結束バンドは可愛い子が多すぎる! 作:喜多ちゃんが可愛すぎてやばい
幼馴染ものといえばぼっちちゃんの幼馴染の作品が多い気がしますが、喜多ちゃんに先輩と呼ばれたいので虹夏ちゃん&リョウさんの幼馴染にしてみました。
俺には二人の幼馴染がいる。
一人は伊地知虹夏。料理が上手くて思いやりがあり、同じ学校に通う男子からも人気が高い天使系女子だ。
もう一人は山田リョウ。家は裕福なのに何故かいつも金欠で、事ある毎に金を貸せとせがんでくる乞食系女子だ。
そんな二人の趣味は楽器演奏で、最近になってバンドを組んだ。
しかし、新規結成したばかりのそのバンドに、前代未聞の危機が迫っていた。
「ええー!? 喜多ちゃんと連絡が取れなくなったぁ!?」
記念すべき三人目のメンバーが、突如行方不明になったのだ。
喜多ちゃん。俺たちの一つ下の女の子。
担当はギターボーカル。まさにバンドの核とも言える存在だ。
「まあ、仕方ないよな……」
二人に聞こえないような小声で、俺は独りごちる。
喜多ちゃんが辞めた理由に、俺だけは心当たりがあった。
バンド名だ。山田が考えた『結束バンド』という名前。それが気に入らなかったのだと思われる。
喜多ちゃんはイソスタとかバリバリにやっている超絶オシャレ系女子だからな。クソダサバンド名が生理的に受け付けなかったのだろう。
バンドに入った理由が山田なら、辞めた理由もまた山田だったというわけだ。
さもありなん。現実とは非情である。
「電話にも出ない。大ピンチ」
「ど、ど、どうしよ! ベースとドラムだけじゃさすがに味気ないよね!?」
伊地知虹夏。ドラム担当。
山田リョウ。ベース担当。
山田ならベースを弾きながら歌うことも可能だろうが、ギターがいないのはやはり寂しすぎる。
キーボードがいればどうにかなるだろうか。いや、そもそもギターがいる前提の練習しかしていないのだから、今から調整するのはどっちにしたって困難だ。
困難というか、もはや不可能と言って差し支えないレベル。
「くっ、こうなったら……」
最後の希望に縋るように、虹夏がこちらを見る。
「お願い雪! 今日だけギターやって!」
両手を合わせながら、本気のお願いをしてくる虹夏。
山田も『それが一番丸い解決方法なんじゃない?』とばかりに流し目で見てくる。
確かに俺はギターが弾ける。別に上手いってほどではないが、二人の足を引っ張らない程度には合わせられる自負もある。
それに女の子からの頼み事だ。しかも可愛い幼馴染の。
俺だって本当なら聞いてあげたい。それが男というものだろう。
しかし、答えは最初から決まっていた。
「嫌だ。練習に付き合う分にはいいけど、俺はライブに出る気はない」
「もう! 雪ってばいっつもそう! 何がそんなに不満なの!?」
別に不満とかはない。
ただ、ガールズバンドに男が入るとかありえないと思っているだけだ。
喜多ちゃんが抜けた今、バンドメンバーは女子二人だけ。もしかしたらこの先、男が何人か入って男女混合のバンドになる可能性も0ではないかもしれない。
でも、そんなことはさせない。俺が阻止する。何が何でも絶対に。たとえこの命にかえたとしても。
虹夏も山田も、今は亡き喜多ちゃんも、みんな可愛い女の子たちだ。
そんなところに野郎が入ったらどうなるか。当然、バンドの練習どころではなくなってしまう。
痴情のもつれ。バンドが解散する理由において、音楽性の違いの次くらいにはよく聞く原因だと思う。
ゆえに、結束バンドはガールズバンドとして生きていくしかないのである。
たとえ助っ人枠だとしても、一度参加してしまえばそのままズルズルとメンバーにされてしまうかもしれない。
だから、鋼の精神で拒否するしかない。俺だって心苦しいんだ。わかってくれ。
「雪のバカ!」
どうやらわかってはくれなかったらしい。悲しい。
「私、ギター弾ける人探してくる! 見つからなかったら雪に出てもらうからね!」
「えっ、はっ……おい、虹夏!?」
そう言い残して、彼女はライブハウスの外へと飛び出してしまった。
マジかよ。今から探すの? もう時間もそんなに残されてないってのに。
まさかギターを背負った女の子が、その辺を歩いているなんて都合のいい展開があるわけでもあるまいし──。
「……ねぇ、雪」
「……なんだ?」
「もし私が『おっぱい揉ませてあげるからギターやって』って言ったら……やってくれる?」
「……やらない」
「考えた?」
「考えてない!」
山田がからかうような目を向けてくる。
たとえ女の子のおっぱいを触れるとしても、俺は絶対にライブには出ない。
絶対と言ったら絶対だ!
「じゃあ『一緒にお風呂に入ってあげる』って言ったら?」
「…………やらない」
「やっぱり考えた。えっち」
「だから考えてないって言ってるだろ!」
くそっ、こいつ、自分の身体を売ることに躊躇がなさすぎる……!
いや、冗談だってのはわかってるんだけどな? でもさ、俺も男の子なわけで、やっぱり想像とか期待とかしちゃうわけなんだよ。
だから、年頃の女の子が簡単にそういうこと言わない方がいいと思う。つまり山田が悪い。
「おーい、お前ら準備はできてるかー?」
と、色仕掛けを必死に躱していると、虹夏の姉でありライブハウス『STARRY』の店長でもある星歌さんが俺たちの元へとやってきた。
危なかった。このまま二人きりだったら、万が一の可能性ではあるが山田に手を出すエンディングも有り得たかもしれないからな。
空気を壊してくれて助かった。
「あ? 虹夏はどうした?」
「ギターを探しに出かけました」
「は?」
意味がわからないという顔になった星歌さんに、俺は事の成り行きを説明した。
*
それから少し経ち、虹夏がスターリーへと帰ってきた。
後ろには見知らぬ女の子がいる。服装はピンク色のジャージ。背中にはギターケースを背負っている。
マジか。本当に見つけたのか。この短時間の間に。
何やら運命的なものを感じる。というかピンク色の髪にピンク色のジャージって何? 見た目がロックすぎるだろ……。
「紹介するねひとりちゃん! この子はベースの山田リョウ! 表情がわかりにくいけど怖くないから安心して! あと変人って言ったら喜ぶよ!」
「べ、別に嬉しくないし」
照れ顔になりながらツンデレみたいなことを言う山田。
きちんと喜んでいることは、ひとりちゃんとやらにも伝わっただろう。
「で、あー……そっちにいるのが白石雪。女の子っぽい名前だけど一応男。私とリョウの知り合いだけど、ライブには出ないからただの一般人かな。気にしなくていいよ」
酷い紹介だ。ライブに出てくれというお願いを無碍に断ったのを、まだ根に持っているらしい。
ギターは見つかったのに。俺が断ったおかげで新しいギタリストと出会えたというのに。むしろ感謝してほしいくらいだ。
「虹夏。この子の名前は?」
「ひとりちゃん」
「あー、じゃなくて、上の名前。苗字の方」
「えーと、確か……後藤さんだっけ?」
「あっ、は、はい。そうです……」
後藤さんね。了解。
虹夏がちゃんと紹介してくれないので、自分から交流を図りにいく。
見たところ人との関わり合いが苦手なタイプっぽいし、いきなり名前呼びは避けた方がいいだろう。
その上でゆっくりと近づき、目線を合わせ、なるべく怖がらせないように……それこそ、人見知りの猫を相手にするように丁寧に──。
「はじめまして後藤さん。虹夏が教えていたけど改めて、僕の名前は白石雪。高校二年生だよ。普段はこのスターリーでバイトをしているんだ。よろしくね」
「あ、は、はい……よろしくお願い、します」
虹夏の後ろに隠れていた後藤さんがおずおずと出てくる。
うん。第一印象は悪くなさそうだ。でも、警戒心はまだ完全には解けてないって感じだな。
「ねぇ、なんかいつもと雰囲気違くない?」
「一人称まで変わってる」
うるさいよ。そこの幼馴染二人。
今ちょっと大事な場面なんだから。静かにしていてもらえるかな。
「後藤さん、人と関わるの、あんまり得意じゃないでしょ」
「え、ど、どうして……」
「わかるよ。僕も同じだからね。今だって初対面の女の子とお話するってなって、かなり緊張しているし」
「そ、そうなんですね……!」
仲間を見つけたような顔で見てくる後藤さん。
うんうん。そうだよね。いきなりこんなことに連れて来られてライブに出ろとか、誰でも困惑するよね。
安心して。俺は君の味方だから。
「人と関わるのが、苦手……?」
「嘘乙」
だからうるさいよ外野二人。後藤さんが怖がっちゃったらどうするんだ。
女の子大好きパリピナンパ野郎とか、この子が一番苦手なタイプだろ。
別に普段の俺がそういう人種ってわけじゃないけど。
「でも、偉いね。それでも虹夏たちを助けようとしてくれたんでしょ?」
「あ、そ、それは……」
「後藤さんは優しいんだね。それに偉い。こんなこと、普通の人だったらあんまりできないよ」
「そ、そうです、かね……?」
「うん、そうだよ。だから自信持って。後藤さんは凄い子なんだから」
「え、えへ、えへへっ……そ、それほどでも……!」
よし。だいぶ緊張はほぐれたみたいだ。
信頼を勝ち取りつつ、やる気も上げることができた。
グッドコミュニケーション! ってね。
「うわぁ、手馴れてるなぁ……」
「ホストの才能がある」
ゴミを見るような目を向けてくる幼馴染たちを無視して、俺は後藤さんを練習用のスタジオへと案内した。
ギターの実力はわからないけど、たとえ下手だとしても絶対にメンバーに加えた方がいい。
俺の直感がそう言っていた。
オリ主の影響で結束バンドメンバーに強化補正が入ります。
だから具体的にどうなるってわけではないですけど。