Fate/ Another Garden of Avalon   作:晃晃

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第一話 運命の夜

あぁ、炎を見た。充満していく煙と崩れ落ちていく世界。

 

俺自身も崩れ落ちた。もう意識すらも崩れ落ちていく寸前――

 

 

 

ヒカリを見た。

 

 

§

 

遠い夢から目が覚める。いつも通りの遠いユメだろう。一瞬だったような、永遠だったようなそんな長い時間を見た。

 

そして、炎に飲み込まれて、息が出来なくなって死ぬ寸前に、神々しいヒカリを見て、その夢は終わる。

 

「んぁあ~。良く寝た。」

 

今日はひさしぶりに自分の布団で寝た気がする。ずっとあの土蔵での睡眠が多かったからかずっと寝不足だったようだ。布団から体を起こして、布団をたたむ。頭を触ると相当に、寝癖があるらしい。すぐに髪を整えねば。

 

大きくあくびをしながら、廊下をあるく、さっきまで温まっていた体が急にこわばる。

 

「む」

 

鏡を見て思わず声を出した。そこには、いつの間にか見慣れてしまった、けれど未だに違和感を覚える自分自身が映っていた。

 

それは、10年前の大火災の後から、少しずつ変わっていった俺の姿だ。

 

洗面所へ向かい、蛇口を限界までひねって水を出す。氷のような冷たい水を両手に受け止め、髪を濡らした。元々男子としてはかなり長髪な髪は、濡れるとさらに重く、肩にのしかかる。ドライヤーで乾かすのに時間はかかるが、これはもう仕方ない。

 

ドライヤーの熱風が髪を揺らす。鏡の中の自分は、まるで別人のようだった。

 

本来なら、炎のように赤かった髪は、白へと溶けるように変質し、輪郭も少年らしい骨太さから、どこか華奢な方向へと変わった。瞳の色も、かつては茶色だったはずなのに、今はガラス細工のような透き通った紫へと変わっている。

 

まるで、人間という枠から外れていくようだった。

 

あの大火災の後、俺はじいさんに助けられた。じいさんが持っていた鞘が埋め込まれた。そうして一命を取り留めた俺は、じいさんに引き取られて、この家に住んでいる。そこまでは良かった。しかし――

 

「まったく、この鞘が聖遺物だったとしても姿が変質するなんてなぁ。」

 

そう。今の俺は昔と全く姿が違うのだ。本来なら、髪色は赤なのだが、白へと変わり、輪郭も華奢な方向へと変わり、目と瞳孔の色も紫よりになっているのだ。幼い頃に徐々に変わっていくことを切嗣に告げると、

 

「うん。それは僕が埋め込んだ鞘のせいかもしれないね。士郎。君の身体はいづれ逸話上のモノになるかもしれない」

 

切嗣は俺の身体を自分になりに調べたが、危険な状況ではなく命を救われたことへの交換条件みたいなモノらしい。

 

「じゃ、いだだきます。」

 

とりあえず、それはともかく。早速、昨日の残り物で作った朝食を平らげて、準備を済まして学校へ向かった。

 

そして、このカラダに変わって一番悩んでいるのが。

 

「先輩。おはようございます。」

 

いつもの桜からの登校中のあいさつを終えた後の周囲の視線が多すぎることだ。自分で言うのもなんだが、日本人から見るとかなり美形で華奢で注目の的らしい、と一成が言っていた。

 

すると、挨拶だけ交わした桜はさっさと小走りで走り出した。どうやら視線が多すぎるとこうなるみたいで、俺と桜がゆっくり話せるなんて家しかない。

 

結局、一人で学校の門までやってきた。その時。

 

「む」

 

声を抑えた。その予兆に気づかないはずがない。学校の門を跨いだ瞬間に、魔力の異変を捉えた。

 

「違うな。これからそうなるってことか。」

 

この囲みこむような術は、そうとうなモノだ。一般的な魔術師ならば、直前まで気づかない代物だ。

 

「俺が知らない魔術師の可能性もあるな…」

 

このカラダになってから変わったことは外見だけではない。このカラダの元の持ち主?というか、その人の能力の一部なのかはわからないが、俺はほぼ感覚的に魔術を扱えるようになっていた。それだけじゃない、ほんの少しだけの未来も交えて遠くの世界も垣間見ることもあった。

 

だから、これは予兆だ。誰かが強い意志を持って魔術を行使しようとしている。

 

絶対に止めてみせる。だって、これは悪意による攻撃だ。それは正義の味方として許容できない。

 

「よし、放課後に行ってみようか。」

 

§

 

長い学校の午前中を終えた。俺はたくさんの視線と呼びかけをスルーし、弁当を持ちながら生徒会長室まで向かった。

 

すると、挑発的な声が俺を呼び止めた。

 

「やぁ、衛宮~こんなところで注目を浴びて何してるんだい?」

 

間桐慎二。俺は友人だと思っているがどうやら、注目を集めている俺に嫉妬し俺のことを敵視しているらしい。まったく、面倒なことだと思う。

 

「あのな慎二。俺は集めたくて注目を集めているわけじゃないんだ。そういう慎二もかなり知られていると思うんだが…」

 

勝手に語尾を弱める。少し言い過ぎたかもしれない。今にも慎二の顔が紅潮し、怒りを放出しそうだ。ここで喧嘩になったら、さらに大事になって面倒だ。よし、慎二は怒りが収まる明日以降にそこらへんの話をしようか。

 

俺は生徒会長室の扉を開き、一成に声にかけた。

 

「一成、居るかー」

 

「む、衛宮か」

 

少し驚くかのように、こちらを見つめている。

 

「ふん、扉を開ける前に声をかけんか。たわけ!」

開口一番の説法に、俺は手を合わせて謝るしかない。

そのまま弁当を広げると、会長室にいつもの静かな時間が流れた。

 

けれど、コンコンと扉が鳴り、その空気はすぐに破られる。

 

 

 

「柳洞。いるか?」

 

開かれた。出て来たのは予想通りの葛城先生だ。こんな場所でも厳格さは崩れていない。

 

「放課後、一緒に話したいことがある。構わないな?」

 

「はい。分かりました。17時からでいいでしょうか?」

 

「ああ。了解した。」

 

と扉は閉められた。

 

「なぁ、一成。お前、葛城先生と仲いいのか?」

 

「仲いいも悪いもあるまい。宗一郎殿とは同じ屋根の下で暮らしているのだ。」

 

そうだったのか。葛城先生も同じ柳洞寺に住んでいたのか。あ、一成にあることを聞くのをわすれていた。

 

「あ、それと一成。最近、お山のほうで何かあったりしたか?」

 

最近、柳洞寺の方でも魔力の流れの異変を感じた。柳洞寺はここ冬木屈指の霊地だ。その魔力を常日頃から感じていている俺にとって、繊細なのだ。

 

「何かあったか…と言われれば、そうだな。最近、葛城先生が連れて来た外国人の女性が居てな。まぁ察するにこの二人訳アリと考えるが。急にどうした?衛宮。」

 

外国人?ありえるのか?なんかあやしい。

 

「まぁ、最近、お山の方は言っていなかったからな。そうだ。今日の放課後、一緒に柳洞寺まで行ってもいいか?」

 

「む」

 

手を顎に当てて考え込む一成。まあ仕方ないか、いきなり俺が誘ったんだし。まあそれも柳洞寺の霊地の調査のためではある。その外国人ってのは外来の魔術師かもしれない。

 

「そうだな。衛宮は一回だけしか訪れたことしかなかったはず…ならば構うまい。」

 

「なら、葛城先生と話が終わるまで、生徒会室の前で待ってるよ。」

 

「いいのか?長引くかもしれんぞ?」

 

「ああ。俺だって用事があるからな。」

 

「衛宮がそういうのなら、構わん。」

 

と会話を終えて、生徒会室から出る。

 

昼休みにやることもないし、教室に戻るか。次の準備しないとだし。

 

さてと、教室の方へと――

 

 

「む」

 

 廊下を歩く。視線を階段側に移した瞬間、そこには遠坂がいた。

「遠坂?」

 聞いても何も答えない。なんなら、すごい形相でこちらを見ている。右手には買い食いして食べかけだったらしい昼食の包みを持って、こちらを睨んでいる。俺は戸惑いを隠せない。

 なぜだ? 遠坂とは、そこまで親しいわけじゃない。生徒会室でたまに会うくらいだ。話すこともないし、ましてや睨まれる覚えもない。その眉間に深く刻まれたシワは、まるで俺という存在そのものが、彼女にとって不愉快で、耐えがたいものだと言っているようだった。

 もしかして、桜のことだろうか。最近、桜は慎二から、少しずつ距離を取っている。その理由は、俺の家に入り浸っているからだろうか。それは俺も気まずくて、何も言えなかった。

「おい──」

 声をかけた瞬間、遠坂は背を向けて、一階の階段へと去っていった。

「まったく、なんだったんだ…」

 俺は、その場に一人残され、腑に落ちない気持ちで遠坂の背中を見送った。

 

§

 

夕日が窓から見える。もうほとんどの生徒が下校した。この校舎に残っているのは俺と一成とその他先生くらいだ。

 

「よし、探すか」

 

目を閉じて、呼吸を意識する。魔力を感覚的に感じ取る。ここは三階の教室。糸を辿るかのように、手を手繰り、たどり着いた。

 

「ここは…図書室か」

 

実際に体を動かして、図書室の本棚までやってきた。上にある本をどかして、確かめる。

 

「やっぱりあった」

 

赤で克明に刻まれた紋様、魔力はそこから漏れて広がっている。そしてこの手の魔術は初めて見た。

 

「これ、単体で使われるモンじゃないな。ってことは別の本体らしきものがあるのか」

 

俺は魔術の専門用語は切嗣から習ったばかりの言葉しか知らず。理論もあやふやでほぼ感覚だけで使っている。というか体がそもそも現代寄りにできておらず、空中の魔力濃度も高かった中世とは大違いだ。

 

ま、見たことはないが行けるだろ。

 

手をかざし魔力を流し込む。すると、数秒もただず、跡形もなく消滅した。

 

そうして、残りの紋を消滅させた。

 

「よし。こんなもんか。」

 

教室のロッカーにあった紋を破壊後、ようやくその違和感はぬぐえた。時計を見る。時刻は17:30分を回っている。

 

「あ、一成のこと忘れてた!遅れたら、本当に説法だぞ」

 

そこからダッシュで、生徒会室まで駆ける。夕日もあともう少しというくらいで完全に沈む。

 

「まだ太陽の明かりがあって、よかった。暗いとコケるからな」

 

一階から二階の階段を駆け上る。一つ。二つ。大丈夫。間に合うはずだ。

 

「一成、わるい!おそ──」

 

 言葉は途中で途切れた。誰もいない。

 そこには、俺の知っている一成も、生徒会の面々もいなかった。整然と片付けられた机や椅子が、無言で今日の日課が終わったことを告げている。

 呆然と立ち尽くす。そういえば、さっき、一成は先に帰ると言っていた。完全に頭から抜けていた。

 どうする。このまま家に帰るか? いや。まだ、この学校には違和感が残っている。廊下の向こう、校庭の隅、いや、もっと高い場所。

 俺の未熟な魔術でも、それが何かの中心点であることはわかる。

 日が落ち、校舎が夕闇に包まれ始めた頃、俺は一人、屋上に向かった。

 

 

§

 

 

この学校に張り巡らされた魔術の結界を解除する。それが今夜の俺の目的だ。

 魔術を感覚的に感じ取る。ここは、この学校で最も魔力的な違和感が強い場所。俺の未熟な魔術でも、明らかに「何か」が仕掛けられているのがわかる。

 指先から魔力を流し込み、目に見えない糸を辿っていく。

 たどり着いたのは、屋上の隅に描かれた、赤で克明に刻まれた紋様だった。

 

「やっぱり、あった」

 

 見たことはないが、これがこの魔術結界の最後の核だろう。

 手をかざし、魔力を流し込むと、数秒も経たずに紋様は跡形もなく消滅した。

 これで、この結界はすべて消えた。そう確信したその瞬間だった。

 

 背後から、不意に、ぞっとするような気配を感じた。

 振り返る。

 そこには、一人の男が立っていた。全身に青いタイツのようなものを身につけ、手には禍々しい朱色の槍を持っている。

 その男は、口元に不敵な笑みを浮かべていた。

 

「見つけたぞ。異常な魔力を持つ小僧。てめぇか、この魔術結界を壊したのは」

 

 その言葉と同時に、男は槍を構える。

 俺は直感的に、この男がただの人間ではないことを理解した。そして、この場所から一刻も早く逃げなければならないと悟った。

 だが、逃げ道はなかった。屋上は行き止まり。このまま応戦しても勝てるはずがない。いや、そもそも相手の速さがわからない。この場で戦うことは、自殺行為だ。

 咄嗟に、俺はフェイントを仕掛ける。

 

 走り出す。男は追いかけてくる気配はない。しかし、背筋に冷たい汗が伝う。その余裕が、どれほどの力を持っているかを物語っていた。

 屋上から飛び降りる。その瞬間、男の愉悦に満ちた笑みが脳裏に焼き付いた。

 校庭へと向かって落下していく。このまま校庭を突っ切って裏門へ。

 そう考えたが、一瞬の魔力消費すら惜しい。ならば、魔術を応用して──

 校庭に落ちる途中、足元の土から魔力で強化した巨大な花を生成し、花の弁を蹴る。その反動で、体は再び校舎へと押し戻された。

 標的は、三階の窓。

 強化した手足でガラスを突き破り、そのまま廊下へと着地する。ガラスが砕け散る音と、痛みが全身を走る。

 これで逃げられる。そう思ったが、男の気配は、一階へと降りてくる俺を嘲笑うかのように、さらに強くなっていく。

 

 「やっぱり異常な魔力はてめぇか。しっかし、分からねぇなそれほど才能を持ち合わせて、マスターじゃないとはな」と呟きながら、俺に攻撃を仕掛ける。

 廊下を槍が走る。速い。速すぎる。

 まるで、空間そのものを切り裂いたかのように。

 その一撃を、俺は草花を生成して、辛うじて弾いた。

 だが、その衝撃は想像をはるかに超えていた。腕が痺れ、骨がきしむ。

 男は驚いたように目を見開いた。

 

「ほぅ、やるじゃねぇか。だが、小僧。貴様には、俺の槍は防ぎきれねぇぞ」

 

 そう言いながら、やつはさらに速度を上げる。

 廊下の壁を蹴り、反撃に転じる。しかし、その動きは俺よりもはるかに速く、数秒後には、俺は校庭まで吹き飛ばされていた。

 やつは追撃の手を休めず、校庭の中央に倒れている俺に向かって、槍を構える。

 その槍から、禍々しい赤い閃光が放たれる。

 

そして青い男はその名を謳った――

 

 刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)

 

 赤い閃光は、俺の心臓を正確に貫いた。

 ──ああ、これで、終わりなのか。

 意識が遠のく。走馬灯のように、これまでの人生が頭をよぎる。

 遠くから、誰かが駆け寄ってくる気配がした。

 

§

 

 

 

 

家に着き、居間に寝ころぶ瞬間、俺は飛び起きた。

──まさか、もう一度。

ぞっとするような寒気。俺は本能的に、屋根から突き刺さる槍を回避した。

 

「……ん?なんだと?」

 

青タイツの男が、驚いたように呟く。

 

「一度も同じ人間を二度殺すはめになるとはな」

 

男は、俺が回避したことに心底驚いているようだった。

俺は、この男の言葉を聞き、先ほどの悪夢が、夢ではなかったことを理解した。

 

「ふざけるな!」

 

俺は叫びながら、蔵へと駆け込んだ。

蔵の扉を、魔術で強化した腕で無理やりこじ開け、中に飛び込む。

しかし、槍の持った男は、俺の背後から迫っていた。

 

「詰めだ。今のは割とおどろかされたぜ。坊主」

 

槍が、俺の背中を切り裂く。

俺は、その一撃を紙一重でかわし、蔵の奥へと転がり込む。

男は、その場所まで追ってくる。

 

「やっぱり、筋はいい。なんどやり合っても、魔力量がどうも常人にしてはおかしくてな。七人目になってねぇのがおかしいくらいだが。ま、だとしてもこれで終わりなんだが」

 

槍が、俺の頭上をかすめる。

 

「お前みたいなやつに、俺は負けない!」

俺は、必死に抵抗する。

 

「助けてもらった命なんだ。簡単には死ねない。俺は生きて、義務を果たさなければならないのに、死んでは義務を果たせなくなる。こんなところで意味も無く、平気で人を殺す、お前みたいなやつに、俺は!」

 

俺は、自分の中に燃え盛る炎を、全て吐き出した。

その瞬間、蔵の床に、令呪が輝く。

──ああ、そうだ。俺には、まだ、最後の頼みの綱がある。

助けを求めるように、俺は心の底から叫んだ。

そして、魔術陣から現れた、金色の髪の騎士。

彼女は俺を見つめ、静かに問いかける。

 

「問おう、あなたが私の……マスター……?」

 

少女も何か思うところはあるのか、尻すぼみになりながら言った。

 

 

 




だいぶ、テンポが速いかも...まじで思いつきと勢いで書いたんで、雑さが...でも書いてて楽しい!
投稿は不定期なんですが、温かい目で見てくれればなと。
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