ポケットもんすたぁアカデミアSPECIAL   作:ネオニューンゴ

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 読んで頂いてありがとうございます、なるべく広い世代のポケモンを登場させたい気持ちもありながらやはり自分の印象に強く残っているポケモンを登場させがちなのが悩み所ですね。読者様が少しでも楽しんで読んで頂けると嬉しいです。それでは4話になります、どうぞ。


第4話 新たな出会い

 あのバトルから時は経ち4月も終盤に差し掛かってきた。クリムはふと講義の途中で窓の外に目をやると入学当初は校舎を彩っていた桜が大分散っている事に気付く。座学中心の講義もようやく慣れてきて、ミミとの信頼関係も少しずつ構築出来ている……と思う。クリムはそんな事を考えつつ黒板に書かれた内容を板書しながらジンダイの講義に耳を傾ける。

 

「そうですねぇ……それでは今日の講義はあと二つ程話をして終わりにしましょうか、それではまずポケモンのレベルによる進化やレベルによって覚える技について話しましょうか」

 

 ジンダイの言葉にクラスは皆頭の上にはてなマークを浮かべる。ポケモンはある一定のレベルまで上がれば進化する種類のポケモンは進化する、規定のレベルまで到達すれば技を習得出来る、これくらいはこの学園の生徒なら皆基礎知識として持ち合わせているだろう。

 

「皆さんはポケモンは進化する条件のレベルまで到達すれば進化可能なポケモンは進化する、規定のレベルに到達すれば技を習得出来ると思っていらっしゃるかもしれませんがこの認識は近年では間違いであったという事が確認されています、もっとも違いが出やすいのはバトルして育てたポケモンとがくしゅうそうちのみで育てたポケモンですね、当然前者の方が様々な面で強くなるというのはある意味当然の事です、あくまで進化や技を覚えるレベルというのは指標として考えてください、ちなみに推定レベルより早く進化したり技を覚えたりという事もありますがこれはこの次にお話しするトレーナーの資質の内の一つが優れているとこういった事が起こりえますね」

 

(確かに言われてみればおかしな話だ……レベルはあくまで指標……っと)

 

「そして少し前の話でも触れたトレーナーの資質についてお話ししましょう、パーティー構築から勝利までトレーナーの役割をまっとうするのに必要な四大資質、『統率』『指示』『育成』『能力』を指します、今はまだ皆さんにはあまり関係がないのでかなりざっくりと説明しますが統率型はポケモンに好かれやすいです、指示型と育成型は読んで字の如くですね、能力型はフィールド、トレーナー、ポケモンに干渉するトレーナー固有の能力の事を指します、皆さん何かしらの能力には必ず目覚めますね」

 

 この話を聞いて教室内がざわつかない……という方が無理な話だろう。生徒達は自分はどんなトレーナーなんだろう、予想や希望を口にする。かくいうクリムも板書する手を止めジンダイの話に注意深く意識を向けていた。講義中だがジンダイもそれを咎める事はせずにこやかに生徒達の姿を見ている。

 

「続きは明日……と言いたいところですが皆さんには明日2匹目の仲間を捕獲して頂きましょう、明日は1日がかりになります、セントラルアイランドまで足を運ぶので昼食を持参してください、もし先程の話について気になるのであれば図書室等で調べてみるのもいいと思いますよ、ハイそれでは皆さんまた明日……当番の方は教室の清掃をしっかりとお願いしますよ」

 

「起立、礼」

 

「ありがとうございました」

 

 ジンダイが教室を出ていくとやはりクラス内の話題は先程のトレーナーの資質と明日の話でもちきりだ。クリム、ツバサ、アダマス、トパーズの4人も自然と集まり例に漏れず話し合っていた。

 

「四大資質か……自分達がどの資質に優れたトレーナーかってのは結構気になるな」

 

「どの資質に優れていようとそれを武器に戦うだけだがな」

 

「またアンタはそう夢の無い事言うんじゃないわよ」

 

「アハハ、まぁアダマスはそう言うと思ったよ、それより三人はもうどんなポケモンを仲間にしたいかって大体決まってるの?」

 

 ツバサはひこうタイプに決まっているから特に問題はないのだろう、純粋に三人のPT構成が気になるようだ。まず最初に口火をきったのはアダマスだった。

 

「ストライク……いや進化を見据えてハッサムの四倍弱点のほのおタイプに強いみず、いわ、じめん辺りのタイプを考えている、出来れば受けで使えるポケモンか特殊アタッカーが良いが、そこは巡り合わせしだいだな」

 

 アダマスらしい、既に自分のPTの中心に据えるポケモンの進化先まで見据えた構成を決めているようだ。次にトパーズだが彼女はブリーダー志望なのでこれといってタイプ等は深く考えず完全にフィーリングで決めるとの事だ。彼女の最初の手持ちはミミロルであり最初の方は周りにミミロルの可憐さを自慢していた程である。恐らく今回もそういった美的センスの感覚から手持ちを決めるのだろう。二人が自分の考えを言った所で三人の視線はクリムに集まる。

 

「クリムはやっぱり萌えもん種?」

 

「いや、そこはミズゴロウの相性が補完できる奴だろ」

 

「いやー敢えてまた御三家ポケモンかもしれないわよ?会えるか分からないけど……クリム君の豪運をもってすれば……とか?」

 

 三人とも口々に好きな意見を言いクリムは自分の考えを言おうとするがそこにセクトをはじめとするとクラスメイトまで参加し始め収拾がつかなくなってくる。

 

「いんやあ?そう見せかけて滅茶苦茶ゴツイポケモンかもしれねぇぜ?」

 

「いやクリム氏の事ですからきっと我々にまた可憐な萌えもんを披露してくれるに違いありませんぞ……ハァハァ考えたら興奮してきましたな」

 

「いやークリム君的にカッコイイポケモンもあるかもよー?」

 

「無難にほのおタイプかひこうタイプとかじゃないか?ラグラージに進化したら草が四倍弱点だし、無視は出来んだろ」

 

「ドラゴンタイプとかも意外とありそうじゃない?てゆうかクリム君ならしれっと連れてきそう」

 

「クリム!俺と一緒にかくとうタイプの真髄を極めよう!」

 

「いやいやここはくさタイプの嫌らしさを……」

 

(まったく、好きに言ってくれるなぁ)

 

 良い意味でも悪い意味でも、御三家萌えもんを連れたクリムはクラス内で注目を集める。そういった事にクリムはやりづらいなぁ……と内心少しではあるが思いつつもツバサに促され自分の考えを白状させられる。

 

「いや、期待してる所悪いが本当に決まってなくて……ただミミと色んな意味でウマが合うポケモンがいいなぁくらいにしか考えてない」

 

 クリムがそう言うとクラスメイトは冷やかし半分、納得半分といった感じで一言残し散っていく、最初はこのクラスのノリに驚いたがまだ1ヶ月しか経っていないのに順応してきている自分がいるのも確かだ。クリムは掃除当番のため三人とも別れ教室の掃除を終わらせ学生寮へと戻る。夕食まで時間があるためクリムはミミと明日加わるであろう新たな仲間について相談する事にする。モンスターボールを手に持ちミミを出すとミミはそのまま自分の所定の位置である水色のクッションの上に座り首をちょこんと斜めに傾げる。

 

「ど、どうかしましたかマスター?」

 

「いや、明日は新しい仲間が増えると思うから一応ミミと相談しようと思ってな」

 

「相談……ですか……と言いましても怖い子じゃなきゃいいなー位ですかね」

 

「分かった、そこら辺は気に掛けてみる⋯⋯が流れ次第かな」

 

「あとは、マスターがみずタイプのエキスパートになりたいとかでなければタイプは私の弱点が補完出来る子がいいと思います」

 

 ミミの最もな指摘にクリムも腕を組み思案する。ミミはミズゴロウのためヌマクロー、ラグラージに進化すればみず、じめんタイプになるので将来的な事を考えるならばひとまずでんきタイプは置いて置き4倍弱点の草タイプに強いほのおタイプやひこうタイプ、逆にくさタイプを受けられるはがねタイプやでんきタイプも悪くないかもしれない。むし、どくタイプも捨てがたい、そんな事を考えていると自身のポケフォンが何かの通知を知らせるため震えだす。手にとって見るとメッセージアプリにトパーズからクリム、アダマス、ツバサ宛に送られたメッセージが届いていた。メッセージアプリを開くとどうやら明日は一緒に行動しないか?との事で既にツバサは了承の返事を送っている。クリムもミミに了解をとってからOKと返事を送る。夕食と入浴を手早く済ませ、指定のショルダーバッグに明日の持ち物を詰め終えクリムはいつもより気持ち早く就寝する事にした。

 

 

 翌朝

 

 手早く朝食を済ませた一同は船に揺られセントラルアイランドを目指していた。船に乗る前にジンダイから軽く注意事項を講義された後船に乗り込みまだ見ぬ自分の新たな仲間に想いを馳せつつ一人でクリムはデッキで流れる風景を楽しんでいた。何故一人かというとアダマスはどうやら船に弱いらしくトパーズに医務室で介抱されており、ツバサは別のクラスメイトに声を掛けられそのままどこかへ行ってしまった。なんとなく悲しい気持ちになったクリムはそんな気持ちを紛らわすべく潮風に当たっていた。空に目を向けるとキャモメが群れを作って飛び回っており海面からはサメハダーやマンタインといった海で生活しているポケモンが水飛沫をあげながら泳いでいる。程なくしてセントラルアイランドが近づき生徒達は下船する。船着き場から少し歩くとセントラルアイランドを象徴する建物、セントラルスタジアムが姿を見せる。生徒達の逸る気持ちを理解しつつ苦笑しながら今一度ジンダイは注意事項を説明する。

 

「それでは皆さん、再度になりますがポケフォンのマップに記された範囲からは決して出ないようにしてください、その範囲から出ると今の皆さんでは手に負えないレベルの野生のポケモンが出現します、間違っても変な気は起こさないでくださいね?それと稀に強力なポケモンがこの辺りに迷いこんでくる事もあります、自分の手に負えないと思ったらポケフォンで私に連絡をしてください、それと正午にはここに一度戻ってきてくださいね?それでは皆さん、いってらっしゃい」

 

 ジンダイのその言葉を皮切りに次々と生徒達はその場を去っていく。クリムはツバサ達と合流しタウンマップとにらめっこしていた。

 

「うーんどこから回ろうか?」

 

「私はどこでも良いわよ、フィーリングで捕まえるから」

 

「俺も別にどこでもいいぞ」

 

「ツバサは明確に欲しいタイプが決まってるしまずはひこうタイプが多そうなセントラルマウンテン付近とかで良いんじゃないか?」

 

「それじゃあちょっと遠いけど移動しよっか」

 

 セントラルスタジアムをぐるっと周り一行は北にあるセントラルマウンテン付近のエリアを目指して歩みを進める。しばらくは草原の景色が続き比較的タイプもまとまりがなく様々なポケモン達の姿を目にする。選択肢が多いに越した事はないのだろう、生徒の数も多く見受けられる。そここらしばらく進むとだんだんと景色は草原から砂利道へ変わり辺りは無造作に転がる岩を筆頭に枯れ木や枯れ草等が目立つようになってくる。この辺りからみずタイプやくさタイプの数は一気に減り変わりにいわタイプやじめんタイプのポケモンがちらほらと姿を現しはじめる。

 

「あっ!」

 

 しばらくするとツバサが声を上げる、視線の先には体が屈強な鋼で出来ているひこうタイプのポケモン、エアームドが突き出た岩の上で羽を休めていた。

 

「ほぉ、ツバサのお目当てはアイツか?」

 

「かっこい~!」

 

「ツバサに似合いそうなポケモンだな、最初から決めてたのか?」

 

「エアームドははがねタイプだからひこうタイプの弱点であるいわタイプに相性がいいからね、それに僕の出身地のジョウトのひこうポケモンでもあるし、よし!それじゃいってくるよ!」

 

 相棒であるヤヤコマを肩に乗せ、ツバサはエアームドへと近づいていく。警戒心を剥き出しにするエアームドだがそこは流石ひこうタイプのエキスパートを目指すツバサであり敵意がない事を示し懐へと入っていく。ヤヤコマも加わり熱心にエアームドに話し掛け20分程するとエアームドは頭を垂れツバサがボールを近付けると何の抵抗もなくボールはカチッと音を鳴らす。

 

「エアームド、ゲットだね」

 

「まさかコミュニケーションで捕獲するなんてな、やるなツバサ」

 

 クリムは素直にツバサを賞賛しツバサに感化されたトパーズは自分も真似してみようかと意気込む。

 

「凄い、私もやってみようかな~!」

 

「やめておけトパーズ、お前じゃ失敗するのがオチだ」

 

「あんですって~!」

 

 トパーズがアダマスに食って掛かり二人が少しじゃれた後四人はマップを開き次の目的地を話し合う。この辺りは大分奥の方でありいつの間にか四人は指定エリアギリギリまで来ていたようだ。

 

「アダマスはみずタイプかじめんタイプが欲しいんだよね?それじゃあ湿原エリアまで足を運ぶ?」

 

「いや……湿原エリアはここから遠い、恐らく昼の集合に間に合わなくなるぞ」

 

「うーん、とりあえず戻るか?」

 

「あっ!」

 

 男衆三人で話しているとふいにトパーズが声を上げる、彼女の目に止まったポケモンがいたのだろう。トパーズは一目散にそちらへと向かっていく。クリムが目を凝らすとそこにはホウエン地方で馴染みのあるポケモン、ナックラーがこちらから逃げるように歩いていた、当然トパーズは逃がす気はないらしくナックラーの方へ一目散へと駆け寄っていく。しかしナックラーは指定エリアの外へと向かっておりトパーズはどうやらその事に気付いていないらしい。

 

「かわいい~、待って~!」

 

「バカ!トパーズそっちは!」

 

「トパーズさん、落ち着いてくれ」

 

「おいトパーズ、止まれ!」

 

 三人の制止の声も虚しくトパーズは指定エリア外へと足を踏み入れる、彼女を放っておくわけにはいかないので三人も急いで彼女の元へ向かうとトパーズはナックラーを抱き上げ頬擦りをしている。

 

「やーん可愛い~!あっボール、ボールっと」

 

「ナッ!?」

 

 そうしてトパーズはナックラーの捕獲に成功したようでその場で飛び跳ねる。そんなトパーズの様子にアダマスは怒りを露にしトパーズを叱りつける。

 

「バカ!お前!バカ!」

 

「何よ!アダマス!」

 

「ちょっと二人とも!とにかくすぐに離れないと!何が起こるか分からないよ!」

 

「いや……ツバサ、どうやら遅かったらしいぞ」

 

 クリムは漂ってくる異臭に鼻をつまみつつモンスターボールに手を掛ける。いつの間にかクリム達の周りにはスカンプーの群れが取り囲んでおりノシノシと鈍重な足音を響かせながらスカタンクが現れる。どうやらこの群れの縄張りに侵入してしまったようだ。スカンプー達はクリム達を威嚇しており臨戦態勢だ。

 

「トパーズ、すぐにジンダイ先生に連絡するんだ、ツバサアダマス、時間を稼ぐぞ」

 

 三人は瞬時に状況を理解したのか神妙な面持ちになる。クリム、ツバサ、アダマスの三人はトパーズを囲むようにして立ちはだかる。それと同時にスカタンクが吠えるとスカンプー達が攻撃を始める。

 

「頼むミミ!」

 

「初陣だよエアームド!」

 

「相性は良くないが、蹴散らすぞストライク!」

 

 

 三人のポケモンがそれぞれスカンプーへと向かっていく。どうやらスカンプーとのレベル差はそこまでないらしく、こうげきも全く通用しない訳ではないようだ。ミミはどろかけを中心にスカンプーに的を絞らせないようにして援護に徹しストライクはでんこうせっかやこうそくいどうを駆使して縦横無尽に駆け回る。そしてどく・あくタイプであるスカンプーに絶対的な耐性を持つエアームドがスカンプーの攻撃を受ける。はがねタイプに相応しい堅牢な守りで味方をカバーする。

 

「皆、十分くらいでジンダイ先生来てくれるって、なんとかそれまで堪えて!」

 

「十分くらいなら僕達でも!」

 

「スカンプーくらいなら倒しきれる、やるしかないな」

 

「……いや、まて!様子がおかしいぞ!」

 

 アダマスの声を皮切りに異変が生じる。先程まで活躍していたストライク、エアームドの二匹の動きが明らかに鈍っている。特にストライクは相性だけでは説明がつかない程のダメージを受けており、エアームドも体力を半分以上は削られていた。その事実に四人は途端に焦り出す。

 

「馬鹿な!?まさか……どくか?」

 

「でもそれじゃあボクのエアームドも同様にダメージを負っている説明にならないよ」

 

 クリムも確かにおかしいと思いポケフォンをポケットから取り出し急いでスカンプーをスキャンする。

 

「……どうやら説明がつきそうだぞ、スカンプーのとくせいは二種類ある、一つは現在進行形で俺達を困らせているあくしゅう、そしてもう一つは……」

 

「チッ……ゆうばくか!相性にばかりとらわれていたが確かに厄介なとくせいだ」

 

「種が割れても結構どうしようもないよこれ」

 

「うう……ワタシのせいで……行くわよナッくん!」

 

 トパーズもナックラーを繰り出しツバサはエアームドを戻してヤヤコマで応戦する。しかし程なくしてアダマスのストライクが戦闘不能寸前まで追い込まれ前線をミミが引き継ぐ形となる……しかし……

 

「う、うぅ……」

 

「ミミ、クソ……!」

 

 ミミにアダマスのストライク程の継戦能力はなく程なくしてミミも体力がイエローゾーンを割ろうとしていた。げきりゅうから繰り出すみずでっぽうで善戦はしているがいかんせんみずでっぽうなので威力不足感が否めずジリジリと追い詰められていく。そして前線を張るミミが倒れれば勝機は無くなるに等しい、誰かが固唾を飲んだその時だった。

 

「クレベース、ふぶきです」

 

 突如ふぶきが吹き荒れ一瞬にしてスカンプー達を戦闘不能まで追い込む。ふぶきの中からジンダイが現れスカタンクを睨み付ける。

 

「あなたも群れを率いているのなら力の差が分からないよ訳ではないでしょう、ワタシからこれ以上危害を加えるつもりあありません……しかしこれ以上やるというのなら……!」

 

 ジンダイが更に凄むとスカタンクはスカンプー達を引き連れて奥の方へと逃げていく。その姿を見たジンダイはスーツのネクタイを緩めて一息吐く。

 

「ふぅ……物わかりの良いポケモンで助かりましたね……さて四人とも、ここは指定エリアの外ですがこれはいったいどういう事ですかな?」

 

 ジンダイがくるりと四人の方を向くと思わず肩が跳ねる、普段の温厚そうな表情は変わらないがそれでも確かな怒りを四人はジンダイから感じた。

 

「うっ……すみません、先生、私がこの子を捕まえようと躍起になって……三人は止めたのに私が耳を貸さないでエリアの外に出てしまったんです……すみませんでした」

 

 トパーズがバツの悪そうにジンダイに頭を下げるがすかさずクリムはフォローに入る。

 

「いえ、彼女一人の責任ではありません、自分達も相談事に夢中になり彼女を強く止める事が出来ませんでした」

 

「クリムの言うとおりです、僕達全員の責任です、すみませんでした」

 

 トパーズに倣い三人もジンダイに頭を下げて謝罪を行う。ジンダイはそんな四人を見てやれやれといった表情をし、懐から煙草を取り出して火を点ける。

 

「まぁ今回は本当にアクシデントみたいでしたしそこまで咎めるつもりはありませんよ、実を言うと君達だけではありませんしね、ただし二回目はありませんよ?」

 

「「「「はい!」」」」

 

「よろしい、それでは気持ちを切り替えて仲間探しを続けてください」

 

 そう言葉を残すとジンダイはクレベースをボールに戻し、変わりにアーマーガアを繰り出しその背中に乗り去っていった。四人は急いで指定外エリアから抜け出し手頃な岩に腰掛けて休憩をする。

 

「本当にごめんなさい、私のせいで皆に迷惑かけちゃって……」

 

 トパーズは伏し目がちに口を開く。普段の勝ち気な彼女からは想像がつかない程落ち込んでおりどうやら重症のようだ。クリムとツバサが言葉に詰まっているとアダマスが口火を切る。

 

「俺も同じ状況ならお前と同じ行動をとっていたかもしれん、それに先生も切り替えろと言っていたんだ、いつまでもウジウジとするなトパーズ、こっちの調子が狂うぞ」

 

 一見辛辣に聞こえるが彼なりの励ましの言葉なのだろう、トパーズはうん、うんと頷き涙を流す。流石幼なじみなのだろう、トパーズはしばらくすると泣き止みいつもの調子を取り戻す。

 

「さて、これから別のエリアを回るのは厳しそうだけど、クリムとアダマスはここら辺で気になるポケモンはいた?」

 

 ツバサに話を振られるが二人は首を横に振り否定する。ツバサの言ったとおり別のエリアを回るのは時間的に厳しいため一行はセントラルスタジアムへと戻る事にする。セントラルスタジアムへ戻りジンダイに報告をして持参した昼食を食べ午後の探索の準備を進める。

 

「ツバサ、トパーズ、お前等は残れ」

 

「えっ……なんでよ?」

 

 アダマスの言葉にトパーズは首を傾げるがクリムもアダマスの言葉に同意する。

 

「確かに、折角仲間が増えたんだ、新しい仲間と交流する時間も大切だろう」

 

「うーん、確かに一理あるね、それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

「迷うけど確かにそうよね、わかったそうするわ」

 

 という事で午後の探索はクリムとアダマスの二人で行う事になった。ショルダーバッグを担ぎ二人に見送られながらセントラルスタジアムを後にするとふいにアダマスからお礼を言われる。

 

「すまんなクリム、あれでまだトパーズのやつ引きずってるからな、無理矢理にでも置いてきて落ち着かせたかったんだ」

 

「そうなのか、流石幼なじみ良く見てるな」

 

「別にただの腐れ縁さ」

 

 そんな軽口を言い合いながら二人は午前とは真反対の海岸沿いの外れにある湿原エリアを目指して歩みを進める。

 

「そういえばクリムの言っていた憧れの一人って誰なんだ?別に言いたくなければいいんだが……」

 

「うっ……いや別にそういう訳じゃないんだけど、恥ずかしいながら俺は図鑑所有者のルビーさんに憧れててな」

 

 図鑑所有者、それは記憶に新しい伝説のポケモンの復活、様々な悪の組織の野望を打ち砕き各地方を救ったとされる伝説のトレーナー達、そんな彼等に憧れるというのは別に恥ずかしい話ではないのだがクリムは少し照れ臭そうにしている。

 

「なんだ別に普通じゃないか、勿体ぶるから俺はてっきりロケット団のボスのサカキとか言うのかと思ってたぞ」

 

「いやいや、トレーナーを目指す人間がロケット団の首領に憧れちゃ不味いだろ」

 

「それもそうか……そろっと着く頃か」

 

 アダマスの言うとおり、湿原エリアに近付いてきた事を裏づけるように草木は生い茂り地面も段々とぬかるんでくる。ひとまず二人はこの辺りを見て回る事にした。

 

「お、ウパーだ、アダマスの希望通りのポケモンじゃないか?」

 

「確かにそうなんだが……いた、カラナクシだ」

 

 アダマスが指を指した方向に目を向けると軟体生物のようなポケモンが見える。クリムは図鑑アプリを起動しカラナクシへと向ける。

 

「へぇ、住んでる地域によって姿が変わるポケモンなのか……でもいいのか、みず単体のタイプみたいだが」

 

「お前のミズゴロウと一緒さ、進化するとじめんタイプが追加されるんだ、それでは行ってくる」

 

 そう言い残しアダマスはストライクを引き連れてカラナクシへと近付いていく。明らかに戦う気まんまんのアダマスを前にいくら温厚なポケモンが揃うと言われているこのエリアでもカラナクシは戦闘態勢に移行する。それを見たアダマスは口角をニヤリと吊り上げる。

 

「いいな、俺好みの性格だ……いけ!ストライク!」

 

 ツバサが対話、トパーズは好意のアピール、そしてアダマスは戦闘がポケモンとの距離の詰めかたなのだろう。ストライクはアダマスの指示通り、的確なポジショニングから優位に戦闘を進めているがカラナクシにもこれまで野生で生きていた意地というものがあるのだろう、ストライクの攻撃を受けてもなお闘志を瞳に宿し反撃をしている。そんなカラナクシをますますアダマスは気に入ったようで決着の時を待ちながらその手には空のモンスターボールが握られていた。そして決着の時は来る、ここまでよく粘っていたカラナクシだったが遂にガクリと力なく首を垂らす、しかしその目はまだ諦めないという意志が爛々と光って現れていた。

 

「俺のストライク相手にここまで粘るとは、予想以上だ、どうだお前俺と一緒に上を目指さないか?」

 

 そう言ってアダマスはカラナクシの前にボールを差し出す。最初は顔を背け拒否の意志を示すカラナクシだったがやがて観念したかのように自らボールへと入っていく。

 

「よし、カラナクシ……捕獲完了だ」

 

 アダマスは満足そうにカラナクシの入ったモンスターボールを見つめる。その様子をみたクリムはアダマスに近付いていく。

 

「おめでとうアダマス、どうする?アダマスも新しい手持ちと親交を深めるために一足先に戻るか?」

 

「いや、そこまで薄情じゃないさ……それにお前の新しい仲間になるポケモンが気にならない訳ではないからな」

 

「そっか、それじゃあもう少し付き合ってくれ」

 

 クリム自身特に目的地を決めておらずただセントラルアイランドの景色を見ながらのんびりと歩みを進める。途中ちらほらとポケモンを見つけるがいまいちクリムの心に響くポケモンは現れず……そろそろ帰りの時間も視野に入れて動かなければいけない、そう思っていた時だった。どのエリアにも分類されない舗装された道を歩いていると道脇の草むらから突然ひのこがクリムを襲う。

 

「何だ!?」

 

「あわわ、マスター!」

 

 クリムを守るためミミがモンスターボールから出て来て周囲を警戒する。頭部のヒレをレーダーにしてピョコピョコと動かし襲撃者の居場所を特定しみずでっぽうを発射する。

 

「そこです!」

 

「きゃわっ!?」

 

 ひのこを放った来たという事は十中八九ほのおタイプのポケモンなのでミミのみずでっぽうを嫌ったのだろう、当たってはいないもののひのこを放ったポケモンの正体が姿を現す。

 

「……?なんの萌えもんなんだ……?」

 

「……デルビルのようだな、図鑑アプリでスキャンしたから間違いないだろう」

 

 クリムは改めて萌えもん種のデルビルを見つめる、デルビルはそれが気にくわないようで威嚇しておりこの辺りには気性の穏やかなポケモンしか住んでいないとジンダイは言っていたのでこの敵意はどこからくるのだろうと思いデルビルに話し掛ける。

 

「あの……なんでそんなに俺の事を親の仇みたいな目で見つめるんだ?」

 

「黙りなさい!アンタ、萌えもんなんて連れて……どうせえ、エッチな事をするつもりなんでしょ!」

 

 確かに萌えもんに対しそういった欲望を抱えるトレーナーは少なくはないかもしれないが初対面でいきなり言われるのはクリムとしても心外だ。ミミも自分のトレーナーがいきなり貶されるのは心外だったのだろうか、デルビルに負けないよう威嚇するように姿勢を低くし臨戦態勢をとっている。自分はミミを助けるつもりだったデルビルからすればクリムを守るように立ちはだかるミミの姿は到底受け入れられるものではなかったのだろう、戸惑いを隠せないようだった。

 

「な、なによ!私がせっかく!もういいわよ!」

 

 

 ミミの気迫に圧されたようにデルビルは後退りをしてその場から去ろうとする。その瞬間ミミの頭部のヒレが激しく揺れ動いた、

 

「マスター!危ない!」

 

 ミミの言葉と共に草むらから巨大な影がデルビルとミミの間に踊り出る。ミミの言葉もあり瞬時に戦闘態勢に移行するクリムとアダマス。デルビルはなにが起きたのかすぐには理解が追いつかないようで目をぱちくりとさせていた。草むらから飛び出したポケモンの正体はニドリーノだった、しかし明らかに様子がおかしい、デルビルが放っていたのが怒気だったとするとニドリーノが発しているのは明確な殺気であり暴れるように手当たり次第に周りを攻撃している。これは流石にまずいと思ったクリムはポケフォンに手を伸ばすがその攻撃対象がデルビルに向かった時体が勝手に動いていた。

 

「ッ!」

 

 瞬間、鋭い痛みがクリムの右腕に走る。チラリと眼球だけ動かし確認すると鋭い傷がクリムの上腕には出来ており鮮血がドクドクと流れ出ている。不幸中の幸いは骨が見えていないので見た目程重症ではないことだろう。

 

「あ、アンタ!バカじゃないの!?」

 

 自分がクリムに庇われた、その事実に気付いたらデルビルは咄嗟に抗議の声を上げる。まさか自分が憎んでいたトレーナーという存在に庇われるとは夢にも思っていなかったのだろう。口調は強いが声色には明らかに戸惑いが混じっていた。

 

 

「何でもなにも……仕方ないだろ、咄嗟だったんだ……それよりこの状況を何とか切り抜ける方法を考えないとまずいぞ……」

 

 そうクリムがいうとまるで逃がさないと言わんばかりにニドリーノは前足を踏み出し角を付き出してくる。クリムは嫌な汗が背中をツーと流れるのを感じながら、この窮地を脱する方法を必死に考えるのだった。

 

 

 

  

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