翼を得た少女は自由の意味を探す   作:ココア@レネ

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場所も人も一つとして合っていないお茶会はーじまるーるよー。
※追記。誤字脱字報告を誤って不適用にしてしまったため、もう一度していただけると幸いです。


第34話:災禍と厄災のお茶会

「あなたは……」

「初めましてワカモさん」

 

 一発だけ威嚇射撃を行い、ワカモさんが止まるのを確認してから向かい合うように降り立つ。

 

「止めるためとはいえ、撃ってしまってすみません。私は――」

 

 自己紹介をしようとすると、ワカモさんの銃が炎を吐く。

 

 翼で防ぐもののかなり威力が高く、装甲車の機銃くらい痛い。

 

「言わなくても聞き及んでいます。災禍の天使さん」

「そんな名前は知りません」

「そんなにお嫌なのですか?」

 

 ついつい真顔で返してしまったものの、その名前では呼んで欲しくない。

 

 活動的に悪いことはしていないはずなのに、なんでこんな名前がついてしまったのか……。

 

 SNSで否定しても、尾ひれだけではなく翼が生えたり牙が生えたりしてしまっている。

 

 七割位は多分ミネさんのせいだとは思うけど、三割位は自分のせいだと思う事もない。

 

「一応悪人を相手にしている側の人間ですので天使はともかく、災禍はちょっと……」

「……それで、私に何か用ですか?」

「どうしてあれだけの騒ぎを起こしたのか興味がありまして。ついでに、シャーレから飛び出した理由も」

「それを話して私に得がありまして?」

「無いですね」

 

 再びワカモさんに撃たれるものの、受け流すようにしたので翼へのダメージはあまりない。

 

 仮面で顔が見えないけど、イラついているのは分かる。

 

「……動機はただの八つ当たりになります。ええ、八つ当たりです。これで満足ですか?」

 

 ……何やら事情がありそうだけど、ワカモさんと戦うのは得策ではないし、これ以上は危険かな……。

 

 しかし、ワカモさんと会うのは始めてだけど、悪人のはずなのにまったく敵対心が湧いてこない。

 

 それに、俺も私もまるで凪いだ湖の様に静かだ。

 

 ミカさんとはまた違った反応だけど、おそらく私はワカモさんを知っているのだろう。

 

 しかもどちらかと言えば味方として。

 

「はい。十分です。ところで、この後空いていますか?」

「……あなたは何を言っているのですか? このワカモの事を知らない訳ではないでしょう?」

「それはお互い様ではないですか? それに、これ以上騒ぎを起こす気は無いのでしょう?」

 

 個人的な見解だけど、ワカモさんが戦いを挑んでくる場合、倒す事自体は可能だ。

 

 その場合自治区が幾つか更地になって、私も指名手配犯となるだろうけど。

 

 だけど、ワカモさんが逃げる場合、倒すのは無理だ。

 

 ワカモさん個人の強さもあるけど、私は追撃戦が苦手だ。

 

 ゼロカスタムの威力を落とせば確かにそれなりには戦えるだろうけど、身のこなしの差で巻かれてしまうのは目に見ている。

 

 ゼロカスタムをブッパすれば何とかなるとは思うけど、被害が…………うん。

 

「……良いでしょう。少し、私も興味が湧いてまいりましたので」

「ありがとうございます。お茶と紅茶はどちらがお好きですか?

「気分的にほうじ茶が飲みたいですね」

「分かりました。良いお店を知っているので、ゲヘナに向かいましょう」

「……」

 

 まさかワカモさんが、ほうじ茶が好きだとは思わなかったな。

 

 初めてゲヘナで飲ませてもらってから私もほうじ茶が好きになり、ゲヘナで飲めるお店を探したり、家に買い置いていたりする。

 

 お茶と言えば百鬼夜行が有名だけど、山のあるゲヘナもお茶の栽培をしているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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 シャーレを襲撃し、とある理由で逃げ出したワカモだが、その姿はゲヘナにあった。

 

 その理由は、逃げ出したワカモを追って来た、一部の界隈では有名な災禍の天使と呼ばれている、白凰エリスの提案による結果だ。

 

 突如上空から降って来た銃撃。それを避けた先に現れたエリス。

 

 追っ手かと思い攻撃するものの、翼によって防がれ、あまつさえお茶に誘って来た、異分子。

 

 曰く、その姿を見たが最後、次に目にするのは牢獄か病室の天井のどちらか。

 曰く、その銃撃は魔法の様に全てを呑み込んでいく。

 曰く、天から降り注ぐものが全てを破壊する。

 

 閉鎖的なトリニティの中では珍しく、目撃情報はあちこちである。

 

 また、エリスの災禍とはワカモ達七囚人の様に悪名から付けられたものではなく、賞金首や不良から畏怖を込めて呼ばれるようになったものだ。

 

 ワカモも物珍しさに調べたのだが、やっていることは自分より酷く、少しだけ親近感を覚えてたりもする。

 

 四枚の翼で空を飛び、敵対者を殲滅する。

 

 味方としては頼もしいが敵としてはエリス程厄介な相手はいない。

 

 それは正面からの銃弾を防ぎ、二射目には受け流した姿を見て、ワカモは理解した。

 

 戦うだけ馬鹿を見る相手。

 

 それがエリスだ。

 

 まあ、そんな相手と今は向かい合ってお茶を待っているのだが……。

 

「おっ、お待たせしました。お団子のセットになります」

 

 二人に料理を運んできた店員の声は震え、料理を置くと同時にダッシュでいなくなる。

 

 ワカモが悪い意味で有名なのもあるが、先程まで先七囚人の脱走は大きく報じられていたのと、ワカモが暴れていた事も同じく報じられていたため、なんでこんな所にと怯えているのだ。

 

 一人ならば直ぐに風紀委員会に通報するのだが、ゲヘナでも有名なエリスが制止したため、通報はしなかった。

 

「それでは頂きましょう。ここのお団子はほうじ茶によく合うんです」

「……何故トリニティのあなたがゲヘナのお店を知っているのですか?」

「たまにヒナさんとお仕事をしていまして、その関係ですね。風紀委員会はしっかりと代金を払ってくれるので、お得意様なんです」

「トリニティとゲヘナは仲が悪いのではありませんか?」

「こんな見た目ですが、トリニティ生まれではないので、あまり思想には染まっていないんです。ワカモさん程ではないですが、私にも事情がありまして」

 

 

 話しの合間にワカモはお茶と団子を頂くが、自慢するだけの事はあり、とても美味しかった。

 

 ほうじ茶の香ばしい香りと餡子の甘味がマッチし、エリスのせいで高ぶっていた感情が落ち着いていく。

 

「ふぅ。ワカモさんは、ビルの中で先生とお会いしたのですか?」

「……はい。お会いしました」

 

 出来れば触れて欲しくない話題を出され、ワカモは少しだけ固まる。

 

 素人目には分からない位の間だが、エリスにはお見通しだ。

 

「どうして逃げてきたのか気になったのですが、あまり触れてはいけないみたいですね」

「――まさかあのお方を害するおつもりですか?」

「私自身には無いですね。連邦生徒会と関りがあるようですし、下手な事をしてナギサさんに迷惑を掛けたくは無いので」

 

 今のエリスにとって先生は興味のある相手ではない。

 

 他に色々と大変だからなのだが、一番の理由は今エリスが言った通りナギサに迷惑を掛けないためだ。

 

 既に手遅れレベルでやらかしているのだが、本人としてはヴァルキューレやSRTのお世話にさえならなければセーフだと思っている。

 

 世間的な評価としてエリスは恐れられているものの、間違いなく正義側の人間のため、扱いはゲヘナのヒナと同じような状態になっている。

 

 因みにトリニティ内ではとある理由で評価が真っ二つに分かれている。

 

「……そうでしたら結構です。しかし、本当に美味しいですね」

「口に合ったようで良かったです。少し端の方にあるため、あまり混んでいないのも良い点なんですよ」

 

 客が居ない。正確には二人を見てそそくさと逃げ出したからなのだが、元々居た客も二組だけだったため、エリスは単純に食べ終わって帰っただけだと思っている。

 

 ワカモがゆっくりとお団子を味わう中、エリスはお団子とほうじ茶のお代わりをする。

 

 ゲヘナとはいえ、山のふもとにあるこの店までは銃声や悲鳴が聞こえてくる事は無く、ワカモは珍しい静かな時間に、少しだけ満足する。

 

 本人の趣味とはかけ離れた状況だが、静かな時間が嫌いという訳ではない。

 

 破壊の後に残るのは種類が違うとはいえ、今のような静かな時間だからだ。

 

「トリニティに帰らなくても宜しいのでしょうか? 大変な事になっていると思いますけれど?」

「政争には巻き込まれたくないですからね。少し前に仕返しをしたばかりですし、やり過ぎてはまた怒られてしまいますから」

 

 エリスが入学を決める際にナギサとした約束は、案の定機能する事となった。

 

 いくらセイアやナギサが注意を促したとしても、三大分派打倒を掲げる勢力や、ティーパーティーに取り入ろうとする勢力は後を絶たず、入学当初武器以外はお嬢様お嬢様しているエリスはあちこちからちょっかいを掛けられた。

 

 更にエリスを手に入れたい勢力同士が争い合ったり、争いが起きた事を良い事に暗躍し、その結果更なる争いが勃発する、無法地帯一歩手前になり掛けた。

 

 正実も新人の教育等があるせいでてんてこ舞いになり、救護騎士団も頑張ったが手が回らなくなり始めた。

 

 その結果、エリスは仕方なくミネとイチカと協力し、暴れている勢力を全て制圧したのだ。

 

 正実の情報網で位置を特定し、エリスが跳んで向かい制圧。

 

 逃げようとする生徒はミネが一人残らず気絶させていったが…………その裏でセリナは頑張って救護していた。

 

 そうしてトリニティは平和を取り戻し、ミネと一緒にエリスの名は広がり、ナギサが頭ではなくお腹を抱える事となった。

 

 それから暫くしたらセイアが襲われて入院した事により、またトリニティでは火種が燻り始めている。

 

 なので、エリスは下手にトリニティに居ない方がナギサの為になるのだ。

 

「それはそれは――楽しい宴が開かれそうですわね」

「あまり戦いたくはないので、出来れば来ないで下さいね」

「それを決めるのはこの私です。……ですけど、このお団子に免じて、暫くは様子を見るに留めて上げましょう」

 

 誰が敵であろうと目的のためならば手段を問わないワカモだが、だからと言って獣の様になんにでも噛みつくようなことはしない。

 

 しばらくお茶と団子を楽しんだ二人は、一度として銃を向け合うことなく店を出る。

 

 二人の手元にはお土産用のお団子の袋がぶら下がり、ワカモはこの後シャーレに向かう気でいる。

 

 シャーレでの戦いから既に数時間経っており、日も落ちかけていた。

 

「今日はお付き合いいただきありがとうございました。良ければ、モモトークを交換しませんか?」

「……あなたという人は……構いませんが、あまり連絡をしないでくださいませ」

「それは先生に関係する事でもですか?」

 

 外に出た事を良い事に、ワカモはまたエリスに向かって発砲する。

 

 撃っても無駄なのは分かっているが、至近距離のためエリスは翼で防ぐ他ない。

 

 そしてエリスが翼でガードした瞬間に、ワカモは紙を一切れ残して走り出した。

 

 エリスが翼を退ける頃には既にワカモは居なくなり、エリスは紙を拾い上げる。

 

 そこにはモモトークのIDが書かれており、エリスはワカモの事をツンデレだなーっと思うのだった。

 

 

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