バスの囚人に転生したぞー!   作:カンジャリ

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涙が出る前に、乾きそう

しばらく歩いて、どんどん上まで登ってきてドンベクを見つける事を当然叶わず上の上にある鑑賞室まで行き着いた

 

「割と簡素な部屋だな、研究室やら実験室はごっちゃりしてたのに」

「暗くてよく見えないからですかね、アレは何でしょう?」

 

真っ暗の中、俺は何となく何も物が無い一点を見つめる

シャワーを浴びた時に見られてないのに、何故か後ろからずっと視線を感じる感覚に似ている気配だ

暗い中でも、涙を流すものの存在は分かるらしく鑑賞室がどんな場所か天才を自称他称するファウスト以外知る由もない囚人が次々と口にしていく

 

「あっ、これは………僕達の代わりに泣いてくれるものですよ、なのでいつも有り難く、そして不憫に思いながら眺めてるんです」

「そうか………ランが言ってくれてたのはアレだったんだ」

 

そうドンランが言い切る瞬間、花の強い匂いが俺が見ていた目の前からの辺りから広がり………

見えない透明なヴェールが確かにそこにあるとするりと落ちる、声も何もかも包み隠して消すらしい

ドンランが言うには帳幕とは、そういう物らしい具体的な仕組みは分かる事はないが

 

舞台の袖にいる人間は、舞台にとって居ないものとして扱うのと同じ様なものだろう何かは分からないがどう動作するかは実際の所を見れば大体分かるもの

 

帳幕に纏わるヒースクリフとイシュメールの漫才を、ファウストが心もない一言で収めイシュメールが咳き込んで終わるそして続きが進む

 

「目の前のこれ………」

 

ドンベクは、ドンランの言う事を無視してゆっくりと大量の水溜りの方を指をさしてゆっくりと話す

そして暗い中でも、きちんと認識したようにクマがしっかりついた目でも虚ろになることなくしっかりと見ている

 

「再生アンプルの真実か?」

「………そう、そうだよ 君達が破壊しようと計画していた再生アンプルの根源だ」

 

そして顔を上げて、睨むようにドンランの方を見やるがドンランはそんな事当然ではないかと一切怯むことなく白々しく言葉を紡いだ

 

「なっ破壊するだなんて」

 

サムジョが特異点の根源自体の破壊という言葉に強く反応を示す

ここまで一言一句、違わないとっくに見切った光景と内容多分記憶がうろ覚えな所が有ろうとも大体のコレから話される事と似た内容を俺は、話し切ることは出来るだろう

 

改めて思い返す、サムジョの死に展開的な意味はあったのか………ドンベクは自我真道を開く為ドンランは物語の区切りをつける為それぞれ必要であるのは確かだろう

サムジョの死は、翼の羽としての存在と再生アンプルの真実を実証にて伝えるものでそこまで必要なものとは思えないし先においては不要とも言える

そんな物は、幾らでも替えがきく

 

何しろ誰にも影響を与えていないのだから、ドンランも悲しむわけでも怒るわけでもなくそれなりに予備がある陶器製のお気に入りってわけでもないマグカップが割れてしまった程度でしかサムジョの存在は無い

それが生きていようが死んでいようが、この先に何が変わるのだろう

 

時間を数える様に、目の前の光景を見ながらカンテラの紐を緩めると共に弄る

 

サムジョは、コレがどれ程の人間を救えるかと熱く語るそれがどれだけ救えようが、原液がどうだろうと崩壊アンプルという存在を知っているのに

ドンベクは、語ることを辞めただお前には理解できないとだけ紡ぐ、それを理解するために話し合いと公的な技術があるのだろうに

 

「すぐに帰ってきます」

「ちょっとまってサム」

 

水音はしない、強くぶつかる音を代わりに静かな空間に響かせる

もがく音がする、最初に争った紐に絡まり掛かったネズミ達と同じ音だと感じる

 

「お前には関係がない事だなんだ?お前もアイツが言ってるっ」

 

叫ぶサムジョに対して

無言で、L社支部で慣れた行為として足の骨を折り

 

「あ"っドンベクさんとアルフォンソさんのK社研究員の技術の結晶がこんなのでは!!!」

 

痛みという苦痛がありつつも、此方を睨む再生アンプルの原液が目の前にあるのだからそれを避ける為にも電気で無理やり動かされるムカデのように這いながらも前に進もうとする

進む足が使えないのだから、そのまま辞めてくれればいいのにそう思いつつ今度は

 

「………」

 

理解の及ばない意識を奪った

 

死んではいない、それぐらい分かる程度には殺してきたし自らの身で死んできた、本当にいらん知識と経験がやたらと増える旅路だ

ドンベクとドンラン以外も、呆気に取られたようで何も反応がない内に概念的な死に至るだろう再生アンプルの原液からサムジョが纏っていた衣服のシャツの後襟を掴みズルズルと端に寄せる

端に寄せきった後、まるでタイミングを計りきったかの如く1人が口を開く

 

「良かった、サムジョさんは回復アンプルの原液について知らなかったんですよ

改めてこんな時でも、僕達を誇りに思ってくれてたんですね」

 

開いたのはドンランで、その目は痛めつけられたサムジョでは無く俺の方を確実に見ていたような気がした

ドンランにとってはK社の社員のサムジョでは無く"ガリバー"は、知っていただろうと当然のように思い

それを公然に伝えるように、俺は反論するまでもなく口を閉ざした

そういう物は、周囲に突っ込まれてから話せばいい

 

ボロが出るのは、大概そういう所からだ

血がついたまま、サムジョをその場に置いて戻る

なるべく平然を保ったそれが当たり前だと

 

会話は、ドンランを中心に続く

 

サムジョが、K社に選ばれた理由は他の基準外もそうであるが忠誠心からだとそれにシンクレアは"本来あったそうあるべきもしも"の光景を想像したのか震える声で

 

「サムジョさんが、原液に入っていたらどうなって」

「原液は如何なる働きをするドンラン?」

 

イサンは珍しく、シンクレアの言葉を遮るようにドンランにすぐさま問いただすそうしなければならないと感情が動いたのか

コレまでのメフィストフェレスにいた時は、大体いつも静かだったのに本来の口数とはそういうものなのだろう

 

「本来の姿に戻してあげるのが、涙の役割だよ」

 

薄らに笑いながら、得意げに語る

その仕組みを、崩壊アンプルも再生アンプルも概念によって希釈された結果だと

 

方向性が無い原液ならば、完全に至ることのない元に戻るとさしずめ赤子が、精子と卵子に結びつくの前の前といったところだろうかそんなところに行き着こうとするのならば当然無になるしかない

俺が考えているモノすらも的外れで、都市の言う人の根源的な姿ではないのだろうが

 

人だとしてもホモサピエンスとネアンデルタール人とデニソワ人がそれぞれ発生して

ホモサピエンスが、現行種として残った様に

 

都市しいては俺が今居る世界全体には、ホモサピエンスは居ないだろう

 

「それで満足したかい、ドンベク」

 

もう原液について語るべき事が無くなったのか、ドンランは俺達の方からドンベクに目を向けて話を振る

そして言い争いが始まる、平行線上で先に進むわけもない会話

 

イサンが言葉に出し進んで止めようとしても、止まるはずはない無視をされるわけでもないが、酷く膿んでしまった傷が絆創膏を貼ったぐらいで治ることはない

 

「対話は終わったね、むしろ良かったよ この場を借りて、昔朋だった二人を直々に殺してやる

 

そして特異点を回収して、燃やしてやる」

 

毒によって全てを殺すか、抉り取るしかないのだ

 

ドンベクは、薄汚れたレインコートの形をした仮初のegoを顕にする

 

「頭が良い人達は、全員考える事が多くて大変だね」

 

そう言って、俺は目を閉じた

まだ鑑賞室の明かりはつくことはない、止めるサムジョもいないしドンランはコレから明かりをつけるための準備に入るのだろうかな

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