尚、タイトルと今回の前書きは関係ありません。
「シャーレにて部員募集……か」
シャーレで先生を助けて、ワカモさんとお茶を楽しんだ日から数日後、シャーレにて部員なるものを募集している広告を発見した。
そう言えばイチカさん経由で、ハスミさんが度々シャーレに出掛けていると聞いたな。
多分ハスミさんはシャーレの部員とやらになったのかな?
学校の部活との兼任も問題ないらしく、キヴォトス内の生徒ならば誰でも歓迎となっている。
一応給料も出るみたいだけど、あの日あった感じだと最低でもユウカさんとかも部員になっていそうだし、これからも増えていきそうだ。
そうなれば給料と言っても一般的な価格だろうし、私にはあまりうま味が無い。
一通り武装は作り終わったので、もうそんなにお金は必要ないけれど、いつ物損でお金を請求されるか分からない。
なるべく組織に属すことで請求されるのを避けていたけれど、入学後にあちこちで頑張ったおかげで、一応お金はそれなりに貯まっている。
後一つだけウタハさんに作って貰いたいけれど、緊急性はないので、後回しで構わない。
これまでにウタハさんに作って貰ったのは、一部の兵器や建物でも使われている、衝撃を吸収する機能を備えた靴。
ゼロカスタムを装備して空を飛ぶために、背中やスカートに取り付けられる追加ブースター兼重力軽減装置。
それとウェポンハンガーを少し改修してもらった。
お値段は家を幾つか買える程度の値段ではあったけれど、名が売れてしまったせいで、案外簡単にお金を稼ぐ事が出来た。
トリニティ生として悪には手を貸さないようにしていたけれど、とある依頼でヒナさんと合同で働く事になり、その縁でたまにヒナさんの仕事を手伝うようになった。
流石ゲヘナだけあり、給料はかなり高かった。
表向きはトリニティとゲヘナは相容れない関係ではあるけれど、個人的なモノなので問題ないと思っている。
とは思うものの、念のためにナギサさんには報告していないけど。
多分バレてはいるけれど、何も言及をしてはこないので、大丈夫だと思う……多分。
SNSやニュースで情報収集も終えたので、着替えてから学校へと向かう。
今日受ける授業は午前中だけなので、午後はどうしようかな……なんて考えながら歩いていると、モモトークの通知音が鳴った。
朝はヒフミさんやミネさんから呼び出しをされる事があるけれど、今日は珍しくミカさんからだった。
少し前に起きた、セイアさんの襲撃事件以降はモモトークで話しかけてくる頻度が激減したけど…………うーん。
いつもはお茶でも飲まない? って文面だけど、今日のいつもと違っている。
要約すると、お願いがあるから旧校舎まで来て欲しいらしい。
怪しい場所ではあるけれど、夜では無くて朝なのでまだマシかな?
個人的に行くのは構わないけど、行った場合授業を休まなければならなくなる。
次のテストまでは期間があり、しっかりと予習復習をしているため赤点を取る危機は無いけれど、既に様々な理由で授業を休んでいるので、これ以上休むのは気が引ける。
まあ、ミカさんには何度もお茶やお菓子を食べさせてもらっているので、その恩返しと考えよう。
決して授業が面倒なのではなく、ミカさんからのお願いだから、仕方ない。
さて、なるべく人には見つからない方が良いと思うので、できるだけ人目に付かない道を使いたいけど、シマエナガ達だけは私が何処に居ようと飛んでくる。
入学して直ぐくらいはトリニティ学園の敷地から出れば私の翼から飛び去っていたのに、最近は数匹程度だけど学園外に付いてくる事がある。
私からは一度として餌付けをしたことが無いのに、なんで翼に止まるのか不思議だ。
1
「あっ、エリスちゃん。来てくれたんだ」
「はい。ミカさんからのお願いは珍しかったので、断るのも悪いかと思いまして」
旧校舎の指定された空き部屋に入ると、ミカさんが窓から外を眺めていた。
旧校舎は放置されているはずなのに、この部屋には綺麗な机と椅子が置かれている。
用意した……のではなくて、何度か使っているみたいだな。
「エリスちゃんは真面目だね。そういう所は嫌いじゃないよ」
「真面目でしたら、授業をサボってこんな所には来ませんよ」
「あはは。それもそうだね……」
笑ったミカさんは、部屋の中央に置かれているテーブルに座る。
席は三つあるが、どうして三つなのだろうか?
しかし、ナギサさんほどではないけれど、ミカさんも空元気な気がするな……。
ミネさんに厳重に口止めされているので何も言えないけど、変な気を起さないと良いな。
とりあえず私もテーブルに座り……ゼロカスタムを外してから座る。
「それで、お願いとはなんでしょうか? 一般生徒の私にティーパーティーのミカさんからのお願いなんて、想像も出来ないのですが?」
「もー、その事はちゃんと謝ったでしょ! パテル派だって一枚岩じゃないんだから」
「私なりのジョークです。何やらいつもと様子が違うようなので」
私はトリニティにある派閥は数多く、派閥や分派の代表だからといって、その組織を完全に制御出来るわけではない。
三大分派と呼ばれている中でパテル派は武闘派の側面が強く、私が潰し……戦った中では一番の勢力だった。
よくミカさんとお茶会をしていたせいで、変な勘違いをしてしまったみたいだけど、面倒極まりなかった。
他の分派全員纏めて最後は吹き飛ばしたけれど、その一件以降私に話しかけてくれるクラスの同級生はゼロ人になってしまった。
一応他のクラスには知り合いはいるけれど、ギリギリ片手の指を超える位しかいない。
別に友達百人作る気は無いので構わないのだけど、こんな学園を管理運営しなければならないナギサさんやセイアさんには頭が下がる思いだ。
「そうかな? 私はいつも通り元気一杯だよー。今ならエリスちゃんの銃だって撃てるかもしれないよ!」
「ミカさんがゼロカスタムを使えるようになると、トリニティが更地になりかねないので、貸す気はありません」
「もー、一度くらい良いじゃーん。私だってドーンってやりたいー!」
「ナギサさんにまたロールケーキを突っ込まれてしまいますよ?」
用事を聞いたはずなのに、何故かいつものお茶会のノリになっていく。
もう授業をサボってしまっているので、時間なんて関係はないのだけれど、お茶の一杯でも欲しくなってしまう。
そんなこんなで十数分過ぎたところで、ミカさんは「あっ」と声を上げた。
「エリスちゃんへのお願いなんだけど、エリスちゃんってアリウスって知ってる?」
「図書館の本に書かれていることくらいは知っています。一応大聖堂にある文献も少しは見ましたが、こちらについてはサクラコさんから口止めをされています」
初めて会った時は異様な圧力を出していたサクラコさんだけど、あれから色々とあった結果今ではお茶のみ友達となっている。
ついでにとある文字を何故か読めてしまっているため、サクラコさんからの依頼で翻訳して書き写したりなんかもしている。
私は口が堅いので無暗に吹聴はしないけれど、トリニティも中々業が深い。
「へー、そうなんだ。それなら説明も省けるね。正直、この事をもっと早く話す事が出来ていればなんて思うけど、エリスちゃんにはある子を守って欲しいの」
「私はあまり守る側の人間には向いていないですよ?」
「それでも、今のトリニティで一番信用できるのはエリスちゃんだからね。ナギちゃんもちょっと疑心暗鬼みたいだからね」
「それは……はい」
セイアさん襲撃事件はトリニティを揺るがす事件だったみたいだけど、なんでここまでミカさんから悲壮感が漂っているのだろうか?
入院先はミネさんが隠しているとしても、ティーパーティーの発表ではちゃんと入院となっているし、よく分からない。
ミネさんも詳しくは教えてくれなかったし、ミカさんやナギサさんに聞くのもなー……。
「エリスちゃんにお願いしたいのは、二年生の白洲アズサちゃん。この写真の子だよ」
一枚の写真を受け取る。
白……いや、銀髪かな? ヘイローは三日月で分かりやすいので、空からでも見付けやすそうだ、
「わかりました。ところで、何から守れば良いのですか?」
「うーん。それはエリスちゃんに任せるよ。エリスちゃんなら間違えないって知ってるから」
今日一番の満面の笑みだけど、トリニティの一部の人達からのこの異様な信頼は何なのだろうか?
どちらかと言えばトリニティに損害を与えている側の人間のはずだと思うのに、ナギサさんを始め皆私に良くしてくれている。
だからこそあまり理由を聞けないのだけれど、任された以上は相応に行動しようと思う。
自由には責任が伴うと言うらしいし。
「分かりました。因みに私から会いに行っても大丈夫ですか?」
「うん。アズサちゃんにはエリスちゃんの事を話してあるから大丈夫だよ。ただ、アリウスについては何も話さないようにね」
つまり、そのアズサさんはアリウスの関係者と……。
確かアリウスは過去にトリニティ総合学園となる際に弾圧を受けて消えたんだったかな?
そんな人物となんでミカさんが繋がっているかは分からないけど…………知らない振りをしてちゃんと理由を聞けばよかったな……。
これももしかして、ミネさんの懸念していた何かなのだろうか?
今度会った時にそれとなく相談してみよう。
「分かりました。因みにこの事をナギサさんには?」
「ナギちゃんには悪いけど、出来れば黙っていて欲しいかな。本当ならエリスちゃんにお願いするのも間違いかも知れないけど、――もう後戻りは出来ないから」
私もナギサさんからミカさんには内緒にして欲しいと言われている事があるので、下手な事は言えないけれど、俺の部分が物凄くザワついている。
なんだか凄い陰謀に巻き込まれている気がするけれど………………まあ困ったら全部吹き飛ばせば良いか。
ちゃんと正当防衛ならナギサさんが処理してくれるので、大丈夫だろう。
「私に出来る事ならなるべく協力するので、あまり自分を追い詰めないで下さいね」
「あはは。大丈夫だよ。それじゃあ、今日はここまでね。また今度お茶会をしようっか」
「はい。楽しみに待っています」
ミカさんは立ち上がり、手を振って去って行く。
私が入学する前から始まった、トリニティ内の数々の事件。
そしてナギサさんやミネさん。それからサクラコさんやハスミさん。最後に今回のミカさんのお願い。
皆色々と秘密を抱え過ぎではないだろうか?
ついでに、私に頼みごとをし過ぎな気がする。
貰うものを貰っているので黙ってはいるけど、トリニティは大丈夫なのだろうか?
まあ他の学校も色々と問題を抱えているのは知っているので、今の所転校は考えていないけれど、ヒフミさんを見習ってほしいものだ。
あれだけ趣味に生きて、そして楽しんでいる人はいない。
ちょっと……かなり度が過ぎている気もするけど、皆があれだけ楽しく生きられるのが私としては理想だったりする。
ただ、ペロロのグッズ欲しさに学校をサボってブラックマーケットに行くのだけは止めてほしい。
傭兵の依頼でドンパチしていた時に、ブラックマーケットで出会った時は本当に驚いた。
まあ他にもブラックマーケットに行っているトリニティ生を見かけはするけど、戦場に巻き込まれているのは今の所ヒフミさんだけである。
……今日はこのままお金を稼ぎに行こうかな。
トリニティにいても何かに巻き込まれそうな予感がするし。