ダイヤのAたち!   作:傍観者改め、介入者

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秋季大会はもうすぐ終わりそうです。

7月15日は連続投稿です。130話から読んでください。

早いところ秋季大会を終わらせたい。


第131話 ACE 中編

2回表、轟と大塚の初対決が実現。

 

『さぁ、お聞きくださいこの大歓声!! 東都のエース、大塚栄治に対するは、東都の若きスラッガー、轟!!』

 

『沖田君不在の中、打の視線は彼にくぎ付けでしょうね。そんな轟君が、どんなバッティングを見せるのか。非常に楽しみですね』

 

 

マウンドの大塚は、轟のオーラに似た雰囲気を初めて感じた。

 

―――――やはり、雰囲気はあるね

 

 

体格ではるかに劣っている自分相手に、臆していない。

 

 

初球の入り、

 

 

大塚は変化球で様子を見た。

 

 

「ストライィィクッッッ!!!!」

 

 

豪快な空振りと、審判のコール。大塚の様子見に投げたボールはスプリット。

 

つまり、1打席目から本気。しかも切り札を初球に投げていく。

 

これは、流れを呼び寄せたいが為に投げた、夏予選決勝のカルロスに投じたものとは意味合いが違う。

 

 

―――――轟をねじ伏せるっ!!!

 

 

「――――――――」

対する轟は、その変化に驚きこそすれども、奇声を上げることはせず、ただ大塚栄治を見ていた。

 

 

続くボールはストレートが僅かに外れてボール。しかし、力を込めたボールのたたき出した球速は半端ではない。

 

 

『151キロボールッ!! 内角低め、わずかに外れてボールッ!!』

 

 

続くボールは外角の縦スライダー。これには轟もくらいついてきた。

 

 

「ファウルボールッ!!」

 

痛烈な打球がレフト線に飛ぶが、切れて応援席へと消えていく。

 

 

―――――やっぱこれには当てるよなぁ。

 

御幸は外角のボール球でも手を出してきた轟を見て納得する。当然、轟の頭には初球の空振りが突き刺さっているだろう。

 

しきりに下を見ている仕草が丸見えだ。

 

 

ゆえに、まずは圧倒する。轟に踏み込ませないために。

 

 

カァァァンッ、

 

 

内角高めにきっちりと投げ込まれた速球に完全に詰まらされた轟の打球は白洲の頭上へ、

 

 

「―――――――」

 

白洲が捕球体勢に入り、これを難なくグラブでキャッチ。第一打席はセンターフライに抑えた青道バッテリー。打球は完全に伸びはなく、力のないものだった。

 

 

 

『最後は150キロストレートに詰まらされてセンターフライッ!! しかし、緊張感のある対決でしたねぇ』

 

『えぇ、あの低めを意識する中、高めに対応するのは大変でしょう。しかし、当てることができたのは、轟君のスイングスピードだからでしょうね』

 

――――ははは、これ、俺にもこんな感じに投げてくるのかなぁ

 

次の打者である真田は、強烈な投球をしている大塚の姿を見て、そんなことを考えた。

 

 

 

続く真田に対しては、変化球中心の攻めで有利なカウントを手早く整えた。

 

 

――――変化球を狙って行けって言っても、こりゃ狙い球を絞る以前の問題だわ

 

変化球が多すぎる。それが、真田のスイングに迷いを生ませていた。

 

 

初球はボール球の縦スライダー。これを見た真田だが、2球目にその軌道から横に曲がった横のスライダーに反応できなかった。

 

 

今大会から大塚が多く投げているボールであるスライダー。しかし、その実4種類の変化をするもっとも手を出しにくい、攻略の難しい球種であることを思い知らされる。

 

 

これが、“本命の途中工程の産物”だと誰が信じるだろうか。

 

 

この甘く入ったスライダーに手を出せなかった時点で、勝負はついた。

 

 

続くボール外角の高速スライダー。変化の小さい、三島を見逃し三振に打ち取ったボール。これを見逃してしまう。

 

『外角に変化球決まってツーナッシング!! このボールは何でしょう』

 

『握りを見ると、スライダーですね。変化の小さい速いスライダー。カットとスライダーの中間あたり、ですかね。このボールが絶妙に効いていますね』

 

受けている御幸は、

 

――――制球がいいし、鋭い変化もする。スライダーの中で一番打たせて取れるボールなんだよなぁ、これ

 

変化こそ小さいが、リスクの小さいボールであることを実感していた。

 

スライダー系統の中で最も制球のいいボールはこのボールで、最も制球できないのは、高速縦スライダーである。

 

 

続くボールは外を意識した真田の思惑をくみ取った、真ん中、ワンバウンドの縦スライダーで空振り三振。

 

「面と向かってスライダー詐欺かよ」

 

「まあ、わかるぜ、気持ちは」

 

真田が苦笑いしながら、立ち去る際、御幸が相手に同情するかのようなコメントを残す。

 

 

 

まずは、沢村同様奥の手を出さずに済んだ大塚。続く6番平畠もシンキングファストで打ち取り、この回も薬師をノーヒットに抑える。

 

続く3回表麻生がカットボールに空振り三振を奪われるなど、青道も打線が沈黙。東条が鋭いライナーを放つも、センター阿部の正面を突いてしまう。

 

 

当初の予想通り、やはり決勝は投手戦。

 

 

一方の大塚は、薬師打線に付け入るスキを与えない投球。7番阿部、8番米原には内角を突くシンキングファストで内野ゴロを誘い、難なく打ち取ると――――

 

『縦のスライダー!! 空振り三振~~!!! 左打者にも威力を発揮するこのスライダーの前に、薬師打線は攻略の糸口を見つけられません!!』

 

『変幻自在のスライダー。落ちるボールもあるのに、これでは狙いが絞れませんね』

 

3回裏も三者凡退。薬師は不運にも、エース級投手と3試合連続で当たることになるので、野手陣が毎試合苦労している。

 

準々決勝の天久、準決勝の楊、そして決勝の大塚。

 

 

4回表、青道の攻撃は2番小湊から。

 

――――もう様子見なんてしないからね

 

小湊は木製バットを巧みに操り、際どいボールをカットする。

 

『これもファウル!! 外角の難しい球でしたが、流して逃れます、バッターボックスの小湊!!』

 

 

『木製を使うだけでも目を引きますが、彼はこれを自在に操っていますからね。すごい技術です』

 

 

そして、カウントツーツーからの7球目。

 

 

――――下半身を意識する、沈み込むように!!

 

ツーシームを引っ張ることなく、腰の回転でスイングした打球が、センターへと抜ける。

 

ボールに対して、強いインパクトを与える打球。

 

青道の策が功を奏し始める。

 

 

 

『センター前ぇぇえ!!! 先頭バッターが塁に出ます、青道高校!! ここで、3番白洲にどんな作戦を出すのか!!』

 

 

なんでもできる、器用な打者でもある白洲。

 

『送りバント成功!!! 一死二塁の場面を整え、打席には4番御幸!!』

 

 

―――――ここは真っ向勝負で来るか、初顔でヒット打つ奴が後ろにいるもんなぁ

 

ちらりと、次で待つ大塚の姿を見て笑う御幸。

 

「?」

こちらを見た大塚はきょとんとして、首をひねる。

 

 

初球はいきなりアウトコース。丁寧に投げてくる印象の真田。これを御幸はファウルするも、彼の球威を感じた。

 

―――――それを軽く打てる小湊の打撃センスはうらやましいぜ。

 

右打者で、2打席目にきっちり対応した小湊はさすがと、御幸は心の中で思った。

 

 

――――けど、あのカットボールに空振りを奪う2つ目があるのは意外だったな

 

真田のボールは基本速球系。だが、右左関係なく、縦に沈むカットボール、大塚と同じく高速スライダーとの中間のボールがあることを認識した一巡目。

 

詰まらせるボールと、空振りを奪うボール。先発をこなすうえで必要な球種だった。

 

続くボールはツーシームが外れてボール。低めを意識しすぎたか、コースが低い。

 

 

ここまでの真田を見て、そのうえで御幸がとるべき方法

 

逆方向を意識するのではなく、かといって引っ張るわけでもない。

 

 

 

―――――センター方向のみッ!!

 

 

3球目、低め、インローに落ちるカットボールを掬い上げた御幸。打球はセンター方向へと抜けていく。

 

 

『打ったぁぁぁ!!! センターまえぇぇ!! 二塁ランナー小湊が三塁回る!!』

 

走塁面での課題を感じさせるような打球でもなく、春市は難なくホームを目指す。

 

 

―――――うそだろ、あれをセンター前に運ぶのかよ!!

 

真田は、思わずライトを見たが打球がセンターへと抜けていくのを見て驚いた。

 

――――低めをあんなバット捌きで――――!!

 

秋葉も驚きの一打。

 

 

『ホームイン!!! 青道先制!! 4番御幸のタイムリーヒットでまずは先手を取ります! 送球の間に御幸は二塁を陥れる!!』

 

――――もたついているのがわかったし、やっぱ先制点は与えたくねぇよな?

 

外野からの返球は明らかに小湊を刺す意識だった。しかし、ここで薬師の守備が乱れたのを確認した御幸が、その隙を突いたのだ。

 

 

尚も一死二塁で、5番投手の大塚。第一打席では初見のツーシームをセンター前に運んだ。

 

 

『あっと、際どいボールでしたが外れてフォアボールッ!! 大塚を歩かせて、次は6番ファースト前園!!』

 

ここでチャンスが広がった青道だが、前園が痛恨のショートライナー。飛び出していた御幸も、

 

「げっ!!」

あえなくタッチアウト。

 

 

 

「くっ、」

悔しそうな形相で薬師を見ている前園だが、

 

「次ですよ。次です、ゾノ先輩。紙一重でしたし、打球方向がツイていないだけです。」

大塚が意気消沈の前園に声をかけたのだ。

 

「それに、ゾノ先輩が一番強い打球を放っていましたし、後はポイントです。スイング自体は一番いいですからね」

 

「お、おう!!」

 

 

――――こういう時、沖田もそんなことを言ってそうだよな

 

御幸は二人のやり取りを見て、ここにはいない沖田のことを思う。

 

 

「そうだぞ、ゾノ。打球は悪くない。あとは勝負の第三打席でとどめの一発を期待してるからな」

 

だが、性格の悪い御幸はここであえてこんな言葉をかける。

 

 

「期待してへんやろ!? 逆にプレッシャーかけんなぁぁ!!」

 

「まあまあ。それだけゾノ先輩のこの試合での役割が大きいのは確かですし」

 

「ワイの味方は大塚だけやぁぁぁ!!!」

 

 

4回表に先制するも、後続を打ち取られた青道。4回裏は薬師の2巡目。

 

つまり、2度目の轟との勝負。

 

1番秋葉との勝負を迎える大塚。

 

―――――ライチや三島、真田先輩に対しては明らかに力を入れている。

 

強打者相手にギアチェンジする余裕を持たれている。

 

――――下位打線含む俺たちには、セーブして十分かよ!

 

 

だが、ここで秋葉の予想を上回るボールがアウトコースに決まる。

 

 

ドゴォォォォンッッ!!!!

 

 

力感は感じなかった。しかし、初回の勝負とは明らかにボールが来ていた。

 

 

『アウトコース148キロッ、ストライィィクッ!! ここでこの球威ですか、調子が出てきたのでしょうか』

 

 

『力感を感じませんし、どうなんでしょう。まだ何とも言えませんね』

 

 

受けている御幸は、大塚のエンジンが温まってきたことを悟る。

 

――――ここからこいつの馬力は上がってくるぞ。

 

ここからは、尻上がりに伸びもキレも上がっていく。変化していく。受けるほうも大変になる。

 

 

 

 

続くボールは、その速い球を意識した秋葉の体勢を崩すボール。

 

 

――――チェンジ、アップ――――っ

 

 

軽い金属音とともに弱い打球が大塚の前に転がる。

 

 

―――――コンパクトスイングだから、かな。けど、

 

これを難なくピッチャーゴロに打ち取る大塚。

 

 

これを見ていた2番の増田は、

 

―――――150キロ近いボールに、20キロ以上の緩急。

 

スライダーのことで頭がいっぱいになっていた薬師に対して、さらに緩急を2巡目で使うようになってきた青道バッテリー。

 

さらに考えることが増えたことに、表情がこわばっていた。

 

 

 

 

―――――いやぁ、もう。泣きたくなるよな。トーナメントで対応するのは至難だろう

 

その増田が打席に入るが、狙い球を絞り切れていないらしく、

 

「ストライィクッ!」

 

初球のストレートに手が出ない。球速は大塚にしては抑えめの142キロ。外側いっぱいに決まり、

 

続く2球目はバックドアのシンキングファスト。動くストレートがボールゾーンからアウトサイドに決まり、これで追い込む。

 

増田はここまでバットを出すことができていない。

 

 

―――――ここは一球ボール球、縦スラで誘うぞ。

 

 

そしてそれまでバットが出てこなかった増田はこれに食らいつく。追い込まれてからこの縦のスライダーに当ててきた。

 

 

しかし4球目の釣り球に引っかかり、三振。

 

 

続く3番三島に対しては、

 

 

「うおっ!?」

 

インコースのストレートをファウルした後の、ドロップカーブに体勢を崩され、尻餅をつく。緩急といっても、このカーブのせいで高低すら使われるので、一概にワンパターンの緩急とは言い難い。

 

 

―――――追い込まれた、次は何だ!? スプリットはライチにしか投げてねぇ!!

 

三島は、大塚がスプリットを投げてこないことで、この球種はないと断定できていた。

 

―――――ふざけんな、ペース配分!? 完投のため? ここまで露骨だと、苛立ちしかねぇぞ!!

 

 

絶対に打つ、絶対に打ってみせると意気込む三島。

 

 

――――――そろそろ、投げるか? 高速縦スライダー。

 

御幸がついに解禁を提案してきた。そのサインに大塚は微笑んだ。

 

「!?」

そのやり取りを知らない三島はわけがわからないと首をかしげる。が、その笑顔の後の大塚の、こちらを凍りつかせるような闘志を感じ、

 

―――――何か来る、ついに来るか、スプリット!?

 

 

 

『マウンドの大塚、追い込んでから第3球――――』

 

 

ノーワインドアップから投げ込まれたその一投に、観客はくぎ付けになる。

 

 

――――――速いボール! ストレートじゃないならスプリット!! 

 

 

三島はこれを見送る判断をした。手は出さないと。そしてそれは正しい。

 

 

正しかった。

 

 

 

―――――スプリットの軌道を盗んでおか―――ッ!?

 

三島の目には、明らかにスプリットではない軌道が見えていて、その視界からボールが消えた。

 

 

強烈な変化に三島は目が点になり、見送る判断ができていなければ、振っていただろうと確信した。

 

 

――――な、なんだよ。スライダー!? 縦!? なんだ今の球は!?

 

見送ったのに、気圧されていた。

 

 

その様子を見ていた御幸は、

 

――――スプリットが来ると張っていたな。ボールなんだけど、この様子。

 

 

明らかに、想定を上回るボールが来たという顔をしている。つまり、このボールに不調があるわけではなく、変化が早いというわけでもない。

 

 

『3球目はかなり早いボールでしたね、140キロで変化しましたよ? スプリットでしょうか?』

 

 

『スライダーですね。高速スライダーの縦変化。変化の小さいボールがありましたので、2種類ですね。』

 

 

 

薬師ベンチも大塚が初めて投げるスライダーには

 

「―――――スライダーだけでも5種類だとぉぉ!? あいつ、本当に高校生か!?」

 

 

「正直、自信がなくなりそうなんすけど。こっちが二球種目のカットとツーシームを覚えたら、相手はスライダーが増えていたって――――けど、なんであのボールを多投しないんすかねぇ」

 

真田の疑問に轟監督の頭に電流が走る。

 

「―――――そうか、あのボールにはまだ何か不安があるみてぇだな。ライチの前に三島で試すつもりだったんだろう。」

 

 

「試す? 見た感じやばい球ですけど―――」

 

 

「色々あるだろ? 制球が利かない、もしくは――――」

 

 

その縦の高速スライダーをこぼしている御幸の姿を見て、

 

「捕手が捕り切れねぇボールだとかな」

 

 

ぶん回せば、振り逃げだって狙える。監督はそう言っているのだ。

 

「三島が正直出れるかどうかわからねぇが、あのボールはスプリット同様、ラストショットにするにはリスクが大きすぎる。つまり、雷市の狙い球は、追い込まれてからのストレート一本だ」

 

 

そして目の前でストレートに空振り三振に倒れる三島の姿を見て、轟監督は一層確信する。

 

 

「ほかの奴らには、決め球にその他諸々の変化球を使っているが、強打者相手には150キロ前後のストレートがほとんどだ。チェンジアップもあるだろうが、雷市には決め球に恐らく投げてこねぇ。お前には追い込む時に使うかもな」

 

「――――つまり、準々決勝と同じってことっすね」

 

「まあ、そういうことだ。甘い球が来たら、打ってもいいけどな。狙いがバレずに済む」

 

 

薬師の4回裏の攻撃が終了し、守備に向かうナイン。

 

 

「まあ、追加点を奪われないようにな。正直、1点ならワンチャンある。2点目は厳しい。」

 

 

「そりゃあ、あれだけの投手っすからね」

 

 

 

5回表、1点こそ失ったものの、真田はその後ランナーを許さない投球を続ける。金丸をセカンドゴロに打ち取り、得意のツーシームがさえわたる。

 

 

「くそっ、沈むっ」

沖田不在の影響をもろに受けている金丸。力みが取れない。

 

 

8番麻生も外のカットボールに空振り三振を奪われ、相手にならない。主軸に連打を許したものの、投球を立て直しつつある薬師のエースは止まらない。

 

9番倉持も惜しいサードゴロに打ち取られ、青道の攻撃は何も起きずに終わる。

 

 

しかし、対する大塚も5回裏は轟相手にほぼすべてのボールをちらつかせる投球。

 

 

初球から例の高速縦スライダーがさく裂。

 

 

「!!!!」

 

途中からボールが消えるこのウイニングショットがインローに決まり、バットに掠りもしない。しかも、ストレートと思ってしまったボールがここまで曲がるという感覚は、彼にはほぼないといっても過言ではない。

 

『138キロの落ちる変化球!! 高速スライダーに掠りません!』

 

『これがスプリットではないですからね。スライダーでこのスピードはおかしいですよ』

 

切れもスピードも、準々決勝の市大三高の投手とは次元が違う。

 

 

続くボールはアウトコースストレート。これが僅かに外れてボール。追い込みにいったボールが外れ、苦笑いの大塚。

 

しかし、続くカットボールで内角を突き、ファウル。カウントを奪うことに成功する青道バッテリー。

 

 

今、轟の頭には初打席のSFF、そして第2打席の高速縦スライダーの両方が深く突き刺さっていた。

 

 

『カウント1ボール2ストライクからの4球目!! 落ちたぁぁ、空振り三振!! 強打者轟を抑え込みます、マウンドのエース大塚!!』

 

 

ここでインローの高速縦スライダー。左打者の泣き所といえる場所を突いた見事な投球で、轟を抑え込んで見せた大塚。

 

 

「―――――マジかよ」

 

その目の前の光景を見て、真田は呆れる。

 

 

御幸は、不安の残る高速縦スライダーを躊躇いなく決め球に使ってきた。ワイルドピッチ、振り逃げの可能性もありうるボールを使う。

 

 

青道バッテリーのこの試合にかける意気込みを思い知らされた。

 

 

ベンチの轟監督も、

 

「――――おいおい。怖いもの知らずも大概にしろよ。」

 

死力を尽くす、青道バッテリー。その気迫に感じるものがあったのか、彼はその姿に息をのんだ。

 

一歩間違えれば、たちまちノーヒットでピンチを作りかねない配球。バッテリーの手に余るような決め球を軸にする綱渡りリード。

 

何よりも、主将御幸の絶対に逸らさないという強い意志が感じ取られる。

 

 

続く真田もスプリットを多投しての空振り三振。追い込んだ時に、そして決め球にも1球ストレートを挟んで真田をねじ伏せた。

 

 

『空振り三振~~~~!!!! これで前の回から4人連続!! 大塚栄治、5回裏二死の時点でいまだヒットはおろか、ランナーすら許しません!!』

 

『イニングを追うごとに球も切れてきていますね。』

 

続く6番平畠が動くボールに詰まらされ、連続三振は途切れるものの、大塚は仁王立ちで薬師の前に立ちはだかる。

 

 

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