ダイヤのAたち!   作:傍観者改め、介入者

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けど、大阪もやられっ放しではないんだよね。


第24話 至る者

今日の試合、相手は大阪桐生第一。全国屈指の西の名門。

 

「今日は朝も早い時間からわざわざお越しくださってありがとうございます」

「いやいや、ウチにとってもいい経験になります。礼なんていりまへん」

 

 横に大きい体に大きな福耳。まるでどこかの教えに出てくるような中年の男は大阪桐生高校監督、松本隆広である。

 

ほくほくした顔で、片岡のねぎらいの言葉をやんわりと断った。

 

 試合前ということで雑談もそこそこに、二人の監督は固く握手を交わし、持っていたオーダー表を交換した。

 

「夏も近いですし、お互い良い試合にしましょう」

まずは無難な受け答えをする片岡監督。だが、相手はそれを無難とは思っていないようで。

 

「いい試合………それにしては一試合目の青道さんのオーダーに1年生がまじっとるようですが?」

青道のオーダーは、本気なのか、それとも試しているのかすらわからないモノだった。

 

1番 小湊亮介 (3年) セカンド 

2番 白洲健次郎(2年) ライト  

3番 沖田道広 (1年) ショート

4番 結城哲也 (3年) ファースト

5番 増子 透 (3年) サード

6番 伊佐敷純 (3年) センター

7番 御幸一也 (2年) キャッチャー

8番 大塚栄治 (1年) ピッチャー

9番 東条秀明 (1年) レフト

 

「松本監督」

 

「しかも一試合目に出すあたり、余程将来性のある選手………特に、大塚君はそうやろうなぁ………」

大塚は関東地区大会で目覚ましい活躍を上げている。故に、マークされるのは必然。

 

「彼は並の投手ではありません。他の1年生二人も、私に飛躍を予感させてくれる選手たちです。そちらを侮っているわけではありません」

 

 

「そう言う事ですか。まあ、この話はこれくらいにして今日はよろしくお願いしますなぁ、片岡はん」

 

両校の選手が試合前の礼を終え、それぞれの持ち場へと向かっていく。先攻である大阪桐生はベンチに戻って素振りを行い、逆に後攻めとなる青道のスターティングメンバー九名はグラウンドへと散らばった。

 

特に、東条は初の一軍のスタメン。強い気持ちを持ってこの場に臨んでいた。

 

 

そしてベンチ前にて沢村と降谷は、黙って大塚の投球を見ているだけだった。

 

 

それは二日前のブルペン。

 

ドゴォォォォンっ!!!!

 

キュインッ!! ククッッ!!

 

唸りを上げる直球に切れ味鋭い変化球。そんな姿を見せつけられ、一瞬でも彼に敵わないと思ってしまった。

 

だからこそそんな彼の先発試合、相手は昨年の準優勝校。どういう投球をするのか投手として興味があった。

 

 

 

 

まず第一球。大塚が投球動作を始める。

 

そして放たれたボールは、

 

ズバァァァァンっ!!!

 

「…………は…………?」

データとは違う直球を投げ込まれた一番打者は、驚きを隠せない。

 

「………な……………!!」

松本監督も、これには驚いた。

 

大阪ベンチもこの一球で目の色が変わる。

「1年であのスピード!?」

 

「だが、あの降谷って奴はもっと速いって話だぞ!!」

 

「今年の青道のルーキーはどうなっているんだ!?」

 

青道高校の投手陣の活躍は、春の関東大会でのデータを入手しているために、おおよそを把握しているつもりだった。

 

しかし、彼はもうあの時の大塚ではない。

 

 

 

――――140キロを軽く越しとるやないか、確か地区大会までは前後やったのに………

 

あっさりとツーストライクと追い込まれた先頭打者。

 

ギュインっ!!

 

「あっ………」

 

ズバンッ!

 

「ストライィィクッ!! バッターアウト!!」

 

最後はスライダー。横に滑り落ちる、タイミングを外すスロースライダー系。打撃を完全に崩され、タイミングの合わないスイングで打ち取られる。

 

ズバァァァァンッッ!!

 

続く打者には癖球を切れ込ませ、簡単に内野ゴロに打ち取る。右打者の内角をえぐるカットボールが打者のバットをねじ伏せた。

 

 

 

 

ドゴォォォンッ!!

 

「くっ!?」

当たらない。腕の振りが鋭く、手元でかなり伸びている。さらには力感を感じないフォームである為、タイミングも取りづらくなっている。

 

ドゴォォォォンッッッ!!

 

 

三番打者を速球で空振りを二つ奪うと、大塚は御幸からあるサインを送られた。

 

――――ここで解禁しろとお達しだぜ。もう我慢はいらねぇぞ

 

「…………!!」

そのサインを見て、大塚はこの打者は完膚なきまでにねじ伏せると決意する。

 

「!!」

既に余裕をなくしている相手打者。ベンチのムードも慌ただしくなり、地区大会とは別人の大塚の投球に圧倒されていた。

 

ギュイィィンッッ!!!

 

ストンッ!!

 

「………な…………(ボールが………消えた…………!?)」

まさに打者の視界から消えたと錯覚させるようなボール。そして、バットを持った手すら震えさせるその圧倒的な決め球。思わず後ろを見てしまうほどの圧倒的なボール。

 

 

大塚のスプリットが帰ってきた。

 

 

「おい………今のは…………フォークか!?」

 

「あんな直球に、縦の変化だと………!!」

 

「なんで去年名前すら聞かれなかったんだ………それにあの球、地区大会で一球も投げていなかったぞ!!」

 

「地区大会は本気じゃなかったのかよ………」

 

圧巻の投球で、大阪桐生の出鼻をくじく大塚。その投球の前に、大阪桐生は動揺が広がる。140キロを優に超えるストレート、キレのいい癖球、スライダー、そして、SFF。

 

どう見ても一年生のレベルではない。

 

「怪物…………」

 

その名が相応しい。

 

逆に青道高校は勢いづく。

 

初回、先頭打者の小湊はまずゴロに打ち取られ二番の白洲も三振。二死ランナーなしの場面で、

 

三番、ショート、沖田。

 

―――相手は一年生だ、お前の球威で押して行け、舘!

 

マウンド上で投げる3年生投手、舘広美は、青道に行きかけている流れを取り戻すべくこの1年生を打ち取ることに闘志を燃やす。

 

―――沖田………沖田………どこかで聞いたことのある名やなぁ………

 

松本監督は、沖田道広についてかなり引っ掛かっていた。

 

彼はその名前をどこかで聞いている。そしてあの雰囲気、風格は、ただの一年生ではないことを。

 

――――沖田………ショート………まさかっ!?

 

カキィィィンッッ!!!!

 

特大のファウルが撃たれた瞬間に、松本は思い出した。

 

「ファ、ファウルっ!!」

際どい当たり。初球のストレートを簡単に運んで行ったのだ。バッターボックスでは、仕留めそこなったと、やや表情が苦い沖田。

 

「………!!!!」

そして、舘は自慢の重い球質のストレートを初見であそこまで飛ばす一年生に衝撃を受けていた。

 

「思い出したわ………尾道の怪童………沖田道広………!! なんで青道に………!」

 

全国制覇原動力となった広島のシニアでは伝説的な遊撃手。中学3年時には姿を現さず、そのまま消えたと思われていた。

 

だが、彼は青道にいた。

 

「ふぅぅ…………」

軽く息を吐く沖田。そして、その様子をバッターボックスで見守っている結城。

 

――――お前の努力が無駄ではなかったことを、お前の今を見せつけてやれ。

 

カキィィィンっ!!!!

 

そして、外角のスライダーを広角に捉えられた当たりは、ライト線フェアグラウンドに落ちる長打。

 

ダッ

 

当然沖田は二塁を蹴る。

 

「いきなり三塁打にさせるか!!!」

外野からの好返球。しかし、打球のコースがよかったため、沖田は悠々と三塁ベースに到達する。

 

 

「よし………」

スライダーをうまく運んだ沖田は、三塁に到達。ランナーなしの場面から一気にチャンスメイク。ストレートに合わせられ、変化球にも対応する打撃。

 

なによりも勝負強いその特徴的な打者。ここまでくれば、彼が本当に尾道の怪童に偽りなしと言わざる得ないだろう。

 

 

 

「あの逸材………そういや、行方をくらます前にうちも誘ってたわ………けど、広島からなんで東京なんや………」

 

そのあまりにも接点のない土地同士の移動に、松本監督は困惑するしかない。怪童がなぜ関東にやって来ているのか。青道はどんな魔法を使ったのかと。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

そして、後輩がホームランしなかったことで、三塁にランナーがいる状況で打席が回った結城がバッターボックスに入る。

 

―――頼みます、先輩!!

 

そして――――

 

 

カキィィィンッッ!!!

 

「くっ!!(センター前!? クソッ、捕ってくれ!!)」

打たれた舘は、センターへと飛んだ打球を見て、センターの捕球を期待した。

 

「!!(コースに入った!! それにしても舘の奴、初回から打たれすぎやねぇか?)」

外野手が捕球体勢に入る。眼前には強い打球が飛んでくる。

 

しかし――――

 

ギュゥゥゥゥゥンッッッ!!!!!

 

「なっ!? ば、ばかなっ!?」

外野手が勢いを失わない打球を見て驚愕する。まだまだ矢のように打球が伸びていくのだ。

 

「うわっ!!」

 

そしてそのまま打球は―――――

 

ダンッ!!!

 

 

結城の放った一撃は、センターへのフェンス直撃の先制ツーベース。初球ストレートをセンター返しに打った打球がとんでもなく伸びたのだ。

 

沖田の十字ティーバッティングをする前から、彼はすでに自分のポイントをある程度持っていた。だが、その感覚がさらに鋭敏になった場合、

 

さらに、力を逃がさない、強い打球を打てるようになった場合。

 

 

右に引っ張るかのような、痛烈な打球が飛ぶようになったのだ。

 

「センター前やと思った打球が、フェンス直撃!? 意味の分からん打者や……」

岡本監督の表情が引き攣っていた。というより、大阪ベンチも、あまりの打球の鋭さに、言葉をなくしていた。

 

 

一方青道ベンチでは、

 

 

「ナイスバッティング、哲!!」

 

「初回から半端ねぇぞ!!」

 

「頼もしすぎますね、うちの打線」

大塚もベンチへと帰ってきた結城主将に声をかける。

 

「お前がいい投球をしているんだ。俺達もそれに応えなければな」

 

 

 

そして回は2回の表。バッターはエースで四番の舘。初回1失点。続く増子をスライダーで三振に打ち取り、後続を断ったものの、自分のバットで取り返そうと意気込んでいた。

 

しかし―――

 

大塚の纏う空気が変わった。彼は他の選手と比べても別格の選手であることを感じ取った。

 

 

――――遠慮はいらねェ。あの球でねじ伏せに行け!!

 

御幸は、そんな彼の様子を見て、あのフォームを使うことを指示する。

 

それを見た大塚は―――

 

――――いいでんすか? ここまでのバーゲンセールは本選で厄介な相手を作りかねませんよ?

 

大塚としても、そのフォームを使わずに抑えられる可能性が高いと感じていた。SFFを見せて尚、このフォームまで晒すというのか。

 

―――――とりあえず、打者に向かって、どれほどの威力なのかを確かめたい。

 

御幸は実践こそ最大の成長だと考えていた。大塚には実戦でどんどん自分の力を試してほしい。

 

この試合を最後に、もう試せる機会はないのだから。

 

 

――――――でもまあ、試してみたいというのは、俺も同じかな?

 

御幸の要求に応える大塚。絶対にねじ伏せたいという気持ちが強くなる。

 

 

ドゴォォォォォォォンッッッッ!!!!!

 

「!?」

 

初球まずは高めのストレートに振り遅れた舘。さらにはボールの下を振っているという屈辱的な空振り。

 

唸りを上げるようなストレートでもない。だが、自分はストレートを打ちにいき、掠ることすらできなかった。これは、彼にとっては久しぶりの経験である。

 

――――何だ、このストレートは………浮き上がるような。それでいて、初速と終速があまり変わらない…………

 

まさに弾丸を相手にしているような感覚。ベンチで見ていたボールとは少し違う。いや、打席とベンチでは見え方が違うのだ。だからこそ、これは異常なストレート――――

 

第二球。

 

ドゴォォォォォンッッッ!!

 

 

続くインコースの際どいストレート。これがストライクに。アウトハイの真直ぐを続けず、インコースに切り込ませてきて、バッターにスイングをさせなかった。

 

舘はバットを出す事すら出来なかったのだ。

 

 

―――追い込まれれば、あのSFFが来る。何としても低めの見極めを………

 

ズバァァッァンッっ!!

 

しかし最期は高めの真直ぐ。低めの意識に比重を置きすぎて、高めに反応できなかった。そして、最後はかすりもしなかった。

 

―――なんや、腕の出すフォームのずれも少ない………

 

松本監督は、大塚のフォームがわずかに違うことを見抜いていた。

 

 

綺麗なバックスピンをかけられる投手は少ない。大半は軸がずれており、そのずれがあればあるほど、球のホップする力は失われていく。

 

だが、大塚のストレートは違う。彼は今、腕の角度を変化させているのだ。初回のフォームとは異なる投球フォーム。

 

 

今の腕の傾きは、“5度よりも小さい”のだ。

 

 

これは、プロ野球界にもそうはいない、異常な数値である。

 

かつて、西日本を本拠地とするある伝説的な抑え投手の軸のずれは、僅かに5度。大半の投手のずれが、30度付近であることを考えて、彼のフォームとストレートの回転は異常な数値を示している。

 

 

さらに、大塚のリリースからミットへの到達までの回転数はその彼に匹敵している。

 

バックスピンの掛かった、ズレの少ないストレートはホップする力が増し、玉がお辞儀しなくなるのだ。

 

 

故に、他の投手に比べて、ストレートを投げたとして、その軌道も全然違う。大塚が参考にした投手と平均を比べた場合、その差は30cmを計測することもあると言われている。

 

更に恐ろしいのは、大塚は腕の角度をある程度変えることが出来るという点。故に、腕の角度によって配球も変わってくる。そう確信できるのは、舘相手に投げるボールの威力と、他の打者へのアプローチが違うことにある。

 

 

通常フォームはバランスの良いフォーム。そしてこの極端なオーバースローは、ストレートと縦変化の球を存分に生かしたフォーム。

 

フォームチェンジという4つのフォームを失った大塚だが、その「フォームを変える」という発想は死んでいない。

 

というよりも、フォームチェンジは膝の動きに吸収され、見えなくなっているだけで、実はまだ大塚の中で生きている。

 

技巧派の全ては受け継がれなかったが、それは彼にとっての回り道ではなかった。

 

 

そして、舘を仕留めるためのこの極端なオーバースローのストレートは、デフォルトの通常フォームのストレートとは軌道が違う。

 

 

故に、通常の伸びのある大塚のストレートを打ちに行った感覚では、

 

 

ヒットにするどころか、

 

 

ズバァァァァンッッ!!!!

 

 

掠りもしない。

 

「ストライク!! バッターアウトっ!!」

 

しかし、ストレートのキレと伸びを爆発的に伸ばすこのフォームは負担がかかり、かつ横の変化球を投げにくいフォームである。

 

故に、大塚はこの2種類のフォームを投げ分けることで、上手く特性を利用しているのだ。

 

続く打者にも、舘相手に投げ込んだこの感覚を思い出すために、試しながら投げて三振を奪った。それでようやく、大塚はこの二つ目のフォームに手ごたえを感じた。

 

――――これは、いけるね。御幸先輩に後で違いについて聞いてみよう。ボールの軌道はたぶん違うと思うけど、どう違うのか。捕手視点だと何か発見もあるかも。

 

しかし当の本人は呑気なことを考えていた。

 

「ストレートの威力が違う。」

降谷とは別の方向性で、一級品のストレート。未だに球威だけなら降谷が上だろう。だが、大塚のストレートには伸びがある。

 

「ああ。降谷のストレートを剛球というならば、大塚のアレは、伸びのある球持ちの良いストレート。」

クリス曰く、球持ちの良さはあのフォームの恩恵を受けているからだという。

 

力感を感じさせず、スムーズな動作で投げ込まれるボール。キレが出ないわけがない。

 

 

 

「…………」

沢村は、食い入るように大塚の投球を凝視していた。リリースの瞬間、フォームの出来、腰の回旋運動。さらには腕の振り、角度。それらを操り、打者を翻弄する姿。

 

方法は違うが、沢村と同じくフォームで相手打者を手玉に取っていた。

 

沢村の熱心な様子に、クリスは微笑ましく思う。

 

―――――大塚の全てを真似する必要はない。だが、奴から学ぶべきことは多い。

 

片岡監督が常々言っている、チームとしての力。チーム全員が刺激し合うことで、チーム力の向上に直結させる。

 

そのチームを成り立たせるためには、沢村のような強い気持ちを持った選手が必要不可欠。

 

―――――お前たちの闘志が、どれだけチームを救っているのか。

 

大塚が先頭を走り、沢村が食い下がる。降谷もそれに感化され、川上と丹波にも自覚が芽生えた。競争によるチーム力の向上が現実となっている。

 

 

2回の表が終了し、大塚は絶好調の投球。しかし、野手陣も負けられない。

 

 

2回の裏、先頭打者の伊佐敷。

 

 

カァァァァンッッ!!

 

 

「だらっしゃァァァァ!!!」

伊佐敷が、3球目のストレートを捉えた。打球は―――――

 

 

ポテンッ

 

ライト前へと墜ちるヒット。スイングの割には上手く落ちてくれた。

 

「振り抜いたからこそ、内野の頭を超えた。スイング自体は問題ありません。」

クリスが冷静に分析する。

 

「(ミートするポイントがずれている。本来ならスタンドインですよ。)」

沖田は、伊佐敷の最適なポイントで打てば、アレはホームランボールだったと推察する。あのパワーで右打ちもできるので、確かに惜しい気がした。

 

 

しかし続く御幸がゲッツー。

 

「だはっ……」

 

呻くように一塁ベースへと駆け抜ける御幸だが、大阪内野手陣の守備の前に、ゲッツーに打ちとられる。

 

 

一二塁間を抜けるあたりをダイビング捕球され、そのままバックトスを上げられたのだ。その鍛え抜かれた守備は、伊達ではなく、昨年準優勝チームの意地が垣間見られた。

 

 

「あの人いつも打てないよね」

ぼそりと降谷がつぶやく。

 

「俺ならここは送りバントだな!!」

沢村は、自慢の送りバントでスコアリングポジションに進められると自信を持っていた。

 

続くランナーなしの場面で、

 

「ストレートは重そうだなぁ」

投手の大塚。あの球威のあるストレートで手をしびれさせられたらたまらないので、変化球待ちで対応するのだが、

 

――――ストレートを意識しているな、ここで変化球か?

 

 

初球変化球を見極めた後、もう一球外の変化球に、

 

「あっ」

 

かァァァァぁんっっ!!

 

外角のスライダーを狙ったあたりがポテンとライト前に墜ちる。伊佐敷の打球と酷似した当たりに、

 

「ラッキー、ラッキー!」

一塁ベースで、小さくガッツポーズをする大塚。

 

 

続く打者は、9番レフト東条。

 

 

舘は、じわりじわりとリードする大塚に違和感を覚える。

 

――――投手があんなにリードを大きく、だと。

 

初回から青道ペースになっている現状。あの高飛車な1年生投手に勢いを与えないために、舘はこの目の前の打者を抑える事、万が一走ってくるかもしれないことを備えた。

 

ランナーからのプレッシャーを感じ取った大阪バッテリー。

 

初球のストレート。

 

カァァァァンッッ!

 

「!!」

舘は打球の方向へ、東条は打った瞬間に走るが、

 

 

パシッ

 

打球はショートのグラブに入ってしまう。ショートライナー。ここで攻撃は終了。

 

「ああ、惜しい!!」

春市が口惜しそうな声を出す。

 

 

「っ!!」

東条は悔しそうな顔をしながら、ベンチへと帰るが、

 

「飛んだ場所が悪かったな、気持ちを切らすなよ。準優勝投手相手に良い打席の入り方だった。」

と、片岡監督からの一言。

 

 

「は、はいっ!!!」

 

青道対大阪桐生

 

互いに全国屈指の激戦区であり、強豪校対決。

 

 

前半戦は、タイムリー一本の静かなスタートとなった。

 

 




原作よりも舘さんが青道打線を抑えています。

原作のような打ち合いにならない静かな試合です。





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