ポケットもんすたぁアカデミアSPECIAL   作:ネオニューンゴ

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 ポケットもんすたぁアカデミアSPECIALを読んで頂きありがとうございます。6話にしてクリムとあの人の対決です。戦闘描写が中々難しい、楽しんで読んで頂けると嬉しいです。


第6話 VSライバル

 クリムが新たなる仲間、デルビルのスカーレットを仲間にしてから翌日の教室にて、クリムは講義の準備をしつつクラスの様子を眺めていた。やはり自分の新しい仲間の事で話題はもちきりでトパーズはナックラーをクラス中に見せて回っている姿が微笑ましい。新たな仲間ではないがクリムのミミと同じくツバサもどうやら相棒のヤヤコマを進化させたようで朝食の際にはバトルで披露するのが楽しみだと溢していた。自分達以外にも進化の早いポケモンを既に進化させている生徒は何人かいるようでそういった話題もちらほらと聞かれる。そんな中クリムが考えていた事は昨日のスカンプーの群れとの戦い、そしてニドリーノとの戦いだった。スカンプー達との戦いでは他の仲間に遅れをとり(勿論タイプ相性もあるのだが)ニドリーノとの戦いでは常に綱渡りをしているような感覚で薄氷の上の勝利だった事に違いはないだろう。ミミが有利なわざを覚えてくれていなければ敗北は必死だった、もし自分が有利に立ち回れるようしっかりとした指示を出していればもう少し楽に勝てたのではないか?そう思わずにはいられない。そんな事を考えていられるのも束の間ジンダイが教室に現れ講義が始まる。

 

「ハイおはよう、昨日はよく眠れたかな?新しい仲間が増えて学ぶ事がどんどん増えていくよ、今日はきのみの話をしようか、きのみはバトルの持ち物として、そしてコンテストのコンディションを高めるポロック、ポフィンの原料としてとても重要になってくるよ、今日はどちらの観点も話していくからよーく聞いてね」

 

 講義はコンテストとしてのきのみの重要性を最初に話し、次にもちものとしてのきのみの話になりクリムはより一層注意をむける。もちものとしてのきのみは様々な効果が発揮される。共通するのは消費型のアイテムであり、条件を満たすと自動で使用される事。効果は様々で体力を回復、状態異常を回復するものがオーソドックスだがその他にもステータスを上昇させる、特定のタイプのこうかばつぐんのわざを受けた際に威力を半減する、変わり種で言えば相手にダメージを与える、わざの優先度を上げる等バトルを奥深くさせる一員となっている。そしてこういった内容の講義が行われるという事はバトルにおいてもちものが解禁される事を予測させる。きのみの話が終わると一時間目の講義が終了となり小休憩の時間となる。次はトレーナー志望とブリーダー志望の生徒が別れての講義のためクリムは教室を移動する準備を行う。選択講義ではないが最近はこういった形で自分の進路に合わせて授業が別れるといった事も多くなってきている。他校の生徒達はどれくらい進んでいるのだろうか、と気になるが講義に遅れては元も子もない、教科書とノート、筆記用具を持ち席を立つとアダマスとツバサがクリムの元へとやってくる。

 

「やっクリム、一緒に行こうよ」

 

「先程の講義はためになったな、トレーナーとして考える事が増える、次の講義は実践か、座学か……どちらにしても面白くなりそうだ」

 

「確かに、早く新しい仲間をバトルで試したい気持ちもあるけど、もちものの幅が増えるっていうのも面白いよな、ツバサもどの手持ちにどのきのみを持たせるとか悩むんじゃないか?」

 

 三人は移動しながら……といっても教室までは僅かな距離なのですぐについてはしまうのだが雑談をしながら次の講義の開始を待つ。程なくして予鈴が鳴り先程に続きジンダイが教壇へと上がり講義が始まる。

 

「さてトレーナー志望の皆さん、講義に入る前に少しだけ雑談をさせて頂きますよ、おっと早く新しい手持ちを試したいと目を光らせていますね、そこは安心して下さい、午後の講義はお待ちかねの実戦ですので……さて、皆さん他の学園の生徒の進捗状況等気になるでしょうのでここで軽く触れておきましょう一番気になるのはノーススクールでしょうね、トレーナー科は去年もあそこが一番でしたからねぇ、恐らくあそこは既に生徒の手持ちは四体程となっているでしょう、とにかくいち早く手持ちを揃えひたすらバトルを繰り返しているのでしょうね」

 

(四体……俺たちの倍の数手持ちを持っているのか)

 

 こうしてジンダイの口から他校の話を聞くと改めて学園によって特色があるんだなと感心する。ノース校はとにかくバトルを繰り返し座学は少なめ、実戦の中でこそ糧になるものがあるを信条としいるらしい。今後対外試合で当たる際は強敵となって立ち塞がる事を予感させる。

 

「続いてサウス校、ここはもうみっちり座学です、恐らくバトルは週1日、どこかの講義の時間でしてるだけでしょうね……手持ちの数は皆さんと同じく二体程でしょうか?しかしここバトルの理論をみっちり叩き込んでから自分の戦い方、それにあったPTにすべきポケモンの特徴を洗い出してから手持ちを増やしていくというスタンスですのでもう少ししたら一気に手持ちが増えるでしょうね、ウェスト校は……正直読めません、本当にあそこはカリキュラムという物が存在しないので……この前は島外合宿と称して2日間セントラルエリアでキャンプをしていたそうですしねぇ、ただ昨年は現在エデンの学生の中で最強とうたわれるノース校のテンザン君に唯一土をつけたルイス君もいますしねぇ、読めないというかムラがあるというか……ウチのアカバネ君もエリス君には辛酸を舐めさせられましたし……とにかく色々な意味で規格外な学園です」

 

 アカバネが土を付けられたという点でクリムは思わず眉をぴくりと上げる。確かルイスというトレーナーはアダマスがこのエデンで最強のトレーナーは誰か?という質問で名前が上がっていたトレーナーだ。この学園で1学年というのは覆しがたいアドバンテージだと思っていたクリムはそれを覆す生徒の存在に素直に感嘆する。それと同時に自分も一学年上の先輩トレーナーと戦える機会があるならばそれを掴みたい、無論それには先輩を押し退けて自分が選出される、圧倒的な成績を叩き出す必要があるのだろうが、それはそれ、クリムは密かに闘志を燃やしていた。

 

「おっと話が脱線し過ぎましたね、ゴホン、それでは講義に入っていきます、今回はきのみ以外のもちものについて話していきましょうか、オーソドックスな所でいけばジュエルでしょうかね、ジュエルは消費型の持ち物で持たせたポケモン、萌えもんがそのタイプの技を使用した時に効果を発揮します、効果は対応したタイプの技を繰り出した時に威力が1.5倍になります、シンプルに使いやすいですが注意点としては対応した技を繰り出せば自動的に消費されるという点ですね、たとえ相手に効果がなかったとしても消費されるので無駄撃ちのリスクは十分あります、次に恐らくパーティーでこれを持たせない事はないといっても過言でないもちもの、きあいのタスキですかね、これはとくせいがんじょうと効果が一緒で体力が満タンなら確実に1度攻撃を耐えます、耐久力のない高火力アタッカーに使用されます、対策としはまきびしやステルスロック等の設置技、天候によるスリップダメージ、また状態異常によるダメージ等ですかねぇ、設置わざ持ちのポケモンや萌えもんがパーティーで多用される一因ともなっています、弱点が多いタイプにも有効ですね」

 

 クリムの手持ちで言えば現在はデルビルのスカーレットが該当するだろう、苦手なタイプが多く耐久力も高くはないため有効と言えるだろう。

 

「後はそうですねぇ、たつじんのおびとかもシンプルに強いですね、こうかばつぐんのわざの威力が1.2倍になります、技のタイプが多彩な器用なアタッカーに持たせたりしますね、っとと忘れていましたがポケモンバトルは競技の側面が強いので当然禁止されている持ち物もあります、とつげきチョッキ、しんかのきせき、じゃくてんほけんの三つになりますね、これらのもちものは競技制を大きく狂わせるとポケモン協会が判断していますので注意しましょう、メガシンカ、ダイマックスも大会のレギュレーションによっては禁止となっているので注意が必要ですよ、さて午後からは簡単な持ち物を解禁して2VS2のバトルをしてみましょうか組み合わせは昼休憩にポケフォンに通知を送りますので、少し早いですが以上で講義を終了します、残りの時間はバトルに備えて持ち物を考える時間としましょうか」

 

(強力過ぎるもちものはバトルを狂わせるって事か、しかし本当に今日だけで考える事が増えたなぁ……あとで売店覗いてみよう)

 

 ジンダイが教室を後にすると多くの生徒達は一斉に席を立ち教室を去っていく、恐らくいち早く持ち物を購入しようとしているのだろう。そんな中クリムは教室に残り教科書を開きながら購入する予定の持ち物を吟味する。PPも有限なのだからなるべく無駄遣いはしたくない。

 

「うーん、腐りにくいのはやっぱりオボンのみ?状態異常を回復するラムのみも捨てがたい……でも今後の事を考えるとたつじんのおびやきあいのはちまちきも捨てがたいなぁ、スカーレットは割とわざのタイプの幅が広いしたつじんのおびの方が活きるか?いや、それともジュエルの方が素直に使いやすい?」

 

「あはは、相変わらずクリムは熱心だねぇ」

 

 クリムが教科書とにらめっこしながらブツブツと独り言を呟いていると呆れ半分感心半分といった感じでツバサが話し掛けてくる。

 

「む……そういうツバサもまだ教科書を開いてるじゃないか」

 

「おっとこれはお恥ずかしいね、僕も中々決まらなくてね、本当は半減きのみとかの方が効果的だとは思うんだけど流石に2vs2でそこをケアするなら攻撃にリソースを割いた方がいい気もするし……」

 

「ここで考えても仕方ないだろう、休憩時間は限られてるんだ昼御飯を食べながらにしよう」

 

 アダマスの言葉に確かにそうだと二人は同意し三人は食堂へと向かう。食堂の中を覗くといつも賑やかな筈の喧騒は聞こえず、同級生達の姿はなく席の埋まり具合もまばらだ。同級生の大半はまだ売店にいるのだろうし先輩達は講義中という事だろう、三人は食券を購入し空いている食堂という珍しいシチュエーションの中で三人は食事にありつく。ご飯を食べながら難しい顔をしているクリムとツバサ、目の前の飯よりこの後のバトルに意識が行きがちで箸の進みは遅い。

 

「お前ら……そんなに迷うのか?いや、ツバサはまだ分からなくもないが、クリムはそんなに難しく考えないで素直に思いついたのでもいいんじゃないか?」

 

「その口振りだとアダマスはもう決まってる感じが」

 

「あぁ、といってもこれから戦うかもしれん相手に易々とは言えんが」

 

「む、それはそうだね、そっか僕達が戦う可能性もあるんだもんね」

 

「とはいえ2vs2だ、まだまだタイプ相性を覆すというのも難しいだろう、本格的になるのは3vs3……いや4vs4からか?とはいっても負ける気はサラサラないが……強い奴はこの時点である程度結果を残すだろうし、俺もそうありたいと思っている……勿論コイツらもな」

 

 そう言ってアダマスは自分のボールの中のポケモンを指差す。それに答えるようにストライクとカラナクシも気合いが入っていると答えるがそれはクリムとツバサも同じ、言葉には出さないが今日のバトルも勿論勝つつもりで挑む。クリムがそっと視線をボールに移すとミミもスカーレットも握り拳を作りクリムに答えるようサムズアップしている。そのタイミングで制服のポケットポケフォンが震える。そこに記されていたクリムの対戦相手の名前は……ツバサ、はっと横を見るとツバサと目が合いそこから一触即発……とはならず好戦的な笑みをお互い送り合う。

 

「成る程な……そういう組み合わせか……、それなら昼飯を食べたら各々作戦会議といこう」

 

「うん、それがいいね、負けないよクリム」

 

「あぁ……俺もだ、全力でいくよ」

 

 そこから昼食を食べ終え三人は食堂を後にすると各々別れる。クリムは売店へと赴きオボンのみ、ラムのみ、たつじんのおび、きあいのはちまちきを購入しバトルフィールドで自分の手持ち達と作戦会議に臨んでいた。ボールからミミとスカーレットを出すが二人の様子は対照的だ。ミミはヒレをぶるぶると震わせ自信がなさそうにしているのに対しスカーレットは勝ち気な瞳に闘志を灯し早くバトルをさせろと言わんばかりに拳を握っている。

 

「あわわ、ツバサさんと戦うんですね……という事はヤヤコマさんとエアームドさんと戦うんだ……ぶるっ」

 

「ちょっと!戦う前からそんな弱気じゃ勝てるものも勝てないわよ!」

 

「二人ともとりあえず落ち着け、まずは情報を整理しよう、ツバサの手持ちは昨日捕まえたエアームドとヤヤコマの進化したポケモン、どちらも共通しているのはひこうタイプという事だ。」

 

「ならエアームドはアタシの方が相性的には有利ね、フフン♪」

 

 そうスカーレットははがね、ひこうタイプのエアームドに対して有効なほのおタイプのわざ、そしてヤヤコマの進化形態、タイプは不明だがまさかどちらもはがね、ひこうタイプとは考えづらいためかみなりのきばという有効技を持ち合わせている。つまり今回の戦いのキーマンとなるのはスカーレット、彼女がどれだけ二体に対して戦えるかに焦点が当たる。

 

「ほっ……それなら私の出番はなさそうですね」

 

「アタシがどっちも倒せば完璧ね!」

 

「そういう訳にもいかないだろう、スカーレットはミミ程打たれ強いわけじゃあない、かといって先手を取れるかと言えば難しいかもしれない、何より相手は常に空を飛んでいるんだ、スカーレットの消耗は避けられない、必ずミミの力も必要になる」

 

 そしてクリムは口には出さないがもうひとつ懸念していることがある。それはエアームドの耐久力だ。はがねタイプは耐久力に優れているポケモンが多い、ならエアームドもその例に漏れない筈。少なくとも物理に対しては高い耐性があると予想されるため安易な物理わざではエアームドは倒せない。今度こそ自分が納得する指示を出し二人を勝たせてみせると静かにクリムは自分に言い聞かせる。ニドリーノ戦のような自分の仲間に負担を強いる戦い方はしたくない。それから二人と話し合った結果、スカーレットは有効打が多いが威力は心もとない。少しでも火力を補強するためにこだわりのはちまきを、ミミは打たれ強さと継戦能力を上げるためオボンのみをもちものと持つ事に決まる。丁度作戦会議が終わったタイミングで予鈴が鳴り午後の講義……つまりバトルへと移る。ジンダイに呼ばれた組はバトルフィールドの中へと入っていきそして……

 

「ではクリム君、ツバサ君、3番フィールドへ」

 

 自分達は先発組のようで指示された通りフィールドへ、アダマスはどうやら後発組のようでフィールドの外からこちらをじっと見ている。クリムは所定の位置へつくと視線はまっすぐツバサへ、お互いの手には既にモンスターボールが握られている。バトル前特有の緊張感がフィールドを支配し、生徒達はジンダイの開始の合図を今か今かと待ち望む。

 

「ツバサ、いい勝負をしよう」

 

「うん、親友でありライバルであるキミを倒して僕は羽ばたくよ!」

 

「バトル……開始!」

 

「頼むぞスカーレット」

 

「羽ばたこう!エアームド!」

 

 

 ジンダイの合図と共にお互いのポケモンがフィールドへ躍り出る。対面するのはエアームド、鋭い眼光を光らせ鋼の翼で風を切り裂きながらスカーレットを

へと向かってくる。

 

「挨拶変わりだ!みだれづき!」

 

「スカーレット、エアームドを近づけるなひのこで牽制しろ」

 

 鋼鉄の翼を翻し接近戦に持ちもうとするツバサに対しクリムはひのこで牽制し相手の得意な間合いに入れないようスカーレットへ指示をする。ツバサはエアームドにほのおわざを当てられるのを嫌い一度離れるようエアームドに指示をする。ファーストコンタクトはお互いのわざが当たっていないため引き分けといった所か、ツバサは一気に決着をつけたかったようで歯噛みをする。

 

「くっ……こうそくいどうだ!」

 

「集中力を切らすなよ、ひのこ、ためて……今だ、もう一度」

 

 

「ええ!任せなさい!そこよ!」

 

 わざの名前通りこうそくでジグザグに接近してくるエアームドに対してクリムは再度ひのこを指示、徹底的にエアームドを近づけない。いくら相手が高速で移動してきてもエアームドにダメージを負わせたくないツバサはまだ回避に比重を置いているため被弾こそしないもののこのままでは埒が空かない、とツバサは思いきった手を打つ。

 

「くっ!リスクはある程度背負わなきゃ勝てないか、エアームド、もう一度こうそいどう!」

 

「⋯⋯スカーレット!」

 

 スカーレットのひのこを受けながら最短距離で突っ込んできたエアームドはクリムの声が届く時には既にスカーレットと目と鼻の先の距離、しめたと言わんばかりにツバサは声を張り上げる。

 

「つつく!」

 

 エアームドの鋭利なくちばしがスカーレットを強襲する。スピードの乗った攻撃の威力に耐えるようにスカーレットは歯を食い縛るが体力を大きく削る。クリムの見立てではスカーレットの体力はレッドゾーンに近いイエローゾーン、対するエアームドはイエローゾーンに近いグリーンゾーンといった所だろうか、どちらにせよスカーレットに次の攻撃を耐える術はなさそうだ。

 

「よし!いいよ!エアームド!次でフィニッシュだ!」

 

「エアー!」

 

 ツバサの歓喜の言葉に答えるようにエアームドは鳴き、追撃を入れるためスカーレットの上空をぐるぐると旋回しその機会を伺っている。対するスカーレットもクリムの指示に答えられるようすぐに臨戦態勢をとるが足は小刻みにぷるぷると震えていた。スカーレットの奮闘に応えるべく、クリムは神経を上空のエアームドへ集中させる。

 

(焦るなクリム、スカーレットはまだやれる、勝負は一瞬だ、エアームドの動きをよく見るんだ……3,2,1……今だ)

 

「ほのおのうず」

「!構わない、とどめのみだれづき!」

 

「今ね!ハァァァァァ!」

 

 エアームドの動くタイミングをみきられた事にツバサは動揺を隠せない、クリムはここしかない、というタイミングでほのおのうずを指示する。灼熱の炎の渦がスカーレットの周りに展開されそれは牢獄となりツバサのエアームドを完全に閉じ込める事に成功する。

 

「そんな!?エアームド!」

 

 追い詰めていたのはこちらの筈なのに、ツバサの頭の中はその言葉に支配され冷静さを失わせる。対するクリムは小さくガッツポーズを作る。理想の流れは遠距離でエアームドを封殺する事だったがそれは難しいと考えていたクリムはあえて序盤は遠距離攻撃を多用しいかにもインファイトに持ち込まれたらキツイといった風にツバサに思わせるよう指示を出していた。しかし本命は超至近距離で確実にエアームドをこの炎の牢獄に閉じ込める事だった。そしてそれにはもうひとつ狙いがある、それは……

 

「この状態じゃオボンのみが食べられない……!」

 

(やはりもちものはオボンか……ラムのみという可能性も考えていたがどちらにせよ問題はない)

 

 炎に焼かれるエアームドはとてもじゃないがこんな状況できのみを食べられる訳がない。出来ることはほのおのうずから逃れようと必死にもがく事のみ。だがそれも次第に動きが小さくなりやがて目を回しながら墜落するエアームド、そんなエアームドをツバサは労いながらボールへと戻す。

 

「お疲れ様、頑張ってくれてありがとうエアームド」

 

「まずは一匹!次!来なさい!」

 

「よくやってくれたスカーレット」

 

「当然!」

 

 残りの体力は多くないが自分が相手を倒した事でスカーレットは自信を満ち溢れさせクリムの言葉に力強く応える。だが次のツバサのポケモンは彼の相棒の進化形態、一筋縄では勝たせてくれない事を予感させるには十分だ。

 

「二枚抜き、やれるよね!ヒノコヤマ!」

 

「ヤマ!」

 

「それがツバサの相棒の進化した姿か」

 

 ツバサが次に繰り出したのはヤヤコマの進化形態ヒノコヤマ、ヤヤコマはツバサの肩に乗るサイズだったがヒノコヤマは体もスケールアップしている。しかしクリムが気になったのはヒノコヤマという名前、それに体の色はオレンジとくればタイプはひこうに加えほのおである事が容易に想像出来る。ならばほのおわざの効果を低いと言わざるを得ないだろう。それにスカーレットの残りの体力を考えるとどんな技でも一撃で落とされる、そしてそういった時に使ってくる技にクリムは心当たりがある。

 

「ヒノコヤマ!でんこうせっか!」

 

「やはりきたか⋯⋯スカーレット、フェイントだ」

 

 クリムはヒノコヤマのタイプから恐らくは高火力、高速の低耐久のアタッカータイプのポケモンだと予想し確実にダメージを与えにいく。確かにでんこうせっかは速いがわざとしてはフェイントの方が早い。スカーレットは弾丸となったヒノコヤマのこうげきをくらいながらもダメージを与えた事を確認すると膝を折る。

 

「最後の仕事……やってのけたわよ……」

 

「いい仕事だったスカーレット、ゆっくり休んでくれ」

 

 クリムは戦闘続行不可能となったスカーレットを労いながらボールへ戻す。そして自身の相棒を鼓舞しながらボールをフィールドに向かって投げる。

 

「最後、押しきるぞミミ」

 

「ハイ!スカーレットさんが頑張ってくれたんです、私も!」

 

 スカーレットの闘志がボールの中でも伝わってきていたのかミミもクリムの言葉に力強く答える。戦う前は怯えていたが今は戦うという気持ちを前面に押し出しておりその背中は頼もしく見える。対するツバサは落ち着きを取り戻しスカーレットのこうげきに対して反応はない、腹を括ったのか、その沈黙が余裕から来るのか、はたまた自身の劣勢を相手に伝わらないようにするためのブラフかはクリムには分からない、だが……

 

「これで互いに最後の手持ち、勝たせてもらうぞツバサ……!」

 

「残念だけど勝利は僕達が貰うよ、ヒノコヤマ!アクロバット!」

 

 確かな事はお互いが自分の相棒を信頼しているという事。そしてクリムとツバサの、ミミとヒノコヤマの戦いの火蓋は切って落とされる。先手を取ったのはヒノコヤマ、テクニカルな動きから繰り出される攻撃は淡い空色の輝きを放ちながらミミへと直撃する。

 

「うぅ……まだ!備えはあります!」

 

 ミミは持っていたオボンを口の中に入れ態勢を整え直すが一撃でオボンの発動圏内まで体力が削られた事実にクリムはピクリと眉を動かす。

 

「一撃でこの威力……ひこうのジュエルか」

 

「アクロバットとは相性がいいからね!とはいえ流石に一撃とはいかないか、流石進化しただけあるね!」

 

「そちらもな、今度はこっちからいくぞ、ミミ、みずでっぽう」

 

「こうそくいどうだ!」

 

 ミミは水の弾をヒノコヤマに向け放つがツバサはこうそくいどうを指示してみずでっぽうを当たらないよう指示をする。ミミも懸命にヒノコヤマの動きを予測してみずでっぽうを撃ち出すがその予測を越える動きの俊敏さでヒノコヤマはみずでっぽうの射程距離から離れていく。クリムはツバサの指示とヒノコヤマの動き方を見て自分の仮説、ほのおタイプである、耐久力が低いのどちらか、もしくはどちらも当てはまっていると確信を抱く。そうでなければエアームドの時のように強引に突破する手を打ってきてもおかしくはない筈だがその様子は見受けられない。しかしミミの体力もオボンで回復したとはいえイエローゾーンに近い筈、つまりこの勝負は先にわざを当てた方が勝つと言える。

 

(そうなってくると不利なのはすばさやが劣るミミ……いや弱気になるな……いや、本当にそうか……?落ち着け……あえて攻めさせてその隙を突ければ勝機はある、いくぞ)

 

「ミミ⋯⋯攻めるぞ、上空に向けてアイスボール!続けてマッドショットでアイスボールを砕け」

 

 ミミは自分の放ったた氷の玉をマッドショットで砕き一時的に視界を塞ぐ事に成功する。だがそれで怯むツバサではない。

 

「いくらヒノコヤマの耐久に不安があるからってこの程度!こうすれば!ニトロチャージ!」

 

「ノコォォォ!」

 

 全身に炎を纏わせながらヒノコヤマは突っ込んでくる。だがヒノコヤマの周りの氷は炎の熱で蒸発し水蒸気となって空気に霧散する……つまりヒノコヤマの位置の特定はクリムでも容易に出来るということ。

 

「右方向だ、たいあたり!」

 

「はい!」

 

 ニトロチャージとたいあたり、通常であればこのふたつのわざがぶつかり合った時に有利な方はニトロチャージだろう。ツバサもクリムの指示を聞いた時は力押しの勝負に出たと判断したそこでヒノコヤマのある異変に気付く。ニトロチャージの炎の勢いが弱まっており想定より威力が出ておらず拮抗していたのだ。

 

「ほのおの勢いが弱まっている!?だめだ!ヒノコヤマ!」

 

「押しきれるぞ、みずでっぽう!」

 

 序盤のアクロバットと先程のニトロチャージ、げきりゅうの発動圏内の体力である事はクリムの計算通り、勢いを増したみずでっぽうがヒノコヤマに直撃しヒノコヤマは力なく体を空中から落下させる。

 

「くっ……お疲れ様ヒノコヤマ、ナイスファイトだったよ」

 

「そこまで、勝者クリム!」

 

「よし⋯⋯!やったな、ミミ」

 

「はい!やりましたね!マスター!」

 

 クリムはミミとハイタッチを交わし勝利を噛み締める。島に来た時から行動を共にしていたツバサという存在、ジムリーダーを志す彼が弱い筈がない、そう改めて実感させられる試合だった。気づけばクリムのジャージの下のTシャツは汗ばんでおり額からは玉の汗が流れ落ちている、そんな事も気付かない位緊迫したバトルだった。クリムはツバサの方へ歩みより無言で手を差し出す。ツバサはそれに応え両者は固い握手を交わす。

 

「やられたよ、アイスボールを砕いて視界を奪う事が狙いだと思ったけど本命はマッドショットの泥をヒノコヤマに付着させることだったんだね、ダメージはないだろうとそのまま攻めちゃったよ」

 

「あぁ、それでニトロチャージの勢いが弱まった」

 

「悔しいなぁ……でも次は負けないよ!僕達は今日から本当の意味でライバルだ!」

 

「そうだな、だが次も勝つのは俺だ!」

 

 

 二人はフィールドを後にし観客席へと戻るとアダマスが目をギラつかせて待っていた。

 

「いいバトルだった、二人ともナイスファイトだ、次は俺の番だな」

 

「お褒めに預かり恐悦至極ってところかな?僕は素直に悔しいけどね」

 

「アダマスの試合は刺激を受けるからな、純粋に楽しみだ」

 

 アダマスはクリムとツバサのバトルを褒め称え、次は自分の番だと意気込んでおり、見えない筈の闘気のようなものが見えておりクリムは思わず苦笑する。

 

「二番フィールド、アダマス君、パープルさんお願いします」

 

「来たか……行ってくる、お前達に置いていかれる訳にはいかないからな」

 

 クリム達はこの後知ることになる、最強のトレーナーを目指す、それはまだまだ遠い道のりだが、その壁はまだ自分達の隣に居合わせているという事を……。

 

 

 

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