ダイヤのAたち!   作:傍観者改め、介入者

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遅れました。そして短い。

意味するものは・・・・


2017年7月4日 2番青木を2番乙坂に変更しました


第66話 どこにいても

『さぁ、ついに始まります、甲子園準決勝第1試合!! 三塁側、西東京代表、青道高校と、一塁側、神奈川代表、強豪、横浦高校の一戦!!! 大会総得点記録に迫る強打の横浦と、大会屈指のチーム防御率を誇る青道高校の一戦!! 決勝に進むのはどちらか!!』

 

『そうですね―――ですが、ここにきて大塚君がベンチスタートには少し違和感を覚えますね。1年生への連投を控えるチームが揃う中、十分登板間隔は開けているはずですが―――』

 

『横浦のスターティングメンバーは、変わらず。その強打、ホームラン数も抜きん出た超重量打線が魅せるのか』

 

横浦のメンバーがスコアボードに映る。

 

1番右 高木  二 

2番左 乙坂  中

3番左 岡本  三

4番右 坂田  右

5番左 黒羽  捕 

6番両 松井  遊

7番左 後藤  一 

8番右 多村  左 

9番右 和田  投

 

 

『対する青道高校。ここで3年生丹波を先発させます。妙徳戦では5回を1失点。まずまずの投球でした。青道は打順を変えてきています』

 

1番右 東条  右

2番両 倉持  遊

3番右 沖田  三

4番右 結城  一

5番左 御幸  捕

6番右 伊佐敷 中

7番左 白洲  左

8番右 小湊  二

9番右 丹波  投

 

 

 

 

甲子園は青道のスタメンを見た瞬間にざわめいた。

 

「大塚が投げないのか? あの打線に対抗できるのは、彼しかいないんじゃ」

 

「青道が打撃戦を挑むのか?」

 

「丹波っていう投手もいいが、横浦の勢いは止められないだろ」

 

 

「大塚君が投げないの?」

 

期待の1年生投手。その青道の核ともいえる彼が先発しない。登板間隔をあけているにもかかわらずだ。

 

 

それが青道にとって、まず不気味な大舞台を形作る材料になっていくのは、試合が始まった瞬間から漂い始めていた。

 

肩透かしを食らった観客の溜息が、否応なく彼らにやってくる。

 

「――――――――――」

丹波はその中でも冷静だった。黙々と自分の投球にいい意味で集中する心構えが出来ていた。

 

 

「やっぱ、大塚を見に来たファンは多いんだな――――」

倉持が、近くに見える観客の不満顔を見て、嘆息する。

 

「大塚に長いイニングは投げさせられない。かといって、大塚が万全でないことを知られれば、横浦も作戦を変えてくるはずだ。」

 

だから今は、言えないのだ。

 

 

これは本人の頼みだった。

 

 

――――後ろに俺がいる、それだけでも彼らにとってみればプレッシャー。お願いします、主将。

 

 

 

覚悟を決めている。17人の選手とともに、彼もまだ戦っているのだ。

 

 

 

 

 

『今大会は、横浦の岡本、坂田のスラッガーが旋風を巻き起こしていますが、青道には超高校級スラッガー、沖田道広がいます!! 今大会は1年生ながらホームラン3本!! 彼の得点圏での勝負強い一発を印象付けるのは、妙徳戦での、一時は逆転となるスリーランホームランでしょう!! あのホームランは凄かったですね』

 

『攻めあぐねて、悪い流れだった時の、あの一発はチームを勢いづかせますよね。ああいう勝負強い打者は、いいですね~~~~』

 

『さらにはこの試合で1番を任されている東条君も、パンチ力はありますからね~~。それでいて出塁率も高く、良い打者です。』

 

『さぁ、両チームベンチ前に出てきました!! 間もなく試合開始です!!!』

 

 

横浦高校の仰木監督は、大塚が先発しないことに、勝機を見出していた。青道の事情が何なのかはわからないが、今大会屈指の右投手である彼が先発をしないのは、先手を打ちやすい状況であると。

 

 

「相手投手はシンカー気味に落ちるフォークと、大きく曲がるカーブ。だが、決して打てない球ではない。青道自慢の投手陣を打ち崩せ。恐らく早い段階でカーブを投げてくる。カーブを有効に使わせる前に、あの投手を叩くぞ。」

 

 

はいっ!!!!!

 

 

 

そして青道ベンチ―――――

 

 

「行くぞ、春の関東大会の比ではないあの投手、ファーストストライクから振っていけ。あのルーキー捕手が配球やリードをする前に、仕掛けていけ!! 球の圧力なら、降谷には劣るぞ」

 

対する青道は、黒羽のリードの根本を叩く必要があると考えた。彼が自分のペースで配球を考えるのではなく、こちらから仕掛ける必要があると。

 

――――その瞬間、投手の立ち上がりだけは、その投手の真の力量が求められる。

 

 

大塚曰く、立ち上がりこそが投手の力量、主に制球面での真価が発揮されるという。特に甲子園のような一発勝負の舞台では、コンスタントな結果ではなく、純然とした結果が求められる。

 

――――リードや配球を展開する前に、あの投手に不意打ちを食らわせる。それがまず最初の布石。

 

 

「俺達は誰だ!?」

結城の掛け声に、ナインだけではなく、応援団からも声が重なる。

 

王者青道ッ!!!

 

「誰よりも汗を流したのは?」

 

青道ッ!!

 

応援団すら取り込んだ、青道の試合前の掛け声。まさに異様な雰囲気を醸し出す。この甲子園の魔物を取り込んだのかのような、異様な闘争心。

 

 

「誰よりも涙を流したのは!?」

ここまで来たら、優勝が見える。だからこそ、主将の声にも力が入る。

 

青道ッ!!

 

「誰よりも野球を愛しているのは―――」

 

青道ッ!!

 

自分たちが立ち向かうのは、今年最強の打線。その打線に挑むは、今大会最優秀チーム防御率の青道投手陣。ナインだけではない。青道全体が気合を入れ、応援団はその声で力を送っているのだ。

 

彼らも解っているのだ。一瞬でも隙を見せれば、あの怪物どもに、全てを食われてしまうと。

 

「戦う準備はできているか?」

 

 

おぉォォォォォォォッッッ!!

 

 

「両チーム整列!!!」

 

「準決勝第1試合、青道対横浦。礼っ!!」

 

 

よろしくお願いしますッ!!

 

 

 

 

そして、まず初回の表、青道の攻撃は、今大会1番に打順の上がった東条。

 

 

「プレイボールっ!!!」

 

 

サイレンの音が鳴り響く甲子園。そしてマウンドの和田からの初球―――――

 

 

―――――絶好球ッ!!!

 

カキィィィィンッッッ!!!

 

初球甘く入ったスライダーが東条に痛打された。打球は鋭くセンター前へと転がり、まず青道が初球ヒット。

 

「クッ―――(リードしようのない初回に畳み掛けてくるか、やるな、大塚ッ)」

 

ベンチで試合全体を見渡している大塚。マウンドだろうが、ベンチだろうが、彼の貢献は小さくない。

 

『初球打ち~~~!!!! 1年生東条のセンター前ヒット!!! 初回から無死のランナーを送り込みます青道高校!!!』

 

『好捕手の黒羽君にリードをさせる前に、打ち崩すつもりなんでしょうね。しかし、振りが鋭いですね。下半身の粘りの利いた、いいスイングです』

 

 

 

――――落ち着いてください、和田先輩。ただのラッキーパンチ。コースに決まれば

 

 

続く2番倉持に対しては、ストレート、スライダー共にコースに決まり、追い込むと―――

 

――――まだ甘く、ファウルされているけど、まだ本調子じゃない。初回にここまで仕掛けてくる高校がいなかったからな――――

 

横浦のネームバリューに気負って、積極的ではなかった。大阪桐生も、歯車が狂えば接戦になっていた可能性もあった。

 

――――スコアリングポジション、ランナーを溜めた場面で、沖田に回したくない。ここで何としても―――

 

 

だが、初回に冷静さを欠いている和田。甘く入ったスライダーを倉持に捉えられる。

 

 

カァァァァンッッッ!!

 

 

センター方向への当たり。痛烈な打球が和田の横を抜け、センター前へと転がり――

 

 

パシッ!!

 

 

ここで、ショートの松井が好捕。二塁へ既に進塁していた東条をアウトには出来なかったが、俊足の倉持を寸前でアウトにしたのだ。

 

『ここでナイスプレー!! 守備で和田を助けます、松井!! しかし、スコアリングポジションで、この青道の3番を迎えます!!』

 

「ちっ――――(くそっ、このプレーでこの投手に立ち直させるわけには――――)」

際どいタイミングでアウトになった倉持。険しい表情でベンチへと帰る。

 

だが、ここで青道は沖田に回る。このスコアリングポジションで、3番沖田。

 

『今大会は驚異的な打率を残し、ホームラン3本を記録。今大会で新世代の怪物となれるか、沖田!!』

 

 

――――この打者とは勝負はしたくない。けど、次の打者も強打。不用意にランナーを溜めるぐらいなら、勝負をするべき。

 

黒羽と和田は、青道相手にある程度の失点は仕方ないと考えていた。後ろ向きな作戦を取って、大量失点するぐらいなら、勝負をしてムードを維持するほうがいいと。

 

 

次の打者も結城という長距離打者。3回戦は不調だったが、アレはあの投手陣が変則的すぎた。

 

 

――――まずはアウトコースのスライダー。出方を見ます。

 

「ボール!!」

アウトコースには反応した沖田。これで、彼はアウトコース狙いであることが分かる。

 

――――やはり、この打者は基本アウトコース。だが、より外を活かすために―――

 

 

カァァァァンッッッ!!!

 

「ファウルっ!!!」

 

内角へのストレート。しかし合わせてきた沖田。瞬時に内角打ちすらも可能にする感覚を持つ沖田。やはり強打の青道の中で、一人レベルが違う。

 

 

――――徹底してインコース。次の打席への残像にするために――――

 

 

打席の沖田は、黒羽と和田の作戦を予測していた。

 

――――アウトコースを見せ球に、インコースへ続けるつもりか? だが、先程のアウトで制球が安定し始めている。この捕手の事だ。抑えられないかわりに、次の打席での攻略に何でも使うつもりか?

 

 

 

 

 

だからこそ、ここで強気に攻めている黒羽の狙いは―――――

 

 

ガキィィィンッッッッ!!!!!

 

『左中間っ!!! 抜けるッ!! 打った沖田は当然二塁へ!! セカンドランナー東条は三塁を蹴るッ!!!』

 

インコース低目、ボール気味のストレートを引っ張り、左中間へと痛烈に抜けていく当たり。すでに東条は本塁へと生還し、打った沖田は二塁ベースでとまる。

 

『青道高校、先制!! やはり初回攻撃!! 青道の3番は勝負強い!!』

 

『振り負けませんね。1年生であれだけバットを振れる選手は稀です。この大舞台で素晴らしいメンタルです。』

 

 

まず先手を打ったのは青道。だが、まだ油断できない。裏の攻撃を考えれば、まだまだ先制打の流れに合わせて打っておきたいところ。

 

『さぁ、ここで4番結城!! 3番沖田に続けられるか!!』

 

――――クサイところでいい。また制球を乱し始めた―――

 

険しい表情の和田。彼の脳裏には、結城に打たれた先制打が残っていた。

 

「ボールっ!!」

 

スライダーが外れる。明らかに力んでいる和田。

 

――――仕方ない。一球捨てるか。

 

 

黒羽はここで、アウトコースのカーブを要求。

 

 

――――力みすぎです、先輩。まずカーブで気分転換してください。

 

「ボールツー!!」

 

ボールにはなったが、いいキレをしたカーブ。

 

――――悪い、バネ。

 

マウンドの和田。やはり連戦の疲れなのか、それとも大阪との対戦で滅多打ちだったことをまだ引きずっているかのような状態。

 

 

 

―――セオリーなら、ここで速い球。だがあちらには当然、変化球もある。フォークが持ち球にあるが、それでも、コントロールミスをして打たれるぐらいなら―――

 

腹を括る展開が多すぎる。だが――――

 

――――ここで投げ切れなきゃ、日本一なんてありませんよ、和田先輩

 

 

「ファウルボールっ」

 

 

結城がインコースのストレートを仕留め損ねた。球速も140キロを超えてきている。

 

――――まだばらつきはあるけど、手ごたえはある。ストレートは調子がいい。変化球は、これからカーブを交えて制球を立て直すとして―――

 

 

カァァァンッッ!!

 

「ファウルボール!!」

 

 

ストレート2球で追い込まれた結城。この局面で強気のリード。

 

 

――――不味いな、黒羽のリードが機能し始めている。

 

大塚は、息を吹き返しつつある横浦のバッテリーに警戒感をあらわにする。

 

 

――――3球続けてのストレート。セオリーなら愚策。だが―――

 

 

黒羽は内に構える。

 

 

――――ボールでいいです。ここでインコースのストレートに反応、次の球のフォークでも自動的に打ち取れます。

 

 

二重三重の策を立て、打者に力を発揮させない。

 

 

ズバァァァァンッッ!!!

 

「!!!」

 

バットが出てしまった結城。外への球に反応できる力があったが、3球続けての同球種。反応してしまった。

 

「スイングっ!!!」

 

「バッターアウトっ!!!」

 

『内のボールに手が出た!! これでツーアウトっ!!!次は勝負強い一打を見せている御幸一也!!』

 

 

ここで、両チームの頭脳の激突。先制点を取り、このまま波に乗ることが出来るのか。

 

 

それとも、横浦が追加点を許さず、反撃にいい流れを作れるのか。

 

 

 




たぶん、次は早い
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