未定   作:正直な嘘吐き

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前話でオリ主の言っていた本ですが、この世界ではまったく知られていないけど、知る人ぞ知る超名作という設定です。




和良部謡子(わらべようし)

 

私立聖祥大学付属中学校1年C組。

 

出席番号29番。

 

少年――謡子が零崎に目覚めてから一週間。この一週間で8人の人間を殺していた。

 

始めの内のご近所さんを殺しそうになっていた時と比べ、今ではだいぶ殺しのON・OFFが

切り替えられるようになったと、謡子は喜んでいた。

 

老若男女人間動物植物区別なく、なんでもかんでも皆殺しにしてしまう零崎。

 

その零崎になってしまったとはいえ、せめて近しい人間だけは殺さないように

しようと、謡子は決めていた。その結果は上々。

 

切り替えられるようになるまでに8人に犠牲になってもらったが、これは少ない方だろう。

 

まあ、今でも気を抜くとつい殺しそうになってしまうが。

 

とにかく、少ない犠牲で切り替えが出来るようになるだなんて、自分はやれば出来る子だったんだな!

 

と、一日中自画自賛していたのが昨日までの話。

 

今現在の謡子は――夜の海鳴を徘徊していた。

 

普段のように獲物を求めてではなく、突然聞こえてきた謎の声に助けを求められて。

 

これだけだと謡子が毒電波を受信してしまった痛い子供に見えるがそうではない。

 

いや、端から見たら本当に痛い子に見えただろうと後に本人は語る。

 

とにかく、謡子が夜の町を徘徊している理由は助けを求められたからだ。

 

「しっかし何だったんだろうねあの声は。急に頭の中に響いたかと思うと一方的に言いたいことだけ言ってプッツンしちゃうんだから。助けを()うのは構わないのだけれど、ちゃんと居場所ぐらい

教えてくれりゃあいいのに」

 

ぶつくさ言いながらも助ける為に動くあたり、謡子は人が良いのだろう。

 

「――にしても『助けて』か。声からしてまだ俺よりも若い男の子ってとこかな?

ふふん、殺人鬼に助けを求めるだなんて、一体どんな馬鹿野郎なんだろうね。

早いとこそいつの(つら)を拝んでやりたいもんだ」

 

訂正。謡子は人が良い人間とは、お世辞にも言えなかった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

こうして街中を歩き回りながら謡子は思う。

 

今日は街を見回る人間が極端に少ないと。

 

一週間で8人。8人の人間皆が皆惨たらしく殺されているのだ。

 

殺人鬼が殺す人数にしては(いささ)か少なくはあるが、世間一般からすれば充分多いと言えるだろう。

 

ペースとしても零崎人識の京都での連続殺人を大きく上回る。

 

実際ここ最近、連日連夜報道番組では連続猟奇殺人事件として絶えず取り上げられていた。

 

号外として事件を特集した情報雑誌も出ており、海鳴は事件の噂でもちきりだ。

 

機動隊まで出てくる始末で、至る所に彼らは配置されていた。

 

地元民も有志を募っては集団パトロールを行っていたのだが――

 

「んー……やっぱり今日は見回りが全然いないな。パトロールの人たちがいないのはともかく、

機動隊の連中もいないってのは一体全体どういうことなんだか」

 

二日三日(ふつかみっか)前だったか、パトロールしていた二人組をうっかり殺めてしまい、それからというものの

地元民によるパトロールが激減してしまっていたのだ。

 

「まあいっか。いないならいないで好都合だ。声の主を探しやすいしね」

 

てくてく歩いて不意に思い出すは先程の声。

 

――そういえば、あの謎の声は随分焦っていたな。

 

あまり深くは考えていなかったけど、それはつまり、現在進行形で危機に直面しているからでは?

 

落ち着いて耳を澄ますと自分が進もうとした方向とはまったく別の、まるっきり見当違いの方向から

凄まじい轟音が響く。

 

…………謡子の背を、冷たい汗が一筋。

 

「……こりゃ駄目かもわからんね」

 

諦めモード全開である。

 

「――って、いかんいかん! もう駄目だと決まったわけじゃないんだ、なら早いとこ行ってやんないと!」

 

諦めから一転。謡子はすぐさま轟音のした方へと駆け出す。

 

面を拝みたいと言いながらも、見知らぬ誰かのために謡子はこうも必死になれる男なのだ。

 

やっぱり、謡子は人が良いのだろう。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

駆けつけ三杯駆け出し数分。

 

先程から断続的に響く轟音を頼りに謡子は駆け続けていた。

 

段々と音が大きく聞こえてくるということは、もう近いところまで来ているのだろう。

 

「しっかしまあ……一体どんなやつが破壊活動に勤しんでいるのやら。辺り一帯しっちゃかめっちゃかになってるじゃないか」

 

電柱は折れ、コンクリートは所々が砕けていたりと、まるで人類最強が一暴れしたような惨状だった。

 

……本当に彼女が暴れたらこれだけでは済まないのだけれども。

 

「声の主は大丈夫かな? あれから声が聞こえてこないけど――」

 

もしかしてもうやられちゃった? なんて考えが謡子の頭の中を()ぎる。

 

一度負の方向に考えがいってしまうと嫌な考えが止まらない。

 

止まらないが、その嫌な考えを払拭するような出来事が起こる。

 

「ええ~……なにあれどういうこと? ファンタジーやメルヘンでもあるまいに……」

 

謡子が呆然としてしまうのも無理はない。突然桃色の光が溢れ出したかと思うと、

空高く伸びていったのだから。

 

これには謡子も思わず苦笑い。無論、ふざけているわけではない。

 

「かなり近いな。まったく、毒電波といい今の光といい今日はおかしなことだらけだよ!」

 

悪態をつきながら角を曲がる。曲がった先には――

 

「成功だ!」

 

「ふぇっ!? ふぇーー!? 嘘っ!?」

 

いたちと黒いモジャ公(モジャ公と呼称するには可愛さのかの字も無いが)と。

 

聖祥小学校の制服によく似た衣服を身に纏う少女。

 

先端に紅い宝石を拵えた杖を持ったその姿は――

 

「まっ――魔法少女だコレーーー!?」

 

どこからどう見ても、これ以上ないぐらいに魔法少女だった。

 

 

 

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