ついでに作者は翼系のキャラが大好きです。
ウタハさんと一緒にトッテンカンとする事五十分。
ハンガーの試作品が完成した。
金属の色のままなので、少々武骨な印象を受けるが、形状自体はただの棒なので、それほどではない。
ハンガーだけを翼に取り付け、ウタハさんと一緒に射撃場まで来て、起動テストを始める。
「始める前に、軽く説明をしておこう。機能としてはエリスの注文通りに、ゼロカスタムの保持と脱着。それから手元まで運ぶ物となっている。一応防弾には気を遣ったが、被弾には注意するように」
「分かりました」
翼に取り付ける以上、装甲を付けるわけにもいかないし、そもそも駆動させる関係で、難しいものがあるのだろう。
後ろから撃たれたり、爆発物を喰らわない限りは大丈夫だと思うけど、気をつけておこう。
「稼働にはソーラーパネルでの発電と、振動発電を使用しているから、長時間外さない限り問題ない筈だ。それではゼロカスタムを上に真っ直ぐ持ち上げてみてくれ」
「はい」
分割したゼロカスタムを上に持ち上げると、翼から伸びてきたアームがゼロカスタムを持ち上げ、翼に沿うように保持する。
次は手だけを上に上げると、ゼロカスタムが翼のハンガーから持上げられ、手元に移動する。
……少し楽しい。
「格納は約二秒。装備は約三秒か。センサーとプログラムの改良でもう少し何とかなりそうだが……リオが居れば良かったが、無理も言えまい」
おや? ウタハさんはミレニアムの会長と知り合いなのだろうか?
ため息をついているので、聞かない方が良さそうだけど、リオさんはプログラムが得意なのか。
「私としてはこれでも問題ありませんけど……」
「そうか……。人員が居れば自爆機能や、いざと言う時の武器としての機能も追加出来るのだが……」
……そんな機能はいらないので、聞かなかった事にしよう。
「実際に動かした感覚はどうだね? バランスや装着感は?」
「どちらも大丈夫ですね。重心が少し後ろにある感じがしますが、重量的に仕方ないかと。今のところ蒸れとかは感じませんので、多分大丈夫ですね」
「それなら良かった。最後に軽く修正と塗装をするから、ゼロカスタムを外してから、取り外してくれ」
言われた通りに取り外し、ハンガーをウタハさんへと渡す。
残りの作業は私の手を借りる必要も無い程とのことで、再びリンゴジュースを貰い、ウタハさんの作業を眺めながら寛ぐ。
物作りは見ているだけでも楽しく、生前もこんな感じで眺めている時間がかなりあった気がする。
「退屈させてすまなかったね。ふむ、どうやらユウカはまだ戻ってきていないみたいだ」
一時間程でウタハさんは私のところに戻ってきた。
これで三時間くらい経つのだが、ユウカさんは戻ってこない。
大丈夫なのだろうか?
「見ているだけでも楽しかったので大丈夫です。それで、完成したのですか?」
「ああ。その名も武装運べるんだ」
…………俺の部分が物凄くダサいと言っている。
私としてもそれは流石に無い……が、流石に面と向かってダサいと言うのは気が引ける。
名前なんてタダの飾りだし、使わなければそれで良いのだ。
軽く相づちだけして、武装運べるん……ウェポンハンガーを受けとる。
色は私の翼の色に合わせた白となっていて、実際に装着して鏡で確認すると、見た目の違和感はほとんど無い。
ただ、ゼロカスタムは黒よりのグレーみたいな色なので、どうしても目立つ。
多少は翼で隠せるが、完全には不可能だ。
「問題なさそうだね。1つ注意点だが、狭いところでは使わないように。多少は融通が効くが、周りに被害が出るかも知れないからね」
「分かりました。あの、代金は幾らになりますか?」
「迷惑を掛けたから、材料費だけで構わないよ。金額はこの通りだ」
金額は思っていたよりもかなり安く、なんと半額以下であった。
私としては嬉しい限りである。
出来ればちゃんと満額を払いたいけど、ここはウタハさんの想いを汲むのと、まだお金を稼ぐ手段がないので、ありがたくこの金額で払わせて貰おう。
「分かりました。電子マネーで良いですか?」
「大丈夫だよ。このQRコードから支払いを進めてくれ」
しっかりと支払いを終えて、改めてウタハさんにお礼を言っておく……が、それはそれとしてユウカさんが帰ってこない。
「仕方ないが、連絡を取ってみるとしよう。少し待っていてくれ」
「分かりました。その間にトイレに行って来ます」
私の様な不審者を相手に、面倒を見てくれたユウカさんは、間違いなく真面目なのだろう。
そんなユウカさんが約束を破るなんて事はないだろうけど、セミナーとはそんなに大変なものなのだろうか?
将来的に、生徒会だけには入らないようにしようかしら?
妙にハイテクなトイレでさっぱりとして、ウタハさんの所に戻る。
「戻ってきたか。ユウカだが、どうやらリオ……会長にどうしても断れない仕事を振られてしまったらしい」
「それは……大変ですね……」
「ミレニアム全体が忙しいのもあるが、セミナーは人がいないからね。仕方ないが、私が残りを案内しよう」
ユウカさんの代わりにウタハさんか。
先程自分で、ミレニアムは忙しいと言っていたのだが、大丈夫なのだろうか?
「あの、大丈夫なのですか?」
「エンジニア部……正確には私は今日休みだからね。気にしなくても大丈夫さ」
気にする内容だと思うのだけど、つまり休みなのに私のウェポンハンガーを作ってくれたのか……暴走には巻き込まれたけど、やはり良い人なのだろう。
時間は……もう午後になるのか。
お昼ご飯を食べてから、軽く回るくらいかな?
また明日も来ても良いけど、思っていた以上に忙しいみたいだし、知りたい事はユウカさんの説明で知る事も出来たから、明日は街を回るのも良いかもしれない。
軽く電車で街並みを見たけど、色々とあって楽しそうであった。
「でしたら宜しくお願いします」
「任せたまえ。それで、何所に行きたい?」
「先ずはお昼ご飯を食べたいです。お腹が空いてしまいまして……」
朝ホシノさんの家を出る時にしっかりと食べたが、もうすっからかんになっている様に感じる。
神秘を使うと腹が減るのだろうか?
「そう言えばもうお昼になるのか。なら、食堂に案内しよう。私はあまり利用しないけど、美味しい物があるよ」
「それは楽しみですね」
エンジニア部を出て、ウタハさんの案内で食堂を目指す。
腕でゼロカスタムを運ばなくて良いのはとても楽だ。
さっきまではバッグとゼロカスタムのせいで、本当に両腕が埋まっていた。
一応バッグは肩掛けだけど、それでもである。
お昼時なのもあるせいか、朝よりも生徒が多い気がする。
ゼロカスタムを翼に装着したせいで、少し背中の部分の防御が薄くなってしまったが、多分見えていないはず……。
「着いたよ。此処が食堂。お洒落に言うならばカフェテリアになる。食券方式になるけど、やり方は分かる?」
「大丈夫です」
お昼なだけあり、学園全体は勿論カフェテリアにも人が沢山居る。
私の様に翼が生えている生徒は誰も居らず、基本は人だけみたいだ。
有翼なのは基本的にトリニティとゲヘナだけとSNSで見かけたけど、本当らしいな。
そして、私だけなのでかなり目立っている。
ウタハさんの影に隠れたくても、翼とゼロカスタムがはみ出てしまうので意味がない。
食券を売っている自販機は複数あり、メニューも豊富だ。
何を食べるか迷ってしまうな……。
「何かオススメとかありますか?」
「ふむ、そうだね。ハンバーグ定食か、レバニラ炒め辺りがおススメだね。調理用の機械をエンジニア部として納品したのだが、我ながら良い出来だと思う」
そう私に言いながらウタハさんは、特に迷う素振りを見せずに、お刺身定食を買っていた。
オススメの方向性が少し違ったけど、折角だしハンバーグ定食で良いか。
沢山食べられそうだし。
窓口で食券を渡す際に、少しびっくりされてしまったけど、やはりゼロカスタムは威圧感があるか……。
セルフサービスの飲み物を持ってテーブルを確保して、暫くすると配膳ロボットが食事を運んできてくれた。
「しっかりと稼働しているようだね」
「これもエンジニア部が作ったのですか?」
「ああ。一々受付に並んでいては混雑してしまうから、その解決をするためにね。調味料を勝手に降りかける機能を取り付けたのだが、怒られてしまったよ。それよりも、先ずは食べるとしよう。腹が減っては何とやらだからね」
「はい」
ミレニアムにある開発物の大半にウタハさんが関わっている感じがするが、ウタハさんはそれだけ凄い人なのだろう。
ネーミングセンスが個性的だったり、微妙な機能を取り付けようともしているけど、その能力は本物だ。
ハンバーグだが、ウタハさんがおススメするだけあり、普通に美味しい。
合い挽きだがしっかりと歯ごたえがあり、噛むと肉汁が溢れてくる。
デミグラスソースも肉の臭みを消すのではなく、うま味を引き立たせる様に調整されている。
オススメするだけあり、ご飯が進む進む。
「小さいのによく食べるね」
「翼が大きいせいか、とてもお腹が空いてしまって」
「確かに身長に比べてかなり大きいね。四枚ともなると、相応にエネルギーを消費するわけか」
私とウタハさんの身長差は二十センチ程ありそうだが、ウタハさんが普通盛りのご飯一杯なのに対して、私は大盛りで二杯食べている。
しっかりとお腹が減っているので、相応のエネルギーを消費している。
身体の件もあるけど、太ることは無いはずだ。
そう信じている。
あ
しかし、座る時は少し気を付けないと、ゼロカスタムのせいで少し危ないな。
私が力を入れなかったとしても、ぶつかるだけでもかなり痛いはずだ。
座っている以上力を受け流すことも出来ないので、今の私は五百キロの置物である。
それと、椅子も安物だと壊れそうだ。
食べる時だけは外した方が、危険は低いかな?
「ご馳走さまでした。とても美味しかったです」
「それは良かった。さて、どこから見て回りたい?」
「折角なので、ミレニアムタワーを見てみたいです。それから図書館ですね。それと、C&Cという部活があるみたいなので、少し気になっています」
最初にユウカさんと共に入ったのがミレニアムタワーだったけど、出来ればもう少し見て回りたかった。
先にウェポンハンガーがあった方が移動に便利なので、仕方なく先に依頼をした。
エンジニア部がある場所からミレニアムタワーまで徒歩で二十分位掛かり、位置的にモノレールも使えない。
多分たまに起こる爆発でモノレールが壊れないように、距離を離しているのだろうか?
私がミレニアムに来てからも、既に五回くらい爆発やら銃の音が響いている。
これを多いと取るか、少ないと取るかは私には分からない。
アビドスなんて学校を襲ってくる不良や、飲食店へ強盗に来る不良なんてのもいた。
SNSでもスケバンやヘルメット団などが暴れている投稿が流れてきたり、傭兵の募集なんかも流れてくる。
戦いに関しての知識は色彩に負けたこと以外抜け落ちており、俺や混ざった記憶の中にもほとんどない。
意図的にあの男が操作したとは考えられないけど、不思議な感覚である。
生前の私は色彩に殺されたので、最低でも戦いに身を置いていたはずだ。
愛用の銃も記憶に残っているし、生を望んでいて実験に協力をしていたので、相応に戦い抜いてきたと思う。
……まあ生前の事をあまり気にしても仕方ないだろう。
「C&Cか……因みにどんな部活だと?」
「メイド服を着て、奉仕活動をする部活だと」
「間違ってはいないが……C&Cはセミナー直属の部活だから、少し難しいだろうね。今はあちこちの騒動に駆り出されているし、命令権のあるセミナーも同じく忙しいみたいだからね」
なるほど。メイド服が可愛く、少し興味があったのだが仕方ない。
数ある部活の制服の中でも、可愛いと思えるものだったけど、忙しい時に訪ねるのは非常識でしかない。
「それなら仕方ないですね」
「もしかしたら、見学中に会えるかも知れないから、その時は声を掛けてみるのもありだろうね。少し位なら答えてくれると思うよ」
「分かりました」
テーブルにあるボタンをウタハさんが押すと、再び配膳ロボットが回って来たので、食べ終わったお皿を載せる。
やはりハイテクだなー。
「それじゃあ行こうか。未来の後輩のためにね」
「まだ考えている途中ですが、その時は宜しくお願いします」
仮にミレニアムに入るとして、エンジニア部に入るのは楽しそうだからありなのだが、C&Cも捨てがたい。
この事については、また後で考えよう。