ポケットもんすたぁアカデミアSPECIAL   作:ネオニューンゴ

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第3話 初めてのバトル

 朝、カーテンの隙間から差し込む朝日に若干の煩わしさを覚えながらクリムは目を覚ます。目に飛び込んできた馴染みのない部屋の景色が、戸惑いと共に自分がエデンに来たんだという実感を湧かせる。ふと視線を落とすとミミがクッションの上に丸まり気持ち良さそうに寝息をたてている。時計を見ると時刻は六時、始業は八時半なので時間には大分余裕がある。すやすやと寝息をたてる相棒を起こすのも悪いと思いクリムはそっと部屋に備え付けられた学習机へと向かい教科書をパラパラとめくる。そこにはポケモンバトルにおいて必要な知識が沢山記されていた。きのみの効果、もちものの効果、ポケモンのとくせい一覧、そして実戦でどの場面でどんな技を選択するのが有効なのか?また相手はそれに対しどんな手を使う事が出来るのか?等流し読みをしただけでも知識がついたような気がしてくる。

 

「ん……あれ……ここどこ!?」

 

 どうやらミミが起きたようだが半分寝ぼけているのか困惑しているようだ。自分も見慣れない景色に少し戸惑ったので若干の親近感を持ちつつ振り返り挨拶をする。

 

「おはようミミ、よく眠れたか?」

 

「わ、おはようごさいますマスター」

 

 クリムは開いていた教科書を閉じ鞄の中へとしまう。時計をチラリと見ると時刻は7時となっていた。朝食を摂るにちょうど良い時間だろう、ミミを誘い食堂へと歩みを進める。食堂内は昨日の夕食の時と比べると空いてる席がちらほらと存在する。どうやら自分は比較的早い方のようだ。自分の分とミミの分の朝食を頼み空いている席で朝食にありつく。クリムはどちらかというとパンより米派なのだがチーズエッグトーストという響きにつられ今日は洋風の朝食を食べる事にする。相変わらず見た目と香りが食欲をそそる、食べる前から涎が口の中から溢れてくる。

 

「じゅる……はっ!」

 

「ミミもか美味しそうだもんな」

 

 朝食も期待を裏切らず美味でありペロリと平らげた……のだがクリムは慣れないコーヒーの苦味に四苦八苦していた。こんな事ならば砂糖をもう一袋貰えば良かった……とクリムは内心がっくりとする。コーヒーの味に顔をしかめていると自分の前の席にトレーが置かれる。

 

「ゴメンゴメン!相席いいかな?」

 

 視線を上げるとエリスがペロッと舌を出している。特に断る理由もないクリムは相席を了承するとエリスはありがとーといって席へ着く。

 

「いや~丁度キミとは話してみたかったんだよね~ラッキーラッキー♪」

 

「自分と?」

 

「そりゃ御三家の萌えもん種が仲間なトレーナーってこのエデンじゃ10人くらいしか私知らないからね~」

 

 ふむ、やはり御三家は珍しいらしい、となると無駄な注目を集めるかもしれない、いらない面倒事に巻き込まれたりしないといいが⋯⋯とクリムは考え込む。ちらりと視線をミミに向けるとミミは全く気にする様子もなく朝食にありついているが……

 

「あはは、昨日見た時はおくびょうっぽい性格だと思ったけど彼女変な所は胆が据わってるのね~、それと一応先輩からのアドバイス、珍しい=強いには結び付かないから自分の幸運に胡座をかいちゃダメよ、どんなポケモンでも輝かせるのはトレーナー次第だからね」

 

 そう言ってエリスは真剣な表情でクリムを見つめる。成る程それはエリス先輩の言う通りだと思いクリムはその言葉にゆっくりと頷くと彼女は満足そうな表情をする。

 

「貴方はそういうタイプじゃないと思ってたけど、ゴメンね朝からこんな話しちゃって」

 

「いえ、アカバネ先輩と同じって思って自分もどこか舞い上がっていた節があったと思います、ご忠告ありがとうございます」

 

「まぁせっかくトレーナーとしての第一歩を踏み出した訳なんだから舞い上がるなっていうのもおかしい話なんだけどね、それじゃまた話そうね~」

 

 そう言い残すとエリスはトレーを片手に手をヒラヒラさせて去っていく。クリムはその背中を見送るとコーヒーを一気にあおる。

 

「やっぱ苦い」

 

「?どうかしましたかマスター?」

 

「いや……頑張ろうなミミ」

 

 気を引き締め直したところで、クリムは食堂を後にして部屋へと戻り、簡単な身支度を整えてからスクールへと向かう。教室に着いたのは8時頃で目算だが丁度半数程の生徒が登校していた。自分の席に荷物を置くと既に登校していたツバサがクリムの元へやってくる。

 

「やぁおはようクリム」

 

「おはようツバサ、早いな」

 

「いやいやボクもさっき着いたところさ、ミミちゃんは……ボールの中かな」

 

「やっぱりまだ人混みは苦手らしい、ご飯食べてる時はあんまり気にしないみたいなんだが……」

 

「まぁ萌えもん種は扱いが難しいらしいしね」

 

 二人がしばらく喋っていると予鈴が鳴る。席へ座ると程なくしてジンダイがのっそりと教室の扉をくぐり教壇の上に立つ。

 

「ハイおはよう皆、昨日はよく休めたかな?初めての自分とのパートナーとの出会い、先輩達の素晴らしい歓迎会と盛りだくさんで興奮しているんじゃないかな?早く自分達のパートナーを戦わせたい、そんな気持ちもあると思うけど午前中は我慢して下さい、その代わり午後の授業ははじめてのバトルをしてみようか」

 

 ジンダイのその言葉に教室中が湧く。早くポケモンバトルがしたくて仕方がないのだろう、かくいうクリムも例外で無く思わずボールの中の目にミミに視線がいってしまう。

 そんな生徒達の様子をジンダイは微笑ましそうにしながらやんわりと断りを入れ静かにさせる。

 

「ハイ皆さんそこまでです、言ったでしょう?午前は我慢してくださいと、これからする話もバトルに劣らないくらい大切な話です、まずは皆さんそれぞれの相棒をボールから出してください」

 

 生徒達はジンダイの指示通りポケモンをボールから出す。それだけでこの教室内には30匹程度のポケモンで溢れかえり自然と視線は他のクラスメイトはどんなポケモンをつかまえたのか気になりクリムは視線を動かす……がそんな気持ちもすぐにぐっと飲み込みジンダイの指示を待つ。

 

「それではポケフォンの図鑑アプリを起動しカメラ部分で自分のポケモンをスキャンしてみてください」

 

 クリムはポケフォンのポケモン図鑑アプリを起動しミミをスキャンすると図鑑にミミのステータスが表示される。

 

ミミ(ミズゴロウ) LV10 ♀

 

タイプ みず

 

たいりょくD+

 

こうげき C+

 

ぼうぎょ C-

 

とくこう D-

 

とくぼう C+

 

すばやさ E

 

せいかく しんちょう

 

とくせい げきりゅう

 

わざ

 

たいあたり

 

みずでっぽう

 

どろかけ

 

アイスボール

 

 

 

 

「おお……すごいな図鑑アプリ、こんなにも詳細なデータが表示されるんだな⋯⋯ミミのせいかくおくびょうじゃないのか」

 

 まぁどちらにしても内向的な性格という事に変わりはないのだが。図鑑とにらめっこしているとミミは不安そうにクリムに声を掛ける。

 

「ま、マスター、すみません私弱すぎて失望させちゃいましたか?」

 

「ん?いやいや、そんな事ない、というか強いも弱いもまだ俺には判断つかないしな」

 

 その言葉を聞くとミミはほっとした様子を見せる。そんなに心配しなくても自分の初めての相棒なのだ、クリムはミミがどんな萌えもんでも生涯大切にするつもりだ。そんなこんなしていると周囲から様々な疑問の声が上がる。

 

「ジンダイせんせーアタシのポケモンなんかタイプが違うんですけどー」

 

「先生、俺のポケモンわざ5つ覚えてるんですけどポケモンの使えるわざって4つまでじゃないんですかー?」

 

「ハイハイ順番にお答えしますよ、まずタイプが違うのはそのポケモンがデルタ因子を持っているからですね、ガラル地方、アローラ地方等では同じポケモンでもタイプや見た目が違ういわゆる~の姿という種類のポケモンがいますがこのエデンには存在しません、どうしても欲しいなら長期休暇の時に申請して該当する地方に足を運んでみて下さい、そしておぼえるわざは最近までは基本的に4つとされていましたがそれはポケモンによって個体差がある事が判明しました、またトレーナーの力によって使えるわざは少なくて4個オーソドックスで5~6個、最大で8個まで増えます、もっとも8個となるとかなり育成の才能が必要になってきますが……」

 

「へーそうなんだ」

 

「デルタ種ってすげー」

 

「俺のポケモンわざ5個覚えてるからもしかして強い?」

 

(まぁ……そのせいで野生のポケモンの乱獲や明らかにトレーナーの手に余るポケモンの繁殖、そして放流による環境への影響等一概に良い事ばかりとはいえないんですがね……まぁこれは授業で追々話すとしましょうか)

 

「皆さん自分のポケモンの確認は終えましたね?では一旦ボールの中に戻して頂いて、それではこれより我がイーストスクールの説明と皆さんの一年間の簡単なカリキュラムをお配りします、一番前の席の人は冊子を取りに来て下さい」

 

 クリムの席は横6列縦5列の真ん中後ろの方なので前の席の生徒から回ってきた冊子を受け取り指定されたページを開く。ジンダイも冊子を片手に説明を始める。

 

「ハイ、当校の特色はなんといっても授業が選択式という事でしょう、皆さんは様々な目的を持ってこのエデンにやって来たと思います、そこで自分に必要だと思った講義を自分で選び受けて貰います」

 

 

「てことは極端な話全く授業に出なくてもテストだけクリアすれば卒業出来るって事ですかー?」

 

 冗談半分に明るい雰囲気の男子生徒がジンダイに質問をするとジンダイは首を横に振る。

 

「いえ、一定数の講義には出て頂かないとそもそもテストを受ける資格を貰えません、また夏までは皆さんの進路に関わらず共通で受けて頂く講義が多いので実質的に講義を選択して1日の流れを決めるのは一年生の後半からでしょう」

 

 確かに専門的な知識を得るためにはその土台となる知識が必要になってくる。クリムは選択式の講義にはどんな物があるのか気になり選択講義のページを眺めるとバトル、捕獲の実践法式の授業、ポケモンの育成論の授業、コンテストの講義からポケスロンの講義、さらにはきのみの育て方やダブルバトルの講義、卒業生やジムリーダー、トップブリーダーを招いての講義まで存在していた。

 

(成る程……確かにどう成長するかは自分次第な感じだ、一年生の後半は講義を選ぶだけで頭を抱えそうだな)

 

「ハイ、それでは一年間の大まかなスケジュールを説明します、4月~6月は皆さんポケモンを持つものとして基礎的な知識と初歩的な育成、バトルの知識を付けて頂きます、そして7月には各島で大きな大会が開かれますので皆さんにはそれに出場して頂きます、そして一学期の総決算として学内の各々の学年別れてのトーナメント形式の大会を行います、一年生の皆さんは7月までに4体はてもちを揃えて頂くつもりですね、これを多いと感じるか少ないと感じるかは皆さん次第ですが最低でも4月中にもう一体はてもちを増やしてもらいますよ」

 

 ジンダイの言った通りクラス内は様々な反応を見せるがクリム的にはてもちが増える=バトルの奥深さが深まるという事なのでむしろ願ったり叶ったりだ。それを抜きにしてもやはり扱える仲間の数が増えるというのは純粋に楽しみでもある。

 

「7月で1学期は終了し夏期の長期休暇を挟み9月には島外への合宿もあります、それを終えて12月は4校合同の大規模な大会があるので10月と11月はそれに向けての準備期間ですね、、12月で2学期が終了し冬季長期休暇を挟んで三学期、2月に総決算のテスト、そして3月にはその年の成績上位者が出場する学校対抗の団体戦の大会通称4校戦があります、その他にも色々あるのですがまぁ……大まかに言うとこんなものですかね」

 

(大まかでもこんなにイベントがあるのか……)

 

 流石は学園島というべきであって生徒を成長させる行事が目白押しのようだ。冊子を持つ手に力が入り少し汗ばむ、緊張か興奮かは分からないが悪い気分ではない。

 

「ふむ、そろそろ昼休憩の時間ですね、では皆さん午後の授業はジャージに着替えてバトルフィールドに集合してください」

 

 長いのか短いのか、判断はつかないが午前の講義が終了する。クリムは伸びをしながら筋肉をほぐしているとツバサがやってくる。

 

「あまり長時間こうやって座って人の話を聞くっていう機会はなかったら少し疲れるね、クリムは昼食はどうする?昨日同様食堂にする?それとも手軽に購買で買う?」

 

「そうだな⋯⋯着替えもあるし今日は購買にしようと思う、時間にゆとりを持ちたい」

 

「そういう事ならボクも購買にしようかな、何が売っているか気になるしね」

 

 二人が購買へと向かうと食堂程ではないが昼時なのでそこそこ人で溢れかえっていた。購買にはきずぐすりやモンスターボール、食品から文房具、はてにはきのみまで取り揃えられていた。クリムとツバサは昼食のおにぎりと飲み物、そしてポケモンフーズを購入し教室へと戻り席をくっつけて昼食を摂る事にすると横からもうひとつ机がくっついてくる。

 

「二人ともトレーナー志望なんだろ、少し話さないか?」

 

 意外にもその人物はアダマスだった。クリムは彼にあまり人付き合いに積極的という印象は抱いていなかったので驚きは大きいが勿論断る理由もなく、むしろアダマスとは話してみたいと思っていたので丁度良かった。見るとアダマスもパンと牛乳を持参しており彼の事だから抜かりなく朝にでも購入したのだろう。

 

「ああ、俺もアダマスとは話してみたかった」

 

「ボクも歓迎するよ、これから三年間の付き合いだしね」

 

「まぁ……付き合いと言っても同じトレーナー志望同士ライバルだがな」

 

 三人は忘れず自分達のポケモンにも昼食を食べてもらうためボールから相棒をそれぞれ出してあげる。

 

「へぇ……アダマスの相棒はストライクなんだね」

 

「ストライクか……ホウエン地方には生息していないからあまり馴染みはないな」

 

「あぁ……入学当初から手に入れたい一匹でな、運良く自然公園で出会う事が出来た、これで最強のトレーナーを目指す上で一歩踏み出せた事になる」

 

 そう言ってアダマスはパンを頬張る。その表情はどこか満足げに見える。気難しい性格かとも思ったが思ったよりアダマスは分かりやすい性格なのかもしれない。

 

「そういえばボクにはキキョウのジムリーダーになるっていう明確な目標があるんだけど二人にはあるの?」

 

 ツバサの問いに対しクリムとアダマスの答えは対照的だった。

 

「最強のトレーナーが最終目標だが、その中継点としてシンオウのチャンピオンシロナさんを倒したい、それが俺の目標だな」

 

「俺は特に決まっている訳ではないが……憧れの人物がいて、その人に少しでも近づきたいんだ」

 

「へぇ……クリムの憧れの人か」

 

「目標も良いがまずは目の前の事だ、午後は人生初のバトルだからな、嫌でも緊張する」

 

「そうだね、アダマスはそういうのとは無縁そうだけど?」

 

「お前は俺を何だと思っているんだ、俺だって人並みに緊張くらいはする」

 

「そりゃそうだ」

 

 三人は笑い合いその後も色々な事を話した。昼食を食べ終えるとジャージに着替えバトルフィールドへと向かう。三人が着いた時には既に大半の生徒がバトルフィールドへ集合しており各々の相棒とコミュニケーションをとっているのでそれに倣い三人も別れて各々の相棒とコミュニケーションをとることにした。ハイメは少し離れた木陰でミミをボールから出す。

 

「ミミ、おいで」

 

 ミミはボールから出ると周りのポケモン達を見て驚いた表情していたがすぐに表情を変える。フィールドを見て自分がこれから何をするか察したのだろう。

 

「マスター、遂にバトルですね!私頑張りましゅ!」

 

「あまり気負いすぎるなよミミ、勿論負けるつもりはないけど今回は1vs1だから相性の悪い相手だったら突破は難しい」

 

「うっ……確かにそうですね……では相性がいい相手がくるよう頑張って祈ります!」

 

「まぁそうなると良いけど、それより今回はバトルを楽しもう、俺達の初陣なんだ」

 

「は、はい」

 

(と、言ってはみるものの負けたらミミは凄い落ち込みそうだし勝ちたいよな、お互い自信にもなるだろうし……まぁその時の運次第か)

 

 少しすると予鈴が鳴りスーツからジャージに着替えたジンダイがフィールドにやってきたため生徒は彼のもとへと集合する。対戦相手は隣の席の人物となるようで五つあるフィールドをフルに活用してバトルを行うようだ。待っている生徒はバトルの観戦でクリムの前で見知った顔でバトルを行ったのはツバサとトパーズであり二人とも勝利を収めていた。緊張のせいか待つ時間はとても短く感じたが遂にクリムの番がやってくる。

 

「よし、じゃあ行こうかミミ」

 

「はい!」

 

「頑張れよクリム」

 

「折角だから勝ち星あげてきなさい!」

 

「負けてもそんなに落ち込むなよ」

 

 ツバサ、トパーズ、アダマスからの激励(最もアダマスは激励かどうかは分からないが)を貰い指定されたフィールドへ向かう。相手は緑の長髪の男子生徒で挑戦的な視線をこちらに向けてくる。

 

「へっアンタが相手か一応自己紹介しとくぜオレはセクト、ガラルのターフタウン出身だ、まさか初戦から有名人相手とは驚いたぜ」

 

「ホウエン地方カイナシティ出身のクリムだ、有名人とは?」

 

「オイオイとぼけんなよ、御三家の萌えもんを捕獲したんだ、そりゃ話題には上がるだろ、見ろよ俺達のフィールド、観戦の人数が他より多いぜ?」

 

 セクトにそう言われ周囲を見渡すと確かに彼の言うとおり観戦の人数は多い気がする。思わずクリムは手に力が入る、場の雰囲気に呑まれてるのか、それとも緊張してるのか、幸いなのなミミがそれに気づいていない事だろうか。

 

「お互い気の抜けたバトルは出来ねぇなっとおしゃべりはここまでだ、始まるぜ」

 

 クリムとセクトはお互いにモンスターボールを構えジンダイの合図を待つ。緊張しているからか心臓が早鐘を打ちやけに長く感じたがジンダイの声が響き渡る。

 

「バトルはじめ!」

 

「いきなぁ!フッシー!」

 

「頼むぞミミ」

 

 お互いのポケモンがバトルフィールドへ躍り出る、セクトが繰り出したポケモンはむしタイプ……と恐らくだがどくタイプのポケモンだろう。紫色の体をしているしむしタイプのポケモンはどくタイプを持っている事が多い。

 

「まずは自分の読みが合っているか試す、ミミ、どろかけだ」

 

「チッ!」

 

 クリムの読みは恐らく合っていたのだろう、セクトの舌打ちとミミのとくこうの割には相手のポケモンはダメージが大きいように見える事からその事実が裏付けられる。観戦するツバサ達も友人のバトルが始まり観戦に熱が入る。

 

「クリムの相手はむしとどく?」

 

「みたいね、今図鑑アプリでスキャンしたわ、名前はフシデ、クリムを含む私達の住む地方では馴染みのないポケモンね」

 

「萌えもん種ではなくポケモン種か、あとはデルタかどうかだが……」

 

 三人が各々セクトのてもちであるフシデに対し考察を進めるなかバトルは進む。先手はクリムが取ったが次はセクトが動き出すようだ。

 

「チッ!フッシーどくばりだ」

 

 フシデがセクトの指示通りどくばりを放つがどろかけを食らって万全でないフシデのこうげきは狙いが甘くミミの横へと放たれる。クリムは目を細めその隙を逃さないよう指示を出す。

 

「チャンスだ、みずでっぽう」

 

「はい!」

 

「クソ!まもるだフッシー!」

 

 フシデはまもるを使いミミのこうげきを受けきるが距離は十分に詰めている。フシデはどろかけを嫌うようにミミから離れようとするが僅差でミミがたいあたりの射程圏内まで追い付く。

 

「たいあたりだ!」

 

 クリムの指示通りミミはフシデにたいあたりを仕掛ける。これでフシデの体力を半分は削っただろう、クリムはこのまま一気に畳み掛けようとしたがそこでミミの異変に気付く。まともなダメージを受けていない筈のミミが突然苦しみだしたのだ。

 

「うあっ」

 

「何?どうしたミミ⋯⋯まともにダメージは⋯⋯まさかじょうたいいじょうか?」

 

「おおっとこりゃラッキー!どくのトゲでおたくのミズゴロウはどくになったようだな、こっから逆転だぜフッシー、ころがる!」

 

 どくにより生じた隙と距離を詰めた事があだとなりミミはまともにフシデのころがるを受けてしまう。さらにころがるの威力、速度はどんどんと上がっていきどくも合わさり確実にミミの体力を削っていく。

 

「う、うう……ますたぁ……」

 

「こりゃ貰ったぜ!潰せフッシー!」

 

(まずい、いくらころがるがミミに対してこうかいまひとつとはいえどく状態である事を加味すると次を受けきれるか分からない⋯⋯ならここはミミを信じる)

 

「ミミ、正面に向かってみずでっぽうだ!」

 

「そのまま押しきれぇフッシー!」 

 

 ミミのみずでっぽうに構わずころがるを仕掛けてくるフシデ、ミミにぶつかる、その瞬間フシデの動きは止まり力なくその場に倒れる。

 

「な、なにぃ!?体力は半分はあったはずだ!それがなんで!?」

 

「ミミ、頑張ったな⋯⋯大丈夫か?」

 

「は、はい何とか……」

 

 お互いに相棒をボールに戻し回復装置にボールを置く。セクトはさっきの一撃でフシデが倒れたのに納得がいっていないようで俺に説明を求めてくる。それに対しクリムは図鑑アプリを開きミズゴロウのページを見せながら説明を始める。

 

「ミミのとくせいはげきりゅう、だから体力が1/3以下の時にみずタイプのわざの威力が1,5倍になる、どくも相まってミミの体力はそれ位だった、それで押しきれたんだと思う」

 

「へっ……お互いとくせいに泣かされる試合だったわけか、良いバトルだったな、次は勝つぜ」

 

「あぁ……次も勝つ」

 

 バトルが終わればノーサイド、二人は固い握手をして別れる。しかし終わってみれば本当に綱渡りのようなバトルをしてしまった、という自責の念とバトルの高揚感も相まって大きく息を吐く。

クリムは自分が思っていた以上に疲れていたらしく大きく息を吐きながら三人の元へと戻る。

 

「お疲れクリム、やったね初勝利」

 

「見ててヒヤヒヤしたわよ」

 

「結果は勝利なんだ、まぁいいんじゃないか?」

 

「ありがとう三人とも、いやホント勝てて良かった」

 

 これは嘘偽りない本音だ。クリムが座り込むと同時にアダマスが立ち上がる。

 

「次は俺の番だな、行ってくる」

 

 そしてアダマスの初戦、的確な指示とストライクのとくせいテクニシャンも合わさり終始押せ押せムードで相手を圧倒する。最強のトレーナーを目指すというのは伊達ではないらしい、相手の生徒が少し可哀想に思える程だ。何はともあれ、四人は初陣を白星で飾る事が出来てトレーナーとしての第一歩を踏み出す事に成功したのだった。

 

 

 

 

 

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