アジテイター   作:エドレア

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他の連載もあるのに思い付いてしまったので投稿です。
作中に出てくるゲームですが分かる人には分かる内容になっています。一話完全読み切りです。


アジテイター

 

 

 

 

 

 

「やっぱメリケンどもの悲鳴を聞くなら上海一択だよな~」

《loooooooooooooooooooooooooooool》

 

 画面左上に現れる罵詈雑言の群れ。

 それを、俺は悦に浸りながら見ている。

 

「通学前のフラグ弾は最高だぜ」

 

 別に不当な辱しめを受けてる訳じゃない。

 自分がやった結果としてそれを楽しんでるだけだ。雑魚どもは勝てないから、せめてチャットでしか鬱憤を晴らせない。そんなことしてる暇あるなら黙々とプレイしていた方が腕が上がるはずなのに、やっぱり雑魚だからおつむの出来も悪いのだ。

 

「屋上フラグ芋はUCAVかスナでガン見してりゃ対処できんのに……おっとやべぇ。流石に入学式に遅刻はマズいよな」

 

 プレイもそこそこに、さっさと支度して部屋を出る。

 

「別にレースに出るつもりはねぇのに……母さんも人が悪いよなぁ」

 

 親に駄々をこねたおして何とか勝ち取った一人暮らし用のワンルーム。これから行く事になる学園は全寮制と聞いていたけど、言って見れば何とかなるもんだ。

 

「自分の部屋に相方がいるとか信じられねーもん。ぜってぇゲームやってる俺を見てドン引きするに決まってるわ」

 

 それもこれも、中央トレーニングセンター学園────通称トレセン学園に行かされる事になったのが悪い。

 

「てきとーな走りで何で受かることになるのかねぇ……ま、なるようになりますか」

 

 親曰く、()は大変出来が良すぎる娘らしい。()()()()()()()()か、学校の成績も悪くない(一位じゃないが上から数えた方が早いレベル)。自画自賛になるが、人前で猫かぶりするのも得意な方だ。おかげでゲームでファッキンワードを連発する本性が明らかになっても両親は俺の自由を許してくれた。

 

 トレセン学園への入学はそんな大恩有り余る両親たっての願いだ。入学出来ただけでも箔が付くらしい。将来は家にこもって在宅でゲームし続けたい俺にしてみても、就職で有利に働くかもしれない。

 走るのはごめんだが、親の顔を立てようと思う義理くらいは感じてる。デビュー戦くらいは勝って、適当なオープン戦で負ければ言い訳になるだろう。

 

 トレセンでは本性を隠し、穏当な学園生活を楽しむつもりで登校した俺は────その目論見があっさり崩れ去る()()()()()と出会ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《新入生代表────シンボリルドルフ》

 

(かったるいスピーチが続くなぁ……あいつが主席か。如何にもって感じのお嬢様だな)

 

 あくびを噛み殺して、行われる入学式をただ眺めてる。

 こういう行事は大抵話が長くなりがちだ。生徒の受けはいつの時代でも悪いはずなのに、お偉いさんはやりたがる。前世から通算して5回目の入学式だが何が良いのかさっぱりだ。

 

(良いとこのお嬢様か。こういう舞台でも平気なんだろうな────)

 

『私は、全てのウマ娘の幸福を望む』

 

(は?)

 

『馬鹿げた大言壮語だと思うだろう。しかし、私は本気でこの理想を志している』

 

(はぁ~?)

 

 良いとこのお嬢様かと思えば、どうやらとんだ食わせ物だったらしい。

 

(如何にも温室育ちってばかりの理想じゃねぇか)

 

 なんだかゴニョゴニョと理想とやらを馬鹿正直に演説している。が、後のスピーチなんざ知ったこっちゃない。

 

(あれ、()()なぁ。退屈はしなくて良さそうだぁ……!)

 

 この時、俺はいつものポーカーフェイスを忘れて獰猛な笑みを浮かべてしまっている事に気が付いていなかった。

 

(クラシック三冠、狙いに行くよなぁ。なら……)

 

 俺の脳裏にあったのは、ただただ目の前の優秀な雛鳥をどう貶めてやろうかという悪企み、それしかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 時は移ろい、クラシック10月。

 菊花賞の終わりに。

 

「君は────一体何のつもりだ?」

 

 胸ぐらを掴まれ、暗い地下バ道の壁に押し付けられる俺。

 こんな暴挙を仕出かしているのは何を隠そうあのシンボリルドルフ────品行方正、謹厳実直を地で行く温室育ちちゃんである。普通なら考えられない振る舞いだろうが、それだけの事を俺はこいつにしてやったのだ。

 

「おいおい、何の事だよ」

「しらばっくれるな! 君は────」

「まず手をどけろよ。それが人にモノを聞く態度か? こいつは俺の大事な一張羅なんだぜ?」

「……っ!」

 

 言われた通り手を放す温室育ちちゃん。そういうところが面白いってぇのに。

 

「で? 手短に済ましてくれよ。この後ライブがあるんだからさぁ。大事だろ、史上初の無敗の三冠バのライブはよ」

「何が無敗だ! 君は……君は……!」

 

「────わざと手を抜いて走っていたんじゃないのか!!!」

 

(くっそおもしれぇwww)

 

 本当なら今すぐにでも大爆笑したいぐらいなのだが、あくまで俺のスタンスは決まってる。

 

「そりゃひでぇ。俺はあんたを相手に必死になって追い縋ったんだぜ? 勘違いはよしてくれよ」

「ふざけるな。いくら誤魔化そうが、私は騙されない。一度目は皐月で違和感を憶え、二度目のダービーで疑惑に変わり、そして今回の菊で確信したんだ。君はあからさまに手を抜いて走っている。私と最終直線で並ぶ直前、明らかに君から届く足音は露骨に小さくなっていたんだ。三着以降のウマ娘の足音の方が聞こえるくらいにね」

(へぇ、足音。なるほど、そういう把握の仕方か)

 

 一息に喋って少しは落ち着いたらしい。だが、剣呑な顔つきはそのままだ。とはいえ全く怖くない。威厳があるだけでよく見れば童顔、体が若いだけのおじさんである俺からしてみれば、子供(ガキ)に凄まれた程度で怯むなんて事は無いのだ。

 

「なるほどなるほど……じゃあ仮にだ。仮に俺があんたの言う通り手加減してたとしよう。それでどうするんだ?」

「それは……」

「バカ正直に公表でもするかい? シンボリルドルフのこれまでの実績は、正しいものじゃねぇと吹聴して回るか?」

「違う。私はただ、一生に一度しか走れないクラシックで何故そんな真似をしたのか知りたくて……」

「おいおい、その程度かよ。ウマ娘の幸福とやらを掲げてる割には鈍感だよな」

 

 この温室育ちちゃんが言えるはずがない。ハイソな生まれも含めて、色んなところから一身に期待を背負ってるんだ。それを自ら汚す真似なんてできやしない。

 勢いが弱まったところを見計らって、今度は俺がけしかけにいく。女にしちゃあ高いの背の俺だが、こういう時に有利に働く。上からウマ耳に囁いてやれるからだ。

 

「あんたさぁ、今幸せかい?」

「しあわせ……?」

「幸せのはずだよな。だって三冠達成してるんだものなぁ。まさか────ウマ娘の幸福を掲げてるやつが、自分一人も幸せにできないなんて、笑い話にもならねぇよなぁ?」

「────」

 

 今度こそ言葉を失ったらしい。辛うじて克己心がまだあるようだが、パクパクと口を動かすだけで声にすらならないでいる。

 

「俺は幸せだぜ。あんたという最高のウマ娘を特等席で見ていられるんだから」

「私が最高のウマ娘……?」

「ああ。日本レース史上初の快挙、(すげ)ぇじゃねぇか。これからも色んなところで勝っていくんだろうな。日本のレース界を背負って立つんだろうなぁ。だって無敗の三冠バだもんなぁ」

 

「これからもよろしく頼むぜ、"無敗の皇帝様"よ?」

 

 そう言って立ち去る。

 バカな子供(ガキ)を、唆してやるにはこれで十分だ。

 振り返って様子を見てみれば、呆然とした顔で「無敗の……皇帝」とうわごとのように呟き続ける温室育ちちゃん。

 

(あー、アホらし。大体この世界の大人もおかしいんだよな。どれだけ囃し立てようが、まだ中高生だぞ? 子供に向けていい熱量じゃねぇっての)

 

 一通り温室育ちちゃんで楽しめたので、次はどう弄ってやろうかと俺は思案に耽っていた。

 

 

 

 

 

 シニア、6月末。

 

「合宿とかマジだりぃ」

 

 7月からの合宿、去年もあったが俺からすると2ヶ月もゲームと切り離されるのはマジでごめんである。

 

(トレーナーも律儀なもんだよ。俺の本性知ってまだ契約してくれてるし)

 

 クラシックの後、変わらず温室育ちちゃんを俺は追い続けてやった。世間じゃ俺は皇帝様に歯向かう善戦ウマ娘として認知されてるらしい。

 それはいいんだが、流石にトレーナーにはバレた。温室育ちちゃんがいるレースじゃ決まって同じ負け方をするからだ。幸いにも俺の気性を知った上で担当は続けてくれるらしい。どうも俺と似た考えのようで、二着でも良い思いをさせてもらってるから、との事だ。中々現金なやつである。

 ちなみに親には最初から俺が舐めプして走っている事がバレていた。曰く、悪企みしてる時とレース中の顔が同じらしい。

 やっぱりだが親には勝てないようだ。

 

「UCAV楽しすぎワロタwwwやっぱりこいつで煽るのが一番おもしれぇよwww」

 

 合宿前最後とばかりに休日にゲームをやりこむ。

 画面ではホテルの屋上を陣取ったとチャットで自慢する雑魚がいたが、そいつは多方面から俺も含めて撃ち込まれたラジコン飛行機爆弾で焼かれていた。当然の如く俺はそいつをチャットで煽ってやるのだ。

 

「隠れても無駄で~すwww壁抜きエアバーストって知ってたぁ? 室外機の下潜ったって意味無いよwww」

 

 ピンポーン

 

「は? 誰だよこんな時間に……だる……」

 

 ゲームで気持ち良くなってたところに不意の来客、しかし俺には心当たりが無い。

 居留守で誤魔化そうとしたが、しかし玄関のチャイムは何度も連打されていた。

 

「真っ昼間からうっせぇな! 一体どこの誰だよもう……」

 

 面倒だが出るしかないらしい。適当なところでゲームを切り上げて、玄関を開けて見れば知らないウマ娘が二人、困った顔とキレた顔が並んでいた。

 

「ほら、やっぱりいるじゃねぇか」

「だ、ダメよシリウスったら。……休みの日にごめんなさい、シリウスがどうしても貴方のところへ行くって……」

「あの……まず、誰なんですかね、あんた達」

 

 栗毛のヤベーボディラインと、星のような流星を持つデカパイ。こんなやつら知り合いにいない。

 

「私はシリウスシンボリ、アンタの同期であるルドルフの親戚だ」

「自己紹介が遅れたわね、私はマルゼンスキーよ。その……ルドルフの友達なんだけど……」

「あぁシンボリルドルフさんの……それで? 俺暇じゃないんすけど、なんか用っすか?」

 

 あの温室育ちちゃんの身内らしい。おかしいな、温室育ちちゃんを弄った覚えはあるが、こいつらが出てくる理由は見つからない。

 そう思っていたのは俺だけだったようだ。

 

「昼行灯気取るのも大概にしろよ。アンタ、ルドルフに何を吹き込みやがった」

「ちょ……! シリウス……!」

「あの菊花賞からだ、ルドルフがおかしくなったのは。バカの一つ覚えのようにウマ娘の幸福を唱えてやがる。しかも生徒会の仕事すら誰にも手伝わせないときたもんだ。あのレースで最後にルドルフと話してたのはアンタだよな、アジテイター

「ああ、そういう……」

 

 レース以外じゃ全く関わりがなかった俺達だが、あの温室育ちちゃんは順調に曇っているらしい。何でもかんでも背負い過ぎて、以前の温室育ちちゃんとは別人なんだそうな。

 

「俺は素直に、無敗の三冠おめでとうって言っただけっすよ」

「惚けるんじゃねぇ。おまえらだけ明らかに空気感違うだろうが。本来クラシックで競り合ったウマ娘は、大体つるんで仲良しこよしやるもんだ。なのに、おまえらは何なんだ?」

「さぁ? 俺からすりゃあ、シンボリ家なんて雲の上のお人って感じですし? ごく一般的なウマ娘でしかない俺がシンボリルドルフさんとお友達だなんて恐れ多いっすよ」

「……てめぇ、意地でも言わないつもりか」

「シリウス……! 抑えて、抑えて、ね?」

 

 額に青筋浮かべているシリウスシンボリとやらを、マルゼンスキーが宥めている。

 正直このお姉さんには助かった。シリウスシンボリのような手合いは、こちらがどう誤魔化そうとも一直線に言葉を投げ掛けてくる。常識的な対応を心がけてくれるだけ、まだ誤魔化しが効いてくれるのだ。

 

「ねぇ、アジテイターちゃん」

「アジテイターちゃん……!? そんな呼ばれ方初めてっす」

「あのね、貴方に悪気は無いのかもしれないけど、ルドルフと貴方の間には、何か確執があるんじゃないかって考えてる人がいるの。それがルドルフが変わった原因なんじゃないかって」

「はぁ……とは言っても、俺に心当たりは無いっすよ。強いて言えば、そこの親戚さんが言うように友達じゃねぇってだけの話です」

「友達じゃない、ね……」

 

 どうも俺のセリフがおかしいらしい。

 ここに来て俺は、普段の振る舞いを間違えたのかもしれないと思った。そこそこに人付き合いをしてるつもりはあるが、寮に住んでる訳ではないため親しい同室のウマ娘はいない。基本休日はゲームに没頭しているから、誰かと共に出かけるなんてこともしない上に、一等星殿が言うようにレースで走った相手をライバル視する事も無い。

 皇帝に歯向かう孤高の反逆者、というのが俺の二つ名らしいが二人の反応を見る限り俺は孤高になりすぎたようだ。

 

 考え込む二人だがマルゼンスキーが何かに気づいたらしく、一昔前のアニメのように右の手のひらに左拳をぶつけて得心していた。

 

「分かったわ、ルドルフは────きっと貴方とお友達になりたいのよ!」

「「はぁ?」」

 

 俺と(なにがし)シンボリの声が重なる。

 どんな推察をされても煙に巻く自信があったが、それでもこれは無いと俺は素で反応してしまっていた。

 

「だって、貴方だけじゃない! ルドルフに着いてきてくれてるのは!」

「それはそうかもしれないが、それと友達ってのは話が違うだろ」

「そうっすよ。あくまでライバルっすよ、俺達は」

「そこよ! 唯一自分に着いてきてくれるライバルだなんて、今までルドルフの周りにはいなかった相手だもの。私達のような友達でもなく、シリウスのような家族でもない対等な相手、あの子からすれば初めてなんじゃないかしら」

「今までいない相手だったから、対応が分からないってことか? それは暴論だろ」

「それだけならそうね。けど、その上で……アジテイターちゃんはルドルフを褒めたのよね? それも素直に」

「まぁ……そうっすけど」

「ルドルフは貴方の方から執着してほしかったんじゃないかしら。でも貴方からはそんな素振りが無い。そんな相手から向けられた"無敗の三冠おめでとう"を、ルドルフが引きずってるんじゃないかって」

「……こいつのセリフをこれからも無敗であってくれと勘違いしたとか? ルドルフらしくねぇだろ、それ」

「あー……」

 

 当たらずとも遠からず、なのか。

 確かに地下バ道で、"無敗の皇帝様"と煽ってはやった。それをあいつがどう受け止めたかは知らないが、あの温室育ちちゃんの事だ。手前勝手に激励と受け止めて、それに恥じないウマ娘であろうと努力していてもおかしくはない。

 

(それで身内に心配されてるのは身も蓋もないだろうが)

 

 こんな話、埒が開かないから無理矢理終わらせにいく。

 

「仮にそうだとしても、俺からシンボリルドルフさんに声かけることなんてありませんよ。仲良くする理由も根拠もない。第一シンボリルドルフさんを心配してるのはそっちの都合です。俺と関わったせいでシンボリルドルフさんが変わったとして、それはあくまで彼女の内面の話、俺とは関係が無い。休日の昼間に玄関先でこんな話に聞かせられる身にもなってください。はっきり言ってメーワクです」

「「……」」

 

 二人して沈黙している。

 マルゼンスキーの方はまだ申し訳なさそうなんだが、お星様の方はまたイラついているようだった。多分、もう少し育ちが悪ければ特大の舌打ちを放っていたところだろう。それくらい、俺が語った正論は覿面に効いたようだ。

 

「今日のところは帰ってください。その様子じゃ、シンボリルドルフさんから何も聞いていないんでしょう。もしくは言わなかったか。言わなかったら言わなかったで、それが彼女の答えなんすよ。外野が騒ぐことじゃない。だって貴方達は俺達と走っちゃいないんですからね」

「……やっぱり喧嘩売ってるよな。そういうことだよな?」

「あんたがそう思うんならそうなんじゃないすか?」

「すとぉーっぷ!!! シリウス、イライラするのは分かるけどもう少し我慢しなさい! アジテイターちゃんも煽らない! 売り言葉に買い言葉じゃお話にならないでしょ!」

 

 これは面白いことを言う。

 煽動者(アジテイター)に煽るな、などとは。

 

 天狼星は俺が言葉尻で遊んでいる事に気付いているらしい。ただ絶妙に俺が言葉を選んでいるから、堂々それを指摘できないでいるだけだ。

 後は適当にこの激マブねーちゃんにとりなして貰えば済むかと思ったが────。

 

「とにかく、ルドルフとアジテイターちゃんの間にあるわだかまりを解消したいの! ルドルフが気持ち良く走れるように、ね」

「それで俺にどうしろと────」

「夏合宿、貴方も行くでしょ?」

「……それが?」

「私達と一緒にトレーニングしない?」

「はぁ?」

 

 一体何を言い出すんだこの激マブは。

 

「私達はチームリギル……ルドルフも含めて同じチームに所属してるんだけど、うちのトレーナーにお願いしたのよ。貴方のトレーナーに声をかけて下さいって」

「通る訳ないじゃないですか。同期の、バチバチに競り合ってるウマ娘同士が共に合宿を行うなんて聞いた事がない」

「前例は確かに無いな。だが……無いなら作ればいい」

 

 ここにきて一等星殿が初めてニヤつく。

 この様子じゃ俺のトレーナーにもう話を通しているらしい。したり顔の笑みが妙に気に障って気持ち悪かった。

 

「アンタのトレーナー、うちのトレーナーの後輩らしくてな。頭が上がらないんだと」

「そういうことですかい。……そうだったなぁ、そういう義理は大事にする人だからなぁ、あの人」

「気が進まないのは分かるわ。けど、この合宿で貴方達の仲を解消したいのよ。貴方が言う通り、無理に友達にならなくたっていい。ただほんの少しだけ、ルドルフを気にしてくれないかしら?」

 

(ヤバいなこれ。絵面が犯罪的だろ)

 

 どう見ても大人な女性が上目遣いでこちらに頼みこんでくる。

 打算がある訳でもなく、本人は至って真剣なつもりだ。だからこそより性質(たち)悪い。

 俺は手を上げて降参のポーズを取るしかなかった。

 

「へいへい。分かりましたよ。そこまで言われちゃ俺とて無下に扱えねぇ。美人の頼みには弱いんだ」

「あら、お上手。その割には余裕のよっちゃんって感じじゃない?」

「そりゃ美女とお近づきになれるんでね、気分が上がる。こちらからしたら大変光栄なことですぜ」

「おい、私は光栄じゃないってのか?」

「最初からキレ気味に話してくる相手を光栄に思うのは無理があるっす」

「……うちとのトレーニングに参加できるんだ。せいぜい死に物狂いで頑張るんだな」

「シリウスったら……合宿の件、よろしくお願いね?」

「ええ。貴方とも、仲良く出来れば嬉しいですね、マルゼンスキーさん」

 

 やっと話がついた。

 正直全く乗り気じゃないが、レース以外であの温室育ちちゃんと関わりが無さすぎてここ最近は全く弄れていない。これを期にもう少し変わったアプローチで弄れると考えた方が面白そうだ。

 

 ナウいチャンネーの水着姿も見れるなら役得だろう。

 俺はそう思って、去年とは違う合宿に臨んでやった────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、こうなる訳か」

「済まない、マルゼンスキーの押しの強さを忘れていた……」

 

 シニア8月。

 何故か俺は、温室育ちちゃんと共に暗闇の山道を歩いていた。

 

 

 

 

 

 夏合宿。

 宣言通り、俺とトレーナーはチームリギルのバスに合流し共にトレーニングを行う事になった。

 噂に聞く名門チームだけあって、トレーニングの密度や質は段違いだ。俺のトレーナー曰く、俺へのトレーニングは俺自身の才覚を頼りにしているようで他のトレーニングを参考にするのは難しいらしい。

 

(そりゃその気になれば三冠狙えたしなぁ。どーせメディアに引っ張りだこになってゲームする時間が消えるだろうからやらなかったんだけど)

 

 途中まで合宿は順調だった。

 温室育ちちゃんと話せ、と言われても今のところ話題が無い。そもそもトレーニングが過密過ぎてそんな余裕すら無いのが本音だ。まぁどちらかというと余裕が無かったのは俺よりリギルの面子だったんだが。

 

「君は凄いな。おハナさんの指導に耐えられるウマ娘はそういないというのに」

「丈夫が一番の取り柄なんでね」

 

 どうも俺は、トレーナー基準で見ると異様に頑丈らしい。

 確かに俺は生まれてこのかた怪我らしい怪我をしたことがない。そんな目にあっていないというのもあると思うが、おハナさん────東条トレーナー曰く、全く怪我しないのもおかしいとのことだった。

 取り敢えずリギルと同じトレーニングメニューをこなしてやるがほとんどは死屍累々である。あの温室育ちちゃんですらご丁寧に一回一回休憩を入れていた。

 

「休むのも鍛練の一つだ。適宜負荷を抑えないと疲労が残ってしまうんだが……君は大丈夫なのか?」

「飯食って寝てたら疲れなんてとれるだろ」

「それは……そうかもしれないが……」

 

 違うそうじゃない、なんてどこぞのアーティストがタイトルにでもしそうな顔をしてやがる。

 

(神様とか知らんがもしかしたら転生特典なのかもね。体が丈夫ってのは下手なチートよりもずっと楽だ)

 

 リギルではないにも関わらず、リギルの夏合宿メニューを淡々とこなす様子はリギルの連中に衝撃を与えたらしい。この夏合宿中、知らん後輩が俺に纏わりつくようになったがこちらからしたら良い迷惑である。俺に対して妙に当たりの強い副生徒会長殿はまだいいとして、オペラ好きの奇行やタイマンばっかほざくやつはこっちが何度迷惑だと言っても聞きやしない。

 とはいえこいつらのおかげで温室育ちちゃんに構う暇が無くなったのも事実ではあった。

 

 そんな訳で本当に途中までは普通の夏合宿だったのだ。

 マルゼンスキーが、肝試しなんぞ言うまでは。

 

「肝試しぃ?」

「あら、知らない? ちょっとした度胸試しなんだけど……」

「いや肝試しくらいは知ってるっすよ。分からないのはなんで合宿中にやるかって話っす。修学旅行じゃないでしょ、ここ」

「それは私から許可したのよ」

「東条トレーナーが? 失礼かもしれませんが、貴方がそういったことを認める人だとは思いませんでした」

「甘いわね。ずっとトレーニングばかりじゃ気が滅入るのも事実でしょう。せっかくの夏なんだから、楽しめる合宿である方が良いに決まってるじゃない」

 

 マルゼンスキーの呼び掛けに集まったリギル達の前でそう笑っている東条トレーナー。

 

(人徳ってのはこういうところか。厳しいだけじゃウマ娘はついてこないからなぁ)

 

 やり手のトレーナーなだけあって飴と鞭の使い分けは熟知しているらしい。

 山道の入り口に集まったリギル全員がやる気満々であり、あからさまな雰囲気に俺だけ抜けるというのも言いづらい。ただ何の説明も無く集まれと言われたから来たが、最初から疑ってかかるべきだった。

 

 肝試しは山道の奥、登山ルートから少しそれた脇道に古い祠があるからそこを目指せという話だった。事前にマルゼンスキーが準備していたようで、祠にお守りがあるからそれを二人一組で取ってこいと。

 

(あ~、これってそういうことかよぉ。俺と温室育ちちゃんが合宿中全然関わんねぇから業を煮やしがったなこいつら)

 

 マルゼンは運営側で肝試しそのものに参加するつもりは無いらしい。俺からすれば一番組みたい相手だったんだが。

 こういう時はくじ引きで決めるもんだろうと思ったが、ふざけたことにリギルは自分達でさっさとペアを作っていた。残ったのは俺と温室育ちちゃんだけである。この手際の良さ、様子からして温室育ちちゃん以外の全員が共犯だろう。

 

「……仕方ねぇかぁ。そら、さっさと行くぞ」

「あ、ああ……肝試し……本当に幽霊など出るのだろうか……?」

 

 こんな時はうだうだ言ってても無駄なだけだ。

 バカ言ってる温室育ちちゃんを引っ張って、俺は山道に入ってやった。

 

「済まない、実は肝試しは初めてなんだ。本当に幽霊が出るものかと思って……」

「幽霊なんて眉唾だっつーの。大体いたところで、一番怖いのは結局生きてる人間だ。死者の恨み言なんざ石ころほどの価値も無ぇよ」

「……君は……凄いな」

 

 何が琴線に触れたのか、そこから温室育ちちゃんは俺をべた褒めしてくる。去年の恨みこもった態度とは別人だ。

 

「……そこまでにしろよ。俺は褒められることなんざ何もやってねぇ。ただ俺は俺らしく生きてるだけだ」

「謙遜するものじゃない。君のような在り方はとても真似できるものじゃないんだ。その、君は私のことが嫌いかもしれないが……」

「はぁ?」

 

 やっぱり勘違いしてやがった。

 俺が温室育ちちゃんと関わらないのは俺が温室育ちちゃんを嫌ってるからという理屈らしい。聡明だと騒がれてる割りに、呆れるほど単純な勘違いをするあたりがやっぱり温室育ちなのだ。俺はこいつを嫌ってすらいないというのに。

 

「好きか嫌いかであんたは人を判断するのか?」

「それは……」

「勘違いしてるようだが言っとくと、さっきの俺の言葉は謙遜でもなんでもねぇ。むしろ迷惑だと言ってんだよ。知らんやつから褒められたところで何も嬉しくねぇ。気持ち悪ぃ」

「し、知らない? だって私達は……」

「ああ、何度もレースしてるな。それが?」

「それが、だと? クラシックを超えてシニアに入って以降も私達は共にレースを走った。それが知らないと……!?」

「ならあんたは俺の何を知ってるっていうんだ?」

「────」

「一緒にレースを走った。これ以外のなんでもねぇ」

 

(クソっ、こういう時にタバコでもありゃ少しはマシになれんのに)

 

 共に走ったウマ娘としての友情とやらを信じているらしいが、そんなの俺はごめんだ。将来賞金だけで生活するニートになって、時々動画を投稿するくらいで生きていたいのに、余計な人間関係なんざ持ちたくねぇ。

 そう生きていたいのに、雨に濡れた子犬のような視線を温室育ちちゃんが向けるもんだから、どうしようもなかイラついて仕方がなかった。

 

「やはり君は私のことが……」

「嫌い? 違うね、あんたは人の好き嫌いを勘違いしてる」

「勘……違い……?」

 

 いつかと同じように耳に囁いてやる。少しばかり背は伸びたようだが、それは俺も一緒だ。

 

「好きの反対は無関心だ。あんたのことなんざ、俺はどうでもいいんだよ」

 

(俺はあんたで遊べりゃそれで十分だからな。てめぇの好感度なんざ知らねぇよ)

 

 また呆然として動かなくなった温室育ちちゃん。

 俺が一人で祠に行って帰ってきてもそのままだったので、已む無く引きずるしかなかったのは流石にやり過ぎたと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シニア11月下旬。

 

 ジャパンカップ。

 

「────」

 

「はぁぁぁ!!!」

 

(暑苦しくてやってらんねぇ。人生まだ長いってのに、たかがレースに入れ込み過ぎだろ)

 

 海外のウマ娘を相手に、最後の追い込み。

 最終コーナーを回ってすぐに、今年の総大将である温室育ちちゃんが海外の知らんやつと鎬を削り合っていた。

 

 肝試し以来、俺と温室育ちちゃんとの間に大きな変化があったわけじゃない。

 強いて言うなら前にも増して"皇帝"たろうと振る舞っているらしいと、マルゼン姐さんから聞いたがそんなの俺にはどうでもいい。

 重要なのは、俺がここで()()ことだった。

 

 最終コーナーを回って俺はまだ中団、前では温室育ちちゃんが外人ウマ娘と熾烈なデッドヒートを繰り広げている。

 

(追い込みの醍醐味ってのはこれだよなぁ)

 

 前のウマ娘からすれば、俺の存在など眼中に無いんだろう。

 そういうのを外から差して煽ってやるのが堪らなく楽しくて仕方がないのだ。自分でも自覚してるが、ほとほと救いようが無い嗜好である。

 

《外から飛んできたアジテイター!》

《外からアジテイター、黒の流星が飛んできた! しかし前まではまだ5、6バ身以上ある!》

 

 それを5バ身、4バ身、3バ身と追い詰めて。

 

《前に! 届くか、届くか、届くか!》

 

《届いた!!! 届いた!!!》

 

《差し切り勝ち! 凄い脚だ!》

 

《なんとなんと、この府中で大波乱!》

《皇帝のみならず、海外の刺客すら退けて! これまで無冠、アジテイターが勝ちました!!!》

 

「ふぅ……」

 

 観客席がどよめいてやがる。

 まぁ、普段はパッとしない善戦マンだもんなぁ。そりゃそうなるか。

 人前じゃこれでも猫被ってる俺だ。何も無いのもおかしいから、これ見よがしにガッツポーズでも挙げてやる。

 うるせぇ歓声が、俺に降り注いだ。

 

(さて、と)

 

 そして俺に近付いてくるのはやはりあの温室育ちちゃんだった。頭お花畑なのは変わらないようで、負けた癖に満面の笑みを浮かべてやがる。

 どうせ何を言うか分かってた俺は、そいつの言葉を潰してやった。

 

「ようやく……ようやく本気で走ってくれたんだな「あ、俺これで引退だから」……は?」

 

 笑顔のまま固まる温室育ちちゃん。

 そうだ、俺はこいつのこの顔が見たかった。

 無垢なまま、絶望してくれる姿がどうしようもなく面白おかしく見えるからだ。

 

「聞こえなかったか? 引退だよ。い ん た い」

「何故だ……だって君はまだ走れる! 怪我だってしていな────」

「飽きた」

「飽き……!?」

「だってさ、大体やることやったもん。そもそも入学動機が親の顔を立てるためだしなぁ。ほんとは適当なオープン戦走ったらそれで終わるつもりだったんだ」

「なら、今までは、何故」

「あんたが面白いからに決まってんじゃん」

 

 流石に人前でショートされると困るので、いらんメディアが騒ぐ前に地下バ道に連れ込んでやる。

 前とは逆の構図。

 俺が、温室育ちちゃんを掴み挙げていた。

 

「前は嘘言ったなぁ。ほら、合宿の時。俺はあんたをどうでもいいと言ってやった。覚えてるよな?」

「覚えて、いる。あれが、うそ、だと……?」

 

 この俺の引退こそが、こいつの面白さに彩りを与えてくれるんだ。

 

「世間知らずのお嬢様、無垢にも身の丈に合わない理想を語って、それに溺れて沈んでく」

 

「おだてられ、囃し立てられ、皇帝なんぞと呼ばれて勘違い。最初に語ったあんたの理想に、あんた自身はどこにもいない」

 

「勝ち得た栄光ですら偽りだ。俺に勝たせてもらったと、ずっと今でも思ってる」

 

「あ……くっ……」

 

 胸ぐらを越えて首もとを、優しく掴んでほんの少し絞めあげる。ろくに口が聞けないんだ。皇帝がこのザマとは、あまりにも滑稽だ。

 

「そんなあんたの矛盾が────幼稚さが────その愚かさが、俺は何よりも大好きなんだよ」

「────」

 

 本当は本気の俺と真っ向勝負がしたかったんだろうなぁ。

 暮れの中山で正々堂々、雌雄を決したかったんだろうなぁ。

 だが────。

 

「絶対に、もう二度と、あんたと一緒に走らねぇ。せいぜい俺のいないターフを踏みしめてろ」

 

 もう二度と、俺と走ることは叶わない。

 それを理解した温室育ちちゃんの顔は────これまでで最も醜く歪んでくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三年間の終わり。

 俺は宣言通り引退し、トレセン学園に通学しながらも悠々自適な日々を送っていた。

 

「は~、メリケン供は撃ち合いに負けるとすぐショットガンを使うなぁ。強いのはショットガンであって、おまえらが強い訳じゃないんですけど」

 

《流石メリケン顔真っ赤製造機》

《雨鯖で輝く女》

《うp主が最強なのではなく、メリケンが弱いからというのが事実》

《うp主さん女だったの!?》

《うp主さんの声、どこかで聞いた気がするんだが……》

 

 勿論俺の言う悠々自適な生活とはゲームをいつでも好きなだけ遊べることである。最近は何本か動画を投稿し、今日は初となるライブ配信をやっていた。

 

 画面の隅にはチャットで好き勝手に呟くリスナー。普段俺が投稿してる動画は合成音声を使っていて、生の声は今回が初めてだ。それで俺が女であることに驚くやつがわんさかいた。

 

(十中八九俺のファンがいるじゃん。生声はミスったかな。……ん?)

 

 配信の途中だが、ガチャりと玄関を開ける音がする。

 合鍵を渡してるのは家族くらいだ。今日誰か来るとは聞いていないが、母さんがご飯でも届けに来てくれたんだろうか。

 そう思って出迎えなかったんだが、それは俺にとって致命的なミスだった。

 

「やぁ。聞いていた通り、ゲームに没頭しているようだね」

「は?」

 

 ドサリと、一人暮らし用の1LDKに荷物を下ろすバカがいる。

 合鍵で堂々入って来たそいつは、まるでそれが当たり前だと言うように部屋に居座りやがった。

 

「おい、てめぇっ、なんでここに!」

「君のご両親に伺ったんだ。あれから君のことが全く理解出来ず……家族であれば、君の気性をよく知っているだろうと泣きついた。君のことを全て語ってくれたよ。おかげで、君のことが少し分かるようになった」

「はぁ!?」

 

 一体全体どういうことだ。まさか、父さんと母さんが許可したっていうのか。

 

「それで君は、ゲームが一番大好きなんだな。煽動者(アジテイター)、名は体を表すというが、君はまさしくその通りなんだろう」

「ちょ……今ここで喋るな! まずい……!」

 

《え、アジテイター? まじ?》

《声似てると思ったけどモノホンじゃん。やっぱり本人かよ》

《じゃあもう一人はシンボリルドルフ?》

《これルドルフだよ。アジテイターの同期とか他もういないじゃん》

 

 無駄に高性能なヘッドセットは温室育ちちゃんの声を拾ってしまっていた。おかげでチャット欄がゲームとは関係無い内容で埋め尽くされていく。

 

「ふむ、話を聞くにあれか。配信というやつをやっているのか」

「だから喋んなって言ってるだろ! 今配信切るから……!」

「いや、ちょうどいい」

「あ、おい、ちょっ!」

 

 あろうことか俺からヘッドセットを取り上げるクソボケ。まさか俺がこいつに振り回されることになるなんて────。

 

「んんっ……こういう形で話すのは初めてだな。考察通り私はシンボリルドルフ、配信者がアジテイターだ。唐突だが彼女と同棲することになってね、もしかしたらこれからも配信に現れるかもしれない。よろしく頼むよ、リスナーさん」

「は……はぁぁぁ!?」

 

 後になって両親に聞いてみれば、当然の報いだという。

 平穏無事に終わったはずの三年間────そのはずが、まさかそれを越えた先で今までのツケを払うハメになるとは、俺は全く考えちゃいなかった。

 

 

 

 

 




キャラ紹介

 アジテイター
 テンプレートな転生ウマ娘。
 まともに走ればシンボリルドルフすら越えうる才能を持っていたというのに、その才覚を余すこと無く自身の趣味にのみ注ぎ込んだ異常者。
 見た目は黒髪黒目のウマ娘であり、ウマ耳さえ隠せば普通の日本人で通るような姿をしている。身長は178cm、胸はそこまで大きくない(本人談)。本人は全く関知していないが切れ長の瞳に男そのもののような口調からイケメンだと評判で多数の女性ファンがいる。
脚質は追い込み。
 前世から根っからのFPSプレイヤーであり、倒した相手を煽るのが何よりも大好きというかなり歪んだ嗜好を持っている。煽ることにかけては右に出る者はいないと豪語するレベルであり、その性癖は家族にも呆れられる始末であった。
 その気性は親の顔を立てるつもりで入学したトレセン学園でも変わらず、シンボリルドルフを見つけて標的と定めたあと、わざと分かりやすいように彼女の後ろを追走し勝ちを譲ってやったと悟らせる走りまでするほど。その後もシンボリルドルフを相手に煽る真似を続け、遂には脳を焼かれたシンボリルドルフに自宅へと押し掛けられてしまった。自業自得である。
 意図せずスタートした同棲生活にボヤきつつも両親から反省しろとのお達しがあり、半ば順応せざるを得ない日々を過ごしているようだ。

 シンボリルドルフ
 本来の皇帝。
 性格は概ね原作と変わらないが、三冠の勝利がアジテイターによって譲られたものだと誰にも相談できなかったために、思考がアジテイター一色になってしまっていた。
 人間関係も概ね変わりないが、カイチョーのような無敗の三冠を目指すと豪語するトウカイテイオーに対しては若干の引け目を感じている。
 不運にもアジテイターから目を付けられたことにより、何度も彼女に振り回されることとなった。同期で実力が同格、もしくは上回るだろうとされるウマ娘が彼女しかいないこともあり、いつかは全力の勝負を夢見ていた。
 ジャパンカップでのアジテイター勝利・引退により完全に脳を焼かれてしまった。スポーツマンシップを堂々ドブに投げ捨て好き勝手に生きる彼女の生き様はシンボリルドルフの理解の範疇に無く、一度は心神喪失に陥りかける。最後に残った一縷の望みを賭けてアジテイターの両親へとこれまでの所業を語ったところ大いに納得を頂いた。そこからトントン拍子に話が進み、サプライズでの同棲生活へと至った。
 現在では庶民的な同棲生活を楽しんで過ごしている。元男でがさつな生活スタイルを持つアジテイターを甲斐甲斐しく世話する日々に満足しており、その様子はリスナーから「ルドルフが奥さんやってる」と評されるほどである。本人はこれを事実婚のようなものだと解釈しているようだ。
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