ブルアカ×8番出口 The Exit 8 Blue Archive 作:how-kyou
マコト様に行くという。
しかし、なんというか、ギャグ補正に引っ張られる。
羽沼マコトは考えた
いつものように、
いずれ自分が世界を総て、実権を握る…そんな画策(妄想)をしつつ、溜まった書類を整理していた、ある日のことだった。
気がつけば、羽沼マコトは何も持たずに薄暗い廊下に立っていた。
右手でたった今押そうとしていた印鑑も、持っていない。
見渡してみると、
そこはどこまでも無機質なコンクリート壁で囲まれており、頭上には単調に続いている蛍光灯。
前後、なんなら左右どちらを向いても、
同じような光景が広がっている。
自分の置かれた不可解な状況に、思わず目を見開き、右往左往と混乱してしまう。
誰かに謀られてて、ドッキリでも喰らっているのだろうか?
「な、な、なんだここはっ……!?まさかこれは、異界迷宮の入口ッ…!?」
てっきりこの間意地悪をした風紀委員会の策略だと想像して、軽くボケてみるが、虚しいことに反応は何一つない。気恥ずかしいぞ。
耳を澄ませても、
ただただ、声がコンクリートに反響するのみ。
本当に何の一つも反応がない。
常の私ならそろそろ「キキキッ」と余裕の笑いを添えるところだったが、どうにも本当に異常事態なようで、背筋を伝わっていく、冷たい汗を止めることが出来ない。
もう少し周囲を見渡してみると、
廊下の奥に大きく「1」と書かれた案内板があるのを発見した。
そこに示されるルールはこうだ。
・異変を見逃すな
・異変を見つけたならば、すぐに引き返せ
・異変が見つからないなら、進め
・8番出口に辿り着け
「ふ、ふむ……ただ単に進めばいいのだな。こんなの簡単ではないか!命令されているのが少々気になるが…偉大なるマコト様にとっては朝飯前の試練よ!キ、キキキッ……」
普段のように努めてみせようとしたが、その笑いは少し裏返った。
異変 その1:何故か影が増えた件について
蛍光灯の下を通るたびに、壁に映る自分の影がひとつ、またひとつと増えていく。
違和感に気付いた時には、戦隊モノのように五人分のマコトが、バンザイをしたり、踊ったり、勝手にポーズを決めていた。
「ぎゃっ!?だ、誰だお前たちは!?偉大なるマコト様はこの私だけっ!ただひとりのはずだぞ!?」
影が一斉にこちらを振り返り、キシシッと笑うように動く。
怖い。
「ヒィッ!やっやめろ!私の笑い方を真似するなぁ!」
慌てて出口へ走り込む。
看板には「1」の数字。
⸻
異変 その2:壁には耳あり、落書きアリ
次の廊下の壁には、スプレーで大きく書かれた文字。
『マコト様はドジ』
「だっ、誰だこんな失礼なことを書いたのは! 先生か!? いや違うな…この字は…イブキか!?いやそんなことするハズがっ……!」
手でこすって消そうとするが、落書きは消えない。
それどころか何故か次々と文字が浮かび上がっていく。
『偉業(笑)』
『征服(大笑)』
『全弾発射(逆方向が許されるのは小学生までだよねー)』
「うぐぐっ……!余計なことを書くんじゃない!最後のやつに限ってはなんだ!!ウチのイブキは小さいけど読み間違えたことなんてないんだぞッ!!」
涙目で訳のわからないことを叫びながら、来た道に駆けだす。
⸻
異変 その3:何故か振り子廊下
疲弊しながら、進んでいると床がぐらりと揺れ、廊下全体が50度くらい傾いた。
「う、うわああっ!?ま、待て、待て! 私を転がすなぁぁぁぁ!」
転がりそうになるのを堪えるが、反対側に揺すられて、無情にもぶつかる。
「へぶぅッ!?と、止めてくれ…!」
揺れ続ける床を必死に這いずりながら進み、
息も絶え絶え、なんとか曲がり角に辿り着く。
揺れは収まった。
「ゼェッ、ゼェッ……!い、命がいくつあっても足りんぞこれはっ……!」
異変 その4:突然の電話!着信アリ
今回は、廊下の真ん中に…不自然なまで公衆電話がぽつんと置かれていた。
こんなものに誰が騙されるというんだ?
と思いつつも、
外につながるのでは?
などと考え、近づいてみる。
恐る恐ると、近づいていく。
すると受話器が勝手に揺れ、甲高いベル音が廊下に鳴り響いた。
「ひ、ヒィっ!?だ、誰が…?いや、ま、まさか先生か!?あり得るだろう!!」
短絡的に受話器を取ると――。
『あ、すいませんマコト様。間違えました』
ガチャと切れた。
「…誰なんだッ!?せめて一言くらい話をさせろッ!」
受話器を投げ捨て、戻る。
異変 その5:誰かの拍手の音
歩いていたら、どこからともなく拍手が響きだした。
パチパチ、パチパチ。
それは、私に向けられている。
音の方向…右の壁を見ると、
無数の手だけが並んで、
延々と手を叩いている。
「や、やめろ……!不気味なんだっ!拍手喝采は私の偉業を見てからにしろぉぉぉ!」
耳を塞ぎ、慌てて戻る。
異変 その6:先生の声(幻聴)
静かな廊下で、不意に聞こえてくる。
『マコト、頑張れ。君ならできる』
「せ、先生っ!?今の声……!?まさかここに居るのかッ!?」
周囲を見回すが誰もいない。耳の奥に残響だけが残った。
「……う、うぅ……。私の脳が、先生不足で幻を生み出したのか……?」
『だからこそ!ネバーギブアップ!』
「ち、ちがう!先生じゃないぞッ!?」
異変 その7:何故か分からない出口の増殖
廊下の先には、同じ「出口」が八つに分岐していた。
「な、な、なんだこれは!?さては…この私を惑わせる罠だと言うのか!?」
一つひとつ確認し、唯一「7」と書かれた案内板を発見する。
「ふぅ……危うく偉業が未遂で終わるところだった……!」
私はその道を進んだ!
異変 その8:先生の姿
最後の出口の前。そこに先生が立っていた。
「せ、先生!?ほ、本物!本物なのかッ!?」
駆け寄ろうとすると、先生は片手を上げて言った。
『こっちに来たらダメ』
足が止まる。
「で、でも!…」
言葉が上手く紡げなかった。
『先生』は仕方がないと微笑み、
軽く押す仕草をした。
気がつけばマコトの身体は向こう側へ、押し出されていた。
そして、 現実へ
思わず目を覆うほどの、眩しい光。
やっと目を開ければ、
見慣れたキヴォトスの空を見上げていたのだった。
「…ハッ、わ、私は助かったのかッ!? で、でも今の先生は……幻覚……?」
額に手を当て、しばし考える。
やがてニヤリと笑い――。
「……キキキッ! 幻覚だろうと何だろうと、先生は先生!よし、あの先生、持って帰る作戦を立てるぞっ!標ほ……いや、右腕として……いやいや、やっぱり私のコレクションに!」
そんな馬鹿げたことを言いながら、マコトは空を仰いで笑い声を響かせた。
「キキキッ!……ありがとう、先生!」
なんだかんだ、しっかり感謝はしていた。
今回は笑ってもらえると嬉しいです。
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