翼を得た少女は自由の意味を探す   作:ココア@レネ

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対策委員会編の時系列が割りとうろ覚えだったので色々と見直したのですが、初日の出来事が濃すぎませんかね? どうするか頭を抱える事になりました。


第37話:エリスVS風紀委員の方々+α

「それじゃあ出発してちょうだい。ネフティスが来た場合は私達が、風紀委員会が出てきたらエリスが出る流れよ」

 

 カイザーの子会社である仮称A社から、二台のトラックが発車する。

 

 目的地は百鬼夜行とゲヘナの境目辺りにあるB社。

 

 何事もなければ三時間くらいだろうけど、最低でもセイント・ネフティスからの妨害は確定であり、ゲヘナ内で問題が起これば風紀委員会が出てくるのも確定だ。

 

 最終的に私の仕事は、捕獲のために足止めをしてくるであろう風紀委員を排除することになった。

 

 そして便利屋68の方々が、ネフティスを担当となる。

 

 担当を分けた理由だが、私の誤射を防ぐためだ。

 

 通常の弾ならば当たっても痛いで済む事が多いけど、私の場合基本的に問答無用で気絶させる。

 

 威力次第では一撃とはいかないけれど、非殺傷モード時は強めに撃っているので、八割方一撃で気絶させる事が出来る。

 

 ついでにネフティスの戦力よりも、風紀委員会の戦力の方が多いと予想される。

 

 私が敵と分かれば、間違いなくアコさんは大量の風紀委員を差し向けてくる。

 

 ヒナさんと仲が良いせいか、アコさんは私の事をかなり嫌っている。

 

 ヒナさんと私で六枚羽ーなんて写真を撮って送ったら、それはもう酷かった。

 

 また今度面白い構図が浮かんだら、ヒナさんと写真を撮るとしよう。

 

 ああ見えて、ヒナさんは結構ノリが良かったりする。

 

 どうしようかなーと考えていると、トラックの外から射撃音が聞こえ始めた。

 

『こちらカヨコ。ネフティスとの戦闘が始まったよ。その内風紀委員が来ると思うから、準備をよろしく』

 

「分かりました。風紀委員が出てきたらまた連絡をお願いします」

 

『了解』

 

 作戦開始時に貰ったトランシーバーでやり取りを終えて立ち上がる。

 

 現在私が居るのはトラックの荷台の中となる。

 

 ギリギリまで私の姿を晒さない方が有利になるので、この様な形になっている。

 

 荷台の中は載せている荷物が荷物のため、結構居心地が良かったりする。

 

 それと中から開けられるようになっているため、出る時に扉を壊す必要は無い。

 

 エピオンの動作確認を行い、ハッチのある下に移動しておく。

 

 取り付けている各機器の動作も問題なし。

 

『進行方向に風紀委員が現れたよ。接敵まで後二分くらい。まずは道を開けて』

 

「分かりました。ハッチを開けてください。出ます」

 

『了解』

 

 ハッチが開き、日の光が入ってくると共に空へと跳ぶ。

 

 そして翼からゼロカスタムを受け取り、道の両脇を固めている風紀委員に向かって撃ち出した。

 

「なんであいつが!」

「便利屋ー! あいつ等やりやがったなー」

「誰か! 誰か委員長に連絡を!」

 

 装甲車は吹き飛び、待ち構えていた風紀員は全員ダウンしたみたいだ。

 

 過ぎ去る時に聞かなかった方が良い言葉が聞こえたけど、今からならおそらく間に合わないだろう。

 

 さて、カヨコさんに連絡をしないとかな。

 

 後ろではアルさん達がドンパチしている音が聞こえるけど、下手に手を出すわけにはいかない。

 

「待ち構えていた風紀委員の掃討完了しました。次はどうしますか?」

 

『……第二波が来るまでは待機でお願い。ネフティスの方は何とかなるから何もしなくて良いよ』

 

「分かりました。風紀委員が来るのが分かりましたら連絡をお願いします」

 

 トランシーバーを口から放し、膝を曲げてトラックの上に座る。

 

 ゼロカスタムのおかげで、荒い運転でも振り落とされることはなく、辺りの状況を確認する。

 

 後ろの激しい戦いからするに、おそらく風紀委員会は本腰を入れてくるはずだ。

 

 初動の時点で装甲車を四台も投入しているので、次はおそらく……。

 

「飛んできましたね」

 

『ヘリの処理をお願い。墜落と爆発物には注意して』

 

 止まらないなら壊して止める。

 

 風紀委員会のお馴染みの手法ではあるけど、今回はトラックを壊されるわけにはいかないので、撃たれる前に処理をしなければならない。

 

 ゼロカスタムの出力を上げて撃ち落としてもいいのだけど、その場合ヘリの乗員が大怪我をしてしまう。

 

 流石にそれは避けなければヒナさんに悪いので、ゼロカスタムを開いているハッチからトラックの荷台に置く。

 

 そしてエピオンを取り出し、コッキングしてから空を飛ぶ。

 

 ゼロカスタムさえなければ空を自由に飛ぶことが出来るので、まずは一番近いヘリへと接近する。

 

「有り得ないだろ!」

「一応何度か見せてはいるのですけどね。それではお休みなさい」

 

 機銃の嵐を掻い潜り、ヘリの中へと突入する。

 

 そしてパイロット以外の全員の頭を撃ち抜き、ついでに爆発物だけ外にポイ捨てして、次のヘリへと向かう。

 

「災禍! 委員長の恩を忘れたのか!」

「これでも傭兵ですので、雇われてしまっている以上はなんとも。それと、私の名前はエリスです」

 

 流石にヘリの機銃は痛いではすまないので、なるべく避けはするものの、全ては難しい。

 

 帰ったら翼の手入れをしないとな。

 

 全てのヘリの戦闘力を奪い取り、トラックへと戻ってエピオンのリロードと、ゼロカスタムを翼へとセットする。

 

「ヘリの無力化に成功しました」

 

『こっちも処理が終わったところよ。距離から見て、後一回襲撃が……』

 

「少し待ってください」

 

 カヨコさんとやり取りをしていると、見慣れた紫色の弾丸が私の顔を目掛けて飛んできた。

 

 顔を逸らして避け、更に来る追撃を避け続けると、目の前にあの人が降り立った。

 

「随分と派手に動いてるのね。私が来ないとでも思ったの?」

「私が居ると知られた時点で、可能性はあると思っていました。少しだけ待っていただいても良いでしょうか?」

「……良いわ」

 

 ゲヘナ……いえ、キヴォトス内でも最強と名高い、風紀委員会の長。

 

 多分私が居ると聞いて、飛んできたんだろうな……。

 

 訓練を除いた場合、ヒナさんと戦った回数はあまり無いけれど、一緒に戦った回数ならば結構ある。

 

 だから私が敵対した場合の被害を良く知っている。

 

 なので、この展開は分かっていた。

 

 出来れば出張や休日なら良かったのだけど、そう上手い話はないか……。

 

「ヒナ委員長と接敵しました。依頼金次第では対処致しますが、どうしますか?」

 

 

『……本当に居るの?』

 

「はいトラックの上で、目の前に居ます。出来れば十秒以内に判断をお願いします。返答がない場合は、逃げさせて頂きます」

 

 出来れば私もヒナさんとは戦いたくない。

 

 しかし、ヒナさんをどうにか出来る手を私は持っているので、依頼となれば渋々受けるしかない。

 

『――依頼金を倍払うから対処して。風紀委員会に舐められるのはごめんよ』

 

 カヨコさんからではなく、アルさんから直ぐに返答が来た。

 

 金よりも信を取る。それを即答出来るなんて、流石社長を名乗るだけのことはある。

 

 アルだけに…………なんちゃって。

 

「決まったようね」

「はい。投降することは出来ないみたいです」

「そう。それで?」

「一度何でもいうことを聞くので、見逃して貰えないでしょうか? 今回の依頼に裏がないことは後で説明しますので」

 

 敵と見れば、ヒナさんは問答無用で殲滅する。

 

 けれど、私とヒナさんは友達であり、ヒナさんは私の信条を知っている。

 

 なので、こうやって待っていてくれているのだ。

 

 まあ私とヒナさんが戦うと被害額がとんでもないことになるので、お互いに相当な理由が無い限り戦いたくないのが本音だけど。

 

「……はぁ。またアコに怒られるわよ?」

「菓子折りを持って謝りに行きますので、宜しくお願いします。飲み物はいつものほうじ茶でお願いしますね」

「話しておくわ。それと、便利屋にはあまり肩入れしないで。一応手配してるから」

「そこは金額次第としか。もう少し装備を整えたいので」

 

 急ぎではないものの、ウタハさんには既に製作依頼を出しているので払える準備をしておきたい。

 

「私は帰るから、あまり被害を出さないように」

「寛大なご対応ありがとうございます。明後日の午後に伺いますので、お願いします」

「はぁ……分かったわ。それと、お願いについても丁度良いのがあるから、その時に話すわ」

  

 再びため息をついたヒナさんは構えていた銃を下げ、跳んでトラックから降りていった。

 

 これでお金を貰いながら楽が出来た。

 

 後でヒナさんのお願いを聞かないとだけど、基本的にヒナさんは優しいので変なお願いをする事は無い。

 

 ついでにお願いが暴徒の鎮圧だったり、書類仕事のお手伝いだったりすると、しっかりと依頼料をくれるので、私としてはこの結果に満足である。

 

「こちらエリス。ヒナ委員長の撃退完了しました」

 

『……本当に?』

 

「はい。おそらく風紀委員に襲われる事は無いと思います。アコさんが暴走しなければですが」

 

 風紀委員会の委員長はヒナさんであり、命令権を持っているものの、行政官であるアコさんもヒナさんと同じ命令権を持っている。

 

 なので、ヒナさんが居ない時は風紀員会の全生徒をアコさんの一存で動かせたりする。

 

 そして私はアコさんに相当嫌われているため、ヒナさんがいない事をいいことに、風紀委員会と戦わさせられたことがある。

 

 名目上は総力戦の演習ではあったものの、実質的に風紀委員会対私となっていた。

 

 ゲリラ戦とかならば私は苦手なので、勝敗は分からなかったと思うけど、外で殲滅戦が得意な私にとっては実は有利な演習だった。

 

 結果は私の勝利であり、後日詳細を知ったヒナさんから多額の慰謝料が貰えたので、アコさんにはドンドン暴走して欲しいと思ってたりする。

 

 ある意味ゲヘナの資金がトリニティとミレニアムに流れている事になるけど、政治については上の人(ナギサさん)が頑張ってくれているはずだ。

 

 もしかしたら何も知らないかもしれないけど、ナギサさんなら多分何とかしてくれるはずだ。

 

「なので私の手が空くのですが、どうしましょうか?」

 

『……なら社長の方に合流して、襲撃があったら援護して。増やした依頼領分はお願い』 

 

「ちゃんとヒナさんは追い払ったのですが……」

 

『それはありがたいけど、追加分でこっちの収入が無いから、せめて弾薬費くらいは節約させて』

 

元の依頼金は分からないけど、私の報酬が二倍となれば、アルさん達に残る依頼料はあまり無さそうな気がする。

 

 経費とかどんな契約をしてるか知らないけど、自費がほとんどだし。

 

 まあヒナさんと戦うことを考えれば、今回貰う分でも本当は少ないけど、元々戦う気はないので私の一人勝ちみたいなものとなる。

 

「分かりました」

 

『丁度来たみたい。頼んだよ』

 

 再び後ろで銃撃戦が始まり、数発私の横を通り過ぎる。

 

 出来れば道路を陥没させて一網打尽にしたいけど、ヒナさんに釘を刺されてしまったので、普通に狙撃に徹するとしましょう。

 

 空へと跳び、少し先にある高いビルの上に着地する。

 

 スコープは無いものの、バイクや車を撃ち抜くだけならそこまでの精度はいらない。

 

「夕飯は……唐揚げにでもしようかな?」

 

 小腹が空いてきたので、夕飯の事を考えながらネフティス側の相手を狙撃していく。

 

 アルさんやムツキさん達も頑張っているため、トラックが私の居るビルの前を通る時には殲滅が完了していた。

 

 ビルから飛び降り、トラックの上に着地すると、カヨコさんから無線が入る。

 

『お疲れ。これ以上はもう襲撃は無いみたい。中に戻って来て良いよ』

 

「分かりました……と言いたいのですが、私では助手席に座るのは難しいので、荷台の方で待機させて頂きます」

 

『ああ……うん。確かにそうだね。よろしく』

 

 私の翼は生え方が生え方のため、 椅子次第ではまともに座る事が出来ない。

 

 昔ハルナさんと一緒に牛肉の競りに行った時も、後部座席を一人で占拠していた。

 

 現在このトラックには運転手とカヨコさんが乗っており、席で言えばもう一人座ることは出来るけど、私一人で二人から三人分の席が必要となるので、残念ながら座ることは出来ない。

 

 幸い荷台の居心地は悪くなく、結構広いので翼を畳まなくても問題ない。

 

 折角なので軽くエピオンの整備もしておこうかな。

 

 

 

 

 

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 カヨコさんの言う通り、私が参加した襲撃が最後だったらしく、トラックはそのまま目的地へと到着した。

 

 ヒナさんが出て来たこと以外は普通の依頼であり、荷物の受け渡しも滞りなく終わる。

 

 金額次第では依頼者がお金を払うのを渋り、最後の最後で裏切るなんて事もあるけど、今回は大手企業の子会社なだけあり、あっさりと依頼金を貰って終わった。

 

 まあ終わったのは便利屋68と会社側なので、この後私がお金を貰うのだけど。

 

 予定では二十万だったけど、ヒナさんの登場により倍額となり、四十万となる。

 

 約半日で四十万ならばかなりの高額ではあるけれど…………まあ気にしないで良いか。

 

 普通なら百万貰ってもヒナさんと戦う依頼なんて受ける人は普通いないだけであり、相場もあって無いようなものだ。

 

「今日は助かったわ。まさかヒナが現れるなんて思わなかったけどね」

「結構派手に道路で戦いましたから仕方ありません」

「そう……これが依頼料よ。また何かあったらお願いするわ」

「出来れば風紀委員会と戦わない依頼でお願いしますね。やり過ぎれば、私が出る事になると思いますので」

 

 経済力でゲヘナに勝てる勢力は早々なく、私自身もヒナさんに恩があるので、いざとなれば私はヒナさん側に付く。

 

 なので、私を対風紀委員会として使い過ぎれば、逆に私が相手をするなんて事も起こりえる。

 

「その時はその時よ。相手が誰だろうと、戦うのが便利屋よ」

「そう言いながら、風紀委員長が来たって聞いた時は、固まってたよねー」

「な、何の事かしらね。それじゃあ帰りましょう。またね、エリス」

 

 羽織っている服をはためかせ、アルさん達が帰って行く。

 

 中々愉快な人達だけど、迷うことなく大金を払ってくれる辺り、下手な会社よりもしっかりとしていそうだ。

 

 またどこかで会う事になるかもしれないけど、敵となったら少しだけ手加減してあげようかな?

 

 

 

 

 

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