PSYCHO-PASS ANOTHER INSPECTOR 作:Natural Wave
Ask, and it will be given to you; seek, and you will find; knock, and the door will be opened to you.
マタイによる福音書 7章7節
求めよ、さすれば、与えられるであろう。捜せ、さすれば、見いだすであろう。叩け、さすれば、開かれるであろう。
西暦2110年 東南アジア連合 通称『
既に日本では絶滅した石油由来の燃料で動く自動車や二輪車が所狭しとクラクションを鳴らしながら往来する中で、剥がれかけたり中途半端に敷かれたアスファルトが足元を悪くしているポイペトの道路脇にあるトタンと鉄パイプのみで組み上げられた路面店の前で立ち止まる。汗で崩れかけた髪をかき上げて髪型を整え、手に付着したヘアセット用のグリースを拭いながらふとアパートメントの冷蔵庫に入れいていた水が切れそうだったことを思い出す。言葉は通じなくとも、簡単なジェスチャーで商品を見ても良いかと聞くと店番をしている少女は頷いた。面倒だったので先に紙幣を纏めたクリップをポケットから取り出して少女に渡し、プラスチックバッグを一枚とって水のボトルやインスタント系の食糧、スナック菓子を詰めていく。すると、少女が自分の着ていた柄シャツを少し引いた。
日本円で凡そ5000円分はクリップには挟んでいたはずだと考えたが、足りないというわけでもなく少女は首を振った後表情を紅潮させながら自身の着ていた
「
ピンッ、と少女の額を軽く指で弾くと少女は小さく呻いた後ぶつぶつと文句を言いながら額をさすっている。少女の身長や顔つきなどから日本ではおそらく小学校高学年から中学校低学年といったところか。やはりシビュラシステムの存在や経済的な余裕のある今の日本では考えられないことだ。ある種の逞しさと時代の残酷さを理解して、釣銭を用意していた少女の手を抑える。
「
言っていることを理解したのであろう少女が釣銭を握りこみながら奥のアパートメントに引っ込むと少しして少女の母か姉か、どちらにせよ若い女性が出てきた。女性はこちらを見ると少しだけ驚いたような顔を見せた後、こちらの手を握って奥の生活スペースを指さして手を引いてくる。
「
そういって水と簡単な食料を詰めたプラスチックバッグを持って屋台を離れようとすると女性が抱き着いてこちらの胸元に一度キスをした。さすがにしつこいぞと言いそうになったが、女性はすぐに離れて小さく胸元で手を振っている。サービスみたいなものかと納得して女性と少女を背に屋台を離れる。
今の季節は雨期のような湿気はないが、日差しが強く少し日陰で過ごしたあとに日向に出るとまぶしさで目が眩むほどだ。首元に掛けていたサングラスを掛け強い日差しの中を歩いていく。すると、ポケットに入れていた携帯端末が震えながら簡単な電子音を鳴らした。
「俺だ」
『お疲れ様です
物理キーを備えたフィーチャーフォンの応答ボタンを押して電話に出ると相手は部下の荻野であった。荻野の声は何かを観察しながら話しているものであった。
「続けろ」
『先ほど反政府軍のものと思わしきバンが3台通り過ぎました。ナンバーは無くフロント以外はフルスモーク。運転手も顔をスカーフ等で覆っていました。今まで移動にはピックアップが多かったので、目標を移動させたかもしれませんがいかがいたしましょう』
「もうすぐそちらに着く、着いたら改めて作戦を纏める。装備と車両の点検をしておけ」
『了解。分隊に指示を出します』
ここから滞在しているアパートメントまでは徒歩で十五分ほど。それまでには装備の点検等終わっているだろう。目標が移動したとなれば急ぐ必要もあるだろう。すぐに行動に移したほうが良いはずだ。
アパートメントに着き、自分たちが生活している部屋の扉をノックする。二度ノックをして数秒沈黙が流れた後扉からノックが返ってくる。次は四度ノックをする。すると少しだけ扉が開き短く髪を刈りこんだ荻野が顔を覗かせた。自分より頭一つほど小柄な荻野が周囲を見渡しながら扉を開ける。
「お疲れ様です小隊長。武器及び装備の点検は終わっています」
「わかった。全員集めてくれ」
「了解――集合!」
荻野が手を叩くと、アパートの二階の部屋全ての扉が開いてぞろぞろと人が出てくる。出てきた人間たちが自分の入った部屋に入ったのを確認して荻野が扉を閉めた。
「荻野軍曹以下8名。全員集合しました」
「よし、各員地図の見える位置」
さほど大きくもない部屋のリビングに大の男が9人もいればかなり手狭になってしまうが仕方ない。自分が指揮する小隊の人員が揃っているのを確認してリビングに置かれたダイニングテーブルに広げられた地図の下へ。地図のそばに置いてあったマーカーとカラーマグネットを複数個手に取り周囲を見渡す。
「今回の任務について認識の再統一を図る。今回俺達に与えられた任務はSEAUnで活動する反政府軍に拉致された帝都ネットワーク建設の幹部役員の救助と保護だ。反政府軍は彼――
この場にいる面々はそれぞれが優秀な軍人だ。射撃を始めとした戦闘術は当然、現地に紛れる偽装の技術と多言語を用いた情報収集の巧みさなどさまざまなエキスパートを集めた精鋭達。
「日本政府と国防軍からの要請は"寝ている赤子を起こさない"程静かに彼を救出する、というものからこの作戦名は『
街中の建物や道路の描かれた各都市の地図を除けて山や森を上空から撮影した写真を引き伸ばしたものを広げる。写真の中にはいくつか寺院があり、松明などの明かりが見て取れた。その寺院の中に緑色のマグネットを一つ置く。緑色のマグネットは館山を表している。
「これがSEAUn政府軍がドローンで撮影した反政府軍拠点の一つだ。写真の粗に関しては気づかれない程上空から撮影したため我慢しろ。だが、先の荻野の報告と反政府軍拠点の位置からここに拉致された館山がいるとみて間違いないだろう」
すると、荻野が手を挙げた。マーカーを向けて促すと、荻野は渋い顔をしながら腕を組んだ。
「人質一人に随分と大がかりですが、それほどの人物なのですか?」
「まぁそう思うのも無理はない、これを見ろ」
ファイルを机の上に置いて中身を広げていく。ファイルの中身は拉致された館山の顔写真の乗った社員証のコピーから家族の情報、その顔写真、来歴まで様々な情報が記載されたものだ。プライバシーなどあったものではないが、どんな情報でも今は必要になる。
「館山幸一、54歳。家族構成は妻と息子二人に娘が一人。館山自身が帝都ネットワークの重役として厚生省や防衛相、外務省と繋がりが太く息子二人はそれぞれ財務省と外務省に入省――娘も桜霜学園出身の箱入り娘で卒業後は厚生省の人間に嫁いでいる。因みに妻も桜霜学園出身で父親は厚生省の人間だ」
館山の情報を聞いた荻野は"マジか"と驚いたような声を上げた。
「超が付くサラブレッド一家ということですか」
「あぁ、彼の救助に失敗すれば防衛相及び国防軍の信頼は失墜。厚生省含め他省にもパワーゲームで大きく後れを取ることを防衛相と国防軍は危惧してる。そのために館山の色相悪化すら危惧する始末だ。だからこそ実力を把握できていないSEAUn政府軍の救助の申し出を拒み、国防軍自身が動くことになった。――とはいえ日本政府と繋がりを保ちたいSEAUn側も自国で起きた事件で蚊帳の外というわけにもいかない。ドローンでの情報収集という形で協力を申し出た。本音は日本から支給される装備の試運転を兼ねてだろうな」
現にSEAUn政府軍は反政府軍との戦闘で日本政府から支給されたドローンを使用、被害を最低限に多くの戦線で勝利を収めており戦局は大きく政府軍に傾いている。だからこそ、反政府軍は政府軍と日本政府の繋がりを切りたいがために館山を拉致したのだろう。
「次いで反政府軍の拠点についてだ。反政府軍は写真に写った寺院の中に拠点を築いている。だが問題はこの寺院は今現在も宗教施設としての側面もあることから周囲の村から参拝したり宿泊したりする人間もいる。つまりただ奇襲をかければよいという話ではない。戦闘員と非戦闘員を区別し確実に処理していく必要がある」
写真の中の寺院を囲むように幾つか赤色のマグネットを等間隔に配置し、黄色のマグネットを寺院の敷地内に置いた。
「歩哨*1は等間隔に寺院を囲むように配置。動哨*2も寺院の敷地内を短い間隔で回っている。彼らの警備が厳重なのは一般人を守るためだ。彼らも彼らで一般人から犠牲者を出すわけにはいかないからな。だから俺達が行動するのは非武装の一般人が寝ている深夜、動いている人間が武装している戦闘員のみのタイミングだ。ここで歩哨を排除して寺院内に侵入する」
すると、背が低く眼鏡を掛けた隊員――高田が軽く手を挙げた。
「縮尺から見てもこの寺院はかなりの面積があるように見えます。館山の居場所の目処がつかないと姿を晒す時間が多くなりますが」
たしかにこの寺院は日本のそれとは違い広大な面積を有している。中央の祠堂をぐるりと囲む回廊が二つ存在しさらに外側に高い塀が存在している。進み方を誤れば容易く姿が露見し交戦することになるだろう。
「ムカデ*3を用いての捜索はするが、ある程度の予測はできる。館山の居場所は一般人とは接触しない場所だ。そのことから中央の祠堂やそこに繋がる道に接した区画、一般人の通る回廊からは離すだろう。寺院は高い塀に囲まれその中に回廊がある。祠堂は中央。そして回廊からも離れた奥に離れがある。おそらく御堂だろうが俺ならここに監禁する。一般人が立ち入らないようにするのも楽だし館山の監視をする人間も最低限で済む」
地図の上に置かれていた緑色のマグネットを写真に写った離れの位置にずらす。回廊からも離れており、北西の角の塀から近く接近が容易だ。するとまた高田が手を挙げた。
「この距離なら最も近い歩哨を排除するだけで済むのでは?」
「俺達だけならそうしたが、館山を連れるとなると保護した後露見する可能性が高い。そのため侵入時に歩哨、可能ならば動哨も排除する。」
その言葉に納得したように高田は一歩下がった。ほかの人間からも質問がないことを確認して話を続ける。
「館山の救助の方法についてだが、まず寺院には俺と荻野で侵入する。動哨を可能な限り排除しつつ館山の下に行きその後館山を連れて寺院を抜ける。残りの人員は歩哨を狙撃して排除しろ。寺院を抜けた後はふもとの村の外れに止めた車で移動する。村への移動時間などを含めると動哨や歩哨の交代するタイミングから見て寺院内で行動できるのは10分弱。最速で館山を連れ出す。減音器*4とSS*5を忘れるな。」
寺院の歩哨の位置から各員の配置を指示し、非常時の対応について確認をしていく。そして"これで最後になるが"と前置きをすると全員の表情が締まる。
「この作戦は非常に難易度が高い。演習のような決まった動きを敵はしてこない。一般人と鉢合わせる可能性もある。不確定要素が多すぎるんだ。――だが、俺達なら達成出来る。
「「「無し」」」」
「装備を整えろ。準備が出来次第。出るぞ」
「「「了解!」」」
雲が少なく、月も大きく欠けた闇夜。日本では聞いたことのない、鳥類だか猿の鳴き声がどこか遠くで響いている。風の音も大きめで銃声も掻き消えるだろう。行動に移すなら絶好の状況が揃っていた。小隊は既に寺院を囲むように各員が配置に着き、これから深夜のタイミングで各隊員が歩哨の位置へと前進し、反政府軍の歩哨が交代した後に交代人員を無力化するだろう。
「煙草吸いたいですね、小隊長」
「止めろ。明かりと臭いで気取られる」
「冗談ですって」
俺と荻野は周辺の草木を装備にくくり付けて茂みに伏せていた。お互いに顔にドーランを施している。身じろぎ一つ取らなければ真横を通られない限りは見つかることは無い。正面に見える北西の塀の壁は石を積んだものの為特殊な道具を用いなくても上ることが出来るだろう。
「来ました」
談笑するような話声と松明の明かり。遠くに二名、旧式の小銃を装備した反政府軍の人間が塀に掲げられた松明の明かりから離れた茂みの中へと入っていき、入っていった二人組とは別の服装の二人組が茂みから出てくる。――歩哨が交代したようだ。そしてそこから数分後、耳に装着したインカムにポンポン、と言うタップ音が響く。
「1、2、3、4、5――6」
6回目のタップ音が鳴る直前、交代したであろう歩哨の位置からガサリと少しだけ音が立った。タップ音は各配置に着いた隊員からのメッセージ――"歩哨の
そのメッセージを受け取ったのと同時に塀へと駆け出し塀の真下に取り付く。
「ムカデ展開。離れを見ます」
塀の傍でしゃがみこんだ荻野が腹部に取り付けたポーチからムカデを取り出し塀に取り付けて手首に装着したデバイスを操作するとムカデはその節を切り離し、ピンポン玉サイズの小型ドローンとして10体近くが塀をよじ登っていく。
「ムカデの視界内に動哨無し。――離れの一階に館山を発見。二階は物置です。人員は入り口前にいる2名のみ」
荻野の合図で石壁をよじ登り、塀を越えて飛び降りる。少し遅れて荻野も飛び降りてきたのを見て胸に取り付けた鞘から銃剣を引き抜き腰のホルスターから拳銃を抜く。荻野も同様に拳銃を抜く。
周囲を警戒しながら離れへと素早く移動していく。茂みを抜けて、木の陰に隠れながら息を殺して離れの目の前へとたどり着く。遠くで談笑しているのだろう。笑い声が聞こえた。
「――」
離れの入り口に立っていた見張りの死角から近づくと、離れた位置にいた荻野が見張りに向けて拳銃を撃つのと同時にもう一人の頭部に照準を合わせて引き金を引く。
バシン!という音と共に見張りの体が力無く倒れこむのを受け止め離れの傍の茂みに隠し、即座に離れの扉を開けて荻野と共に中に滑り込む。薄暗いランタンの明かりに照らされた男がこちらを見て息を呑んだ。顔写真よりかなり髭が伸び髪型も乱れていたが館山幸一本人で間違いないだろう。俺達に対して何かを話そうとした館山に向けて人差し指を口に当てるしぐさをすると館山は口を噤んだ。
「館山幸一だな。国防軍だ。救助に来た」
「なっ、あっ…まさかそんな…助けが来るなんて…」
今にも泣きそうな顔で館山がよろよろと立ち上がる。すると、ギシリ――、と自分たちとは違う離れの壁の向こう側の廊下が鳴った。素早く座るように館山に指示をして開いたときに扉に隠れる位置に荻野と陣取る。荻野がムカデを操作して来訪者を確認しようとするよりも早くギシ、ギシ、と規則的な歩き方で足音の主は離れの扉の前で立ち止まると、ゆっくりと扉が開いた。
「……」
開いた扉から入ってきたのは幼い子供だった。手にはパンのような食料と水を持っている。少年は館山の下へと行く直前、扉を閉めようとした瞬間――
「!」
荻野がその腕を押さえて即座に首元に腕を回して身動きを取れなくした。訳も分からず首を絞められている子どもがバタバタと足を動かしてもがいている。
「こ、殺すな!その子はいつも私に食料を届けてくれてたんだ!一般人だ!」
館山は焦ったように小声で荻野へ向けて話す。荻野は迷ったようにこちらを見ている。
「気絶させろ」
指示を出すと荻野は締め方を変え、頸動脈を締める形に変えた。数秒で子供が動かなくなったのを見て荻野はハンカチで子供の口に猿轡をかませた後結束バンドで手を縛っていく。
「こ、殺してないだろうな!」
「殺してねぇよ」
心配そうに子供を見る館山を一瞥した後、荻野は子供の鳩尾を少しだけ強く叩いた。すると、子供の体がビクン、と跳ねた後子供が意識を取り戻す。
「んん!んぅ!!」
子供が動けないことにパニックになっているのを横目に館山に立つように促して子供には静かにするように人差し指を口元に持っていくジェスチャーをしたあと拳銃を見せる。すると子供は置かれている状況を理解したのか静かになった。
「すぐそばの塀をよじ登ります。簡易的な梯子を置きますのでそれで上ってください」
館山に説明をしている間に荻野が再びムカデを操作して周囲の状況を確認する。
「動哨無し。いけます」
荻野を先頭にして館山を挟むように離れを出て塀の前へ走る。ここから先は巡回に来るであろう動哨が館山の不在に気づくまでどれだけ距離を稼げるかが問題になる。塀の前にたどり着くのと同時に背中に取り付けていた棒梯子を展開して塀に立てかけるこれで館山も上れるだろう。
「上ってください。塀の向こうはもう一人が梯子を掛けます」
荻野が素早く石壁をよじ登り塀の向こうへと消えたのを追うように館山はバランスを崩しながらも梯子を上っていく。そして荻野が梯子を掛けたのか館山が塀の向こうに消えたのを確認した後に石壁をよじ登り、塀の外へと飛び降りた。
「急いでください。この先の村の外れで仲間が車を用意しています。厳しいかもしれませんが走ってください」
「あ、あぁ、わかった!これでも学生の頃は陸上で中距離だったんだ!」
「期待します」
恐怖と極度の緊張感でハイになっているのであろう館山の足元を赤色のライトで照らしながらふもとの村へと三人で走り出した。
「あれです」
「あぁ!助かった!」
10分弱走ったところで村の外れの集合地点にたどり着くと、3台の四駆がライトを消した状態でエンジンを掛けていた。そのうちの一台の運転席から高田が手を振っている。高田の乗っていた四駆の後席ドアを開けて館山と荻野が座席に滑り込み、自分も助手席に滑り込む。
「バンコク方面に走れ。そこで政府軍と合流すれば終わりだ」
「了解――流石です小隊長」
高田の乗った車を挟むように三台が続いてバンコク方面に向けて走り出す。これでほぼ任務は達成したも同じだ。自分が大きく息を吐いたのを聞いて、山場を越えた事を悟ったのだろう。館山も安心したように息を大きく吐いた。
「あぁ…本当に良かった…私はもう見捨てられたものだと…!」
「日本は貴方を見捨ててなどいませんよ。もう大丈夫、安心してください。――吸いますか?」
グローブボックスから煙草とライターを取り出して館山に差しだすと、館山は"ありがとう"といって煙草を咥えて火を点けた。
「小隊長」
荻野が隙を見て図っていた館山のPSYCHO-PASSを館山に見えないようにこちらに見せてくる。色相は平時に比べて悪化はしているだろうが、セラピーで十分対応可能な範囲だ。色相も身体も異常なし。すべて順調だった。
「――バレましたね」
高田が窓を少しだけ開けると、遠くでサイレンのような音が鳴っていた。恐らく歩哨の死体や見張りの死体、館山の失踪が発覚したのだろう。
「あの子は、大丈夫だろうか」
「だから縛ってたんだよ。そうすりゃあのガキはただの被害者だ」
「そうか…よかった…」
「これからバンコクにある政府軍の基地へと向かいます。その後日本政府の専用機で帰国、セラピーなどを受けてもらい異常なければご自宅に帰っていただいて大丈夫です。」
「今ほど、家族を抱きしめたいと思ったことは無いよ」
「是非そうしてあげてください」
「そうだ、君の名前と部隊を知りたい。後日、会社の人間と共にお礼をしたいんだ」
「国防軍隷下中央即応連隊――
「本当に助かった。ありがとう」
そこからさらに車を走らせた車列が、バンコクの政府軍基地の前に停まる。政府軍がこちらに接近していることに気づいたのか、サーチライトが向けられ現地の言葉で止まるように指示を受けた。高田が車を止めるのと同時に全車が停止する。
「俺が行く」
ポケットから身分証を取り出して車の外のサーチライトで照らせるように掲げながら車外へとゆっくりと出る。
「
予め日本政府には館山の保護をしたのちにこの基地に向かう旨を伝えていた為これで伝わったはずだ。他の人員も身分証を掲げて車外に出て大人しくしている。
「変な動きはするなよ」
「わかってますって」
荻野がため息を付きながら身分証を掲げていると、門が開き中から銃を携行した軍人が5名ほど出てきた。軍人達はペンライトで隊員たちの顔と身分証、手元のメモリストのようなものを照らし合わせ、車内にいる館山もあらかじめ渡されていたであろう顔写真と見比べている。その後車内をあらかた調べた後サーチライトへ向けて手を振った。警備の軍人の一人、おそらく分隊の中で最も階級が高いであろう兵士がこちらに敬礼をするのを見て敬礼を返して握手をすると奥に進むように指示を受ける。
「車に乗って前進。全員熱いシャワーを浴びて休め」
「うぇ~い」
荻野が意気揚々と車に乗り込むのを見てほかの隊員たちも笑いながら車に乗り込んだ。館山も無事に通過できることがわかったのか、胸をなでおろした。
「お疲れさまでした。館山さん。――日本に帰りましょう」
Profile.
姓名:智水 雪
性別:男
生年月日:2083年6月6日
血液型:O+
出身:東京都
身長:188cm
体重:87kg
座右の銘:『汝平和を欲さば、戦への備えをせよ』
モデルは幽遊白書の仙水忍。