少し遅れた話題になりますがブエナ引きました。まさかの初育成で温泉引きました
とんでもねぇもん見させられちまったぜ()
今回はヒミツ無しです
「黄金世代ねぇ……」
ポンコツ皇帝様とのデートから数日。
俺は部室で一人、相手チームのデータとにらめっこしていた。
今回は対戦相手が決まるのが早かった。三戦目ともなるとアオハル杯全体のチーム総数が目に見えて減ってくるからそれだけマッチングも早いと思われる。マッチングが早いのはそれで良い。それだけ相手チームへ対策する時間が増える訳だからな。
「問題は、それが相手も一緒ってことだ」
一戦目、二戦目はまだお祭り騒ぎのノリで勝てた節があった。オルフェーヴルがダートで見せたド根性とか嬉しい計算外はあったがまだなぁなぁで済ませられてたんだ。しかし今度の相手はそうも行かない。
「早急なチーム強化が要るな……まだ足りてない長距離・ダート・短距離を埋めなきゃマズい」
短距離:キングヘイロー・ニシノフラワー
マイル:グラスワンダー・オグリキャップ
中距離:スペシャルウィーク・ツルマルツヨシ
長距離:セイウンスカイ・テイエムオペラオー
ダート:エルコンドルパサー・アグネスデジタル
これが黄金世代チームの編成である。
はっきり言おう。
「いくらなんでもガチ過ぎねぇ? *1」
なんか黄金世代以外の面子が混ざってるのがおかしいと思ったが、倒したチームからメンバーを指名できるシステムで取り込んでるらしい。オグリキャップが負けたのは意外だが一人で勝っていても他が負けたら意味が無い。オペラオーも同じだろう。ニシノフラワーはセイウンスカイと仲良いからその縁だろうし、デジタルは気にするだけ無駄だ。
「ヤバいな。こっちの勝ち目が一気に詰んで来やがった」
自信を持って勝てそうと言えるのがマイル一つに絞られてしまった。そのマイルと言えど、オグリキャップがガチればタイキシャトルですら危うい。グラスワンダーも朝日杯勝っててこっちも気が抜けない。
中距離はダービーウマ娘のスペシャルウィークが鬼門だろう。ツルマルツヨシは体調が安定しないと聞くからそこだけが救いか。
長距離はセイウンスカイが危険過ぎる。ラップ走法で無理やり長距離を走っていたミホノブルボンと違ってセイウンスカイは完全なステイヤーだ。その上状況に応じて逃げ以外の作戦も披露しうるトリックスターでもある。同じ逃げでもライスシャワーからすれば天敵と言っていいほど相性が悪い。マークなんぞしようものなら必ずそれを逆手に取るからな。テイエムオペラオーは単純に強い。小細工を踏み潰す強さを有馬記念で見せている。ジャーニーの末脚に期待したいが、もう一声三人目の戦力が欲しいところ。
短距離のキングヘイローとニシノフラワーも実力は然ることながら、あちらが強いというより未だ短距離がクラフト一人なこちらが問題だ。似たような理由でダートも俺がスカウトしなきゃいけない。オルフェーヴルが頑張ってくれてはいるが、それでもダートには不安が残っている。オルフェーヴル同様凱旋門賞二着と芝ダート両刀の
「優先するべきは……短距離か。いつまでもクラフト一人におんぶにだっこはいけないな。ダートも強化したいんだが……」
優先順位としては、短距離≧ダート>長距離といった具合か。さて、どうするべきか。
「ダートはギリギリ伝があるとして……長距離と短距離か。ミーティング開くしかないかぁ……」
早々にメンバーのトレーニングを切り上げて、部室に全員を集める。
議題は黄金世代への対策と、それに伴うチーム新規加入についてだ。
「短距離が私だけ……ですもんね……」
「ああ。悪いが、俺には良さそうな伝が無くてな。知り合いとか、声かけられそうなやついたら誘ってみてほしい」
「うーん……」
流石に11人もいると部室が狭く感じる。
いつも喧しいチームだが、内容が深刻なのもあって鳴りは潜めてる。分かってないのはオルフェーヴルの膝にちゃっかり座っているウララくらいだ。
「アジテイターさんがお声かけすれば、集まる方はそれなりにいると思いますが」
「それじゃダメなんだよ。なんというか、それでこのチームに合うやつが集まるビジョンが見えないのさ。おまえら、自覚あるか分からんがここ結構イロモノだぞ」
最初に提案してくれたヴィルシーナの案は俺からすると無しだ。見てもらいたいのは俺じゃなくてこのにんじんプリンだからな。下手に俺に憧れてるようなやつはお呼びじゃないんだ。俺じゃなく、自分で走る理由持ってるやつが良いんだ。
「長距離ならば一人……いないでもないが」
「おお。オルフェーヴルは良さそうな人呼べそうなのか?」
「ゴールドシップ。あやつなら、能力に不足は無かろう」
「パスで」
「な……!?」
おい。
ドヤ顔で言ってきたから期待したのになんでトレセン問題児の筆頭*2が出てくるんだよ。あんな頓珍漢の面倒なんざ見たかねぇわ。
「アジテイターさん、一つ確認したいのだけれど……スカウトするにあたって、重要な基準は強さではないのかしら」
「強さ?」
「ええ。口振りからして、チームと合うことだけを考えているように聞こえるわ。確かにチームとしての相性は重要だけれど、肝心の実力が無ければお話にならないでしょう?」
「そこはトレーニングでどうとでもなるさ。まぁ、そのためにも早くスカウトして纏まったトレーニングができるようにしたいんだよなぁ」
「……どうとでもなる? 面白いことを仰るのね。まるで、
「そうとしか言ってねぇんだけど……」
あれ、空気がおかしくなったな。
ジェンティルドンナの質問に答えただけなのに、おかしなものを見るような目で見られてんだけど。おじさん良い歳だから変質者扱いは辛いぞ。
「フクさん、シーザリオさん。大分ヤバいこと言ってるように聞こえるのはアタシだけじゃないっすよね?」
「大丈夫ですよシオンさん。アジテイターさんは最初からこの調子ですから」
「大丈夫です。アジテイターさんの常識外れにも最近は慣れて来ました……」
なんか中距離組がコソコソしてる。フクキタルが筆頭だからかあそこが一番雰囲気緩いんだよな。まぁ、シーザリオもウインバリアシオンもレースに入れ込み過ぎるきらいがあるからむしろバランス取れてると思うが。
「エキサイティング! アジテイター先輩ならではの発想デスね!」
「人さえいればあとはどうにかすると。……本当、面白い御方だ」
「無駄に褒めなくていいっつうの……んで、誰か他に呼べそうな人いる?」
こういう時に囃し立てるのがタイキシャトル、なんでか知らんがいつものアルカイックスマイルを決めてくるのがジャーニーだ。ジャーニーについては分からん。悪く思われてはいないと思うんだが。
「あの……ブルボンさんはどうですか?」
「ミホノブルボン? あー、そうか。うちも勝ったから引き入れていいのか」
「ブルボンさんがいてくれたら、百人力かなって……」
「それは別に良いが、入れるとしたら長距離じゃなくて短距離だぞ」
「え……」
やっぱり勘違いしてやがった。
ライスシャワーが推薦したミホノブルボン、ライスシャワーからすれば共に戦った戦友のような間柄なんだろうが、冷静に戦績や素質を見ると長距離に欲しい人材じゃないんだよな。むしろスプリンター寄りのマイラーだ。それでもクラシック二冠は大した偉業だし、負けた菊花賞でも純粋なステイヤーたるライスシャワーにあそこまで粘れたのは努力の賜物だろう。
「あー……ライスの友達を悪く言いたい訳じゃないんだが、今足りてない短距離と二人いる長距離じゃ短距離の方に人を回したいんだ。確かに俺なら誰であれ勝たせられるが、チーム戦やってる以上そっちを考慮しないとな……」
「あ……ごめんなさい……ライス、ちゃんと考えてなかった……」
「いやいや、悪くは言ってないんだって。ミホノブルボンを入れる案には賛成だよ。説得、ライスに任せていいか? ここじゃライスが一番仲が良いだろう?」
「う、うん……! ライス、ブルボンさんとお話ししてくるね……!」
ちょっとでも自分に瑕疵があるかと思うとこれだ。これがミホノブルボンを抑え、メジロマックイーンの連覇を阻んだ黒い刺客とは思えない。こんな小動物染みた女の子がヒールだなんてあり得ないだろう。世間の目は腐ってんな。
「まず短距離にミホノブルボン、と……。どうだ、クラフト。なんか同僚にしたいやつとかいないか?」
「えぇっと……すみません、知り合いがいない訳じゃないんですが、みんな他のチームに入ってまして……」
「その知り合いっていうのは?」
「例えば、短距離ならグランさんとか……長距離ならクロノさんとか……」
グランアレグリアとクロノジェネシスか。前者は自他共に認めるマイル狂いで誰も放っておかないだろうし、クロノジェネシスは……
「ん? クロノジェネシスもアオハル杯やってんの?」
「そうみたいですよ。確か、グランさんと同じチームだったはずで……他にも、中距離はアイさん……アーモンドアイさんとかだったかな……」
「あれ、おっかしいな。俺が聞いた話だとアオハル杯出ないで裏方に徹するとか言ってたと思うんだが」
「そうなんですか? 私も詳しく聞いた訳じゃないので何とも……」
クロノジェネシスとはそこそこ親交がある。
現役だった頃の俺のレースを見て、ふざけたことに「なぜ実力を抑えて走っていたんですか」、と初見で看破した上に直談判までしてきた最高の阿呆だ。レース観戦が趣味らしいが、それが高じて優れた観察眼があるらしい。
もちろん俺もタダで追い返した訳じゃなく、アオハル杯が始まってからライバルチームを考察させてそれを元に情報を得ていた。特にチームに入ってるなんて話聞かなかったんだが。
「クロノジェネシスは俺の方で確認するわ。あいつのことだから普段じゃ見られないアオハル杯のマッチングに狂喜乱舞してるはずだからな」
「分かりました。じゃあダートは……あと、短距離も欲を言えばもう一人欲しいですよね?」
「ダートは俺の伝を頼る。頼めそうなのが一人いるんだ。もっと言うとそいつは結構な情報通でな、他のメンバーの宛になるかもしれん」
「ふん、アジテイターよ。お世辞にも豊かとは言えぬ貴様の人脈で何を宛にすると?」
「おまえさっきのこと根に持ってんだろ……俺のゲーム仲間のトランセンドだよ。飄々としてるが、結構な実力者だぜ?」
「えぇ~。悪いけどパスかな~」
「そこをなんとか……」
珍しいことに対面での話し合い。
ミーティングの後、いつもなら通話しながらゲームを共に遊ぶトランセンドと久方ぶりに直接会ったのだが、反応は芳しくなかった。
「ちなみに理由は?」
「単純にめんどくさい。アオハル杯、外から見る分には楽しめるけど当事者になるのはちょっとねぇ……」
「トランはアオハル杯に否定的なのか?」
「否定的っていうか、わざわざチーム組むのがダルいんだって。あんま言いたかないけど、大勢で仲良しこよしは好きじゃないんだよね」
言われれば確かにそうだ。トランセンドはエアシャカールとかとネットの繋がりはあるが、それ以外は特段誰かとつるむ真似はしない。裏で情報屋みたいなこともやってるから、それで表立って目立つのは避けたいという意味もあるんだろう。
「なるほどな……。ま、無理強いはしないさ。それならそれで、うちに入ってくれそうな他の子を探すだけだからな」
「偉そうなこと言っちゃって~。ほんとはその情報が欲しくて来たんでしょ。最初に無理を吹っ掛けておいて、後から希望通りに取引を進めるのは交渉の定番だからね」
「……うちに入ってほしいのは割りと真面目だったんだが……」
「はいはい。それで、誰をお探し? 言っとくけどうちの情報料は安くないよ~」
トランセンドの言うことも間違いではない。だからこそ宛になるかと思って頼ったんだ。
対価は理事長や樫本さんと進めてた共学の件にするか。噂話という体で小出しにしていけば、正式に発表された後でも混乱は少ないだろう。
「そうだな……直近で言えば、フリーのスプリンターかな? うちは未だにクラフト一人でな……」
「フリーのスプリンターねぇ……。筆頭はカルスト「無しで」……早いってば。後はそうだね、ケイエスミラクルさんとか?」
「ケイエスミラクル?」
聞かない名だな。学園の有力なウマ娘はある程度頭に入ってるつもりだったんだが。
「結構有望株なんだけどね、体が結構弱いみたいで度々病院のお世話になってるみたい。素質はあるんだけど体質が尾を引いてるって子かな」
「ほう……トランが名を出すくらいなら、素質に偽り無いんだろうな」
「まぁね。あの子育成するとしたらきっと難易度は高いよ。やるんなら、覚悟決めなきゃね」
「そんなもんチーム背負った時から決めてるっつうの。……で、他は長距離とダートなんだが……」
「長距離ならミラクル繋がりでヒシミラクルさんがいいかも。確かケイエスの方と友達のはずだし。問題は誰もが認めるぐうたらウマ娘ってとこだね。トレーニング……特にプールが苦手なんだって」
「
ヒシミラクルなら見たことある。大抵どっかしらかでおやつ食ってたり昼寝してたりで如何にもな昼行灯らしさが特徴的だった。こいつは"有能な怠け者"タイプだな。コツはいるが、やる気の出し方さえ合ってれば伸びる才能があるだろう。
「そしてダートだが……」
「それはだいじょぶでしょ。ウララちゃんがしっかり結果出してるじゃん」
「ああ、あれか……」
軽く現実逃避してたのにわざわざそれをトランセンドが見せつけて来やがる。
ウマホのSNSに表示された画面には、スマートファルコンと仲良くポーズを決めるウララ(あと奥で憮然と腕を組むオルフェ)の写真が載せられていた。
「チーム加入の話ですね。もちろんいいですよ!」
「あっさりかい……」
前回のレースの後、俺が懸念していた通りウララには注目が集まった。
ただ悪い意味じゃない。どういう化学変化を起こしたのか、スマートファルコンが上手いこと取りなしてくれたんだ。
アイドル活動のためにSNSの更新には余念が無いスマートファルコン。レースに負けた後でも、きっちり記念撮影して応援してくれていたファンへ感謝を送っている。当然ながら、ダートが主戦場のスマートファルコン相手に勝ったオルフェーヴルが話題になったが、その後ろで一生懸命に走るウララも注目の的となった。
《なにこの子。かわいい~》
《地方出身の子かな? 中央じゃ見たことないね》
《知ってる。この子確か一度も勝ったことがないウマ娘だよ》
《一度も勝ったことがない? なんでそんな子が中央トレセンにいるんだ?》
《この子の走り好きだなぁ。なんでこんなに楽しそうに走れるんだろう》
《負けても笑顔だもんね。この顔でねだられたら色々あげちゃうよ》
ウララの実力を疑うコメントはあるにしろ、概ね反応は好意的だった。
可愛いってのが先に付くが何よりもひたむきな様子が大衆の目を集めるんだろう。思っていたよりずっとマシな反応だったから、個人的には安堵している。
スマートファルコンとのツーショットのおかげでもある。彼女のファンはどこぞの秋葉原四十八よろしく組織化されている。下手にやっかみでも向けようものなら逆にそいつらに炎上させられるのがオチだ。
スマートファルコンからすれば普段通りの仕草だろう。しかし礼を言わない訳にはいかない。チーム加入の件も兼ねて、俺はダンスレッスン中のスマートファルコンを訪ねて初っ端から軽い調子でOKを貰えた訳だ。
「あっさりも何も、にんじんプリンって話題沸騰の注目チームじゃないですか。ウララちゃんとも走りたいし、オルフェさんのダート蹂躙も見てみたいんですよねっ☆」
「おお……そうか。そいつは嬉しいな。こちらとしてもよろしく頼む」
キャピキャピしてるのがデフォなのか? アイドルらしさを意識してるのかもしれんが四六時中この調子じゃこっちが疲れるぞ。
「まぁ、なんだ。ダンス練習が終わったらうちの部室に顔出してくれないか。正式な御披露目は次のミーティングだが、雰囲気だけでもうちの様子を見てほしいんだ」
「分かりました! ……ちなみに、今全員で何人いらっしゃるんです?」
「にんじんプリンの総数か? これから短距離にも声かけるから変わるかもしれんが……現時点だと、短距離に一人、マイル三人、中距離三人、長距離二人で……これからダートにスマートファルコンが入って三人になるから、12人だな」
「なるほどなるほど……その中で、ウマドルに興味ありそうな方とかいたり……?」
「……その辺は知らん。勧誘したいんだったらそっちで勝手にやってくれ。ウマドルとか俺は何も知らないんだよ」
おっと、何か企んでやがるな。外面は取り繕えるが、内に秘めた野望があるタイプと見た。こういうのも、それなりの試練を用意すると自分で自分の殻を破って成長するだろうから育て甲斐がある。良い娘ちゃんなだけじゃ強くなれないんだよ。
「アジテイターさんもどうですか? ジャンルは違うとはいえ、配信もやってますし……」
「俺のはただゲームでメリケン共ボコしてイキりたいだけのゲーム垢だよ。ジャンルどころか炎上一歩手前のネタばっかりだっつうの」
「えー……クール系イケメンって感じでめちゃくちゃ人気出そうなのに……」
物欲しそうな顔しやがって。何がイケメンだ。
あのポンコツ皇帝様と
なんであいつら俺のこと好きな癖して嫌がらせしてくるんだろう。あの性格の悪さはどこで学んだんだ? *3
「せっかくだし、アジテイターさんも一緒に踊りませんか? しばらくウイニングライブもしてませんし、ここは一つ、先輩からのレッスンを……」
「それは出来ない相談だ。
「うわっ」
いきなりヌルっと出てくるんじゃねぇ。普通に怖かっただろうが。
割りと最近は見なかったライオン丸モードだ。年々気持ち悪さに拍車がかかってるよ、ルドルフは。
「おまえ……どこから出てきた」
「君を見かけたから普通に……と言いたいが、少し聞き耳を立ててしまってね。興味深い話をしていたから、思わず割って入ってしまったんだ」
「ここ防音室のはずですけど……」
「やめとけやめとけ。今のこいつとまともに取り合うだけ無駄だ。それとポンコツ、スマートファルコンはうちに入るんだ。変に脅してくるんじゃねぇよ」
「それは済まなかった。些か冷静さを欠いていたようだ。謝罪するよ、スマートファルコン」
「あ、いえ、どうも……?」
あっという間にライオン丸モードから生徒会長モードに戻った。ここらへんの切り替えをもうちょい上手くやってほしいんだが、最近は意図的にライオン丸やってる節があるから
とりあえず、部室に来るようには言っておいたから一旦引き上げる。長居すると隣のポンコツ皇帝様が何言うか分かったもんじゃない。
廊下で皮肉る俺を、ルドルフは屈託なく笑って見てきやがった。
「全く……普段からそうやって生徒会長やってりゃいいのに……」
「生憎だが、君の前では素でいられるんだ。……私が悪いような顔をしないでくれ。こういう振る舞いは、全て君から教わったんだぞ?」
「何も教えたつもりないんですがそれは」
俺と一緒に暮らしてるせいで何かしら影響を受けているとでも言いたいのか。確かに最近はお嬢様らしさは抜けてきてはいると思うが。
「ああ、それと……前に言っていた、ハルウララの件でね。
「本命はそっちかよ。また邪険にできない話を……」
こいつ一人なら粗雑に扱えるのに、よりにもよってその話か。
まだシンボリ家には行ったことがない。度々向こうから手紙なり何なり貰ってはいるが、極々一般庶民でしかない俺にとってあちらは完全な上流階級の人間だ。個人的には会うことすら憚れる……なんて言って、面倒臭いから会うのを避けて来たんだが、今回に限れば会わないのは不誠実になる。
よし、前世を思い出そう。これでも元は会社勤めだ。気分は取締役とか、社長とか、会長とかを相手にするつもりで腹の痛みを無視しよう。
「ふふっ……やっと、やっとだな」
「? 何がやっとだ?」
「君と私の両親を会わせたかった。君は何かに付けて会うのも避けていたようだったから、私としては喜びも一入なんだよ」
「あっそ……おまえがどう思ったところで、俺は知らん話だね」
「全く……いつもそうやって……。しかし私も物好きなものだ。君のそんな振る舞いが、今では愛おしいとすら感じている」
「……おいバカ。ここ学園だぞ。ちょっと口に気を付け────」
「そんな君が────」
「────好きだよ」
────好きよ
この、声は
「……アジテイター、かこつけたようで悪いが、君と両親の顔合わせもそれなりに……アジテイター? どうした、顔色が……」
────私と貴方との絆は、どんなものにも邪魔できない
ルドルフが、ナニ か喋っ て
「アジテイター? ……アジテイター!? 私の声が……!」
────どれだけの時が過ぎようと、私達は再会する
ダメだ 聞こえ なく
────いつか、必ず。歴史の果てに紡がれた文明の彼方で……私達は再会するの
意識が 保 て な
────だから、それまで
────私のこと、どうか忘れないで
キャラ紹介
アジテイター
黄金世代という強敵に悩む日々……かと思いきや未だ根深い声に囚われる。
声は消えない。前世は語らない。今に尾を引くのは巡り回る因果のみ。
トランセンド
アジテイターのゲーム仲間。ダート強者なのを知ってて声をかけたがアジテイターの誘いをすげなく断る。
アジテイター以外にもお得意様をそこそこ抱えているが表に出回らない"情報屋"のため知る人ぞ知る秘密の存在。単にレースの情報だけでなく、学園内の交遊関係などにも明るいため密かな恋愛相談も得意だったりする。