翼を得た少女は自由の意味を探す   作:ココア@レネ

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公式に実質フリーダムが実装されたので、もっとはっちゃけても許される気がするこの頃。



第36話:便利屋68からの個別依頼

 私が依頼を受ける方法は、主に三つである。

 

 SNSで流れてくるばら撒きの依頼。専用サイトにある手数料は掛かるものの、信頼性のある依頼。

 

 そして私個人に向けた、個人依頼の三つだ。

 

 個人依頼はSNSで作った傭兵用のアカウントに、DMで送られてくるようになっている。

 

 個人依頼は時間が合わない事も多く、受ける事は少ないものの、基本的に依頼金が高い。

 

 ただ、たまに偽の依頼もある。

 

 想定より相手の勢力が大きかったり、私を倒して名を上げようとしたり様々だ。

 

 そう言った時は最終的に金品を巻き上げるので、私としては美味しい依頼だったりする。

 

 そして今日だが、運が良い事に個人依頼のDMが届いていた。

 

 少し急ではあるものの、ミカさんの呼び出しで授業をサボっているので、渡りに船だったりする。

 

「依頼金は前と後を合わせて二十万円か……依頼主は……便利屋68?」

 

 便利屋……便利屋……確かヒナさんが何か言っていたような気がするけど、半日で二十万は中々美味しい依頼だ。

 

 依頼内容は依頼を行う便利屋68を、敵勢力から守る事。

 

 予想される勢力は風紀委員会とネフティスか……。

 

 うーん。敵勢力を考えると二十万でも安いけれど、これまで何度も戦っているし、今更か。

 

 ヒナさんには悪いけれど、お金のために少しだけ苦労してもらおう。

 

 後でお茶菓子を持っていけば許してくれるだろうし。

 

 依頼を受けるとDMを返し、待ち合わせ場所を決めてから一度家まで戻る。

 

 ついでに便利屋68についても軽く調べておこう。

 

 

 

 

 

 

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「え、嘘……」

「どうしたのアルちゃん?」

 

 とあるビルにある事務所。

 

 そこで今日の依頼の準備をしていたアルは、スマホを見て固まっていた。

 

 アルはエリスとの出会いから再起し、自ら会社を起こしたアルは、自らか信じるアウトローを貫かんと精進してきた。

 

 その間エリスが作り出した惨劇や伝説に感銘を受けたり、最低限軌道に乗ったところでムツキを勧誘したり、遂には風紀委員会から睨まれたりなんてしながら過ごしてきたこの頃。

 

 少しだけ大きな仕事が入り、外部から傭兵を募ったアルなのだが、無理を承知でエリスにも募集の依頼を掛けた。

 

 エリスの傭兵としての知名度はダントツであり、傭兵界隈では良くも悪くもエリスを知らないものはいない。

 

 良い意味としてはどんな依頼も丁重にこなし、依頼主の落ち度がない限り達成率はほぼ百パーセントであること。

 

 悪い意味としては、裏切りは絶対に許さず、法に触れる行為の場合はどれだけの高額報酬でも蹴って、依頼主をヴァルキューレ送りにするのだ。

 

 ドロップアウトしたトリニティ生が傭兵をしている事はあるが、現役で傭兵をしているのはエリスだけであり、その点でも珍しい。

 

 そんなエリスではあるが、個人依頼を受ける頻度はかなり低く、アルもまさか受けて貰えるとは思っていなかった。

 

 そしてムツキは固まったアルのスマホを盗み見て、驚きの声を上げる。

 

「二人ともどうしたの? 変な反応なんてしちゃって」

 

 銃の手入れをしていたカヨコはおかしな二人を見て、銃を拭いていた手を止める。

 

「アルちゃんが特大勢力のスカウトに成功しちゃったみたい。おかげで、依頼金の八割が無くなるみたいだけどね」

「あ、あの、特大勢力とは?」

 

 アルのスマホを盗み取ったムツキは、テーブルの上に画面が見える様に置く。

 

 そこにはエリスのアカウントが開かれ、受託したとDMが送られていた。

 

「よく受けてくれたね。トリニティ生なんでしょ?」

「そ、そうみたいね。駄目元だったけど、これで今回の依頼は間違いなく達成できるわ!」 

 

 トリニティとゲヘナは仲が悪い。

 

 それは両生徒ならば知っている共通事項であるのだが、エリスは度々ゲヘナの風紀員……正確にはヒナと一緒に居る所を目撃されている。

 

 そして今回アルが受けた依頼は、その風紀員と敵対する可能性があった。

 

 だからこそ駄目元だったのだが、味方ならばこれ以上ない安心感がある。

 

 頬杖をついて、カヨコは意気揚々としているアルをジッと見つめる。

 

 アルと件のエリスの事を人伝でしか聞いていないカヨコは、エリスが風紀員にチクるのではないかと懸念を抱く。

 

 実際はもしもアルからの依頼が違法であるならば、自分で殲滅してから風紀委員会にアル達を送りつけるだろう。

 

「ほ、本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ! それよりも、後二十分もしない内に来るから、お茶の用意をお願いね!」

「は、はい!」

 

 まだ準備するには早いんじゃないかとカヨコは思うものの、溜息を一つ漏らしてからホルスターに銃を仕舞い、依頼の最終チェックを行う。

 

 今回の依頼はカイザーコーポレーションの子会社からの依頼であり、輸送時に他社からの妨害があるとの情報を掴んだので、護衛をしてほしいとのものだ。

 

 また、緊急性のある荷物ではあるがゲヘナ内で襲われた場合風紀委員会によって足止めされる可能性があるため、その場合は振り切って欲しい。

 

 この依頼に成功すれば、カイザーコーポレーションに名前が知られる事になるだろう。

 

 そういった依頼となっている。

 

 僅かばかり臭いのする依頼だが、アルは即決で依頼を受けている。

 

 もしもこの依頼に裏がある場合、エリスがどの様な行動をするか……。

 

 アルからエリスへの依頼が問題なかったとしても、大元の依頼が違法ならば……。

 

 まあその時はその時だと、時間になるまで音楽を聴いて待つ事にした。

 

 そして時間が過ぎ――事務所のチャイムが鳴った。

 

 ムツキは笑みを浮かべ、カヨコは閉じていた片眼を開らく。

 

 アルは外向けの顔を整え、ハルカに扉を開ける様に指示を出す。

 

「初めまして。依頼を受けさせて頂いた白凰エリスと申します。失礼ですが、銃を床に置いても構いませんか?」

「ええ。構わないわ」

 

 服装は確かにトリニティの制服だが、その銃はあまりにも大きく、SNSで見るよりも禍々しい雰囲気を放っている。

 

 銃を手の届かない場所に置くことで、争う気はないと行動で示しているエリスだが、昔それを利用され交渉中に襲われるなんて事件があった。

 

 知る人ぞ知る事だが、エリスはサブウェポンとして常にもう一丁隠し持っている。

 

 ただの拳銃だがその威力はスナイパーライフルに近かったと、被害者は語っていた。

 

 そしてその事件とエリスが他にも武器を持っていることは、一部の人間は知っている。

 

 そしてその中にカヨコは含まれていた。

 

「そ、粗茶ですが」

「ありがとうございます」

 

 ハルカから受け取ったお茶に先に口を付け、依頼主であるアルを見つめる。

 

 何気ない仕草だが、アルはやはりエリスはただのトリニティ生ではないと高揚する。

 

「依頼ですが、メッセージ以外に注意点とかありますか?」

「そうね……間違いなくゲヘナの風紀委員会とやり合う事になるけど、問題ないかしら?」

「はい。流石にヒナさんが出てきた場合は追加の依頼金を貰わない限りは手を引きますが、依頼金次第では足止め位はさせて頂きます」

「そ、そう。それはありがたいわね」

 

 ゲヘナでの傭兵の仕事はヒナが出てくるか来ないかが全てであり、ヒナが出てきた時点で九割以上の依頼は失敗になる。

 

 そのヒナを依頼金次第とは言え抑えると言い切れる傭兵は、そういないだろう。

 

「こほん。依頼の詳細の流れを話すついでに、うちの社員について説明させて貰うわ」

 

 アルは依頼の詳細と、ムツキを始めとした社員をエリスへとドヤ顔で紹介する。

 

 特色のある面々ではあるが、これまで荒波に呑まれてきたエリスとしては特に問題ない。

 

 依頼主にお金を払う意思があり、相手が明確に分かっていれば、後は自力で何とか出来る。

 

 エリスとて無敵では無く、白兵戦になればゼロカスタムは使えず弱点自体はあるが、ゼロカスタムを持てる筋力があるので、実はエリスに近接戦を挑む事の方が無謀だったりする。

 

 撃たれた方が軽傷で済む。

 

 この事を知っているのはミネ位なのだが、大抵の傭兵は近づけさえすればエリスを倒せると思っている…………飛んで逃げられるという事を知っていながらもだ。

 

 説明を聞いたエリスは少しだけ違和感を感じながらも、まあ大丈夫だろうと頷く。

 

 内容としてはトラックをA地点からB地点まで護衛するだけのものだ。

 

 そして争いが起きれば風紀員が出てくるのはゲヘナでは日常である。

 

 エリスの良識が無ければ、二面作戦を提案したかもしてないが、そんな事はせずアル達と共に待ち合わせとなる会社に向かって移動を開始する。

  

「それにしても、依頼を受けるなんて思わなかったよ」

「タイミングが良かったのと、サイトで探すよりはいい金額でしたので。それに風紀委員会の方との噂が流れ過ぎますと、支障が出てしまうので丁度良かったのです」

「……大丈夫なの?」

「ヒナさんならお菓子をお渡せばきっと許してくれるはずです。ほら、私ってトリニティ生ですから」

 

 カヨコは少しだけ不安になるものの、本人が良いならば良いかと黙る事を選んだ。

 

 金払いが良い風紀委員会をエリスは好きだが、蜜月の関係と噂が広がり過ぎれば、傭兵としての仕事が来なくなってしまう。

 

 元々犯罪系の依頼を受けないエリスだが、抗争や防衛。決闘代理人や輸送など若干グレーな物はかなりやってきている。

 

 既に金自体はあまり必要ないものの、いざという時に下手な噂が流れたままでは仕事を受けにくくなるので、戦うのは丁度良い機会だった。

 

 幸い便利屋68はゲヘナの生徒で構成されているため、最終的には内輪揉めで逃げ切れるだろうという算段がある。

 

「お待ちしておりました。便利屋68の皆さま……一人多いですが、まあ良いでしょう。時間があまりありませんがミッションの説明をさせて頂きます」

 

 仮称A社の倉庫へとやってきた便利屋を待ち受けていたのは、二台のトラックと社員と思われるロボットだった。

 

「今回運んでいただくのは、とあるエネルギー資源となります。発電所を作らずとも膨大な電力を生み出す事が出来るため、僻地での電力供給として使われますが、その分費用もかなりのモノになります。本来であればカイザーPMCに護衛を依頼するのですが、別件で外せないため依頼しました。どこからネフティスに情報が漏れたのか分かりませんが、このトラック二台で二十億程の価値があります。なので、なんとしても奪われる事無く護衛を完了させて下さい。詳しいルートにつきましてはこちらのタブレットで確認をお願いします。また、終わりましたら破棄をお願いします。何か質問はありますか?」

 

 社員時間が無いと言いながらもつらつらと話し続け、念を押しながら話を終える。

 

 アルは金額と思いの外大きな依頼ということに内心ドキドキしながらも、社員から受け取ったタブレットをカヨコへと渡す。

 

 因みに依頼書の端の方に小さく失敗時の補償について書かれていたりするのだが、アルは気付いていなかったりする。

 

「すみません。トラックに積まれているエネルギー資源ですが、爆発しますか?」

 

 ひょいと手を上げたエリスの発言にアルは「あっ」と声を上げそうになるが、何とか堪える。

 

「爆発しますが、キヴォトスで使われているシェルターと同程度の容器に入っていますので、仮にトラックが爆発したとしても問題ありません」

「答えて頂きありがとうございます」

 

 それだけ硬いならば大丈夫だろうとアルはほっと一息つき、配置についての指示を出す。

 

 いくらムツキの爆弾でもシェルターを破壊する火力を出すことは出来ず、アルのスナイパーライフルでも数十発同じ所に打ち込まない限りはシェルターに穴を開けることは出来ない。

 

 相手も破壊ではなく強奪が目的のため、威力の高い武器を使ってくることはないので、後は護衛に専念すれば大丈夫だと考えた。

 

 身内にそのシェルターを破壊できる少女が居るとは露程にも思わずに。

 

 

 

 

 

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