「週休4日、正社員雇用」なんて美味い話、ある訳ない!   作:ダブル亮禅

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2話 面接にて

求人を見つけた後、すぐに求人に記載されていた

電話番号に電話をした。

他の人が先に入社決まって求人終わるかもという焦りと、

何より自分の決心が鈍る前に行動しちゃおうと思ったからだ。

「…え、ああ、求人見たんだ。」

電話に出た相手は電話自体あまり慣れていない感じがした。

意外と競争率低いのかもと打算的な期待が高まる。

前の会社ではミス連発で居づらくなって辞めたからね、

他にこの会社求職してる人がいたら、勝てる気がしないだよね。

などと情けないことを考えている。

採用面接希望だと伝えると、

「明日だったらいつでも会社いるから、何時でもいいよ」

と言うので、

店のお客さんが一旦落ち着く3時に面接を予約する。

こんな時まで実家の店を優先してしまう自分が憎い…

 

そして、面接当日。

久々の就活に多少緊張しているのが分かる。

でも、それすらも長年先延ばしにしていた就活がやっと始められたという喜びが優っていた。

目的の会社が入ったビルには30分前には到着した。

そして、ビルの案内板を見て、

「えーと、有限会社ハイブリッジ企画はと…あった!」

ちゃんと目的のビルかを確かめた上で、一旦ビルを出る。

そして、周りで時間を潰してから、ちゃっかり面接時間の5分前に目的の事務所に入る。

「こんにちわ」

入ってすぐ挨拶をしながら事務所の様子を探る。

事務所には事務机と椅子が4セット、奥はパーテーションで見えない。そして、机には三十前後と見られる女性がパソコンに向かっていた。

女性は俺が挨拶すると顔を上げ、

「はーい」

と言いながら俺のいる入り口付近まで来てくれる。

「すみません。面接に伺わせていただきました市川です。」

第一印象が大事!としっかりと名乗る。

「はいはい、面接希望の人ね。こちらにどうぞー。」

そのまま事務所の奥まで案内してくれた。

 

築30年くらいの8階建の雑居ビルの一室、

その奥にパーテーションだけで区切られた一画。

長方形の折りたたみ机の前に

折りたたみ椅子がぽつんと置かれている

机の奥には面接官と見られる男性が机に肘をついた姿勢でこちらを見ている。

まさにthe面接会場な場所で、俺――市川優太は折り畳み椅子の横に通される。

女性は男性に向かって

「社長、面接の市川さん来られました」

と告げる。

「いきなり、社長!」

大学の時した就活以来の緊張感に内心ビビりながらも、

「頑張れ!俺!頑張って社会人復帰するんだ!」

と自分を励ましながら、恐る恐る机の奥にいる人物をみる。

ん?

スーツにビシッと身を固めた、いかにも出来る男風の

ビジネスマンを想像しながら見てみると、奥に座っていたのは

背広を机の上に雑に置いて、ネクタイも外し、カッターシャツもろくにボタンも閉めずだらし無く着崩した男だった。

背筋は丸く、髪はボサボサ、目の下にはクマ。

とても“社長”という肩書きに似合わない。

何より目に覇気がない。

若干混乱しつつも、兎にも角にも相手は社長だ。

ちゃんと本人も

「僕が『代表取締役社長』の!高橋です」

と自己紹介してるし。

なんか代表取締役社長の所がやたらと強調されてた気もするけど、

なんか社長って言った後、やたらドヤって顔してたけど。

「まっ、座って」

なんか、微妙に軽い?

「は、はい」

油断しちゃダメだと、自分に言い聞かせながら、

促されるままに椅子に座る。

ん?なんか口をもぐもぐと動かしている。

あっ!こいつ背広の下にポテチの袋隠してやがる。

と心の中でツッコミを入れながら、平静を装う。

ポテチを咀嚼し終わると、ついに社長が口を開く。

「で、うちの会社なんだけどさ」

ここから本題とばかりにちょっと身を乗り出す社長!

おお!社長っぽい。

先ほどまでの幻滅をきっと帳消しにしてくれると

思わず期待にゴクリと喉がなる俺。

社長の目に真剣な輝きが宿る。

「うちの会社、何すればいいと思う?」

「…………え?」

しばらく思考が止まった後、なんとかそう口に出す。

 

「いやぁー会社立ち上げたは良いんだけどさ、

まだ何やるか決めてないのよ、うちの会社」

とヘラヘラしている社長。

最初からおかしいとは思ってた。

「週休4日・正社員待遇・経験不問」なんて求人。

けどまさか、“やることすら決まってない会社”だったとは。

くそっ!泥舟だ泥舟!こんな会社すぐに潰れる!

時間の無駄!くそーっ!俺の緊張返せ!

と悪態をつく俺。心の中で。

そんな俺に構わず、社長は続ける。

「いやね、僕さ、宝くじで十億当てたんだよ」

予想もしてなかった話が出てくる。

「じゅ、十億!?」

思わず聞き返してしまう俺。

「そう。で、俺ももう27歳じゃん。結婚とかにも憧れあるんだけど、流石にニートで結婚は無理じゃん」

知らねえよお前の年齢なんざ!

え?なんだよこいつ俺と同い年かよ。つーかニートなの!

情報量に頭がついていかない。

「婚活市場で勝とう思ったら、やっぱ肩書きいるでしょ。

で、肩書と言えば、そりゃ「社長」が1番でしょ。

ついでにキャバクラで“社長”って呼ばれたいなぁーって」

婚活の為に社長が1番?何言ってるの?この人。

「だから会社作った」

再びドヤる社長。

 

「ま、そういうわけだから、何やったらいいか考えてよ」

いやいやもう帰るんで俺!と席を立とうした矢先、

社長が頭を書きながら

「あ、しまった!いうの忘れてた」

次は何を言い出すのか、もうあまり関わりたくないんだけど。

「会社は最低でも10年は続ける。これは絶対。

だからすぐ潰れるとかはないから安心して。

金はある。10億ある。

ちゃんと宝くじの10億をこの会社で使い潰すつもり。

別に生活する分には今までもやってこれたし。

一応、半分の5億は、これから先何か始める時のための資金として残して、残りの5億を皆んなの給料やら事務所の家賃光熱費やらに使う。今は僕と市川氏の2人だけだから、このままなら20年は待つけど、やっぱ5人くらいは従業員いないとね」

そこで俺は疑問に気づく。

俺の事を従業員に加えている点もおかしいが、

社長と俺の2人しかいない?

「えっ?さっきの事務員さんは?」

と疑問を口にする。

「あ、あれ姉さん。弁護士やってるんだよ。

この会社の設立やらなんやら難しい事は全部やって貰った。

一応うちの顧問弁護士って感じかな」

気になって立ち聞きしていたんだろう、当の本人が顔を出す。

「当ハイブリッジ企画の顧問弁護士の高橋早紀です。」

と言って俺に名刺をくれる。

「弟の聡史の思い付きにつき合わせちゃってごめんなさいね。

でも、会社については最低10年は待つだけの資金はあるから安心して。まあ事業についても5億あるし、1年でMAX1億位ならじゃんじゃんチャレンジしてくれて良いから。まあ、スキルアップのチャンスとでも思ってくれれば嬉しいかな。」

 

ーなるほど。

すぐ潰れる訳ではない。

そのための資金もあるなら懸念は減る。

事業内容がないことに呆れたけど、

逆に考えればやりたい事やらせてくれるって事でもあるんだな。

元々前の会社失業後は家業手伝いだけで3年過ごしちゃだから、最悪、ここがダメになっても職歴がつくのは有り難いな。

給料も高くはないけど、実家暮らしの俺には十分。

今は中高年の転職も当たり前だし、10年後なら余裕。

かなり打算的な考えだけど、一気に入社に心が傾く。

ダメなら辞めればいい。

そんな軽い気持ちで

「是非、やってみたいです!」

と答えてしまう。

顔を見合わせて喜んでくれる高橋姉弟。

結局、俺は採用されてしまった。

しかし、会社事業内容についてはその場で思いつくことが出来ず、宿題となってしまった。

 

そして、初出社。

スーツで出勤なんて久しぶりだ!

と清々しい気持ちだった。

 

「お、優。どうだ、事業についてなんか思いついた?」

と社長が聞いてくる。

「いやあ、まだこれというものが思いつかなくて」

あの後、かなり考えたんだけど、あまりにも現実離れした宿題に何も思いつかなかったのだ。

「まあ、そんなにすぐには出てこないか。

それなら、今日は僕の仕事を手伝って貰おうかな」

とイタズラっ子のような顔をする。

「それは一体どんな仕事なんです?」

「とりあえずマクドナだ。車出して」

「は?」

わざとに勿体ぶって教えてはくれなかった。

着いたのはマックドナル。

知らない人がいないほど有名な全国チェーンのハンバーガー屋だ。

社長は嬉々として言った。

「ハッピーセットのおまけ、今“期間限定アニメフィギュア”なんだよ。これ転売すんの」

「……へ?」

 

俺の初仕事は転売ヤーの様だ。

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