ダイヤのAたち!   作:傍観者改め、介入者

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もし、マスコミに有名になればこんなあだ名で呼ばれるかも


第87話 青道のOO

打倒帝東を誓い、青道野球部の秋大会本選が始まる。

 

向井に対する対策はやってきた。そしてこちらは帝東を倒すためにエースを送り込んだ。

 

1番 遊 両 倉持

2番 中 左 白洲

3番 右 右 東条

4番 三 右 沖田

5番 捕 左 御幸

6番 一 右 前園

7番 投 右 大塚

8番 二 右 小湊

9番 左 左 川島

 

新オーダー。レギュラーメンバーに1年生が4名。これでもスタメンはかなり迷ったと片岡監督は語る。

 

倉持の足と守備範囲、沖田の総合力、小湊の巧打力。金丸がいい動きをしているだけに、最後にモノを言ったのは実績。

 

対するは帝東。新エース向井太陽を立ててきた。同じ一年生投手として、負けられない思いは強い。

 

一回の表、まずは帝東の攻撃。

 

マウンドに上がるは背番号1、大塚栄治。

 

「いいか、まずは先頭打者を出さないこと。足の速いのが結構いるからな。小技で絡んできたら厄介だ。」

 

「はい。なので、初回はまず強烈な残像で相手の出方を見ます」

 

 

 

 

初回、帝東の1番は左打者。その初球―――――

 

 

ズバァァァァンッッ!!

 

いきなり内角ストレート。膝元の際どいコース。打者はそのストレートの圧力に思わず腰が引けた。

 

「ストライィィクっ!!」

 

球速表示には142キロと表示された。

 

――――本調子じゃなくてそれかよ

 

打者の考えはそれだった。夏の甲子園で見せた勝負所での剛速球はない。だが、それを解った上で打席に立っていても、この大塚のボールは並大抵ではない。

 

続く第2球も内角。だが、違うのはさらにそのボールは打者の内角をえぐるという事だ。

 

―――――ストライクからボールゾーンのカッターっ!?

 

「ファウルボールっ」

 

無駄球を打たされた、ボールコースを打たされたと知った先頭打者。これであっさりと追い込まれた。

 

 

――――次は何が来る? 球種が多すぎて絞りきれない。

 

打者は誰が見てもスイングに迷いがあった。球種を絞りきれない。

 

 

だからこそ、アウトコースのストレートに振り遅れる。

 

「ストライクっ!! バッターアウトっ!!」

 

外角直球に振りおくれた形で空振り三振。文字通り総合力で粉砕した大塚。

 

ストレート主体なのか、それとも変化球主体なのか。それすらわからない。

 

ククッ!

 

続く右打者には初球アウトコースのドロップカーブ。この縦カーブ。緩急にもカウントにも使える。

 

初球の見逃しは仕方がないと、甘いボールを叩けと監督に言われた帝東打者は、このボールに手を出さなかった。

 

 

そして次の2球目は――――

 

 

ククッ、フワッ!!

 

今度もタイミングを外すパラシュートチェンジ、タイミングを外す変化球。先ほどの外角ストレートを見ていたので、追い込まれることを恐れた打者は、このストライクからボールになる球に手を出してしまった。

 

打者の手元ではなく、目の前で急激に減速し、縦に沈むこのボールはやはりねらわなければ打てない。

 

 

追い込まれた右打者。続く高めの釣り玉にも手を出す。

 

「ファウルボール!!」

 

完全にペースを握られている。淡々と自分のペースで投げる大塚は、それに感情を表すこともない。

 

高目を見せられた後の4球目はインコース。

 

 

 

――――!! ボールコース!! 見極めたっ!!

 

だが、その際どいインコースのボールはスライドしながらうちのストライクゾーンに抉り込んできたのだ。

 

――――!? カッターッ!?

 

「ストライク!! バッターアウトっ!!」

 

完全に間合いを測らなかった状態での見逃し三振。打者は今後インコースを強く意識してしまうだろう。

 

 

その投球術を目の当たりにした帝東のキャプテン乾は雷を感じた。

 

―――――フロントドア――――っ!? 内角ボールゾーンから内角ストライクへと変化するメジャーの投手が使うスキル

 

 

高校1年生でそのスキルを決め球に使える技術と度胸は、やはりもう彼がアマチュアの域ではないことを証明する何よりの証拠である。

 

 

一方投げた大塚は、

 

――――球威に不安があるし、連戦を考えれば少しでも球数を節約したい。

 

気軽な感じで投げたこの一球だが、周囲はそれどころではない。

 

――――何より、今のはたまたまだ。コースに毎回決まるとは言い難い

 

 

偵察に訪れていた他のチームは、

 

「おい――――今、ボールだったよな、寸前まで」

 

 

「ああ――――ストライクゾーンに入っていったぞ。」

 

 

「右打者にはシンキングファスト、左にはカッター。その定説も、過去のデータになるのかよ……」

 

止まらない大塚の進化。この力ではない圧倒的な投球術は、高校野球に衝撃を与える。

 

 

続く右打者も、今度は3球目のシンキングファストのバックドアで見逃し三振を奪われ、3者三振スタートの大塚。

 

3球勝負。球数をかけずに決めにきた。

 

 

 

 

 

 

 

スイングすら、させなかった。

 

 

 

 

 

 

 

全力投球でねじ伏せられたわけではない。投球術で完全に遊ばれている。その事実が帝東にのしかかる。

 

 

「これほどとはな―――――」

ネクストバッターサークルで大塚の投球を眺めていた乾は、冷や汗をかいた。

 

彼も奥行きを完全に理解したうえで投球を行っている。デットボールというリスクを抱えながら、決め球にフロントドアを行える胆力。

 

 

「おいおい。ありゃなんだ? 高校生の投球かよ!」

岡本監督も驚きを隠せない。データにはない新たな投球術を惜しげもなく晒してきたのだ。相手が強豪であるのも理由だろうが、立ち上がりにいきなり見せてくるとは考えもしなかった。

 

 

何よりも、このメジャーの投手が扱う技術をいつの間にか会得していることに、驚いたことをすぐに岡本は後悔した。

 

 

――――甲子園であれほどの制球力を見せつけたんだ。

 

 

なぜ今までそれをしなかったのか。それは出来ないのではなく――――

 

 

 

―――――“思いついていなかった”というのが理由だろう。

 

 

事実、

 

 

「まさか要求して満点とは思わなかった。」

というのが御幸。

 

「まあ、今までやらなかっただけで、球数を少なく出来るなら、やる価値はあるかなと」

 

 

――――やはり、投球は奥が深い。

 

力だけで抑えるだけではないとはいえ、相手にスイングの意思すら薄めさせるのは、新たな発見でもあった大塚。

 

 

 

「――――――――――」

沢村は、大塚の投球に魅入っていた。そして、この技術は自分にもできると確信した。

 

これは、圧倒的なスピードや球威がモノを言うのではない。投手としての実力が試されているのだと。

 

 

 

完璧な投球を見せつけた大塚がマウンドを降り、裏の攻撃が始まる。

 

 

――――奥行、フロンドア、バックドア――――っ

 

何もかも先を行くかのように、簡単に行ってみせた大塚に、向井は対抗心をむき出しにする。

 

 

――――何なんだよ、お前はっ

 

 

 

「ストライクっ!!」

初球アウトコース。倉持から見て一番遠い外のストレート。

 

――――甘いところには来ないな。

 

続く第2球。

 

「!?」

厳しくインコースをついてきた速球。思わず体勢を崩す倉持。

 

マウンドの向井は帽子を取っているが、本当に謝罪しているかすらわからない。

 

―――――初球はアウトコース、2球目は厳しく着いた外。この手の投手なら―――

 

 

倉持の頭には、次にこの投手が打者相手に投げるボールの粗方を予測していた。

 

 

―――――外側のボール!! 軽打でいい!!

 

 

カァァァァンッッ!!

 

 

合わせたような打球。倉持は変化球を予測していた分、振り遅れ気味だったが、流した当たりはライト前に落ちる。

 

「おっしゃぁぁ!!! 初回先頭打者が出たぞ!!」

 

 

「ナイバッチ、倉持!!」

 

 

 

「!!!」

 

完全に狙われていた。いや、インコースを厳しく言ったからこそ、逆に相手も外を読んでいたのだろう。

 

2番、白洲には送りバントの指示が送られるのだが―――――

 

 

向井の初球と同時に、倉持が動く。

 

 

「ランナー走った!!」

 

 

「初球スチールっ!!!」

初回、いきなり大胆に仕掛けてきた青道。乾、向井のバッテリーも動揺する。

 

 

 

 

 

 

「くっ!!」

送球間に合わない。一瞬にして得点圏にすすめられた帝東。青道の攻撃的な野球が始まる。

 

その火付け役となった倉持は、背後から向井にプレッシャーを与える。

 

 

 

倉持の盗塁により、片岡監督からの指示が変わる。

 

 

――――堅実に、そして無理をせずに。倉持を進塁させろ

 

 

ノーボール1ストライク。第2球――――

 

外のスライダー。左打者にとってみればまともには打ちにくい、最高のボールだ。

 

 

コンっ

 

 

ここで白洲、左打者のスタートの早さを活かしたセーフティバント。当然倉持は三塁に間に合うだろう。この得点圏でまさかのバント。

 

しかし白洲は間一髪アウト。悔しそうにベンチへと帰るが、チームバッティング。

 

 

片岡監督の宣言通り、初回から仕掛けてきた青道高校の攻めは、帝東を揺るがす。

 

「ランナー三塁っ!!! 一死三塁!!」

 

「ナイスバント、白洲!!」

 

「堅実で渋い仕事!!」

 

「最高の仕立て屋!!」

 

青道応援席は、この初回の先制機に沸き立つ。ここで、甲子園で一躍名を轟かせたルーキー。

 

 

「3番ライト、東条君」

 

 

アナウンスとともに、東条が現れるのだが―――――

 

「!?」

大塚がベンチにて目を丸くする。彼の応援歌は汎用曲だったので、いきなり聞き慣れない曲を聞いて少し驚いたのだ。

 

というより、母親が夕食を作る際に鼻歌交じりで歌っていた曲に似ているような、似ていないような――――

 

「これは、あのアイドルの歌だな。東条もいい選曲をする」

 

ネクストバッターサークルに向かう沖田がそんな言葉を口にする。大塚は思わず沖田の方を見るが、沖田の背中が遠くなる。

 

「沖田、最近までパンピーだったよね!? だったよね!? 何そのタイトルっ!?」

一瞬だけ大塚の凍った心すらとかしてしまうサプライズ応援歌。ずっこけそうになる大塚に対し、そう言う趣向に不動の監督はというと。

 

 

「どうした大塚? 今は自分の投球に集中しろ」

片岡が怪訝そうな顔をする。どうやら彼もこの曲が何なのかを知らない。なので、どうでもいいと考えているようだ。

 

「は、はい!!」

 

 

「まあ、結果を出してくれればあまり文句はない、主将の俺からすれば、まあ打ってくれたらいいや……」

御幸も苦笑い。

 

 

そしてマウンドの向井は、躊躇いなく俗物な曲を応援歌にする東条に舌打ちをする。

 

 

――――相変わらず気持ち悪い奴だな。

 

 

そして、打席の東条は

 

 

――――夏予選前に比べると、制球力は変わらないけど、球威は若干上がってる。

 

「ストライクっ!!」

 

初球外から曲げてきたスライダー。外のスライダー。大塚を意識してか、かなりコースを狙ってきている。

 

――――大塚がカッターとシンキングファストで離れ業をしたからなぁ、外からきて、次は

 

 

 

インコースのストレート。東条はそれを確実に叩くことを考えていた。

 

だが、やってきたのは外のスクリュー。狙い球とは違うので、バットを出さない。

 

「ボールっ!!」

 

ストライクからボールになる変化球。低めの球はボールでもヒットに出来るという事を証明した彼には、当然の配球。

 

――――狙いがばれた。ここで、バッテリーがどう判断するのか。とことん外を使ってカウントを整えるのか?

 

 

詰まった当たりでもいい。ボテボテのゴロなら倉持の足を考えれば生還することは出来る。

 

 

カァァァンッッ!!

 

ここでもう一球外のスクリューを投げた向井。食らいつく東条。打球は投手強襲の当たり。

 

「!!!」

向井のグローブを弾き、打球は転がる。三塁の突入は間に合わない。打者走者の東条も足が遅いわけではない。

 

 

ゴロゴー。初回は徹底し、青道は機動力で帝東にプレッシャーをかけてきた。

 

「ファーストっ!!」

 

乾は一塁を指示する。倉持の足を考えれば、ホームに投げてもフィルダースチョイスになる。この先制点は仕方ない。

 

 

「ナイス最低限!! 東条!!」

 

「機動力を生かして先制!!」

 

「大塚に援護点が入ったぞ!!」

 

だが、さらに沸くことが目に見えている次の攻撃。そう、次の打者は―――――

 

 

「4番、サード、沖田君」

 

 

ここで、怪物スラッガーの沖田。あの柿崎から2安打を放ち、甲子園で名をはせた高校級スラッガー。何よりも、夏予選前の向井相手に全打席出塁をしたのだ。

 

 

「――――――っ」

当然、向井もこの相手を前に余裕は消える。夏予選では、外のスクリューを悉く見極められ、ストライクに入れると打たれた。

 

手足が長く、外のボールに届いてしまうのだ。そしてその天性のバットコントロール。

 

 

「ボールっ!!」

まず初球インコースのボール。ボール球には手を出さないし、仰け反ることもしなかった。インコースを投げてもあまり変化がない。

 

「ボールツーッ!!」

 

続く外のボール。スクリューが僅かに外れてボールツー。向井の中で、少しでも中に入ると打たれるというビジョンが見えていた。

 

 

 

―――――くっ

 

 

そして続く3球目、外から曲げてきたスライダー。これを――――

 

 

ガキィィィンッッッ!!!!!

 

 

ややボールゾーンだったかもしれない。踏み込んではなった一撃は、ライト線へと伸びていく。

 

 

「うおぉぉぉ!!!」

 

「いっけェェェ!!!」

 

「このまま初回でかましたれェェェ!!!」

 

この大飛球に青道応援席から大歓声が起こる。

 

しかし、

 

「ファウルボールっ!!!」

 

ややボールゾーンだったため、仕留めそこなった沖田。あと数センチの誤差だが、沖田にとってみれば、

 

――――スライスしたか、こすれた分、切れたな。

 

 

打球はライト線に落ちかけたものだった。フェアゾーンならば得点圏で御幸にまわったのだ。沖田にしてみれば悔しい当たりだった。

 

 

 

「――――――――」

少し内に入るだけでこれだ。向井は今の大飛球に目を逸らすことが出来なかった。

 

 

そして、

 

 

「ボールフォア!!」

 

「勝負を避けやがったぞ、沖田から!!」

 

「仕方ねぇよ、アイツは俺達の4番打者だぞ!!!」

 

「ナイセン、沖田ぁぁぁ!!!」

 

 

これで、二死一塁。5番御幸、主将に回る。

 

 

東東京の強豪、帝東相手に先制。その先制の仕方は内野ゴロの間の一点。4番沖田は歩かされ、ランナーがいるとはいえ好投手向井相手に大量点は望めないだろう。

 

 

 

まだ圧倒的な力を見せたわけではない。

 

 

エース大塚の異常な投球術。

 

 

 

打の柱としての存在感を示す沖田。

 

 

 

だが、西東京王者の底力を会場にいるだれもが感じ始めていた。

 

 

 




おーず、でいいかも。


沖田は左投手に対して強いです。ヒットを打てなかったのは大巨人真木、横浦の諸星和己で、どちらも右投手です。



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