アジテイター   作:エドレア

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なぜだ……次から次へとネタが思い付く……

感想ありがとうございます


日常②

 

 

 

 

 

 

「面倒なガキが増えたもんだな、こりゃ……」

「ひょぇぇぇ……」

「   」

 

 学園をブラついたら、おもしれー女を二人見つけてしまった。

 

 俺の手にあるのは一冊の本。

 出版社とかで正式に売られているやつじゃない。自費で印刷したものであろうもの────所謂、同人誌というやつだ。その表紙に描かれているのはなんだかセンシティブに絡み合う俺と温室育ちちゃんの姿である。

 俺がこれを持ってる理由は簡単で空き教室にこれが置き去りにされていたからだ。どうもこいつらの忘れ物らしいが、俺が手に取ってすぐに取りに来たこいつらと鉢合わせたんだ。

 

「まさかナマモノとはね。してやられたもんだぜ。俺らがそういう対象になるとは思ってもみなかった。出来はまぁ、かなり良いが────このクオリティに仕上げるまでにどこまで俺らを調べたのか是非とも聞きたいなぁ、どぼめじろう先生?」

「カヒュッ」

 

 目の前には二人、懺悔でもするかのような態勢で人のものじゃない悲鳴ととっくに昇天してるオタク────メジロドーベルとアグネスデジタル。わざわざ人目に付かないよう、離れの旧校舎に連れ込んでやったんだが、逆に逃げ場が無いように感じているかもしれない。

 パラパラとそいつらの前で中身を読んでみる。

 

 内容としてはいつでもどこでも気楽に走る俺に温室育ちちゃんが執着する、というやつだった。自分を見てほしいのに、気儘に走る俺が何もしないから、業を煮やした温室育ちちゃんが俺の家に来るという────。

 

 うん、正直に言おう。

 これ俺達そのままでは? 

 

 流石に俺の動機とか細部は違うが、概ね俺達の関係を当ててやがる。

 

「普通に面白いな、これ。俺達がモデルじゃなきゃ捨て置いたんだが」

「あ、あの……それに関しては、大変申し訳なく……!」

「謝るな。別に責めてるんじゃねぇよ。これでもオタクには理解がある方……というか俺がFPSオタクだしなぁ。おまえらの熱意に感心してるだけだよ」

「は、はぁ……」

 

 俺のセリフに少しは落ち着いたらしい。

 それを見計らって、表紙をLANEで撮って送りつける。送り先は勿論()()()だ。

 

「……!? アジテイターさん、一体何を!?」

「いや、ほら、良いもんって共有したくなるだろ」

「その、送り先は……」

「もちろん、ねぇ?」

 

 再び青ざめる二人。今度こそ終わりだと思ってやがる。

 今の時間なら生徒会室で仕事してる最中だろうが、俺が呼べばいつでも来るんだよな、あいつ。

 程なくして、俺の同棲相手である温室育ちちゃんが来てくれた。

 

「珍しい。君からの呼び出しなどまずあるものではないと思っていたが」

「普通は家で事足りるからな。それより見てくれよ、これ」

「君が言っていた同人誌というやつか。私達がモデルとは……描いたのが君達か、アグネスデジタル、メジロドーベル」

「はいぃぃぃ……」

 

 さっきから辛うじて受け答え出来てるのがデジタルなんだよな。ドーベルと違ってまだ余裕があるように見える。ドーベルは青を通り越してもう真っ白だ。

 俺と同じく目の前でそれを読んで見せた温室育ちちゃんは、生徒会長としての顔を正しく保って批評してみせていた。

 

「なるほど、確かに面白い。これは、私達の関係性を可能な限り推察して描いたものなのか」

「そうなんだよ。細かいところは違って当然なんだが、外野からだと俺らの関係性って分かりづらいだろ? そういうのをちゃんと考察してるんだよな」

「ふむ、そこに関しては意図的に私達がそう振る舞っているからでもあるが……どのようにして私達をそう見たのか、気になるな」

「え、え~っとですね……」

「おい、ドーベル。聞きたいのはあんたにもだぞ。いつまでも白くなってんじゃねぇ。早く戻ってこないとおまえの机の中身全部ラモーヌさんへぶちまけるぞ」

「……はっっっ!?」

 

 よし、戻ってきたな。

 こういうオタクって自分だけの秘密のノートとかにこっそり欲望描いてるもんなんだよなぁ。

 

「ど、どうして机の中身を知ってるんですか!?」

「いや、知らないよ。適当言っただけ」

「……!?!?!?」

「まぁ、カマかけたんだけどその様子見る限り外れちゃいないんだろうな」

「あぁ……ぁぁぁ……」

「だから白くなるんじゃねぇって……」

「アジテイター、そこまでにしておくといい。君はただでさえ整った顔立ちをしているんだ。そんな君に睨まれてしまえば、例え君にその気が無くともほとんどウマ娘は萎縮してしまうよ」

「ん~? これはナチュラルに褒められてんの? 諌められてんの?」

「どっちもだと思いますが……」

 

 全くその気は無いんだが、温室育ちちゃんの言う通りその気が無くてもビビらせちまってるようだ。これ以上ドーベルで遊ぶのは止めておこう。

 

「で、俺達が気にしてるのはこれなんだよ」

「はい……クラシック期の回ですね」

「どうやってこれを考察した?」

「どうやってと言いましても……」

()()()()()()()()()()()()()()なんて、こいつやトレーナー以外にバラした覚えは無ぇぞ」

 

 そう。

 クオリティも然ることながら、この同人誌で一番俺の目を引いたのがこれだ。

 身内以外の誰にも話した覚えは無いのに、この同人誌じゃ俺が本気で走らなかったから三冠取れなかったという扱いだった。最も温室育ちちゃんを煽りたいとかいう理由じゃなく、単にやる気が無かったからという、本来の俺よりもっと奔放な理由が動機となっている。

 

「……え!? 本当に本気で走ってなかったんですか!?」

「こいつを煽るためにな。ほら、このアホ、バカ正直にウマ娘の幸福とかほざいてたじゃねぇか。それならいっそお膳立てされた三冠で幸せかよってやったんだよな」

「あれはひどかった。おかげで私は君のことばかり考えるようになってしまったよ」

 

「これ、私達が聞いて良い話なんでしょうか……」

「どう考えてもダメでしょ。クラシックを本気で走らず勝ちを譲ったなんて話、流出したら大事件じゃ済まない……!」

 

 なんだろう、この反応既視感あるな。

 いや、まぁ流石にクラシック舐めプはバレたら不味いと思ってるけど。

 

「とはいえ過ぎた話だしなぁ。時効だろ」

「時効というにはまだ早いさ。私は今でも本気の君と競り合いたいと思っている」

「ばぁ~か。走らねぇって言ったろ。もう面倒臭いんだよ、色々と」

「……こんな調子でね。アジテイターは私を煽るためだけに現役生活のほとんどを費やしたんだ。最後のジャパンカップだってそうだ。今まで見せていなかった本気を見せておいて、いざ決戦をと私が望んだら、引退だと言う。こんなズルいウマ娘は他にいないだろう?」

 

「お、お二人の関係性がぁぁぁ……考察より全然深く、広く、美しくぅぅぅ……」

「良い……良い……こんな関係性がこの世にはあったの……?」

「凄いなこいつら。小声で昇天するのと小声でネタ書きに走れるとは」

「聞くにオタクというのは自ら専門とする分野において、誰にも負けない熱意を表すという。彼女達は私達の関係を尊く思っているようだ。少々気恥ずかしいな」

 

 そんなオタクのネタになるような関係かね、これ。

 言っちゃあなんだが将来有望な優駿を煽り散らかしただけだぞ。しかもそれで本来なら勝てたレースを捨ててるんだ。自分で言うのも何だが大分救えないことを俺をやってんだよな。

 

「ていうか昇天されると困るんだよ。俺が聞きたいのはてめぇらの考察の次第だ」

「は、はい! それにつきましてですね、まずアジテイターさんの膨大なレース戦績を漁りまして、そこからアジテイターさんがルドルフさんがいる時とそうでない時で戦績が違うことを比較しまして、更にはルドルフさんがいる時に決まって同じ負け方をするところから自身の着順を意図的に操作している可能性に辿り着きました。そしてルドルフさんがアジテイターさんにだけ見せる表情から……」

「あー分かった分かった。要するに、俺の走りは見る人が見りゃ分かるって話なんだよな?」

「そもそも君、私がいないレース全勝してるじゃないか」

「あれはなんていうか……おまえ以外には勝てるっていう箔を付けたかったんだよ。だってさ、おまえ以外の奴らつまらないし、そんな奴らに負けてやる義理なんざねぇもん」

 

「……っふぅぅぅ……推しが尊い……」

「"おまえ以外の奴らつまらないし、そんな奴らに負けてやる義理なんざねぇもん"……裏を返せばルドルフさんなら良いって……コト!?」

 

 こいつらテンションぶち上がり過ぎだろ。

 俺達は普段通りのやり取りしかしてないんだが、どうにもこいつらにとっては創作意欲を大いに刺激するらしい。

 

「あー……ところでこれどうする? クオリティが良いとはいえ、俺らが無断でモデルにされてた訳だが」

「先に君の見解を聞きたいな」

「出来は良いし、俺らへのリスペクトは感じるし、次からは献本してもらえたら良いかな。だってさ、これ無くすのは惜しいだろ?」

「同意見だ。私としても是非描いて頂きたい。君達から見た、シンボリルドルフ、アジテイターの物語というのをね」

「ひょ、ひょぇぇぇ……」

「おいこら、睨んでんのはてめぇもじゃねぇか。おまえだって顔良い方なんだから理屈は俺と同じだろ」

「と、止まらない……! 推しからの供給が止まらない……!」

 

 うん、これ以上こいつらの前にいるとこっちがおかしくなりそうだ。

 やり過ぎないことだけを確約して温室育ちちゃんと二人で教室を後にする。後はオタク供に任せとけばいい。

 

 あぁ、俺ら二人が揃ってるのは学園だと珍しい光景かもしれないな。

 

「ふふふ、アジテイター、君は気付いていないのか」

「あぁ? 何がだ」

「私以外に負けてやる義理が無い、だったり、私の顔を良いと褒めたり、普段なら聞けない本音を曝けだしてくれただろう? 私としてはそれが聞けて嬉しくてね」

「聞かれてないんだからそりゃ答えようがねぇよ」

「……つまり、聞けば答えてくれると?」

「勘違いすんじゃねぇよ。てめぇ以外に負けてやる義理がねぇのは俺の都合だし、てめぇの顔が良いってのも単なる客観的事実だ。俺からすれば中身はポンコツお花畑女だよ、てめぇは」

「ふっふふふ……く……ははは……そうか、そうか。君からは私がそう見えているのか……はははっ!」

「なんで爆笑してんだよ。これだから最近のてめぇは気持ち悪いんだ」

 

 こいつのことバカにしてるんだけどなぁ。幾ら言ってもこの調子で張り合いが無い。前みたいにもうちょっとギラギラしてくれてたら走ってやるのも考えなくは無いんだが、それをこいつに言うと確実に調子に乗るから言いたかないんだよ。

 

 いつまでたっても笑ってるこいつとやっぱり変わらず仏頂面の俺。

 後で探しに来たエアグルーヴが俺らを見て不思議そうな顔をしていたが、結局はいつもの光景なのでそのまま流してやった。

 

 

 

 

 

 アジテイターのヒミツ③

 髪をストレートに伸ばしているが、本当なら切りたいと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また別の日。

 

「おい……ガキ共……これは、どういう状況だ?」

「……」

「ふふふ……」

 

 家に帰ろうとした矢先、学園の廊下で変な光景と遭遇した。

 やたらキラキラしていて眩しいガキ────オルフェーヴルと、調子に乗った笑みが印象的な小娘────ジェンティルドンナが向かい合いそれを囲む奴らが廊下を塞いでやがる。

 

「おまえらそこで立ち止まってんじゃねぇ。通行の邪魔だろ」

「あら、ごめんなさい。周りの方々が面白くって」

「……ふん。ただの余興だ」

「はぁ?」

 

 周りを見ればざわざわと野次馬共がざわめいてやがる。

 

「大したことではありませんわ。私とオルフェさんが帰り際にばったり……それだけのことですもの」

「そうかい。それだけならなんでこうなる」

「観衆共が勝手に(おのの)いているだけだ。余は何もしていない」

「ふーん。……おい、おまえら、見せもんじゃねぇぞ! 邪魔だからとっとと散れ!」

 

 俺の一言で蜘蛛の子を散らすように人が離れていく。強面なもんであまり人受けしない俺の顔立ちだが、こういう時は役に立つもんだ。

 

「流石、と言うところかしらね。アジテイターさんの御声なら、鶴の一言にも勝るでしょう」

「あっそ。小娘に褒められたところで嬉しくねぇよ」

「ほう、ジェンティルドンナを小娘とな。なれば、余はどうだ?」

「あぁ? 大して変わんねぇよ。おまえらがどういう評判か知らねぇが、中高生であることに変わりねぇ。ガキをただガキと呼んでやってるだけだ。何もおかしかないだろ」

「……ほう」

 

 ああ、こいつらあれだな。温室育ちちゃんとかと同じ、才能も家柄も何もかも優れてるタイプだ。直感で分かった。

 どうせ前評判でガキに見合わず持ち上げられてるタイプだろ。そういう鼻につくところは嫌という程知ってんだ。

 

「アジテイター、貴様は()の皇帝に唯一手向かい、一矢報いた反逆者と聞いている。なるほど、貴様からすれば、我らなど皇帝に遠く及ばぬと言いたい訳か」

「いや、あいつも大概クソガキだよ。皇帝とか言われて持て囃されてるが、中身はポンコツ頭のお花畑だ」

「ほほ、トレセン学園広しと言えど、皇帝をそう評せるのは貴方だけでしょうね。前から気にはなっていたけど……ますます興味深くなったわ。貴方のその自信は一体どこから来るのかしらね?」

「知らねぇよ。俺の性分は生まれつきだ。気になるならその皇帝様に聞いてこい」

 

 またぞろ面倒なガキ共だなぁ。

 さっさと家に帰りたいところだが、こいつら俺と同じ方向に進んでやがる。おまえらは俺と違って寮住みだろ。

 

「おい、なんで着いて来やがる。こっちは寮じゃねぇぞ」

「少し気になる噂を聞いてな。聞くに、皇帝とその反逆者が学園の外で愛の住まいを築いていると」

「愛ってのは欠片もねぇが同棲はしてるよ。それがなんだ」

「あら、噂は本当だったの。風聞は大抵尾ひれが付いて然るものと思っていたけど、ここまで愉快なものだとは思わなかったわ」

「おまえら……外野だからって言いたい放題してんじゃねぇよ」

 

 面倒だからこのまま帰る。

 追っ払っても良いんだが、俺の家は教えてないのにマルゼン姐さんと一等星(シリウス)にバレた前歴がある。知らないところで痛くもない腹を探られるのは不愉快だ。それならいっそのこと、知ってる奴らをこちらから把握した方がやりやすい。

 

 俺の家は学園からそんなに遠くない。人の足でも歩いて10分程度、ウマ娘用のレーンが整備された道路もあるから余程寝ぼけない限り遅刻もあり得ない距離だ。のんびり気儘な帰り道を、二人と駄弁りながら一緒に歩いていく。

 

「アジテイターさんは最初から学園の外にお住まいだったの?」

「まぁな。寮とかあり得ねぇって親に我が儘言ったんだ」

「不便ではないのか? 寮であれば食堂や風呂などの設備が使いやすいはずだが」

「俺は生粋のゲーマーだからよ、自分の部屋にゲーム一式持ち込めないのが一番嫌だったんだ。あと同室のやつ。今でこそなし崩しに同棲してるが、自分のプライベートに知らん誰かがいるってのも嫌だった。ゲームしてる時の俺はおまえらからすると信じられねぇくらいの暴言吐いてるからな。そんな姿、他人に見せたかないんだよ」

「けれど、今は皇帝様と同棲しているのでしょう?」

「……部屋借りてるの名義人が親だからさ、反省しろって言われたらそれまでなんだよなぁ。現役の時にあいつ弄り過ぎたのが良くなかったというか……」

「皇帝を弄る、か。評判以上に深い関係なのだろうな」

 

 深い関係ってなんだよ。

 別に同棲してるのは隠してないんだが、俺がこれを話すとみんな似たようなこと言いやがる。決まって生暖かい視線を寄越して来るのもセットだ。ただ同棲してるだけなのになんでそんな反応になるんだろうな。シェアハウスと変わらないだろ。

 

「ほら着いたぞ。上がってくか? あいつが取り揃えるせいでご馳走できる茶っ葉は無駄にあるぞ」

「良いのかしら。家主が貴方とはいえ、独りだけの部屋じゃないでしょう?」

「この時間ならあいつは生徒会室で仕事中だ。帰ってくるのは早くても夕方頃になる。気にすんな」

「ふむ……では、貴様の言葉に甘えようではないか」

 

 本当に茶葉はいくらでもあるんだよな。

 元々リ○トンの適当なインスタントティーバッグで済ませてたんだが、あいつがインスタントじゃない本格的な物を仕入れてくるようになった。俺が知ってるのはせいぜいダージリンとか有名なやつしか知らないが、あいつが甲斐甲斐しく淹れてくるんだ。

 

「悪いが茶葉の作法とかは知らなくてな。淹れ方は適当になるが……」

「それでしたら、私が淹れて差し上げてもよろしくてよ」

「良いのか? 客人に任せるもんじゃないと思うが」

「貴方に茶を淹れられる、それがどれほど光栄なことか……ほほ、貴方だけが知らないなんてね」

「俺に淹れたって何も出ないよ。光栄とか、一体誰が言い出したのやら……」

「……これは重症であるな。自身に対する世間の評価と主観でここまで大きな齟齬があるとは」

「知らん誰かの評価なんぞそこいらの犬にでも食わせてやればいいんだ。俺は好きにゲームしてるだけの日々が一番好きなんだよ」

「ふむ、ゲームとな。普段どのようなものを遊んでおるのだ?」

「そりゃBF4よ」

 

 ちょうど話題になったので、こいつらの前でPCを立ち上げる。

 Battle Field 4。俺が前世からやりこんでる神ゲーにしてクソゲー。あらゆるFPSゲームの中でこいつほど自由度が高いゲームを俺は知らない。

 転生した時に世界が違うからBF4が無いかもしれないと一時疑ったが、ウマ娘の有無で関連するところが変わってるだけで他はほとんど同じだった。BF4を再び見つけた時は心の底から歓喜したね。

 

「所謂FPSゲーム、というものね。銃を撃って、敵を倒していくゲーム……」

「FPSゲームはみんなそんなもんだ。俺がBFにハマってるのは他とは違う自由度だよ。他のゲームは最初から勝つためにやらなきゃいけないことが山程あるが、BFは極論()()()()()()()()。禁忌さえやらなきゃな」

「勝たなくてもいい? 対戦ゲームではあるのでしょう?」

「違うな、こいつは正確に言えば戦争ゲームだ」

 

 どうせなら面白い()を見せてやろう。

 Battle Fieldシリーズには遊ぶのに幾つかモードがある。その中で最も伝統的にシリーズを通して遊ばれているのはコンクエスト────所謂、陣取り合戦だ。

 

「コンクエストはな、指定された幾つかの陣に行って一定時間そのエリアにいると、そのエリアを自分のチームの物として確保できる。端的に言えばより多くの陣地を確保した側が勝利できるんだが、これを32対32の合計64人でやるんだよ」

「……多いな。対戦ではなく戦争と称したのはそれが理由か」

「そゆこと。このゲームはね、結局勝ちに向かって動ける味方が多い方が勝てるゲームだ。しかしその味方は自分を除いて他に31人もいて、目まぐるしく変わる戦況でろくなコミュニケーションは取れない。自分では勝つつもりで戦ってても、別の奴から見れば明後日の方向に向いてると思われる。こんなゲームでまともに人が動く訳無いだろ?」

「つまり、各々が好き勝手に動くから、勝つつもりで戦っていても意味が無いと」

「意味が無い訳じゃ無いんだが、強い奴一人いても弱い味方がどうしても足を引っ張るから、勝ち負けに拘るとつまらなくなるんだよな。それならいっそ好きなことやった方が楽しいじゃん」

「勝負をしているというのに、勝敗に重きを置かぬということか。斬新な考えではあるな」

 

 BFは真面目に戦っちゃいけないんだよな。強い奴ら同士でチームを組めるならまだしも、そこはランダムな仕様だから真面目にやろうとすると味方の尻拭いばかりになっちまう。だったらスコアトップとか最多killとか目指した方が余程健全なんだよ。

 

「けれど、禁忌というのはやってはいけないんでしょう?」

「それをやるとゲーム性が壊れるからヤベぇってのがあって一番分かりやすいのがチートだが、これはBFに限らず全てのゲームで一緒だな。俺らウマ娘で言えば、勝ちたいがためにドーピングをこっそり使うようなことだ」

「己の力で戦うことすら出来ぬ軟弱者か。謗られて当然であるな」

「もう一つは?」

「ん、兵器の乗り捨て」

 

 ゴルムドか。ここは市街地を除くと兵器同士の対決になりやすい典型的な兵器マップだ。

 ほんとは攻ヘリ二番席を楽しみたかったが、見せるなら戦車の方が分かりやすいだろ。

 

「BFの兵器システムはちゃんと乗り方みたいなのが決まっててな。チームごとに出撃できる兵器の数が決まってるんだ。ここで厄介なのが鹵獲っていう敵の兵器を奪う概念で、兵器を奪われてもそれで出撃できる兵器の数が戻る訳じゃないから、奪われるとゲームバランスが一気に傾くんだよ。よくいるのが乗ってる兵器壊されそうになって慌てて逃げ出す初心者がいるが、壊されるより奪われる方が大損害だから兵器と一緒に死んでほしいんだよな」

 

 例えば味方青チーム、敵赤チームがそれぞれ戦車3両を出せたとして。

 青チームが赤のチームの戦車1両を鹵獲したとする。すると青チームは本来の戦車3両に加えて敵から奪った戦車1両の合計4両の戦車を保有することとなる。逆に赤チームは減った分マイナス1の損害だから保有戦車は2両になってしまう。単純な足し算、引き算だが、厄介なのがこれを埋めるために赤チームの保有数が回復したりしないことだ。

 これはBFの兵器システムの関係上、仕方ないことなんだ。だって、新規の兵器に乗りたい場合は今戦場に存在する自陣の兵器が壊れてからじゃないと出来ないのがBFのにおける兵器システムだ。壊されてもまた乗り直せる機会はやってくるが、奪われるとその機会すら奪われてしまう。

 だからこそ、BFにおける兵器乗りは兵器と共に死ぬことが運命付けられている。今まさに、俺も戦車と運命を共にした。

 

「BFは対兵器用の武装もあるから、必ずしも兵器でしか兵器を破壊できないなんてことはない。むしろ突出した戦車に対して複数の歩兵が囲んで壊すなんてのは日常茶飯事だ。それでも兵器ってのは強い。単純に装甲と火力、そして機動力も兼ね備えているから、奪われても無視だなんて出来ないんだよ。今挙げた三つ全ては、どれも歩兵一人じゃ代替できないからな」

「しかし、奪うという言い種からして狙えるなら積極的に狙っていく戦術ではあるのだろう?」

「そりゃね。ゲームシステム理解してれば兵器の鹵獲なんてまず起きないんだが、さっきも言った通り初心者とかがやらかすことはある。あとはヘリかな。ヘリコプターの操縦席って普通に銃撃を受けるから、ヘリは破壊せずにパイロットだけkillしてヘリ奪うとかは意外とあるぞ」

 

 まぁヘリコプターに限らず航空機ならみんな操縦席抜けるんだが、飛行機抜ける腕前とか外れ値でしかないので説明するのは野暮だろう。

 

「ところで、貴方の動きが気になったのだけど……」

「なんだ?」

「敵を倒した後で、屈伸みたいな動作をよくしているでしょう? どういう意味だか分からなくって」

「あー……」

 

 しまった。煽り屈伸が呼吸のように身に付いてたせいで無意識にこいつらの前でやっちまった。どう考えても良家のお嬢様に見せていいやつじゃないだろ。何やってんだ俺。

 

「そういえば左上の文字も騒がしいな。見るに絶えぬ罵詈雑言で溢れておるようだが……」

「え、ここ雨鯖なんだけど。もしかして英語読めるの?」

「英会話の習得は作法として基本的なものよ。オルフェさんだけでなく、私だって読めるわ」

「マジか。雨鯖選んだのは悪手だったか……」

「その、あめさば、というのは何だ?」

「アメリカのサーバーっていう意味。アジアじゃなくて、アメリカのサーバーで俺は良く遊んでるんだよ」

「それは何故だ? 日本なら日本のサーバーを使うものだと解釈するが」

「アメリカ人は弱いから……」

 

 FPSあるある~。

 現実だと銃器大国なのに~、ゲームだとアメリカは弱い! (俺調べ)

 

「FPSあるあるなんだが、この手のゲームってアジア勢が強いんだよ。具体的には日中韓の三強。最近はインドネシアとかも熱いかな。で、強い理由っていうのがFPSにおける基本の動きをみんながマスターしてて、実力が拮抗してるからなんだよ」

「アメリカはそうでないと?」

「ないないないないない。あいつらミニマップ見てようやく一人前とか考えてるレベルだぞ。こっちじゃ無意識にやってて当然なのに」

「基礎的な実力が違い過ぎて、勝負にならないということなのね」

「まさにそう。んで、俺は真面目に遊ぶ気は無くて合法的に弱い者いじめがしたいから雨鯖選んでんの。凄いだろ、ちょっと屈伸してやっただけでチャット欄にお猿さんが沢山現れるんだ。ほんとに強くなりたかったらチャットなんてする暇無いのにな」

「屈伸ってまさか煽り……?」

 

 メリケン共、雑魚な割に沸点が低いから煽りによく乗ってくれるんだよな。

 二人からの視線が微妙になったが本気で煽ってる時の俺はこんなもんじゃないぞ。なんだったら動画にして曝しあげて倒したやつみんな笑い者にしてるからな。

 

「名は体を表すというが……ここまでとは」

「煽ってなんぼが俺の性分だ。褒められた趣味じゃないのは分かるが、だからと言って魂の形は変わんねぇよ」

「凄いわね。良くできたセリフだというのに、欠片も魅力を感じないなんて」

「おうおう、好きなだけなんとでも言え」

 

 こうなりゃ自棄だ。えっと……さっきからチャットで喚いてるのはこいつだな。なんだ、大したスコアじゃねぇじゃん。

 

「2kill13death boy lolololololっと……」

「lolとやらは分からぬが、煽り過ぎでは?」

「チャット打ってる暇あったら普通にプレイしてればいいんだよ。こんなのでキレてるから俺に勝てないんだ」

「それを打ってる貴方も大概じゃないの」

「俺は良いんだよ。強いから」

「弱いものいじめと言っておいて強さを誇るのはどうかしているぞ」

 

 ははは、二人から微妙な視線もなんのその、これが俺の本性なんだから仕方ねぇ。

 最近妙に畏まった後輩連中に絡まれることが増えたが、温室育ちちゃんとセットで敬意持たれてるみたいなんだよな。そんなの俺に欠片も似合わねぇから、今の二人みたいな冷たい反応の方が俺としては楽で良い。

 

「そろそろお暇しましょう。私達がいてはそのゲームで満足に遊べないでしょう?」

「悪いな、気を遣ってもらっちゃって」

「構わぬ。稀代の反逆者の本性……噂に聞くよりずっと愉快なものであったからな。楽しめた」

「そうね、もしよろしかったら、またこちらに遊びに来ても良ろしいかしら?」

「別に良いぞー。あ、お茶ありがとな。やっぱ淹れる人が違うだけで味変わるもんなんだなぁ」

「どう致しまして。今度からはお茶菓子も持参致しますわ。期待して、待っていて下さいまし」

「いいよ、そんな。俺そういうの分かんねぇし、高いもん持ってこられても美味しい以外の感想出せないぞ」

「ほほほ、貴方だからこそ、お出しする価値がありますのよ。ここは是非、吟味して頂けると嬉しいわね」

「……姉上に頼んでおくか」

 

 よく分からんがこいつらに気に入られたらしい。むしろ精神的に引く要素ばかり紹介してやったはずだが何でだ? 

 

 この後入れ違いで帰ってきた温室育ちちゃんの機嫌がめちゃくちゃ悪くてしばらく口聞いてくれなかったのは意味分からんかった。

 他のウマ娘の匂いがする、なんて言われても分かんねーよ! 

 

 

 

 

 

 アジテイターのヒミツ④

 実は、妙齢(主観)の女性が好き

 

 

 

 

 




 いつものキャラ紹介

 アジテイター
 好きなゲームはBF4、嫌いなゲームはBF2042、どうもアジテイターです。

 アグネスデジタル
 アグネスのやべー方(どっち)。オタクムーブで誤解されがちだがウマ娘への観察眼が非常に優秀で、レース戦績と普段の振る舞いをプロファイリングした結果アジテイターとシンボリルドルフの関係をほぼ当てるという快挙を達成している。ナマモノ同人誌のネームを書いたのはデジタルである。

 メジロドーベル
 どぼめじろう先生。デジタルの創作仲間でデジタルが仕入れてきたウマ娘ちゃん情報を元によく同人誌を描いてある。空き教室にナマモノを忘れていたのはドーベルの失敗で本当は誰もいない時間にデジタルへ渡す予定だった。
 アジテイターのカマかけにより机に秘蔵したノートをどこに隠すか躍起になっている。実はカマかけ以前からメジロラモーヌにはバレているのだが本人は知らない。

 ジェンティルドンナ
 トレセン筋肉お嬢様。アジテイターの噂はよく聞いていて今回たまたま絡む機会が出来たために興味本位で近づいた。実はマンハッタンカフェがコーヒーを紹介する傍らアジテイターにコーヒーを提供していることをそれとなく自慢しており、その関係でトレセン学園ではアジテイターに茶をご馳走するというのが一種のステータスになっている。
 後にシンボリルドルフからそれとなく嫌味を言われるが、その程度で怯む貴婦人ではない。コーヒーと茶はあるのだからと、スコーンをアジテイターのために選んでいるようだ。

 オルフェーヴル
 お姉ちゃん大好き暴君様。同じ追い込み脚質で先輩に当たるアジテイターのレースは良く知っており、口では絶対に言わないがアジテイターのファンの一人。ウインバリアシオンがことあるごとにアジテイターを引き合いを出すため反骨精神がアジテイターにもあるのかと気になって着いてきた。
 後に姉であるドリームジャーニーが先日の礼とばかりに色んなお菓子をアジテイターの家へ送っている。最もオルフェーヴルはドリームジャーニーにアジテイターの住所を教えていないのだが……

 シンボリルドルフ
 知らない女の匂いがするんだが、どういうことかなアジテイター?
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