四代目火影・大蛇丸   作:缶ジュース

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第三章:厄災の夜

 本来であれば不用意な入室を避けるべき火影の屋敷の一室へ、ノックもなく三人の忍がなだれ込んだ。額には汗をかき、呼吸は乱れている。外の喧騒とは打って変わって静けさに満ちた室内を、先頭で駆け込んだ男が怪訝な顔で見渡した。

「来たわね、フガク」

 困惑に眉をひそめていた厳しい顔つきの男、うちはフガクに対し、窓から外を眺めていた大蛇丸が振り返りながら言った。傍らには相談役のダンゾウが控えており、壁際に設けられた椅子には同じく相談役のコハルとホムラが座っていた。

 フガクの返答より早く、「さて。時間もないし、分かりやすくお話しましょう」と薄笑いを浮かべた大蛇丸は、握った拳に立てた親指で、肩越しに窓の外を指した。倒壊した無数の建物から狼煙のように黒い煙が上がる、里の中心区画。

「アレ、貴方たちの仕業かしら?」

「な、貴様ッ!」

「大蛇丸!」

 絶句した次の瞬間には沸点に達し怒声を張り上げたのは、フガクの左後ろに控える若手の忍だった。ギラついた写輪眼が吊り上がった眦のもとで爛々と輝いた。

 とんでもない爆弾を投下する暴挙に出た大蛇丸を制するため鋭く名前を呼んだホムラは、ダンゾウをキッと見上げた。火影の相談役を共にするホムラとコハルの中では、ダンゾウが大蛇丸の監督役として特に位置づけられていたが、見上げた先で露呈したのは監督不行届だった。ダンゾウも大蛇丸を横目に顔を強張らせていた。

 うちは一族の持つ特別な瞳、写輪眼。その瞳術の究極は九尾を操る。里の黎明期、うちはマダラの起こした造反により語り継がれる、いわば伝説だった。不確かなそれを手がかりに、最強の忍一族とも謳われるうちはへ、大蛇丸は謂れなき嫌疑をふっかけたのだ。物理的に里が壊れる瀬戸際に、共同体としての里まで割れかねない。湧いた感情は各々ばらばらだったものの、発言の思惑があまりに不明瞭で不気味という見解は、忍の闇と五大国中から怖れられるダンゾウさえ含めて一致した。

 フガクは手をすっと掲げて脇に控えるうちはの忍を押し留めた。大蛇丸の言動にはカッと頭に血が上ったが、今にも飛びかかりそうな気配を背後に感じては逆に冷静にもなる。

「いくら火影殿といえど、愚にもつかないことをおっしゃらないでいただきたい」

 フガクは極めて冷ややかだった。

「なら、その眼で九尾を抑えることは?」

 フガクの左後ろの忍が脊髄反射で吼える。

「そのようなこと、出来るはずがないだろう! いつまでもマダラの伝説を引きずり……たわ言を鵜呑みにしてうちはを貶めるな!」

「あら……できないのね」

 嘲ったような、失望したような口ぶりで、大蛇丸はおざなりに続けた。

「じゃあ、戻っていいわよ警邏に」

 うちは一族は代々、木ノ葉警務部隊として里の治安維持を任されていた。有事の今、最強の誉れに恥じない実力を持つうちはなら、九尾の制圧においても大きな戦力になることは疑いようがない。にもかかわらず、紙一枚で唐突に呼び出し、一方的に戯れ言をのたまい、挙げ句に平時と同じように里の治安を守っていろ、ときた。

「…………できたら、どうする?」

 腕を組み目を閉じたフガクは殺気に満ちていた。

「分かりやすく話を、と言ったな。ならば私も……我らうちはも、分かりやすく言おう。これは、警告だ。うちはの矜持を傷つける真似を、これ以上するな」

 木ノ葉警務部隊の隊長、そしてうちは一族の族長であるフガクは、そう言い切った。

 瞑られていた目が、そしてゆっくりと開かれる。

 大蛇丸にダンゾウ、ホムラとコハルは息を呑んだ。フガクの半歩後ろで両脇を固めていた忍二人も、その反応を見てフガクの顔をのぞき込み、目を見張った。

「隊長、それは……!」

 視線を外し、ダンゾウが呆然と呟いた。

「万華鏡、写輪眼」




出典
フガクの万華鏡写輪眼:イタチ真伝
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