「週休4日、正社員雇用」なんて美味い話、ある訳ない! 作:ダブル亮禅
今日は会社は休み、だけど、俺には店の手伝いがある。
いやまあ、最近はなんだかんだで常連客の皆さんとも仲良くやってるし、楽しかったりするから良いんだけどね。
ただ、ふと他のメンバーは休日をどんな風に過ごしているんだろうって、店の買い出しの為に商店街を歩いている時、ボーッと考えていた。
すると、偶然にも前方に大きなリュックサックを背負った司馬さんを発見する。
「あっ!司馬さーん!」
と手を振りながら近づくと、司馬さんもにこやかに手を上げて返してくれる。
しかし、近づくにつれ司馬さんの服装に違和感を感じた。
大きなリュックサックには小さく畳まれた寝袋が結えてあり、腰にはラインジャケットを巻きつけ、ズボンは厚手のストレッチパンツ、極め付けにまだ土がこびりついた登山靴。商店街に似つかわしくない、全身、まさに今、山から降りてきました的な雰囲気。
「えっ!司馬さん、登山とかされるんですか?」
と思わず聞いてしまう。
「あ、はい。あれ、言ってませんでしたか。自分、趣味が登山なもので、休みの日は大体、山にいます。今日は次の週末の三連休にトライ予定の登山計画を前に新しく買った靴の慣らし運転って感じですかね」
普段、無口で喋っても一言、二言ってことの多い司馬さんが、饒舌に話している事に内心唖然としつつも、司馬さんの新たな一面を知れて俺は嬉しくなった。
司馬さんはまだ喋っている。
「そうなんですよ!この靴、スカルパのZGTrekなんです!1割引きで3万ちょいで売ってたんで、即決でしたね。この品質でこの金額は破格でしょ!いやー実はずっとモンブランとどっちにしようか迷っていたんですが、やっぱり日本の山の地形で安心して履けるって安定性考えるならこっちだろって買っちゃいました。今日一日履いてみましたが、最高の履き心地でしたよ!全然疲れない!」
素顔の司馬さんが見れて嬉しくもあったが、優太を完全に置いて、徐々に熱がこもっていく司馬さんの様子にこれ以上は流石について行けそうもないと話を遮る。
「え、え〜と!山へはよく登られるんですか?」
と話題を変えようと話を振る。
「休みの日はほぼ山ですね。前の会社の時はほとんど行けてなかったんですが、ハイブリッジに入ってからは、もう休日全部!山に使ってます!休み多いから、山小屋泊まったり、ビバーグしても大丈夫なんで、思う存分楽しめます。今まで行けなかった分、取り戻すぞーって感じです。近いうち、有給休暇使ってロッキー山脈攻めてやろうとかも計画してます!」
と機械をいじっている時とはまた違った表情を見せてくれる。機械弄りの時もイキイキしてるなと思ったけど、同じイキイキでも山の話をしている時はどこか表情が違うのだ。
仕事でもプライベートでも充実している様子を羨ましく思いながら、社長が気まぐれで作った会社が、週休4日という働き方が、一人の人間の人生をこんなにも充実させている事に感心しつつも、驚かされる優太であった。