ポケットもんすたぁアカデミアSPECIAL   作:ネオニューンゴ

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 先日この作品に評価を付けて下さった方がおりました。大変嬉しく思います、ありがとうございます。やはり何かしらの形で評価して頂けると現金な物で執筆の意欲も湧いてきますね。感想や評価等もし頂けましたらそれ以上の励みはありませんのでもしよろしければ⋯⋯お待ちしております。
 今回は初めて他校の生徒とのバトルになります、楽しんで頂けると幸いです。それでは8話になりますお楽しみ頂けたら幸いです。

※タイトルつけ忘れてました、大変失礼しました


第8話 サウスアイランドでの出会い

 翌日

 

 ポケフォンのアラームのけたたましい音でクリムはパチリと目を覚ます。時間にして朝の5時、普段よりも大分早い起床時間だ。部屋のカーテンを開けると普段の寮内の喧騒は聞こえてこず、鳥ポケモンのさえずりだけが耳に入ってくる。クリムは手早く動きやすい私服に着替え終えると軽く身嗜みを整え学生寮の食堂へと赴く。

 こんな朝の早い時間から食事を作ってくれる職員さんには頭が上がらないなと思いながら焼き魚定食というオーソドックスな朝食を頼む。休日のこんな早い時間という事もあり席はほぼガラガラの状態だったが見知った顔を見掛けたためクリムはその席の方へと歩いていく。向こうもこちらに気が付いたようで声を掛けてきた。

 

「む、クリムか早いな」

 

「おはようございますアカバネ先輩、先輩もお早いですねご一緒させて頂いてもいいですか?」

 

「構わん、丁度話し相手が欲しかったからな」

 

 見知った顔とはアカバネだった。クリムが近づくと自分のトレーを動かしクリムのスペースを確保してくれる。クリムは先輩にそんなことをさせてしまって申し訳ないなと思いつつ礼を言いつつアカバネの対面に座る。

 

「時期的にそろそろ3匹目の仲間が増える辺りか……どうだ、そろそろ同級生のレベルの高さという物が分かってきたか?」

 

「はい、今の段階だとトレーナーズスクール出身の生徒が頭一つ抜けてレベルが高いですね」

 

「あぁ、だがそこに危機感を覚えられるのなら大丈夫だ、それに手持ちが三体になったらいよいよ本格的にトレーナーとしてもバトルも本格的になる、今の状態がそのまま維持される訳ではない……といっても強い奴は強い、強い奴は努力を怠らないからな」

 

「成る程、道理ですね……自分もそうありたいと思います」

 

 クリムは食事を掻き込みながら自身の戦績を振り替える。今のところ授業で敗北はしていながそれだけだ。勝っても負けても自分の経験値に出来る、そんなトレーナーになりたいと改めてクリムは胸に刻む。

 

「今は出来ることも少なく、また自分がどういうトレーナーでどういう強さがあり弱点があるか分からないからな、もどかしいと思うが焦るなよ」

 

「はい」

 

「ところで昨日アダマスから俺に師事を仰ぐようで頼まれた、お節介かもしれないがお前はどう過ごすつもりだ?」

 

「自分はサウスアイランドの図書館で勉強をしてこようと思います、まずは知識をつけてそこから新しい仲間とか考えようかなと」

 

 クリムの予定を聞いたアカバネは満足そうに頷く。

 

「うむ、やることが明確化しているなら大丈夫そうだな、当然だがこういう学園で学ぶ時間以外の行動でもトレーナーとしての差は出る、無計画、自堕落に過ごすつもりならアダマスと一緒にとも思ったが大丈夫そうだな」

 

 アカバネに太鼓判を押して貰った事でクリムは内心胸を撫で下ろす、少なからず自分の判断が間違っていたらどうしようかと不安な気持ちがあったがこれで一安心だ。

 

「行き詰まったら遠慮なく来い、相談位なら乗れるからな、さて俺はそろそろお暇するとしよう、頑張れよ」

 

「ありがとうございました!」

 

 クリムはお辞儀をしてアカバネを見送るとアカバネは手を上げて去っていく。時計をチラリと見るともうすぐ6時になろうとしていた。サウスアイランド行きの船の出港時間は7時で余裕はあるが気持ち早めに着いておきたいとクリムは考え早足で自分の部屋に帰る。バックにボールや薬、持ち運び可能なポケフォンの充電器と筆記用具、飲み物と軽い食べ物を詰め込み港へと足を運ぶ。

 普段使う道ではあるが時間が違うと見えてくる景色も違うもので特に人間があまり活動していない時間だからか空には多くの鳥ポケモンの姿が見て取れる。心なしか空気も澄んでいるような気もして気分が高揚するのも仕方のない事だろう。気持ち歩調が早くなりながらもコンクリートで舗装された道を歩き、予想より早く港に着いたクリムは早速船へと乗り込み甲板へと出る。朝の日差しが照りつけており少し目を細めるが眼前に広がる景色はそれを忘れさせる位美しい。海独特の磯の香りもまた船旅を彩る1つのアクセントになっていた。

 

「そうだ、二人にも見せてあげよう、出てこいミミ、スカーレット」

 

 モンスターボールから出た二人は先程まで休んでいたのか太陽の光を眩しそうにするが目の前に広がる海に目を輝かせている。

 

「「きれい……」」

 

「そうか、それは良かったよ、悪かったな二人とも……でもきっとこの景色を見れば喜んでくれるかと思ってな」

 

「当たり前じゃない!こんな景色を独り占めなんて許さないわよ!」

 

 スカーレットは口調では怒っているが視線は海から離れずミミに至っては「うわぁ……うわぁ……!」と喜びを口にしていた。折角これから一緒にやっていくパートナー達なのだからバトルだけじゃなくてこういう楽しい事も共有していきたい、そう思いながらクリムはデッキの縁に身を預けていると出港のアナウンスが流れ船が動き出す。潮の独特な風を切りながら船はサウスアイランドへと向かっていた。

 1時間程ミミとスカーレットと談笑していると遠くにサウスアイランドが見えてくる。イーストアイランドと比べると高い建物が目立ち存在感を放っており都会のような雰囲気が印象的だ。そこからさらに15分程すると最寄りの港に停泊しクリム達は下船する。港周辺は様々な屋台や店舗が並んでおりどこか自身の故郷であるカイナシティを彷彿とさせる。どうやら港町を抜けると目当てであるサウススクールに到着するようだ。ミミとスカーレットは屋台を見ながら目をキラキラと輝かせている……がまずは目的を果たす事が先決だ。「帰りに見て回ろう」と二人に軽く釘を差しておく。二人は名残惜しそうに屋台を尻目にクリムの後を追いつつ、港町を後にしてしばらく舗装された街道を歩く。

 潮の香りが段々と薄くなり門を潜るとそこには港町とは一変して高層ビルや様々な店や何かの施設が目を引いた。その中央に鎮座するのがサウススクールである。どうやらサウスアイランドはサウススクールを中心に街が作られているらしく学生の姿が多く見てとれる。どうやら学生の生活圏である学校周辺に主要の施設を固めて暮らしやすさに焦点を当てているようだ。

 

「すごいな、これは便利そうだ」

 

「何だか私達の暮らす所より人が多いですね……ぶるぶる」

 

「ちょっとミミ!堂々としてなさいよ!それじゃあ田舎者みたいじゃない!」

 

 ミミも街の雰囲気に呑まれているようで足がすくんでいるようだ、スカーレットは気丈に振る舞ってはいるが周りをキョロキョロと見ては目を見開いており、ある意味ミミより挙動不審といった様子。何より目につくのはブリーダー向けの店舗が充実している所だ、ポケモン、萌えもん専用のヘアサロンがあったりビルの液晶画面にはコンテストの様子が流れている。アクセサリーケースを持った学生が足早に何処かへと向かう姿も見てとれる事からサウススクールはブリーダー、とりわけコンテストに力を入れているようだ。

 

(トパーズが見たらはしゃぎしそうだな……)

 

 何て冗談めいた事を考えながらサウススクールの事を分析する。どの建物も新鮮に映り後ろ髪を引かれつつも目的の図書館へとクリムは足を進める。

 

「ここか……確かにでかいな……」

 

 サウスアイランドを象徴する施設とされる図書館『サウスライブラリー』クリムのいたカイナシティの造船場の大きさをゆうに越えるその施設の玄関はサウススクールの生徒以外にも白衣を着こんだ研究者の女性、島外から来たであろうトレーナー、かっちりとしたスーツを着こなす初老の男性等様々な姿が見てとれる。

 

「流石は世界的に有名な図書館……これだけを利用しに来る島外の人までいるってのはあながち間違いじゃないのかもな」

 

 クリム達もその人混みに倣って入館しようとするが入り口の電光掲示板にはポケモン及び萌えもんはボールの中にしまうよう注意書きが書いてあった。チラリとクリムが横の二人を見ると表情からは残念という気持ちがありありと読み取れたがこればかりは仕方がない。

 

「悪いな二人とも、退屈させるが頼むよ」

 

「……仕方ないわね」

 

「人間さんの本……楽しみだったのに……」

 

 特にミミは口惜しそうにボールの中へと入っていく。どうやらミミは本を読むのを楽しみにしていたようだ、クリムの中に少し罪悪感が沸くが今度本屋に連れていってあげようと心に決めて入館する。まず目に飛び込んできたのは本、本、本、図書館なのだから当たり前なのだがイーストアイランドにある図書室と比べるのもおこがましい位の本棚が羅列されている。エントランスには本を検索する機械が数台設置されておりクリムはそこへ向かう。

 今回クリムが目的としているのはポケモンバトルにおける指示の知識を着けたくてやってきた。ジンダイからトレーナーの四大資質についての話を聞いた時に『統率』『能力』は先天的な物が大きそうだが『指示』『育成』に関しては後天的な努力で補えるのではないかと考えたからだ。特にその中でもバトルにおける指示は自分も仲間と一緒に戦い、尚且つ輝かせる事が出来る、ならば自分に例え指示の資質が無かったとしても研いておきたいと強く思った。

 

(今一緒にいる2人も、これから出会うまだ見ぬ仲間にも、俺の手持ちになれて良かったと思って貰いたい、傲慢かもしれないけど……トレーナーとしてそこは欲張りたい)

 

 検索機で『ポケモンバトル 指示』と検索すると100冊程の書籍がヒットする。その中でも入門書に近い書籍をピックアップし何冊か当たりをつけてクリムは本棚からそれらを持ち出し机の上へと積み上げる。

 

(しかしポケモンバトルにおける指示だけであんなにヒットするなんて思わなかったな……こりゃ思ってたより長丁場になりそうだ……よし)

 

 改めてクリムは気合いを入れ本を開く。ポケモンバトルにおける指示は大きく分けて二種類存在する。1つは相手のトレーナーの思考、心理を読み、行動を予測しそれに対する有効な指示を出す事、もう1つは状況(自分のポケモンや相手のポケモン、フィールドの特徴や持っている技の組み合わせ)等を瞬時に把握しこちらの有利な状況を作り出す指示を行う事、この二つのどちらか、或いは二つとも長けているトレーナーを一般的に指示型のトレーナーと呼ぶ。またどちらも指示により相手より優位な状況から攻撃を繰り出せるため共通の特徴として指示型トレーナーのポケモンはきゅうしょが発生しやすいとされている。統率型がポテンシャルや追加の役割で育成型はレベルやポテンシャル、能力型はトレーナーの能力でアドバンテージをとっていく中指示型は自身の指示、きゅうしょでアドバンテージを取っていく形となる。しかし弱点としてはポテンシャル発動による計算のズレ、さらに設置技や状態異常など考慮しなければいけない状況が増えた時に押し込まれる事が多く、またポケモンバトルの特性上常に状況が流動的に変化するためポケモンバトルにおける指示は早さも求められる。

 

(ポテンシャル……っていうのは何か分からないけど、考える事が多い、さらに考える時間も与えられないってのはそうだな)

 

 今の時点でクリムが『指示』を伸ばすのならばやはりトレーナー戦の経験を積みフィードバックを得るのが一番近道なのかもしれない。もしくはある程度自分の戦い型を確立、もしくはパターン化すれば指示は早くなるだろうが……

 

(それで簡単に対戦相手にこっちの手の内を読まれたら本末転倒……か、成る程)

 

 気の遠くなりそうな話だ、とクリムはこめかみを押さえながらさらに本を読み進めていく。ある程度トレーナーとして熟達すれば経験や知識に基づきある程度指示能力は上がっていく、しかしそこから一歩踏み出し相手より抜きんでなければ卓越した指示能力があるとは言えない、こればかりはトレーナー自身の才覚と経験、知識の両方をしっかりと自分の糧にしていかなければその才能を十二分に発揮するのは難しいだろう。

 

 その後もクリムは本を読む事に熱中し自身の腹の虫が鳴る音でふと我にかえる。ポケフォンの時計は既に14時を過ぎていた。自分がこれ程まで読書に集中していた事実に驚きつつ、ボールの中の二人に長時間退屈させてしまったと焦りながら本を棚に戻すと図書館を出る。モンスターボールから二人を出すと案の定スカーレットがぷりぷりとした様子でクリムに小言を言ってくる。

 

「アンタねぇ!時計くらい見なさいよ!私もミミも退屈だったしお腹ペコペコよ!」

 

「いや……本当にすまない、熱が入りすぎた」

 

「まぁまぁスカーレットさん、私は気にしてませんし……」

 

 クリムは目を伏せながら謝りミミがスカーレットを嗜める事でどうにかスカーレットも機嫌を直す。

 

「ふ、フン!まぁ過ぎた事を言っても確かにしょうがないわね、それじゃあ少し遅めのランチといきましょ、これで変な所に連れていったら承知しないわよ!」

 

「ふふ、スカーレットさん、ご飯楽しみにしてましたもんね」

 

「任せてくれ、昨日ポケフォンで調べておいたんだ、きっと二人も喜んでくれると思う」

 

 事前に情報収集を重ねてクリムが選んだのは高層ビルの中に併設されたレストランだった。味の評判も悪くなくなんと言っても特徴的なのが窓からこのサウスアイランドを一望出来る事が売りらしい。昼時から時間がずれていたためか三人は待ち時間無くテーブルに着く事ができ街を見渡しながら海鮮系の食材がふんだんに使われたパスタに舌鼓をうつ。食事と景色に喜ぶ自分の手持ちを横目にクリムは残りの休日の事を考えていた。

 

(うーむ、新しい仲間を探しに行きたい……気持ちもあるが正直な所を言うとバトルしたいな、折角得た知識を早く実践で試してみたい)

 

「マスター、難しい顔をしてますけど大丈夫ですか?」

 

「こんなに美味しいご飯と美しい景色を前にしてそんな顔すんなんてどうしたのよ?」

 

 ミミとスカーレットがクリムを不思議そうな顔をして見つめている。クリムは何でもないぞと伝えるようにパスタを頬張りつつ笑顔を作るがそれが逆効果になり更に怪しまれたためクリムは観念しバトルがしたい事を伝える。

 

「わかりました!マスターがそうおっしゃるならバトルをしまひょう!」

 

「なんだ、そんな事だったの……勿論私もオッケーよ!バトルにもアンタの指示にも慣れておきたいからね」

 

 意外と好感触だった事に内心驚きつつ、クリムは二人に感謝した、スカーレットにはちゃっかりと食後のデザートを要求されそうなればミミの分も頼まない訳にはいかないので懐が痛んだのは内緒の話だ。

 食事を終えた三人はバトルの相手を探すべく街を練り歩く、帰って寮に居る生徒からバトルの相手を選んでもよかったのだが折角サウスアイランドに来たのだからサウススクールの生徒とバトルをしてみたいという要望がスカーレットからあったためサウススクールの生徒を探しているのだ。クリム的にも自分と他の学園の生徒をとどれくらいの差があるのかを知りたいというのも本音だ。三人はサウススクール近くにあるバトルフィールドが併設された公園へとやってくる。遊具周辺には子供達が集まりそれを親達が微笑ましく眺めている、そんな光景を尻目にクリム達はバトルフィールドへと足を運ぶ……が。

 

「……あまり人がいないな」

 

「ちょっと!この島の奴はやる気無いわけ!?」

 

「どうしましょうか?マスター?」

 

 休日のバトルフィールドならトレーナー達の活気で満ち溢れているだろうと当たりをつけてやってきたのだがまさかガラガラだとは思ってもみなかった三人は呆気にとられる。バトルをしている生徒の数はちらほらと散見されるが戦い方や手持ちの数的に見て恐らく上級生だと思われる。クリムが失敗したなぁと遠い目をした時一人の男子生徒がこちらに近づいてきて話し掛けてくる。

 

「失敬、貴殿は他校の生徒、それも一年生の方ですかな?」

 

「えっと……そうだけど」

 

「おっと失礼しました、拙者はオタル、サウススクール所属の一年生でして」

 

 オタルと名乗った小太りの少年はメガネの位置を直しながら自己紹介をする。それに倣いクリムは自分の名前とイーストスクールに所属している一年生である事をオタルに明かす。

 

「成る程、してクリム氏はどういった用件でこのバトルフィールドへ?」

 

「折角だからサウススクールの一年生とバトルをしたかったんだ」

 

「それはタイミングが悪かったですな、我々はこの連休明けまでに自身のトレーナーとしての戦術を考える課題が出ていまして、皆それに掛かりっきりなのでしょう」

 

 成る程それならばサウススクールの一年生がこのバトルフィールドに姿を見せないのも道理だろう。だとすると目の前の少年は既にその課題を終えているという事だろうか?その疑問をクリムは素直に口にする。

 

「ふむ、自分で言うのもお恥ずかしいですが拙者はその課題を終えていまして、理論だけでなく実戦の経験値を積むためにやってきたという訳です、つまり」

 

「バトルの相手になってくれるって事か?」

 

「不肖このオタルでよろしければ、クリム殿の手持ちは二体、そして拙者の手持ちも二体、そして見た所クリム氏も拙者の同志とお見受けします」

 

「同志?」

 

 その言葉にクリムは頭の上にはてなマークを浮かべて首を傾げる。この短い時間の中で彼と自分に共通点があっただろうか?

そう不思議そうにクリムが首を傾げているとオタルは眼鏡をキラリと光らせ話を続ける。

 

「フフフ、隠さなくて結構ですよ、クリム氏もまた萌えもんマスターを志す、彼女達の魅力に魅せられ、彼女達をバトルというステージで輝かせようという志を持った同志なのでしょう?」

 

「い、イヤ……別に俺は萌えもんに拘りがあるわけじゃあ……」

 

「フフフ、クリム殿が拘ろうと拘るまいと既にそのお二方が証明していますぞ、それにクリム殿は拙者と同様の匂いを感じる、ならば同志と切磋琢磨するのも悪くない休日の過ごし方です……っと失敬話が長くなり過ぎましたな、それでは拙者の姫達をご紹介しましょう、拙者だけクリム殿の手持ちを知ってからバトルするのはアンフェアですからなぁ……参られよ!メイル殿!ベノム殿!」

 

「マスター、メイル参上しました」

 

「あらあらオタル君、どうしたのかしら?」

 

 オタルがボールから出した萌えもんはクリムの住むホウエン地方にとても馴染みのある2匹、ココドラとハブネークだった。

 

「ふぅむ、一環してじめんタイプのミミ氏がキツイですが……まぁそこは拙者の腕の見せ所でしょう、それでもちものはどうします?」

 

「俺はどちらでもいいからオタルに任せるよ」

 

「ならばここはもちものなしでいきましょうか、かちぬきでなくいれかえ有りで異存はありませんかな?」

 

「あぁそれじゃあ……はじめるか、先陣は任せるぞスカーレット」

 

「一番槍は頼みますメイル殿!」

 

 互いに最初に繰り出したのはクリムがデルビル、オタルはココドラだった。相性はクリム有利、こちらのほのおタイプの技が通る、ならばハブネークに代えてくる可能性が高いと判断したクリムはひのこを指示する。追加でやけど状態にできれば物理攻撃主体のハブネークは機能しなくなるし万が一ココドラで突っ張てきても有効だと判断した。

 

「メイル殿!まもる!」

 

 しかしここはまもるによって一手潰される、しかしお互い距離は変わらず依然クリムの有利は変わらない。そのことをスカーレットも分かっており相手を挑発するよう勝ち気な笑みを浮かべている。

 

 

(ここで交代をしてくる可能性もあるのか?いや、ならそれをさせなければいい!)

 

「ほのおのうず!」

 

 スカーレットの生み出す文字通り炎の渦の中に閉じ込められたココドラ、逃げ場はなくこのままその身が灼熱の炎に焼かれるのを待つしかない……筈だった。

 

「まだまだ!あなをほる!」

 

 オタルはあなをほるを指示し窮地を脱する、ほのおのうずを逆手に取り視界が確保出来ていない状況で今度は逆にこちら側が攻撃に備えなければいけない。表情には出さないがクリムは完全にしてやられたと思わず手に力を入れる。完全に主導権は向こうに持っていかれてしまった。

 

(これも防がれた……!不味い!?ほのおのうずで状況が……いや、ここは一か八かだ!)

 

 

「今です!メイル殿!」

 

「……!スカーレット!真下に向かってひのこだ!」

 

「ただじゃやられないわよ!」

 

「くっ!?この程度では、落ちてください!」

 

 

 クリムはメイルが出てくるであろう方向にひのこを指示しそれを当てる事に成功する……がひのこの元々の威力ではメイルの体力もわざの勢いも削りきる事は出来ず、スカーレットはあなをほるの直撃を免れない。

 

「くっ……アンタこそ落ちなさいよ……!」

 

「この程度……うぅ……まだまだです!」

 

 

 体力的にはスカーレットがレッドゾーン、メイルはレッドゾーンに近いイエローゾーンといった所だろうがその差は誤差といった所か、次に一撃を受けた方が倒れるだろう事を予感させる。

 

「なら、遠距離攻撃の出きるこちらが有利だ!畳みかけろ!ひのこ!」

 

「ここは勝ちにいきましょう!どろかけ!」

 

 スカーレットのひのことメイルのどろかけがぶつかりあい一瞬両者の視界が遮られる。クリムは先ほど同様あなをほるに備えるようスカーレットに指示を出すがオタルの取った選択肢は『ずつき』、周囲を警戒していたスカーレットはその隙を突かれて正面からずつきを敢行するメイルの攻撃に反応出来ない。

 

「ハァハァ……これで私の勝ちです!」

 

「あ、アタシの負けなの……!?」

 

 悔しそうに表情を歪めながらゆっくりと膝を折り地に伏せるスカーレット、クリムは奥歯を噛み締めながらスカーレットをボールへと戻す。

 

「まずは一歩リード……まぁ僅差ですがな」

 

「すまないスカーレット、ゆっくり休んでくれ……頼むぞミミ!」

 

「スカーレットさんの分まで頑張ります!」

 

 続いてクリムはミミをフィールドをフィールドへ繰り出す。クリムとしてはここでメイルに何もさせず次の戦いをイーブンな状況で迎えたい、ならばここは速攻だろう。

 

「みずでっぽう!」

 

「最後の一仕事です!がんせきふうじ!」

 

 僅差でメイルが先に動き巨岩をミミに向かって放つがミミは持ち前のレーダーでそれを避けながらみずでっぽうを放つ。既にスタミナ切れのメイルにみずでっぽうが襲いかかりメイルは戦闘不能となりボールへと戻っていく。しかしクリムはこの状況に歯がゆい思いをする。こちらのフィールドはがんせきふうじ、あなをほる、さらにはどろかけによりフィールドの足場がかなり悪くなっている、これを利用されれば苦戦は必死だろう。

 

「くっ……ですが仕事はしました……後は頼みます……」

 

「お疲れ様ですぞメイル殿、価千金の活躍でした……それではベノム殿!仕上げと参りましょう!」

 

「ふふふ、タイプ相性は悪いけど……これならやりようはありますね、メイルちゃんに感謝です」

 

「うぅ……ま、負けませんよ!」

 

 そんなにレベルは離れていない筈なのにミミはベノムから放たれる凄みに一瞬怯む……が気を持ち直してベノムと対峙する。

 

「一対一ならこれは効く筈です、へびにらみ!」

 

「フフフ」

 

 しかしそんなミミを嘲笑うかのように無情に出されたわざはへびにらみ、ベノムの目が鋭く光りミミはまひ状態となる、あまりに重すぎる一手、どんどん不利になる状況にクリムは思考を巡らせながら指示を出す。

 

「くっ、とにかくイニシアチブを取らなきゃ始まらないか⋯⋯マッドショットだ、ミミ!」

 

 とはいえどんなに考えても今出きるのは相手のタイプに有利なマッドショットを撃つ位なものだ。

 

「ベノム殿!前進しながらいやなおとです!」

 

 当然ながらまひ状態のミミよりもベノムの方が動くのは早い。ミミも苦しみながら泥の弾を放つがまひに加えていやなおとで攻撃の精細を欠きマッドショットはかろうじてがする程度に終わってしまう。そうこうしているうちにベノムはミミのいるフィールドへ侵入しがんせきふうじの岩の裏へと身を隠す。岩一つ隔てての攻防、ミミとクリムは集中し相手の出方を伺う。オタルが、ベノムがどう動いてくるか、クリムは無意識のうちに手を強く握りしめ思考を巡らせる。

 

(右、左?いやどちらにせよミミのレーダーなら対応出きる筈、カウンターで仕留める!)

 

「つじぎりです!」

 

「嘘!?」

 

 

 オタルの選択はその場から動かず岩ごとつじぎり、この攻撃に反応しきれずミミはぼうぎょを下げられていた事もあり一撃で仕留められる。終わってしまえばあっさりと、さらに一撃でミミは仕留められてしまった。

 

「ふぅ……拙者の勝利ですな」

 

「負け……か、ありがとうミミ」

 

 タイプ相性は有利だったが終始相手に翻弄され先手を許してしまった試合だった。クリムは自分の不甲斐なさに唇を噛み締める……が今は対戦相手の勝利を称えるべきだろうと判断し素直に負けを認めそれを口にする。

 

「まさか有利対面をことごとく返されるとは……強いなオタルは」

 

「いやいや、今回はもちものもなくお互い少ない手持ちでのバトルでしたからな、とはいえ拙者も実戦が出来たのは良い経験でしたぞ」

 

「あぁ……俺も改めて自分の現在地点を分かったよ、またどこかでリベンジさせてくれ」

 

「えぇ、良かったら連絡先を交換しましょう、拙者とクリム殿は同志、学園は違えどお互い高めあっていきましょうぞ」

 

 その後二人は連絡先を交換し、オタルはその場を去るとクリムは二人の回復をするべくポケモンセンターへと足を運ぶ。しかしその足取りは重く、自分自身初めての敗北のショックの重さに驚きながらポケモンセンターへと着くと二人の回復をジョーイさんにお願いする。程なくして回復を終えボールを受けとると改めて二人と対面する。ミミは目に見えて落ち込んでおり、スカーレットは悔しさを隠そうともせず地団駄を踏んでいた。

 

「悔しい~!まさかアタシの最強バトル伝説に黒星がつくなんてぇ~!」

 

「私も……ベノムさん相手に何もさせて貰えませんでした……タイプ相性は有利だったのに……うぅ」

 

「いや、今回のバトルはトレーナーの差だ、二人は頑張ってくれたさ……くそっ負けるのは悔しいな」

 

 クリム自身別に長い学生生活の中で敗北しないとは毛頭思っていない、しかし思い返してみてもオタルのトレーナーとしての手腕には舌を巻く他無かった。しかしこの敗北を糧にしてみせる、気落ちしながらもクリムはまた瞳に闘志を燃やし自分に言い聞かせるように言葉を続ける。

 

「まだまだ強くなるぞ俺は」

 

「バカ!アタシ達よ!」

 

「そうです!今度こそお役に立ってみせます!」

 

 改めて他校の生徒の実力の高さを知れたのも大きな収穫だろう。三人は帰りの船の中でも今日のバトルの振り返りをしながらイーストアイランドへと戻っていく。必ず近いうちにオタルへのリベンジを果たすと息巻きながら、こうしてクリムの連休一日目は少し苦い思いをしながら終えたのだった。

 

  

  

 

 

 

 

 

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