今回は視点が変わります
(また、この夢だ)
ボクはゲートに入ってる。
場所は京都レース場。ボクが出たくて、勝ちたかった最後の三冠目。
ゲートが開いてすぐに駆け抜ける。吐き気が出るくらい完璧なスタートでボクは走ってるんだ。それが堪らなく気持ち悪い。
だって、ボクはボク自身の意思で走ってなくて、例えるなら昔の古い白黒映画を無理矢理見させられてるような、そんな感じなんだ。ボクの夢なのに、そこにはボク自身の気持ちなんてどこにも無かった。
先行したまま、ボクはプラン通りに走ってく。京都の坂だって何のその、この調子で行けば勝てるはずだと信じて────。
ピシリ、とガラスが砕けた音。
スパートしようとして、ボクの脚が砕けた音だ。
そして動かないボクを置き去りにして、ネイチャがボクの横を通り過ぎていく。ボクに大差を付けて、ネイチャが圧勝する。
こんな夢を、ネイチャが勝ったあの日からボクは繰り返し見てる。
おまえがあの場にいても、こうやって負けてたんだぞって。
最初からおまえには、三冠なんて無理だったんだぞって。
何度も、何度も。
鬱陶しいくらい、呆れるくらい。
……寝たくないくらいに、ずっと。
(もういいよ、分かったから、こんな夢────)
「起きろ寝坊助。いくら引きこもってようが、朝日くらいは浴びておけ」
ぶっきらぼうな声が、魘されるボクを起こしてくれた。
「んん……へっ!?」
「起きたか。なら、しばらくそこにいろ」
起きたら、アジテイターに抱っこされてベランダにいた。
東から覗く朝日が、眩しくして仕方ない。
「……なんでベランダ?」
「おまえ、しばらく外に出てないだろ。人間ってのは難儀な生き物でな。長いこと日の光を浴びてないと狂ってくるんだよ。今の時間なら人目を気にしなくていい。俺はルドルフを起こしてくるから、そこでぼけっとしとけ」
アジテイターはそう言って、部屋に戻っていく。
意外なんだけど、朝が弱くて中々起きられない会長を起こすのにアジテイターが苦労してるんだ。いつも完璧なイメージの会長の完璧じゃないところに、最初は凄く驚いた。
ネイチャが勝ったあの菊花賞から1ヶ月。
ボクはアジテイターの家で過ごしてる。
理由は幾つかあって、会長が気を利かせてくれたおかげなんだ。学園にいると、いつまでもいらない視線やレースのことばっかり考えちゃうから、一旦レースから離れるべきだっていうのが会長の考えだった。
本当は分かってる。それだけが理由じゃない。
自慢じゃないけどボクは人気があって、テレビのインタビューにも結構答えてた。ダービーの前まではそういう世間からの目を気にしなかったんだけど、ボクが菊花賞に出られなくて人前にも姿を見せなくなったから、メディアからの取材依頼が殺到してるんだって。マヤノがこっそり教えてくれた。
トレセン学園はメディアからの取材対応に慣れてるけど、それでも100%対応できる訳じゃない。何かの拍子に紛れ込んだ記者がボクに接触したら大変だって意味もあるみたい。
ボクの実家に帰る案もあったけど、そっちも記者の人達に割られてる。ボクの家って結構な資産家だったりするから地元で有名なんだよね。調べれば記者じゃなくたってすぐ分かると思う。
迷った末に、会長はアジテイターに怒られるのも覚悟でボクをここに連れ込んでくれたってのが、今の現状だ。
「あぁ……済まない、テイオー。待たせてしまったかな」
「ううん。いくらも待ってないよ。会長はまだ眠い?」
「ははは……努力はしてるんだがね……」
パジャマ姿でまだ眠い目を擦りながら会長が起きてくる。
アジテイターの家に来てから驚きの連続だった。例えば寝床。てっきり二人で分けて寝てるのかと思ったら、二人同じ布団でくっついて寝てるんだ。最初は布団を用意してなくて、仕方なくの措置だったってアジテイターは言ってるけど、それなら新しい布団を買えばいい。そう言ったら他に布団をしまっておく場所がないだとか、単純にめんどくさいとか、言い訳ばっかりアジテイターが言うから思わず笑っちゃった。
結局、ボクのために新しい布団を買ったけど、二人は相変わらず一緒に寝てるんだよね。
「ルドルフ、テイオー。飯作っとくから先に歯磨き済ませとけ」
「はーい。今日の朝ごはんは?」
「メインはシャケだよ。古きよき日本の伝統さ。ほら、顔も洗ってこい」
驚きその2。
アジテイターはとても料理上手だってこと。
てっきりインスタント麺とか食べてるのかと思ったら、これでも三年間現役アスリートやってたんだぞって言われた。そうだよね、アスリートがインスタント麺で良いはずないや。ちゃんとトレーナーからの言い付けを守って自分で食トレをやってたみたい。今は現役引退してるから食トレはやってないけど、凝り性だから料理にハマってるんだって。会長も料理できない訳じゃないけど、アジテイターに言わせればまだレシピ以上のことはさせられないって辛口評価だった。
「テイオー、脚の調子はどうかな?」
「大分楽になってきたよ。歩くのは大丈夫そう」
「大丈夫そう、は大丈夫じゃないんだよな。手伝いはいいから大人しく座っとけ」
「あ……」
配膳くらい手伝いたいんだけど、その度にアジテイターが遮ってくる。全部アジテイターがやっちゃうから、何もさせてもらえない。
アジテイターはこういう人だ。口だと会長の方がボクを心配してくれてるけど、アジテイターはそういうこと何も言わない。言わない代わりに全部行動で表してくる。さっきの日の光だって、それが必要だからとしか言わない。
なにも言わない癖に、行動だけは凄く優しかった。
「済まない、今日は帰るのは少し遅くなりそうだ。アジテイター、悪いが夕飯は……」
「買っとく。おまえが気にすることはなんもねぇよ」
驚きその3。
ほとんど喋らない。
必要な会話はするんだけど、逆に言えばそれしかしない。ボクがマヤノとかとやるような、適当な駄弁りをこの二人は一切しない。
しない癖に目線や指先だけで、あれ取って、これ取ってとかをやるからボクがめちゃくちゃ混乱する。二人とも、お互いに対してだけ察する能力が凄く高いから、会話が最低限で済んじゃうみたいなんだよね。ちゃんと話すようになったのはボクが来てからで、それだってボクにも分かるようにっていう配慮みたい。
今の会話だって、もうお互いの中で共有は終わっててしばらく学園にいないボク向けの話だ。
「あぁ、そうだ。テイオー、おまえ用のアカウント作ったから何もない時はそれで遊んどけ」
「アカウント?」
「ゲームの話。昼間いない時は俺のパソコン触ってていいから。暇潰しには最適だろ」
「……アジテイター、やはりテイオーのことが気に入っているんじゃないか? そうでなければそこまでしないだろう」
「早いとこメンタル回復して出ていってほしいだけだっつうの。下衆な勘繰りはよせよ、ルドルフ」
「えっと、ゲーム? アジテイターがやってるような銃のゲームはやったことないけど……」
「別にBF4だけじゃねぇよ。まぁBF遊んでくれてたっていいが、ありゃおまえに向いてない。とりあえず、各ジャンルのそこそこ有名なタイトルを遊べるようにしといたから適当に遊んでろ」
「……ふふ、こういうやつなんだ、アジテイターは」
なんでか分からないけど会長が凄く嬉しそう。
ボクのアカウントを作るのはともかく、ゲームはタダじゃないはず。ボクのためにわざわざお金使ってくれたってことなのかな。
「……ガキが金の心配なんぞするもんじゃねぇと言ったろう」
「ボク何も言ってないけど……」
「顔が雄弁なんだよ。おまえのアカウントについてだが、ファミリーリンクシステムで俺のアカウントと紐付けてある。早い話、俺が購入したゲームを買わなくてもリンクしてるアカウントならみんな遊べるんだ。今回はそれでやってるから金は使ってねぇよ」
「そ、そうなんだ……」
後になって気付いたけど、アジテイターのこの話は本当じゃなかった。
ファミリーリンクシステムの話は本当だけど、実はボクのためにわざわざ普段やらないジャンルのタイトルを購入してたんだ。ボクがどんなゲームを好むのか分からないから、一通り入れたみたい。
ボクは会長にこっそり教えてもらうまで、FPS以外もやるんだって勘違いしてた。
「テイオー、ゲームもいいが、授業も忘れずにね」
「うん。マヤノがカメラを用意してくれてるから……」
「ああ、ルームメイトがオンラインの用意してくれてんのか。なら授業も俺のパソコンでいいぞ。そっちの方が楽だろ。設定の仕方は分かるな?」
「う、うん。そこはやり方教えてもらってるから大丈夫だよ」
ボクがアジテイターの家にいる間はオンラインで授業を受けることになってる。先生も含めてみんながボクに配慮してくれた。
何から何まで、みんなを心配させちゃってる。
「……テイオー、焦ることはないよ。今は雌伏の時だ。私とて怪我には悩まされたからね」
「安っぽく励ますのはやめておけ。今の誰も、こいつに言えることは何もねぇよ」
「そんなことは……」
「他の奴からすりゃあ、おまえが怪我云々語ったところで、でも無敗の三冠だろう、で終わるぞ」
「それについては君も同罪じゃないかな……? むしろ、より
「さてね。そこらへんは今重要じゃねぇから」
ボクが悩みながら食べてる間に二人はさっさと食べ終わってた。
アジテイターのボクに対するスタンスはさっきの言葉に尽きるんだと思う。
励ましも何もかも言う必要は無い。全部、ボク自身の意思の問題だと割り切ってる。
「優しいのか厳しいのか、今一分からないや……」
二人が学園に行った後で、ボクはそう独り言を漏らすしかなかった。
半年後。
ボクは再びターフの上に立つことになった。
とはいっても実際のレースじゃない。怪我の程度を見て、そろそろ軽いトレーニングならこなせそうだから、という話でしかない。
隣にはボクのトレーナーもいるけど、その表情は前見た時よりずっと厳しかった。
「テイオー、まずは軽くな。2000mを流す程度でいいタイムは気にせず、一通り走ってみるんだ。異変があったらすぐ言ってくれ」
「分かってるよ。ちゃんとトレーナーの言うことは聞くから」
トレーナーに言われた通り、全力は出さず軽く走ってみる。今のところ痛みは感じない。
前のボクならここで調子に乗るところだけど、今はそんなことしないって固く誓ってるんだ。逸る気持ちは無い訳じゃないけど、ゆっくりジョギングくらいを意識してコースを走っていく。
(やっぱり、走るのは気持ち良いな)
ここ半年、アジテイターの家で何にもせずにお世話されてただけだから、正直体が鈍って仕方ない。久しぶりのターフは、前走ってた時よりもずっと気持ちの良い風が流れてる。
「ふぅ……どうかな、トレーナー」
「……テイオーなりに考えて走ってくれたんだな。偉いぞ」
2000m、きっちり走り抜けてトレーナーのところへ戻る。トレーナーは褒めてくれたけど、作り笑いなのはバレバレだ。多分、春の天皇賞に挑むには全く足りてない。
当たり前なんだ。ボクの怪我の原因は柔らか過ぎるボクの脚にある。今までは伸びる脚がボクのラストスパートで役立ってくれてたけど、その柔らかさが災いして脚へのダメージが蓄積していった。そうならないよう普通のウマ娘の走り方を意識して走ったんだ。
ボクの個性が何も無い汎用的な走り。そんなのでマックイーンやネイチャに勝てるはずがなかった。
「トレーナー、はっきり言っていいよ。今のボクじゃ、春天に間に合わないって」
「テイオー……」
「ごめんね。ボクがいない間、ずっとボクのためにテレビとか新聞記者とかを相手にしてたんでしょ。トレーナーだけじゃなくて、たづなさんや理事長、会長とかみんなに迷惑かけて……」
「テイオー、謝るな。君が悪いところなんて何一つ無い。全て才能に目が眩んで君の怪我を見抜けなかった俺の責任だ」
「トレーナー……」
トレーナーは昔、陸上選手だったって聞いてる。ウマ娘と人間じゃ違うところが多いから、必ずしも通用するはずがないけどメンタルは似通るから、陸上選手からウマ娘のトレーナーに転身する人は多いんだ。
ボクのトレーナーもその一人で、ボクの怪我をボク以上に責任感じて泣いてくれた。怪我で競技に出られない、なんてのはスポーツやってるとよく聞く話だよね。
自分のことなのに、そうやって他人事のように思う癖が、今のボクの悪癖だった。
「……春天は諦める。この調子じゃ出ても最下位が有り得ると思う」
「もっと言えば、長距離はボクの舞台じゃない。走れなくもないけど、きっとボクの脚に距離が合ってない」
「ああ、そうだ。まずは宝塚記念。そこを目標に調整しよう」
「そして本命は────」
「「秋の天皇賞」」
思わずボクとトレーナーの声がハモる。
春秋連覇。盾を求めるマックイーンなら、必ずやってくるはずだ。
「ボクの本領は中距離だ。秋の府中で、存分に返り咲くつもりだよ」
「その意気だ、テイオー! ははは、無敵のテイオー様の復活も近いな!」
「今さらそれは恥ずかしいよトレーナー」
空元気でボクを勇気付けてくれるトレーナー。
歩みはゆっくりだったけど、少なくともこの時は順調だった。
【メジロマックイーン、左脚骨折】
────マックイーンのニュースが、飛び込んでくるまでは。
「テイオー、おまえまだ走るつもりなのか?」
「え?」
そんなことをアジテイターに言われたのは初めてだった。
春の天皇賞を回避して宝塚記念に調整している頃、ボクはいよいよアジテイターの部屋から寮に戻ることになった。
あれからもう半年以上、ボクの調子も戻ってきて大丈夫だろうと判断されたからなんだけど、ボクの荷物を纏めてる時にアジテイターがそんなことを聞いてきたんだ。
今までレースについて一度も聞いてこなかったから、凄く驚いた。
「走るって……そりゃ走るよ。なんでそんなこと聞くの?」
「あー……なんつーのかなぁ……」
ガシガシと頭を掻いて言葉に詰まってる。いつもは歯に衣着せぬ物言いが持ち味のアジテイターが、珍しく言葉を選んでるんだ。
たっぷり一分くらい待って、それでも良い言葉が出なかったようだから、結局はいつものアジテイターらしいセリフになった。
「今のテイオーに、目標ってあるのか?」
「目標?」
「ああ。前はルドルフ目指して無敗の三冠が目標だったろ。でもそれはもう叶わない。ライバルだったメジロマックイーンも怪我で不在だ。今のおまえじゃ、走る動機が薄いんじゃないか?」
「んー……」
当たり前と言えば当たり前の話だった。
確かにそう言われると今のボクには走る動機があんまり無い。ネイチャみたいにファンのためっていう理由は付けられるけど、かつての三冠よりは動機として薄い。
「たぶん、無いかも?」
「……そうか。あんまりそういうのは良くないんだが……」
「珍しいね、アジテイターがそんな真面目なこと言うの。ボクにさっさと出ていってほしいんじゃなかったの?」
「あのな、出てった後におまえが不調来してたりすると、俺のせいになりかねないんだよ。一時とはいえおまえの監督者やってやったんだ。それなりの責任はあんの」
仏頂面で捲し立てる様子も、もう慣れた。本人は不満を言ってるつもりだけど、根底には生真面目な気性が見え隠れしてる。
いつもチンピラみたいな口調で誤魔化してるけど、アジテイターの本性はとても真面目で責任感がある人だ。それもかなりの人格者。ゲームで人を煽るのが大好きっていうのも、それが褒められた嗜好じゃないのを自分で分かってる。
皮肉屋だけど厭世家でもなく。
ぶっきらぼうだけど面倒見は良くて。
そしてレースで強い癖にそれをひけらかさない。
おかしな話だけど、人格者であることと、人として最底辺の性格であることをこの人は両立させてるんだ。
会長を面白いから煽ったって言ってたけど、人として面白いのは間違いなくアジテイターの方だよ。
「なんで笑ってんだおまえは」
「くふふ……いや、なんかさ。人としてアジテイターが面白くて……」
「……話を戻してだ。目的の無い走りってのは迷走しがちになる。勝てるレースも勝てなくなったりして、実力が発揮できなくなるんだ。今のおまえはその状態。おまえ自身は調子を取り戻したつもりかもしれんが、実際は危うい」
「そうだね。アジテイターならそう言うと思ってたよ」
「テイオー、おまえさては調子に乗ってるな?」
「そりゃあボクは"トウカイテイオー"様だし? 前の調子を取り戻していかないとね?」
「そこで無敵のと言わない辺り、身の丈を知ったんだろうが……」
この調子だ。
ボクが軽口を言って、アジテイターがそれを皮肉で返す。
ボクが怪我する前からあった、当たり前の日常だ。
「実はね、目標はあるんだ。あるっていうか、ただの理想なんだけど」
「なんだよ」
「会長を越えるウマ娘になること! 無敗の三冠なんて、目じゃないくらいに色んなレースで勝つんだ!」
「……そうかい。そんだけ大言壮語が吐けるんなら、まぁまぁおまえは元気なのかもね」
諦めたように顔を横に振るアジテイター。
本当は心配性なんだと思う。それを、監督者だとか適当な言い訳で誤魔化してる。
アジテイターの一番面白いところは、自分の善意をアジテイター自身が一番信用してないってこと。本人は誰彼構わず天の邪鬼つもりでいるけど、自分に対して一番天の邪鬼なんだよね。
傷心のボクを自分の部屋に入れられる時点で、誰よりも優しいはずなのに。
「もし、ボクが会長を越えるウマ娘になったら、アジテイターより強いってことだよね」
「あぁ? そりゃなんでだ?」
「なんでって……だってアジテイターより会長の方が強いじゃん。アジテイターは会長に何度も負けてる訳だし」
「……そういえばそうだったな。うん、おまえはそのまんまでいいぞ。そうやって何も知らん方が楽だ」
「なにさー! また一丁前にボクを子供扱いして、ボクとそんなに年の差ある訳ないじゃん! 高校生と中学生だよ!?」
「あぁ、うん。分かった分かった。分かったから騒ぐな。おまえの声はキンキン耳に響くんだよ……」
ちょっと名残惜しいけど、アジテイターの部屋とはここでお別れ。いつまでも居候してると、居心地が良すぎて出られそうになくなるから。
「ねぇ、今度またアジテイターの料理食べに来てもいいかな?」
「どうせ断ってもおまえは勝手に来るだろうが。……食材くらい持参しとけ。それで適当なやつを作ってやるよ」
「わーいやったー! アジテイター大好き~!」
「ガキなんぞに好かれ……!? おいこら引っ付くな!」
今だけ。あと、ほんのちょっとだけ。
ボクと会長にしか分からない優しさに、甘えさせてほしいな。
そんなこんなでまずは宝塚記念。
怪我も治って万全の阪神。本当はマックイーンと走りたかったけど、そんなことで愚痴っちゃってもしょうがない。
ボク以外に強いウマ娘がいなくて、結果はボクの圧勝だった。
久しぶりのテイオーコールは凄く嬉しかったよ。
そして本命の秋の天皇賞。
マックイーンの代わりに盾を取るぞって挑んだけど、ダイタクヘリオスとメジロパーマーの意味分かんない逃げに引っ張られて負けちゃった。
初めての黒星だけど、故障で菊花賞に出られなかった時より悔しくはなかった。
そしてジャパンカップ。
ボクの主戦場は中距離。ならここは外せない。もっと言えば、府中2400mはボクが勝ったダービーの舞台だ。ここを誰かに譲るつもりなんて毛頭無い。
外国から来たウマ娘も強かったけど、ボクが"絶対"なんだぞって示してやった。
負けもありつつ、でも全体的には順調なボクのシニア街道。
次は年の瀬一番の大レース、有馬記念。ここで勝って、春秋グランプリウマ娘に名を挙げて────
あれ。
おかしいな。
どうしてボクは、脚を滑らせてるの?
【トウカイテイオー、二度目の故障。復帰は絶望的か】
「だから、言っただろうが」
「あー、やだやだ。やっぱ希望なんて無駄に持つもんじゃねぇって」
「……ルドルフ。おまえいつでもいいから時間作ってこい」
「何をするかって? そんなもん、戯けた理想をほざく愚か者に、現実を教えてやるためだよ」
アジテイターのヒミツ⑥
実は、料理上手。
キャラ紹介
アジテイター
例によって唐変木。シンボリルドルフが連れてきたトウカイテイオーを見て一瞬激昂しかけるが直後にトウカイテイオーを見て「傷心のガキの前で怒鳴るのもな……」と理性を働かせた。ちなみに激昂の理由は無断も然ることながら、傷心の子供(トウカイテイオー)を学園外に連れ回すなんて、という凄く真っ当な理由だったりする。
家主であるなら家の全員の面倒を見るべきと勝手な責任感でトウカイテイオーの世話を焼いていた。怪我を経験していない自分ではトウカイテイオーにろくなアドバイスができないとこれまた生真面目な性質が発揮されている。
トウカイテイオー二度目の故障で何かを企んでいるようだが……?
トウカイテイオー
原作よりちょっと気弱なテイオー。
トウカイテイオーを心配したシンボリルドルフの手により半ば強制的にアジテイター宅へ居候させられた。最初の内は戸惑ってばかりであったが、シンボリルドルフの言葉とアジテイターの行動それぞれの優しさでメンタルが回復し宝塚記念とジャパンカップを制するまでに回復した。
シンボリルドルフには勿論のこと、アジテイターにも深く感謝しており、以前のように勝負を吹っ掛けるどころか完全に懐いている。好物はアジテイターお手製のニンジンハンバーグと言えるまでになった。
二度目の故障。果たしてもう一度立ち上がれるか。
シンボリルドルフ
アジテイターの部屋にトウカイテイオーを連れてきた張本人。自身が持つ偽りの三冠に憧れを抱くトウカイテイオーを放っておけなかった。
実はトウカイテイオーが来る以前はお互い折半で家事を担っていたのだが、トウカイテイオーが来てから何も言わずにアジテイターが全てやるようになりだしたために世話するどころか逆にお世話される始末となった。特に朝方はシンボリルドルフの出番が紅茶を淹れることぐらいしかない。元が深窓のお嬢様であったがために、本質的に世話するよりも世話される方が性に合っているのだと落ち込みつつも納得している。
アジテイターの企みに巻き込まれる模様。珍しく能動的なアジテイターに苦笑しつつも付き合うつもりでいる。