからモモトークを交換して、エリスは救護騎士団本部を後にする。

 

 翼に止まっているシマエナガ達はいつもより若干萎びているが、エリスがトリニティ総合学園を出る時には元気に飛び立ち、散って行った。

 

 大変な目に遭ったが、新しい知識を得る事が出来たと前向きに捉え、アパートへと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、ナギサの下へミネがエリスを連れ去ったと報告が届き、ナギサは頭を抱えるのだった。

 

 

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