ポケットもんすたぁアカデミアSPECIAL   作:ネオニューンゴ

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 今回は初めてクリム以外のトレーナー戦描写になります。クラスメイトとかライバルの設定を考えるのは楽しい物があります。それでは7話になります。


第7話 秀才

 イーストスクールにて行われているポケモンバトルの授業、バトルを終えた生徒、そしてこれからバトルを控える生徒、そのどちらの注目も2番フィールドへと集まっていた。フィールドにはモンスターボールを握りしめ開戦の合図を静かに待つアダマス。彼はこの短期間でイーストスクール内にはおいて既に同学年の生徒の間で高い実力の持ち主と認識されている。そんな彼のバトルからは学べる事が多いはずだとメモ帳まで準備している生徒もいる程だ。無論クリムも既にアダマスには一目置いており彼のバトルを楽しみにしている。では相対するパープルという女子生徒は?薄い紫の髪をなびかせ閉眼する彼女の実力は?クリムは彼女……というより女子生徒との交流はあまりないため顔の広いツバサに彼女の事を聞いてみる。

 

「パープルさんはカントータマムシシティ出身らしいよ、噂ではタマムシ義塾付属のトレーナーズスクールに所属していたみたい、多分実力者だね」

 

「トレーナーズスクールか……」

 

 トレーナーズスクール、幼少期の少年少女にポケモンについての知識を教える学校、一昔前は地方に1つか2つある程度だったが昨今のトレーナー事情から急激にその数を増やしている施設の一つである。クリムは通っていなかったが同じ町の子供がキンセツシティにあるトレーナーズスクールに通っていたのを羨んだ記憶がある。場面は移り2番フィールドではパープルがアダマスに話し掛けていた。

 

「フフ、アダマスさん私達注目されていますよ?正確にはアダマスさんが……ですが」

 

「関係のない事だ、俺はどんな時だろうと全力を出す……それだけだ」

 

 アダマスの言葉にパープルは笑みを崩さず手を口に当てながら返答する。

 

「あらあら、フフ……最強のトレーナーを目指すアダマスさんらしいお言葉ですね、ですけど最強のトレーナーを目指すのは貴方一人ではないという事を教えて差し上げます」

 

 両者の間に緊張感が走りジンダイがバトル開始の合図を告げる。アダマスが繰り出したポケモンはカラナクシ、対するパープルはロゼリアを繰り出す。ロゼリアのタイプはくさとどく、じめん、みずタイプのカラナクシの天敵といって差し支えない、いきなりの相性不利な対面にアダマスは心の中で毒づきとるべき選択をする。

 

「ちっ交代だ、ストライク!」

 

 当然アダマスのとった行動はポケモンの交代、4倍弱点を避けるのはトレーナーとして当然の行動である。

 

「わかっていましたよ、ロゼリア、しびれごなです」

 

 しかしパープルはその行動をするからには相応の対価を払ってもらうと言わんばかりに指示をする。ボールから姿を表したらストライクは当然なんの抵抗も出来ずにしびれごなを浴びる。

 

「フフ、草タイプはこういう絡め手に長けているのが強みです、相性のみでごり押せる程私は単純ではありませんよ?」

 

「クッ!ストライク!ダブルウイングだ!」

 

「ストッ……!?」

 

 アダマスの指示を忠実に実行しようとするストライクだが襲いくる痺れに顔をしかませる。当たればパープルのロゼリアは一溜まりもないだろう……が技を繰り出せなければ意味がない、そして技を繰り出せないという事は一手分損をする、そのアドバンテージを活かしパープルは次の手を淡々と打つ。

 

「やどりぎのたねです」

 

 やどりぎのたね、あいてに種子を植え付け体力を吸いとり自分の体力を回復させる技、隙が大きくお世辞にも命中率は高くないこの技だが硬直したストライクは格好の的、外せと言う方が難しいだろう。行動も縛られ体力もアドバンテージを取られた、そして次に相手がとるであろう行動も読めている……読めているが差を詰めきるには難しい。

 

「さて、それではこうしましょうポケモン交代」

 

「ならばそちらも対価を払って貰うぞ!でんこうせっかだ!」

 

 アダマスとしてはわざを繰り出せさえすれば相手に少なくない打撃を与えられると踏んだ。パープルからすればカラナクシとロゼリアの対面を作る、もしくはストライクの体力をレッドゾーンに削ってからロゼリアを繰り出せば勝利は固い。ストライクは持ち物であるノーマルジュエルの効力を発揮させ身体を弾丸のようにぶつける……しかし感触は固い。

 

「ふふっこれでまた私の有利対面ですねぇ」

 

 パープルが繰り出したポケモンはコイル、はがね・電気タイプのポケモン、当然こうかはいまひとつなのでいくらノーマルジュエルで火力を挙げようと鋼鉄の体のコイルの体力をイエローゾーンまで減らすことは叶わない。

 

(いくらなんでもこれは相性が悪すぎる……!)

 

 アダマスは射抜くように鋭い視線をパープルへぶつけるがパープルはどこ吹く風と言わんばかりにアダマスの視線を軽く受け流しておりどこか余裕すら感じさせる。2VS2のバトルで相性の不利を覆すのは難しい、まさか言っていた自分が痛感するとはアダマスは奥歯をギリッと噛み締める。そんなアダマスをパープルは冷静に……いや冷ややかに観察していた。

 

(クラス内で実力者と謳われているからどれ程の実力かと思いましたが……いささか期待外れですわね、とはいえ私もアドバンテージはありますが余力はありません、ロゼリアではストライクに対する有効打がありませんもの……ここは確実に通る手を打ちましょう)

 

「まだだ!きょうしょさえ引ければ!ストライク!ダブルウイングだ!」

 

「遅いですわよ!コイル、マグネットボム!」

 

 鋼の弾丸がストライクを襲うがストライクは苦悶の表情を浮かべながらも自身の翼をうちつける。コイルは大きくよろめききょうしょに当たった事を予感させるがストライクに次はない。再度パープルはコイルにマグネットボムを指示しストライクは無念そうに墜ちていく。

 

「クッ!だが諦める訳には!頼むぞカラナクシ!」

 

 瞳の闘志は消さず自分を鼓舞するように声を張り上げるアダマスだが……この時点で勝負はついていた。この後カラナクシがコイルを撃破するが素早さで劣るカラナクシはコイルに一手行動を許しちょうおんぱを当てられる。そして詰めのロゼリアが現れ必中のマジカルリーフを指示する。アダマスは弱点をきのみでケアしていたがこんらんしたカラナクシは最後の悪あがきすらさせて貰えず見当違いの方向へ技を放つ。再度放たれたマジカルリーフの餌食となり力尽きる。終わってみればパープルは自身の手持ちの一体を無傷で残したまアダマスに勝利する。

 

「まぁタイプ相性もありましたし……今回は勝ち星を頂きました……次も私が頂きますけど……」

 

 そう言葉を残してパープルはバトルフィールドを後にする。残されたアダマスは唇を噛み締めながらパープルの言葉に何も答える事か出来なかった。場面はバトルフィールド外に移りクリム達の周りはざわついていた。その喧騒の中ではいくらなんでもタイプ相性が悪すぎる、アダマスには運が無かったという声が大半だったがそれだけでは片付けられない、とクリムは感じていた。パープルなら恐らく最初の対面がロゼリアとストライクでも勝ったのではないか?そう思わせる程彼女のタクティクスは強烈だった。そして相性だけではないと分かるからこそ……それを一番痛感したのはアダマスだと分かるからこそ、クリムはアダマスに掛ける言葉をみつけられずにいた。生気を失ったようにアダマスはフラフラとクリムとツバサの元へとやってきて項垂れるようにドカッと腰を下ろす。

 

「あ、アダマス……その残念だったね……でもリベンジすればいいじゃないか!君も言っていただろう!?2vs2のバトルじゃあ実力は計りきれないって!」

 

 懸命にツバサがアダマスを元気づけようとしているが健闘虚しくアダマスの纏う空気は重い。そんなアダマスを見てクリムはポツリと言葉を漏らした。

 

「弱いな……俺達……もっと強くならないとな……」

 

 パープルの戦いはこれぞポケモンバトル、自分達のしている事はただの技の撃ち合いだと言われたような気がした。クリムの言葉にアダマスは静かに頷く。ツバサもクリムも先程の自分達の戦い方ではパープルに通用しないと確信めいた予感を感じている。既に自分達のトレーナーとしての道は始まっているのだ、同級生に水を空けられたままではいらないと強く思う三人だった。

 

 全てのバトルが終了するとジンダイから全体としての総評がありやはりというか当然というべきか褒められたのはパープルであった。改めて攻撃以外のわざの重要性というものを認識するようにとの事だった。

 

「さて、皆さん明日からは3日間スクールはお休みとなります、ゆっくりと羽を伸ばすも良し、己の力を高めるも良し、またこのイーストアイランド以外の場所に足を伸ばしてみるのも面白いでしょう……これから手持ちも増えてくると他の島へ赴き大会に参加するようになるでしょうから今のうちに立地を頭に入れておくのをオススメします、さてでは皆さんに一つ宿題を出して今日はお開きとします、宿題の内容はズバリ新たな手持ちを一体捕獲する事です、そろそろ皆さんも自分のPTの形や戦いかたが見えてきたのではないでしょうか?手持ちが三体になるとバトルも一気に本格化しますので……それでは皆さん有意義な休みを」

 

 そう締めくくりジンダイは校舎へと戻っていく。いつもより少し早めに解放された学生達は各々の友人達と休日の過ごし方について話している。その例に漏れず三人も各々休日の過ごし方について話し合っていた。

 

「僕は手持ちの皆とゆっくり過ごしつつレベリングも兼ねて三匹目の仲間は三日間時間を掛けてやろっかな」

 

「そうか……俺は今回の敗戦で自分に足りない部分はおぼろげには理解したがまだ足りない気がする、先輩にアドバイスを求めつつ三匹目の手持ちを決めようと思う……お前はどうするんだクリム?」

 

「そうだな……俺も三匹目は急ぐつもりはない、だけどもう少しトレーナーとしてのスキルや知識を養いたいからサウスアイランドの図書館に行こうかと思ってる」

 

 クリムとしては今日の勝負には勝てたがそれは仲間の頑張りが大きかったと考えている、ここ数日自分の無力さを感じていたクリムは知識の宝庫であるサウスアイランドにある図書館で1日使い自分のレベルアップを計りたいと考えていた。各自自分のやりたい事が明確化しているため誰かと共に行動を……とはいかないようだ。ツバサも同じ事を思ったようで苦笑しながら残念そうにしている。

 

「当然と言えば当然だけど、やっぱ皆一緒にとはならないね……」

 

「醜態を見せたからな、俺は慎重にいこうと思う、ところでこれから二人は予定はあるか?」

 

「ん?僕はないよ?」

 

「俺も特にはないな」

 

「ならこれからショッピングエリアの喫茶店で今日のバトルの感想戦でもどうだ?外から見た今日のバトルの客観的な意見が欲しい」

 

「いいね、それなら僕達のバトルの感想も欲しいな」

 

「そうだな、俺も外から見て自分はどうだったのか気にはなる、何よりエデンの生徒らしい、有意義な時間になりそうだ」

 

 アダマスの提案を了承し、三人は時は金なりと言わんばかりに早足でショッピングエリアへと足を運ぶ。クリムが昨日訪れた時より当たり前だがイーストスクールの生徒で溢れかえっている、三人は目当ての喫茶店へ入り席へ着くと教室内で見慣れた生徒を見掛ける。向こうもこちらに気づいたようでストロベリーピンクの長髪を揺らしながらこちらへと近づいてくる。

 

「やっ、お三人さん!奇遇だね!」

 

 人懐っこさを感じさせるその笑みでクラスの中心人物となっている彼女、クリムも親しい間柄ではないが彼女とは二、三言、話をした記憶がある。名前はヒヨリ、同じトレーナー科に所属する生徒だ。ヒヨリと最も面識があるであろうツバサが彼女の問いに答える。

 

「ヒヨリさん、こんにちは、僕達は今日のバトルの感想戦でもってここに来たんだ」

 

「へぇ~私は頑張った自分にご褒美って思ってここに来たんだけど何かいいね、それ……よかったら私も混ぜてくれる?」

 

 ヒヨリの提案に三者三様、差異はあれど驚くが……それは失礼と言うものだろう。彼女もトレーナーを志しこの学園島に来ているのだ。その熱意は当然持っているはずである。

 

「ツバサ、アダマス、俺はいいんじゃないかと思うが……どうだ?」

 

「確かに、俺等だけだと遠慮してというのも考えられるからな、賛成だ」 

 

「そうだね、ヒヨリさんお願いできるかな?」

 

 ツバサの言葉にヒヨリはありがとーと言い空いている席へと座る。程なくして4人の注文した品が届き、それらを口にしつつ話題は早速各自のバトルの感想戦に入る。

 

「早速だが俺のバトルからで良いか?恐らく意見が一番出やすいと思うんだが」

 

「アダマスくんのバトルねー、まぁ相性っていう点はどうしても切り離せないよね~」

 

「出会い頭に四倍弱点相手じゃ流石に突っ張れないよね、サブウェポンにパープルさんのロゼリアに対してこうかばつぐんのわざがある訳でもなかっただろうし僕でもあそこは交換するかなぁ」

 

 ヒヨリとツバサの意見にアダマスも頷きながら自分自身が感じた問題点を提起する。

 

「……あぁ、問題はパープルのロゼリアにストライクを封じられた事だな……」

 

「ストライクの火力は申し分ないから状態異常を警戒してもちものをラムのみにするとかが正解だったとか?」

 

 交換やもちもの、そしてわざや指示、どう動けば勝利出来たか?また他の三人も自分達ならばどうパープルのロゼリアを攻略するか?攻略するにはどういう戦法で?そのためにはどういうポケモンが手持ちにいると良いか等議論は白熱する。パープルVSアダマス、クリムVSツバサの議論が終わり四人は一度休憩をとる。

 

「あはは、ちょっと白熱しすぎたね、珈琲もすっかり冷めちゃった」

 

「だが有益な時間には違いない、俺も次に仲間にすべきポケモンのタイプが朧気ながら見えてきた」

 

「四人揃うと色んな意見が聞けていいね、すごく勉強になるよ」

 

 三人の言葉に頷きながらクリムはカップに残った珈琲を飲み干し気になっていた事をヒヨリに投げ掛ける。

 

「そういえばヒヨリ……さんは誰と戦ったんだ?」

 

「クリムくーんヒヨリでいいよ、おんなじクラスメイトなんだから、私はセクトくんと戦ったよ、いやーむしタイプは中々骨が折れたよ」

 

「その口振り的に勝ったという事か?」

 

「あはは、まぁ私アダマスくんの隣で戦ってたんだけどみんなそっちに注目してたもんね、それじゃあまずバトルの流れを説明するね」

 

ーーーーーーーーー

 

「セクトくん対戦よろしくね!」

 

「おおよ、つってもギャラリーは隣のアダマス達のバトルに釘付けで盛り上がりには欠けちまうがな」

 

 そう自嘲気味に肩をすくませるセクトだが負ける気はないという気持ちは嫌でも伝わってくる。勿論ヒヨリも自分達の試合が注目されていないのならばむしろさせる位自分達が良いバトルをすれば良いと意気込んでいる。バトル前の軽い口上戦を終え、ジンダイからバトル開始の合図がなされる。ヒヨリはモンスターボールをぎゅっと握りしめ自分の相棒をフィールドへ繰り出す。

 

「いくよ!お願い!レンちゃん!」

 

「いきますよヒヨリ……!」

 

「進化した力を見せろ!フッシー!」

 

「ホイーガ!」

 

 フィールドに現れたのはフシデの進化した姿であるホイーガ、そしてヒヨリの手持ちはコリンクの進化系であるルクシオ、二人はお互い信頼する手持ちを一体目に据える。ヒヨリの手持ちであるルクシオはとくせいであるいかくでホイーガの攻撃力を下げる。セクトのホイーガは物理技主体であるため舌打ちする。

 

「ちっ、萌えもん相手はクリム以来だな、好きにはさせねぇ!かきみだせ!ミサイルばりだ!」

 

「いいや、させて貰うよ!つぶらなひとみ!」

 

 セクトは相手の行動を潰すようミサイルばりでルクシオを翻弄しようとするが先制わざで更にホイーガの火力を落としたルクシオは俊敏な動きでミサイルばりを避けて広いとは言えないフィールドを目一杯使っていく。

 

(多分とくせいはどくのトゲとかだよね……無闇に物理技は撃てない、やるなら一発、それもトドメの一撃の時時とかだ……遠距離で叩くよ!)

 

(チッ火力のディスアドバンテージがやべぇ、けど新顔はでんきタイプには不利だからここでコイツ叩くしかねぇ!何とかどくにして有利にたたねぇとだ!)

 

「フッシー!どくばりだ!」

 

「弾いて!でんげきは!」

 

 ホイーガはルクシオにどくばりを放つがルクシオは周りにでんげきはを放ちどくばりを迎え撃つ、その副産物で鈍重なホイーガにもでんげきが当たるがカス当たりでありお互いの耐久の差を考えればまだまだ体力的にはホイーガの方が分がある。お互い相手に有効な一撃を与えられない事にやきもきしながらも次の一手を思案する。先に動いたのはヒヨリだった。

 

(ここは強引だけど確実にアドバンテージを得に行く!)

 

「レンちゃん!距離を詰めて……今よ!でんじは!」

 

 

「何をしてこようと備えはあるぜ!フッシー!まもる!」

 

 ヒヨリはまひを狙うがセクトは相手の出方を見てここでルクシオが自分のわざの有効射程圏内に入ったと踏み切り一気に攻勢に出る。

 

「火力が下がってようとコイツで!フッシー!ころがる!」

 

 ホイーガはその巨体を丸め一気にルクシオに襲いかかる。ヒヨリは回り込むように回避の指示をだすがこうなったホイーガは速い。懸命に回避運動をとるが回数を重ねる事に狙いは正確に、そして動きが早くなりルクシオはホイーガの攻撃をもろに喰らってしまう。

 

「レンちゃん!」

 

「よぉし!いいぜ!フッシー!」

 

 ヒヨリはルクシオの体力が一気にイエローゾーン近くまで削られた事に驚きを隠せず思わず下唇を噛む。いかくとつぶらなひとみで2段階こうげきを下げてもこれなのだ、それなしで受けていたら間違いなくルクシオは一撃で落とされていただろう。

 

「ならキツイのをお見舞いするよ!レンちゃん!じゅうでん!そのまま駆け出して!」

 

 

「チッ!させるなミサイルばりだ!」

 

「遅いですよ!」

 

 ルクシオは素早くじゅうでんを終えると四足歩行の機動力を活かしミサイルばりを再度避けながらホイーガの目前まで距離を詰める。

 

「しまっ!?フッシー、まもる!」

 

「レンちゃんも言ったけど遅いよ!でんげきは!」

 

 

 いくらホイーガが堅牢といえどじゅうでんしたでんげきはを至近距離で喰らえばひとたまりもない。

 

「ほ、ホイー……ガ」

 

 ホイーガは何とか戦闘続行しようと自身を奮い立たせようとするがそれだけの力は残されておらず巨体を地面に預ける。ヒヨリとしては相手のエースポケモンを落とし逆にセクトは苦境に立たされる。

 

「一騎撃墜だね!レンちゃん!」

 

「油断せずいきますよ……!」

 

(チッ!オボンの発動圏内すら体力を残してくれねぇとはな……キチイが備えはある、諦めねぇ)

 

「根性見せろや!メア!」

 

「アメー!」

 

 セクトが次に繰り出したのは翼に目玉のような模様を持つポケモン、アメモース。アメモースは先程のルクシオ同様にとくせいであるいかくを発揮しルクシオの攻撃力を下げる。しかしセクトがとった行動はそのアドバンテージをふいにする行為だった。

 

「かましてやれ!ふきとばす!」

 

「アーメー!」

 

 相手に強制交代を強いるふきとばすを用いてルクシオをボールに戻しヒヨリの2体目の手持ちを強制的にフィールドへと引きずりだす。ヒヨリの2体目の手持ちはニャスパー、エスパータイプのためアメモースとの相性は悪く育成も十分ではないためかなり分は悪い、だがヒヨリは必死に自分の手持ちを鼓舞し相手と対峙する。

 

「ニャーちゃん!ゴメン、いきなりだけど初陣がんばろ!」

 

「ニャ!ニャス!」

 

 外から見れば微笑ましい光景だがここはバトルフィールド、当然セクトは既に次の一手を打っている。

 

「メア!ちょうのまいだ!」

 

 セクトのアメモースは宙を舞い己の力を高めている。しかしヒヨリは油断しているように見せ掛けてその間にも相手のアメモースに対する考察を内心では進めていた。

 

(レンちゃん相手に出してこなかったしあの見た目ならむしと……みずかひこうタイプだよね、見た目的にも耐久力はあんまりなさそう、高速アタッカーって感じかな?なら持ち物ははんげんきのみかジュエルか……きあいのタスキ?とりあえずタスキをケアするよ!)

 

「ニャーちゃん!ねこだましだよ!」

 

「ニャ!」

 

 ニャスパーは宙を舞うアメモースの動きを捉えアメモースに一撃与える事に成功する。驚いたアメモースさちょうのまいを中断し空中へ高度を上げ退避し臨戦態勢をとる。これですぐに追撃を受ける事はなくなったためセクトは次の一手を考える時間を確保する。

 

(チッ!タスキが死んだな……元々ちょうのまいが使えるとは思ってなかったから計算が狂っちまったぜ……問題は次だ……レントラーを一撃で落とすにはもう一回ちょうのまいをしたい、けどニャスパーは確かエスパータイプ、遠距離攻撃の手段は確実にある筈だ……それに状態異常……さいみんじゅつなんて持ってたらそれこそ即交代されて沈みかねねぇ……無理はできねぇか)

 

「ここで潰すぞ!メア!エアカッター!」

 

「!ニャーちゃんひかりのかべ!」

 

 セクトは攻撃を選択しニャスパーに何かされる前に倒しきる事を選択する。対するヒヨリはなんとかダメージを減らそうとひかりのかべを指示するが育成不足なニャスパーのひかりのかべはいとも容易く砕け散り風の刃がニャスパーを襲う。当たりどころが悪かったのか、はたまたレベルの差かは定かではないがニャスパーはそのまま気絶し戦闘不能となる。

 

「っし!まずはこっちも一体だ!」

 

「まだまだ!いくよレンちゃん!」

 

 再びルクシオがフィールドへと踊り出る。体力的にはアメモースが勝っているもののタイプの相性は悪い。お互い一撃貰えばそこで終わりだとトレーナーとしての本能で感じとりセクトはバブルこうせんをヒヨリはでんげきを互いに指示するが威力は互角、ならば相手の隙を作りわざをどうにか当てるしかない。そうなると部があるのは先程ちょうのまいですばやさを上げているアメモースだろう、そうでなくても宙を文字通り舞い予測しづらい動きも取れるしわざのレパートリーも豊富だ。お互い戦略が固まったのかバトルが再開され指示が飛ばされる。

 

「ここが正念場だ!メア!こうそくいどう!からのかげぶんしん!」

 

「かげぶんしん位は読めてたよ!レンちゃん!じゅうでん!蹴散らして!でんげきは!」

 

 セクトは仕掛ける事を選択しヒヨリは迎え撃ちカウンターを狙う戦略を選ぶ。アメモースは次々と自身の残像を生み出すがルクシオは周りに電撃を放出し次々とアメモースの分身を消していく……が分身が消えたにも関わらず本体の姿が見当たらない。これにはルクシオも困惑し辺りをキョロキョロと見渡す。

 

「しめた!こいつで!」

 

「上だよレンちゃん太陽に向かってでんげきは!」

 

 ルクシオは困惑しながらも自身のトレーナーを信じ太陽に向かいでんげきを放つ。

 

「アメー!」

 

「まさか……!本当にいらっしゃるとは……!」

 

 太陽の逆行に目を細めつつルクシオは力なく墜ちていくアメモースの姿を確認し驚嘆する。セクトもまた自身が編み出した必殺技ともいえるタクティクスを容易に看破された事に驚きを隠せず口をあんぐりと開けて放心していた。

 

(先生!やりましたよ!私!)

 

「私の勝ち……だね!」

 

 ヒヨリは笑顔でサムズアップし自身の勝利を噛み締める。それを見たセクトは我に帰り奮戦したアメモースに労いの言葉をかけながらボールへと戻した。ヒヨリは隣のフィールドをチラリと横目で見ると既にアダマスとパープルの戦いが終わっており観客席の方が賑わっているのが見て取れる。内心自分も観戦したかったとごちりつつセクトの方へと向き直りお互いの健闘を称え会う。

 

「いやー!間一髪!良い勝負だったねー!」

 

「チッ、良い勝負だからこそ勝ちたかったぜ……一個だけ聞いて良いか?どうしてメアが上から、それも太陽を背にしているって解ったんだ?初見で対応されるとは思わなかったんだが」

 

 セクトは悔しさを表情に滲ませながらも決定的な敗北の要因となった理由、自分の戦略が読まれていた理由を尋ねる。もしかしたら答えてくれないかとセクトは思っていたがヒヨリはあっさりとその理由をセクトに話す。

 

「私イッシュ地方のヒオウギシティ出身なんだけどそこのジムリーダーさんがトレーナーズスクールの先生をしててね、そこでひこうタイプでかげぶんしんの有効な活用法を教えて貰ってたんだ、それがセクトくんのとった方法だったから、まぁ偶然みたいなものなんだよね……」

 

「そ、そうか……何かこの戦法に弱点でもあるのかと思ったぜ」

 

 セクトは気の抜けたような表情をして大きく息を吐く。そんなセクトの様子を見て少しヒヨリは吹き出しながらも自身の勝利を胸に観客席へと戻るのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「という感じで、言ってしまうならラッキーで拾った勝ちだね、私としてはもう少しニャーちゃん、あっニャスパーを活躍させてあげたかったっていうのが本音かな?」

 

「ヒヨリ……さんもトレーナーズスクール出身だったのか」

 

 クリムはヒヨリの出身とその能力の高さに驚きを隠せなかった。また彼女は謙遜しているが習ったその戦法を瞬時に思いだし対応策に組み込み実現したのだから彼女のトレーナーとしての実力も高いと判断出来る。アダマスとツバサも同様の事を感じたようてわ口々にヒヨリを称賛するが彼女は「そんなことないよー」

と照れたような困ったような表情をしていた。その後ヒヨリのバトルの感想戦……といってもヒヨリを褒める事が多かったのだがそれを終えると日が落ちている事に気づいた四人はカフェを後にして寮へと歩みを進める。程なくして寮へと帰宅した四人は各々別れを言い各自の部屋へと戻っていった。クリムは部屋着に着替えてもう一度今日のバトルを思い返しノートに良かった点と悪かった点をまとめていく。それを終えた後そういえば自分の仲間達にちゃんと今日のバトルを労っていなかった事を思いだしボールから出し労いの言葉を掛ける。

 

「い、いえ……私の場合はマスターの指示のおかげですから」

 

「言うのが遅いのよ!それでご褒美はあるんでしょうね!?」

 

「はは……、まぁ今日はありがとうな、カフェのお土産があるから今紅茶をいれるよ」

 

 全く正反対の反応にクリムは苦笑しつつバッグからカフェで購入したモモンのみのタルトをテーブルの上に置き、自身はお湯を沸かしにキッチンへと向かう。程なくしてお湯がポットに茶葉を入れてお湯を注ぐ。トレーにカップと砂糖、ミルクを載せて持っていくとスカーレットから早く淹れるよう催促される。

 

「分かった、分かったって、砂糖とミルクは?」

 

「私は砂糖だけでいいわ」

 

「わ、私はミルクと砂糖をお願いします」

 

 ミミとスカーレットの分を淹れて差し出すと二人は顔を綻ばせながら一口啜る。

 

「お、美味しいです!ありがとうございますマスター!」

 

「フフン、これが勝利の味ってやつね!」

 

「二人が喜んでくれて嬉しいよ、それで明日から三日間休みなんだけど何かしたい事とかあるか?明日はサウスアイランドの図書館に行こうと思ってるから厳しいけど明後日以降なら要望があれば叶えるぞ」

 

 そう伝えると二人は少し考え込んでしまう、いきなり過ぎたかなーとクリムは紅茶を飲み干す。手持ちのポイントは必要経費以外には使ってないので余裕がある。最もどこかに泊まりたいと提案されれば流石に厳しいが。カチカチと時計の秒針が時間を刻む音だけが部屋の中に木霊する。最初に口を開いたのは意外にもミミだった。

 

「あ、あの~でしたら私は皆でご飯が食べたいです、我が儘ですみません……」

 

「いやいや、むしろそれくらいお安いご用だ、スカーレットはどうだ?」

 

「そうね、私はバトルをしたいわ、ミミが嫌なら無理にとは言わないけどもっともっと強くなりたいわね」

 

 クリムが今日のバトルで思った事があるようにスカーレットも今日のバトルで思う所があったようだ。クリムはまさか手持ちからそのような提案をされると思わず目を丸くするが可能ならクリムもバトルはしたいと考えていた。ミミの方をチラリと見るとミミも頷いておりバトルに対して否定的ではなさそうだ。

 

「よし、分かった何とか当たりをつけてみよう、どうせなら新しい仲間が出来たらバトルにしたいから多分休日の最後になると思うが構わないか?」

 

「オッケー、そこら辺はトレーナーに任せるわ、あと当然私達のレベリングも忘れないようにしなさいよ」

 

「そうですね、バトルで足は引っ張りたくないので、マスター!私からもお願いしましゅ!」

 

「了解、それじゃあ今日は明日以降に備えて早く休むか」

 

 その後クリムは手早く夕食と入浴を終えてベッドへ早々と入る。明日以降自分達のレベルアップを誓いながらクリムは意識を手放すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

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