ブルアカ×8番出口 The Exit 8 Blue Archive 作:how-kyou
ボイス素晴らしい
新任(復帰)先生は辛い
あらすじにも書いてましたが、先生の状況はご想像にお任せします!
聖園ミカは動けずに
放課後の紅茶を嗜んでいる予定だった時間、
私は、気付くと見知らぬ地下通路に立っていた。
灰色の壁、揺れる蛍光灯。
思わず、制服の袖をぎゅっと握りしめる。
でも、心は落ち着かない。
「……なんなのこれ。白昼夢?それとも何か罰ゲームでもされてる??」
カツン、と圧をかけるようにハイヒールの音がひとりきりで響く。
返事はない。
ただの残響だけが返ってくる。
前方の壁、黄色い案内板に書かれていたのは、奇妙なルールだった。
・異変を見逃さないこと
・異変を見つけたら引き返すこと
・異変がなければ進むこと
・8番出口から、外に出ること
「……ふーん、8番出口…ね。なんかゲームみたいじゃんね⭐︎」
不安はある、でも進むしかないのだと直感的に分かる。
立ち止まったら、永遠にこの空間に囚われてしまうような気がしてならないから。
異変の一つ目は、灰色とも言える壁から始まった。
私は、ずっと同じ壁が続いていると思っていたから、
突如としてポスターが全部『人の顔』に変わったことに驚いた。
その光景にぞわっと鳥肌が立ち、思わず後ずさる。
「ちょっとちょっと……センス悪すぎじゃない?」
私が引き返すと、案内板のカウントは「2」になった。
やはり、ルールは本物らしい。
突然のことだった。
赤い赤い、真っ赤な水。
床におびただしいまでの赤い水がじわりと広がり、靴先を濡らしてくる。
動くたびに波紋が揺れる。
それはまるで、血みたいだった。
「うっわ……!なにこれ、ふざけてんの?」
嫌な匂いも伴ってて、吐き気が込み上げてくる。
ここでは吐くまいと、それを飲み込む。
壁が揺れて、人の形が浮かび上がった。
それがこちらを追ってくる錯覚を覚え、身体も心臓も跳ねた。
「……もうッ!いい加減にして欲しいなって!!」
かなりの大声を張り上げた。
でも、影は消えない。
ため息が出る。
ただただ理性を総動員して、冷静に来た道を選ぶ。
他にも、甘い紅茶の匂いが漂ってきたり、どこかで耳にしたことがある、笑い声が聞こえてきたり。
時には何かあるような気がして振り返る。
そこには何もないけど、気が抜けない。
繰り返している内に
ただただ案内板のカウントは確実に進んでいって、
ついに「8」を表示する。
「やっと……!」
この悪趣味な空間から逃れられる確信があり、
胸の奥から安堵があふれた、その時。
それは多分、最後の…異変だった。
出口の先に、見覚えのある影が立っていた。
「……先生?」
思わず呼びかけてしまう。
信じられない。
けれど、目の前の姿は確かにあの人で、
微笑んでくれる表情まで、鮮明すぎて。
駆け寄ろうと一歩踏み出した瞬間、表情が変わり、彼の姿から声が響いた。
『ミカは…ここに来るべきじゃない』
幻覚だとしても、幻惑だとしても、
あまりにも優しいその声に、足が止められる。
分かってる、わかってる。
これは異変で、罠。
でも胸が千切れそうで、
涙が勝手ににじみ出てくる。
「…でもね、先生に会いたかったの……ずっと、一緒にいたいの、ずっとずっと…先生に言いたくて……」
どんな異変に対しても、強がってきた心は、
音を立てて崩れ始めた。
堰を切ったように泣きじゃくって、もう動けなくなった。
私の前の気配が揺れ動く。
溢れ出る涙の隙間から、なんとか見えた。
よく見た苦笑だ。
ほんの少しに困ったような表情を浮かべた『先生』はどんどん歩み寄ってきて、そっとわたしの胸元を「とん」と押した。
『全く…ミカは、人の言う事を聞かない不良生徒じゃないでしょ?』
そんなに勢いがあった訳でもないのに、
驚く暇もなく、尻もちをついた。
そうして、視界が白く溶け──
帰還。
あまりの白さで閉じてしまった目を開けると、そこは見慣れた学園の玄関だった。
白い光はもうなく、夕暮れの光が差し込み続けている。
遠くから聞こえる生徒たちの笑い声。
現実に帰ってきたんだと分かる。
押された胸元を見る。
…まだ、手の感触が残っている。
私の間違いでなければ、確かに温かった。
「……先生」
唇から零れたその声は、また震えていた。
涙も出そうになった。
幻覚だとしても『先生』は先生で、
…また助けてくれたのも、先生だったって、思う。
胸にぽっかり穴が空いたようで、
でも…不思議と同時に、満たされてもいた。
「やっぱり…先生は、先生じゃんね⭐︎」
鼻声でそう呟いて、涙をぬぐった。
誰もいない夕暮れに、
その言葉だけが小さく響いた。
なんで満たされたのか、うまく言えない。
残っているのは、消えることのない、
優しい8番出口の記憶。
今回はミカ。
読了ありがとうございました!
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