ダイヤのAたち!   作:傍観者改め、介入者

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???「1年生には負けていられない」

????「俺も頑張らなきゃ」


さて、この二人は誰だ!?



第13話 開幕!! 関東大会!

5月18日。春の関東地区高校野球大会。

 

春季大会は東京都を含む8都県の春季大会優勝…準優勝校および開催県の3、4位の2校を加えた合計18校が基本の出場校を合わせた大会であった。

 

 

これに1973年の第25回大会からは直前の選抜高等学校野球大会でベスト4に進出した高校が関東高野連推薦枠として出場し、その数はさらに増えていった。

 

 

なお、推薦出場校は各都県予選にも参加するが成績に係わらず1位校として出場する。このため推薦出場校以外の高校が各都県予選において優勝した場合は2位校として出場することになる。

 

また、推薦出場校が各都県予選で関東大会出場権の圏内の成績まで勝ち上がった場合は当該成績の次点校が繰り上げ出場することが決められており、東京都については本大会に参加はするが、開催はしないため秋同様の7県で持ち回り開催を行う。

 

この大会の勝者が必ずしも夏を制するわけでもなく、その権利もない。だが――――

 

 

数多の関東の強豪校は、古豪青道高校の復権に震撼する。

 

ガキィィィン!!!!!

 

『は、入ったァァっぁ!!! 今日ファーストで先発の3年生結城哲也!! 二打席連発のホームランっ!! これで4打点を挙げ、この3回で常葉水川のエース、松原を引きずりおろしました!!』

 

淡々とダイヤモンドを廻り、打った投手へは見向きもしない結城。打たれた投手はそんな飄々とした彼を睨みつけようとするが、打たれた打球の大きさを前にし、それは負け犬の遠吠えと何ら変わりはなかった。

 

これでスコアを5-0とし、圧倒的リードを作る青道高校。相手は千葉の上位ランクに位置する高校だが、その投手陣の中心を粉砕して見せた。

 

「ふしっ!!!」

 

 

そして、そんな大量リードを貰った丹波は、落ち着いた球を投げることが出来、4回まで3安打無失点。球数もまだ60球と少し多いが、及第点といえる滑り出し。

 

「打線が力強く丹波君を援護したのか、今日は調子がいいですね」

高島礼は、この丹波の復調は、大きいと監督に申し出る。丹波は最高学年で、これまでの青道を背負ってきた自負があるとはいえ、一年生に才能豊かな投手が複数入り込んだのだ。彼にも危機感というのが働いた。

 

「調子いいですねぇ、丹波は。これなら6回までいけそうですね。」

太田部長は、いい意味で開き直っている丹波の投球に、手放しの称賛を送る。

 

「そうですね。腕の振りがいいので、打者はタイミングを合わせづらいでしょう。これまでは彼の代わりがいませんでしたが、1年生の台頭が彼にもプラスに働いたようです。」

 

「うむうむ。今までの炎上はなんだったのか」

とにかく勝負所で炎上することが多かった丹波。青道のエースと言われてはいるが、調子に左右される不安定な投手。

 

「ですが、次の試合の大塚君、その次の沢村君の出来次第では、まだエース争いは続きそうですね」

高島は、ロングイニングを投げられる3人の投手にエース争いは絞られたと言ってもいいと断言する。公式戦初先発で、2人がどんな投球をするのか。

 

「実力だけではエースとは認めん。エースの振る舞いは、チームに多大な影響を与える。あまり言いたくはないが、バカすぎるのも考え物だ」

スタンドで何やら騒いでいる沢村を見つけ、片岡は溜息をつく。

 

スタンドでは、

 

「すっげぇぇぇぇ!!! 何だあのカーブ!? 紅白戦の時よりスゲェェェェ!!!」

 

「腕の振りがいい。やっぱり、すんなりエースナンバーは貰えるわけないか」

流石の投球をしている丹波に、大塚も舌を巻く。

 

 

しかし、魔の6回。丹波は先頭打者に四球を与え、続く打者をフライに打ち取るも、

 

「ボールフォア!!」

 

 

これで一死一塁二塁。ここまで無失点の丹波。エース争いで一歩抜け出すためにはここを抑える必要がある。

 

「どんまいどんまい!! 球は走ってますよ、丹波さん!!!」

ホームからは御幸の声が聞こえてくる。だが、丹波の精神状態は今までと同じく、追い詰められていた。

 

――――フォアボールで走者を出し、置きに行った球を痛打される。

 

あの時の言葉が蘇る。

 

―――――丹波、お前は3年間、何をやってきた?

 

その通りだった。そんな弱い自分を変えたくて、市大にはいかず、敢えてこの青道に入った。

 

――――かっちゃんに勝つために、後ろをただついていくのは、もう嫌なんだ!!!

 

 

丹波の目に光が戻る。何のために、何をしてここまで結果を出せた?

 

この試合はこれまで、自分がどういう風な意識で投球をしていた?

 

 

――――開き直れ………ッ 腕を振り抜け!!

 

自分に言い聞かせるように丹波は心の中で呟いた。

 

 

――――丹波さんの悪い癖が出始めている。今は厳しいコースを要求すると甘く入るかもしれない。

 

御幸も、いつもの炎上の予兆を感じ取ったのか、内に構えづらくなっている。

 

――――仕方ない、この右打者には外のストレート、ボール球で、反応次第で次の球を………

 

しかしマウンドの丹波。ここで御幸のサインに首を振る。

 

―――――丹波さん?

 

 

――――逃げるわけにはいかない。3年間の意地、エースとして、俺は逃げない。

 

丹波の集中力がまだ切れていないことを確認した御幸。

 

――――いい意味で触発されてますね、先輩方。アイツの加入はやっぱ大きいわ

 

 

躊躇いなく御幸は内にミットを構える。

 

――――丹波さんの納得できる球を、このコースに!!

 

丹波がセットポジションから投げる――――

 

「ふしっ!!!」

 

 

コースは完璧。インコースの際どいボール。ストライク判定されてもおかしくなく、置きに行った球でもない。

 

カァァァァンッッ!!!!

 

「ぐっ!!!」

相手打者も、そのストレートに押し負け、打球を打ち上げてしまう。

 

 

「ショートっ!!!」

 

御幸の鋭い声。完全に打ち取った球。何とかとってほしいと祈るが、

 

 

ダンッ!!

 

僅かに倉持が捕球できず、二塁ランナーがスタートを切っているのも重なり、1点を返される。

 

センターへのタイムリーヒット。これで一死一塁三塁。尚もピンチが続く。

 

「……………っ!!!」

悔しそうにする丹波。リードに応えた、そして最後までコースを突いた投球が出来ていた。だが、結果打たれてしまった。

 

「丹波さん。球は来ていました!! 落ち着いてアウトを一つずつ取ってきましょう」

御幸がフォローをすかさず入れる。最終的にコースを選択したのは捕手である自分。自分のミスでもあることを伝え、投手のショックを和らげる言葉を送る。

 

「すまん。熱くなりすぎた。」

 

「けど、まだピッチングは崩れていないですよ。」

 

 

内野陣も2人の方へと近づき、

 

「気持ちが乗っている。大丈夫だ、丹波(いつもと違う。まだ切れていないぞ、丹波)」

増子も、丹波が気合を入れていることを感じ取っている。この試合で彼が変われるのであれば、その力になりたいと思う増子。

 

「落ち着こうよ、丹波。闘志は十分伝わっているし」

小湊が笑みを浮かべながら丹波の左肩をポンポンと叩く。

 

「ああ。コントロールミスではない。不運な当たりだった。」

結城も、丹波がこの試合で一皮むけるのではないかと期待してしまう先程の勝負を、責める気持ちなどない。

「すいません。打ち取った当たりだったのに……」

謝罪する倉持。丹波の気持ちの乗ったボールであったことは確か。

 

「気にすんな。お前の足で捕れなきゃ、うちのチームじゃ誰にも取れないよ、あれは」

御幸がフォローを入れる。

 

「……こういう時は優しいのな」

日常生活では意地の悪い悪友である御幸からの優しい言葉。倉持は思わずそう言ってしまうが、

 

「捕手ですから♪」

と微笑む御幸。この言葉で説明できてしまうほど、御幸は捕手なのだ。

 

 

「みんな…………」

 

「納得のいくボールを投げこめ。御幸なら取ってくれるだろう」

 

「アハハ、全力を尽くします………」

パスボールやワイルドピッチは厳しいなぁ、と内心思う御幸だが、そんなことは間違っても口に出さない。折角腕を振りきっている今、そんな言葉で腕を縮こまるようになれば逆効果。

 

――――丹波さんの成長が、夏を戦ううえでの大きな収穫。その炎を俺が消すわけにはいかない。

 

 

続く左打者。今度は一転して、

 

ククッ、クイッ!!

 

「くっ!!」

 

二球続けてのカーブの連投。初球カーブで入り、二球目のカーブもバットを出してくれたのだ。これであっさりと追い込んだ丹波、御幸バッテリー。

 

――――これで外のボールが気になるはず。うちのストレートで詰まらせる。

 

 

カァァッァンッっ!!

 

「ファウルボールっ!!」

 

左打者はその厳しいボールをカットすることで、御幸のもくろみから逃れる。

 

――――インコース高め。ボール球。振ってくれれば儲けものだ。その後対角線で外のストレートで打ち取る!

 

 

ズバァァァァンッッ!!!

 

「うっ!!」

反射的に反応してしまった打者。しかしバットまでは出すことはなく、

 

 

「ボ、ボールっ!!」

審判もスイングを取るかどうか迷うほどの瀬戸際。

 

――――ちっ、ここでけりがつけば楽だったんだがな。アウトローの真直ぐ。これで決めますよ、丹波さん!!

 

 

「ふしっ!!」

 

 

アウトローへの理想的なストレート。当たってもヒットになる確率は低い。

 

 

「グッ」

 

かァァァァァンッッッ!!!

 

 

「なっ!!!」

打たれた瞬間、丹波はその打球の方向へと視線を移した。

 

レフト方向へのフライ。犠牲フライには十分の距離。3塁ランナーがタッチアップ。

 

これでこの回2失点の丹波。だが、今までと比べてもその内容は悪くはない。

 

「ドンマイ、丹波さん!! 球に負けてましたよ、あの打者!」

 

「あ、ああ…………」

 

――――さすがに、そこまで理想通りにはならないか。

 

丹波は自分の投球をしても、こういう不運な当たりが出てくることを自覚した。

 

―――――…………だが、この試合で俺の課題が見つかった。

 

2失点してもなお、丹波の目には闘志が燃え滾っている。

 

 

 

続く打者は、

 

 

ズバァァァァンッッ!!!

 

「ストライィィィクッ!! バッターアウト!!!」

 

カーブがコースに決まり見逃し三振にとって斬る丹波。後続を打ち取り、何とか6回2失点で切り抜けたのだ。

 

「しっ!!!」

ガッツポーズを見せる丹波。

 

「ナイスピッチ、丹波!!」

 

「うがぁぁぁ!!!」

 

「バカ野郎!! 心配したじゃねェか!!!」

 

「大きな一歩になるな、丹波」

 

「ああ………っ!!」

 

同期の上級生たちは、今まで見たことがないほど充実している表情を見せている丹波を目の当たりにした。

 

――――俺達のエースは進化する。

 

――――まだ丹波はこんなものではない。

 

――――夏までにまだまだ進化してくれる。

 

各々考えていることは違うが、この試合を機に、彼の纏う空気が変わりつつあることをナインは悟る。

 

「崩れるかと思いましたが、踏みとどまりましたね」

それはベンチの面々も気づいていた。あの状況での精神力こそが、丹波の一番の弱点であり、欠点だった。だが、彼は集中力を切らさなかった。

 

「ああ。この試合の価値は、奴にとって本当に大きなものになるだろう。」

片岡も、一皮むけてベンチに帰ってきた丹波を出迎える。

 

「攻めの姿勢、そして集中力を切らさない。ようやく一本立ちしてきたな」

 

「!!!!!」

片岡監督からの賛辞。丹波はその言葉に驚いた。

 

「今日の投球と、今日の意識を忘れるな。それがお前を大きく成長させる。」

 

「はいっ!!!」

弱い自分を変えるためにこの3年間、何度も壁にぶつかってきた。だからこそ、壁を乗り越えた喜びを誰よりも知っている。

 

 

「次の回も投げられるか、丹波?」

 

 

「行けますよ、俺は!!」

丹波の7回も続投する意志を聞き、片岡は短く「3人で料理して来い」というのだった。

 

 

 

結局、4打席目で結城はベンチに退き、試合は最後まで青道ペースに。スコアは8-2と圧勝。エースを打ち込まれた常葉水川にとっては、夏に向けて厳しい結果となった。

 

この試合、丹波は7回を投げて106球。被安打5。7つの三振を奪い、2失点。四死球は2だった。彼自身の中で、今の投球に限界を感じたらしく、丹波は試合後に試したいことがあるらしい。

 

それでも完全に崩れることなく、持ち直すことが出来、成長を見せた。

 

 

続く二番手川上は、2回を投げ、被安打2、1三振。四死球1と、課題を残したが、何とか無失点に抑えた。

 

しかし、長年崩れることが多かった二人の投手が踏ん張ったことは、青道にとってはとても有意義な試合だった。青道は準々決勝へ、弾みをつける大勝となった。

 

 

 

「ピンチだったけど、あの人崩れなかったね」

大塚はあの時とは雲泥の差だと感じた。彼はマウンドで投手が一番示さなくてはならいことを成し遂げたのだ。

 

「ああ。あの時は勝負する前から負けていた。だが、今は違う」

沖田も、丹波がこの試合で一歩先へ進んだことを感じていた。

 

「倉持先輩だらしない!! あの打球は投手からしたらとってくれないと」

沢村はあんな不運ヒットは倉持の足を鑑みれば捕れていた打球だった。なので、

 

「2失点だったけど、1失点すね、アレは」

なお、この発言を聞いた倉持が後で沢村を締めた模様。

 

「まあまあ。あの振りを考えると、外野までいくと一瞬考えたんだろうね。よくあるポテンヒットだよ。投手ならあれは避けられない。」

大塚も、やけにバットの振りが鋭く感じられた。だからこそ、彼は打球の飛距離を勘違いしたのだろう。

 

「けど、これでエースは厳しいな、大塚、沢村」

沖田は、丹波がエースらしい投球をしたことで、1年生の二人は余程でかいことをしないとエース争いから脱落すると考えていた。

 

 

―――同じ成績、同じイニングでは恐らくエース争いに終止符が打たれる。

 

沢村は、丹波に負けない投球をすることを意識する。

 

――――完封、完投ぐらいしたら、まだ振り切られないかな。

 

それだけの投球をすれば、まだエース争いで取り残されないと考えた大塚。

 

次の試合。横浜北学園との試合で、先発を言い渡されている大塚。ここでの投球が、夏の背番号との距離を測る試合になるのは明白。

 

――――18番か、それとも11番か。はたまた1番か…………

 

 

それを決めるのは自分の力。

 

 

 

 

そして青道首脳陣サイドでは、

 

「丹波が復調したのは喜ばしい事ですが、明日は大塚が投げますからね」

 

「ええ。明後日の地元の朝刊に載るのが目に見えていますね」

 

「実力通りならな。奴が自分の投球をすれば、それほど難しい事ではない。問題はそれをできるかどうか。」

 

片岡監督は、自分とは違って理知的な大塚に少なからず興味を持っていた。自分は入部当初は問題児だったことを鑑みれば、あれほど手のかからない学生は逆に心配になるモノだ。

 

――――奴が結果を出せば、エース争いは継続。もし打たれれば、奴の課題が見つかり、今後に活きる。

 

 

故に、片岡は明日の試合で大塚に結果をそれほど求めているわけではない。逆に、悪いモノが出て、今後に活きる試合ならばそれで十分なのだ。

 

だが――――

 

――――野球人として、奴の高みを見てみたいのは、否定は出来んな。

 

試合の前日、ここまで落ち着いていられる夜を過ごしたのは、久しぶりな気がした監督であった。

 

 

 




たんば「もうメンタルが弱いなんて言わせない」

異議なし


かわかみ「川上んゴとは言わせない」

なお、毎回劇場を開場するエンターテイナーの鑑、川上劇場。今日は印象が薄すぎた模様。


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